StudyMed医師国家試験

衝撃波の通り道をたどれ―ESWL直後に起こる合併症の見抜き方

第109回医師国家試験 G問題 第38問

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第109回 G問題 第38問

腎結石に対する体外衝撃波結石破砕術〈ESWL〉直後に起こり得る合併症はどれか。2つ選べ。

  1. a.血尿
  2. b.骨折
  3. c.腸管損傷
  4. d.皮下出血
  5. e.腎機能低下

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は体外衝撃波結石破砕術、ESWLの合併症を問う問題だ。考え方のコツは、衝撃波が体のどこを通って結石に届くのか、その「通り道」をイメージすること。そして設問が「直後に」と時間を限定している点にも注目しよう。
医学生医学生
ESWLは、体の外から衝撃波を当てて結石を砕く治療ですよね。切らないので、合併症はほとんどないイメージでした。
ドクタードクター
確かに、皮膚を切らず内視鏡も入れない、最も低侵襲な結石治療だ。X線透視や超音波で結石に焦点を合わせて衝撃波を集束させ、砕けた破片は数日から数週間かけて尿と一緒に排出される。主に径2cm未満程度の腎結石や上部尿管結石がよい適応だね。ただ、低侵襲でも衝撃波は体を通過する以上、無傷というわけにはいかないんだ。
医学生医学生
衝撃波は背中側から入るので、皮膚、皮下組織、筋肉、そして腎臓を通って結石に届く、という順番でしょうか。
ドクタードクター
その通り。その経路上の組織にある小さな血管が衝撃で傷つく。これが直後の合併症の主役になる。まず、腎実質や腎盂粘膜の微小血管が損傷されると何が起こるかな。
医学生医学生
尿に血が混じる、つまり血尿ですね。
ドクタードクター
正解。しかも砕けた鋭い破片が移動するときに尿路粘膜を傷つけることも血尿の原因になる。顕微鏡的血尿はほぼ全例にみられ、肉眼的血尿も一過性に少なくない頻度で出る。治療直後から出現し、通常は数日以内に自然に消えるから、水分摂取を促して経過観察すればよい。
医学生医学生
泌尿器科の臨床実習でESWLの見学をしたとき、術後の患者さんに「尿が赤くなりますが心配いりません」と説明していたのを思い出しました。
ドクタードクター
それはよい場面を見たね。事前の説明があるかどうかで、患者さんの不安はずいぶん変わる。もう一つ、衝撃波が必ず通過する場所があるよね。
医学生医学生
皮膚と皮下組織ですか。そこの毛細血管が傷つけば皮下出血になりそうです。
ドクタードクター
その通り。背部から側腹部の衝撃波の入射部位に、点状出血や皮下出血が生じることがある。これも直後から認められ、多くは数日で自然に消えて特別な処置はいらない。つまり正解は血尿と皮下出血の2つだ。
医学生医学生
骨折はどうでしょう。衝撃波で石が砕けるなら、肋骨も折れそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。でも衝撃波は焦点に集束したときに初めて結石を砕く強さになるよう設計されていて、経路上の骨を折るほどのエネルギーはない。さらに、位置合わせの段階で衝撃波の進入経路に骨が重ならないよう調整する。ESWLで骨折は想定されないんだ。
医学生医学生
腸管損傷も同じ理由で考えにくいですか。
ドクタードクター
そうだね。周囲への影響が出たとしても、小血管の損傷による腎被膜下血腫や腎周囲血腫くらいで、通常の治療で腸管が損傷することは考えにくい。腸管内のガスは衝撃波の伝わり方を妨げるので位置合わせで考慮されるけれど、それは損傷とは別の話だ。
医学生医学生
腎機能低下は、腎臓に衝撃波を当てるのだから起こりそうに思えました。
ドクタードクター
ESWLの衝撃波は腎実質を広く壊すほどのものではない。破片で尿管が詰まって片側の水腎症になることはあっても、反対側の腎臓が働いていれば全体の腎機能は保たれる。腎生理の講義で習った代償の考え方を思い出すといいね。だから直後に腎機能低下に至ることは通常考えにくい。
医学生医学生
衝撃波の通り道で起こるのが血尿と皮下出血、ということですね。では、破片の側の合併症もありますか。
ドクタードクター
いい質問だ。もう一つの経路、つまり破片が腎盂から尿管へ下っていく道で起こる合併症がある。破片の移動による疝痛発作、多数の破片が尿管内に列をなして詰まるstone street、そして閉塞に伴う腎盂腎炎や尿路感染症だ。感染結石や閉塞があると敗血症に至ることもあるから、術後の発熱には要注意だよ。また、まれだけれど腎被膜下血腫は重要で、血尿が長引く、強い腰背部痛や血圧低下がある場合は画像検査で確認する。
医学生医学生
禁忌も押さえておきたいです。CBTの問題で妊娠が禁忌と出た気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。妊娠のほか、出血傾向や抗凝固薬・抗血小板薬の内服中、コントロールされていない尿路感染症、結石より下流の尿路閉塞、衝撃波の経路近くの大動脈瘤や腎動脈瘤が主な禁忌だ。出血の合併症が起こりうる治療だからこそ、出血傾向が禁忌になると考えると理屈が通るよね。
医学生医学生
合併症と禁忌をセットで考えると覚えやすいですね。

まとめ

ESWLは体外から結石に衝撃波を集束させて砕く低侵襲治療ですが、衝撃波は皮膚から腎実質を通過するため、その経路上の微小血管が損傷され、治療直後から血尿と衝撃波入射部位の皮下出血・点状出血が生じます。いずれも多くは数日で自然に消退しますが、強い疼痛や血圧低下を伴う場合は腎被膜下血腫を疑います。また破片の排出経路では疝痛発作、stone street、閉塞に伴う腎盂腎炎が起こりうる一方、骨折、腸管損傷、直後の腎機能低下は通常起こりません。禁忌として妊娠、出血傾向、未治療の尿路感染症、結石より下流の閉塞が重要です。「衝撃波の通り道」と「破片の通り道」をイメージして合併症を整理することは、術前説明や術後管理の理解にも直結します。

解答・解説

正解はa, dです

体外衝撃波結石破砕術(ESWL:extracorporeal shock wave lithotripsy)は、体外の発生装置でつくった衝撃波を、X線透視や超音波で位置を合わせた結石に集束させて砕く治療である。砕けた結石は数日〜数週間かけて尿とともに自然に排出される。皮膚を切らず、内視鏡も挿入しない最も低侵襲な結石治療で、主に径2cm未満程度の腎結石や上部尿管結石が良い適応となる。 合併症を考えるときは、衝撃波が「皮膚 → 皮下組織 → 筋 → 腎実質 → 腎盂内の結石」と体を通過する経路と、砕けた破片が「腎盂 → 尿管」を下っていく経路をイメージするとよい。 ・衝撃波の通り道にある組織の小さな血管が傷つく → 皮膚の点状出血・皮下出血、腎実質や腎被膜下の出血(血尿、まれに腎周囲血腫) ・破片が尿路を移動・閉塞する → 疝痛発作、尿管内に破片が列をなして詰まるstone street(Steinstrasse)、閉塞に伴う腎盂腎炎・尿路感染症 設問は「直後に」起こり得る合併症である。治療直後から現れる頻度の高いものは、衝撃波による組織の微小損傷で生じる血尿と皮下出血である。一方、骨折や腸管損傷を起こすほどのエネルギーは通常の治療では加えられず、腎機能低下も直後に起こる合併症とは考えにくい。

選択肢考察

  1. ○a.  血尿

    衝撃波が腎実質や腎盂粘膜の微小な血管を損傷すること、さらに砕けた鋭い破片が移動する際に尿路粘膜を傷つけることで血尿が生じる。顕微鏡的血尿(尿検査で初めてわかる程度の血尿)はESWL後のほぼ全例に認められ、肉眼的血尿(見た目で尿が赤い)も少なくない頻度で一過性に生じる。いずれも治療直後から出現し、通常は数日以内に自然に消失するため、水分摂取を促して経過観察とする。血尿が長く続く、強い腰背部痛や血圧低下を伴う場合は、腎被膜下血腫などを疑って画像検査を行う。

  2. ×b.  骨折

    衝撃波は焦点に集束したときに結石を砕く強さとなるよう設計されており、その経路上にある肋骨などの骨を折るほどのエネルギーはない。また治療では、衝撃波の進入経路に骨が重ならないよう位置合わせを行う。ESWLの合併症として骨折は想定されない。

  3. ×c.  腸管損傷

    腎臓の周囲に影響が及ぶとしても、衝撃波による小血管の損傷で腎被膜下血腫や腎周囲血腫を生じる程度であり、通常の治療で腸管が損傷することは考えにくい。腸管内ガスは衝撃波の伝わり方を妨げるため、位置合わせの際に考慮されるが、腸管損傷は直後に起こり得る合併症としては一般的でない。

  4. ○d.  皮下出血

    衝撃波は体外から入射するため、必ず皮膚と皮下組織を通過する。その際に皮膚・皮下の毛細血管が損傷され、衝撃波の入射部位(背部〜側腹部)に点状出血や皮下出血が生じることがある。治療直後から認められるが、多くは数日で自然に消退し、特別な処置は要しない。

  5. ×e.  腎機能低下

    ESWLで用いる衝撃波は、腎実質を広く破壊して腎機能を低下させるほどのものではない。破片による尿管閉塞で片側の水腎症が起こることはあるが、反対側の腎臓が機能していれば全体の腎機能は保たれる。両側が同時に閉塞することは極めてまれであり、治療直後に腎機能低下に至ることは通常考えにくい。

上部尿路結石の治療選択

・径10mm未満の尿管結石は、水分摂取や薬物(α1遮断薬など)による自然排石を期待できることが多い。 ・自然排石が困難な場合は積極的治療を行う。ESWLのほか、経尿道的尿管結石破砕術(TUL:尿管鏡を尿道から挿入しレーザーなどで砕く)、経皮的腎結石破砕術(PNL:腰背部から腎に経皮的にトラクトをつくって内視鏡で砕く)がある。 ・大きな腎結石やサンゴ状結石ではPNLが中心となる。

ESWLの主な合併症

・血尿(顕微鏡的血尿はほぼ必発、肉眼的血尿も一過性に出現) ・皮膚の点状出血・皮下出血 ・腎被膜下血腫・腎周囲血腫(まれだが重要) ・疝痛発作(破片の排出に伴う) ・stone street(Steinstrasse:多数の破片が尿管内に列をなして詰まる状態) ・腎盂腎炎・尿路感染症、敗血症(感染結石や閉塞を伴う場合)

ESWLの禁忌(主なもの)

・妊娠 ・出血傾向、抗凝固薬・抗血小板薬の内服中(休薬が必要) ・コントロールされていない尿路感染症 ・結石より下流の尿路の閉塞(破片が排出できない) ・衝撃波の経路近くの大動脈瘤・腎動脈瘤

POINT

・ESWL直後の合併症の代表は血尿(顕微鏡的血尿はほぼ必発、肉眼的血尿も一過性にみられる)と、衝撃波の入射部位の皮下出血・点状出血。 ・その他、腎被膜下血腫、疝痛発作、stone street、腎盂腎炎が重要。 ・骨折、腸管損傷、腎機能低下は通常起こらない。 ・禁忌として妊娠、出血傾向(抗凝固薬内服)、未治療の尿路感染症、結石より下流の閉塞を押さえる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。