朝に高く、ストレスで増え、血糖を上げる―コルチゾールで読み解く副腎皮質ホルモンの基本
第109回医師国家試験 G問題 第34問
国試問題にチャレンジ
副腎皮質ホルモンについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.日内変動がある。
- b.血糖値には影響しない。
- c.ストレス時に変動しない。
- d.コレステロールから生合成される。
- e.CRHによる直接的な調節を受ける。
対話形式の解説
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医学生まとめ
副腎皮質は球状層・束状層・網状層からそれぞれアルドステロン、コルチゾール、副腎アンドロゲンを分泌し、いずれもコレステロールを原料とするステロイドホルモンです。代表であるコルチゾールは早朝に高く深夜に低い日内変動を示し、ストレスで分泌が増え、糖新生促進とインスリン抵抗性の増大によって血糖を上昇させます。分泌はCRH→ACTH→コルチゾールのHPA軸で調節されますが、副腎皮質を直接刺激するのはACTHであり、CRHは間接的に関与するにすぎません。臨床では、Cushing症候群での日内変動の消失、ストレス時のステロイドカバー、長期ステロイド投与後の漸減といった場面でこれらの性質が直接問われます。ホルモンの作用部位を階層ごとに正確にたどる姿勢は、内分泌疾患の診断と治療を理解するうえでの土台になります。
解答・解説
正解はa, dです
副腎皮質は外側から球状層・束状層・網状層の3層からなり、それぞれ主に鉱質コルチコイド(アルドステロン)、糖質コルチコイド(コルチゾール)、副腎アンドロゲン(DHEA〈デヒドロエピアンドロステロン〉など)を分泌する。これらはいずれもコレステロールを原料とするステロイドホルモンである。本問の選択肢は内容から、代表的な副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを念頭に置いて考えるとよい。 コルチゾールの分泌は、視床下部―下垂体前葉―副腎皮質の階層構造(HPA軸)で調節される。視床下部のCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が下垂体前葉に作用してACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させ、ACTHが副腎皮質束状層に作用してコルチゾールを分泌させる。分泌されたコルチゾールは視床下部と下垂体に負のフィードバックをかけ、CRH・ACTHの分泌を抑える。 この系の主な特徴として、①早朝に高く深夜に低い日内変動(概日リズム)、②身体的・精神的ストレスでの分泌亢進、③血糖上昇をはじめとする代謝作用、の3点を押さえておけば、各選択肢の正誤を判断できる。調節の経路を一段ずつ正確にたどること(CRHはACTHを介して間接的に作用する)も問われている。
選択肢考察
- ○a. 日内変動がある。
コルチゾールはACTHとともに明瞭な日内変動を示す。起床前後の早朝に最も高く、夕方から低下し、深夜(入眠後早期)に最低となる。このためCushing症候群の評価では、本来低値になるはずの深夜の血中コルチゾールが低下しないこと(日内変動の消失)が重要な所見となる。ACTH・コルチゾールの検査で採血時刻(通常は早朝安静時)を揃えるのもこの変動のためである。
- ×b. 血糖値には影響しない。
コルチゾールは「糖質コルチコイド」の名のとおり糖代謝に大きく関与し、血糖を上昇させる。肝臓での糖新生を促進し、筋や脂肪組織などの末梢でのブドウ糖取り込みを抑えてインスリン抵抗性を高める。インスリンに拮抗するホルモン(インスリン拮抗ホルモン)の一つであり、Cushing症候群やステロイド薬の投与で耐糖能異常・糖尿病(ステロイド糖尿病)をきたす。
- ×c. ストレス時に変動しない。
手術・外傷・感染症・低血糖・精神的緊張などのストレスはCRH・ACTH分泌を介してコルチゾール分泌を増加させる。コルチゾールはストレスに対して血糖や血圧を維持する役割をもつ。このため副腎不全患者やステロイド長期服用者では、ストレス時に必要量が増えるにもかかわらず分泌が追いつかず副腎クリーゼを起こしうるので、手術や重症感染症の際にはステロイドを増量する(ステロイドカバー)。
- ○d. コレステロールから生合成される。
副腎皮質ホルモンはすべてステロイドホルモンであり、コレステロールを出発物質として合成される。コレステロールはまずミトコンドリア内でプレグネノロンに変換され(この反応が律速段階で、ACTHはこの過程を促進する)、その後一連の酵素反応によってアルドステロン、コルチゾール、副腎アンドロゲンへと分かれる。性ホルモンや胆汁酸、ビタミンDもコレステロールを原料とする。
- ×e. CRHによる直接的な調節を受ける。
CRHは視床下部から分泌され、下垂体前葉のACTH産生細胞に作用してACTHの分泌を促すホルモンである。副腎皮質ホルモンの分泌を直接調節しているのはACTHであり、CRHの作用はACTHを介した間接的なものにとどまる。なお、アルドステロンの主な調節因子はACTHではなくレニン-アンジオテンシン系と血清カリウム濃度である。
副腎皮質の層構造と分泌ホルモン
・球状層:アルドステロン(鉱質コルチコイド)。主にレニン-アンジオテンシン系と血清K濃度で調節される。Na再吸収・K排泄を促す。 ・束状層:コルチゾール(糖質コルチコイド)。ACTHで調節される。 ・網状層:DHEA・DHEA-Sなどの副腎アンドロゲン。ACTHの影響を受ける。 ※副腎髄質はカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)を分泌し、皮質とは由来も調節も異なる。
コルチゾールの主な作用
・糖代謝:糖新生促進、末梢での糖利用抑制→血糖上昇 ・蛋白代謝:筋蛋白の異化亢進 ・脂質代謝:脂肪分解の促進と、体幹への脂肪の再分布(中心性肥満、満月様顔貌) ・循環:カテコラミンへの血管反応性を保ち、血圧を維持 ・免疫・炎症:抗炎症作用、免疫抑制作用(好酸球・リンパ球の減少、好中球の増加) ・骨:骨形成抑制(骨粗鬆症)
HPA軸とフィードバック
CRH(視床下部)→ACTH(下垂体前葉)→コルチゾール(副腎皮質束状層)。コルチゾールは視床下部と下垂体の両方に負のフィードバックをかける。このため外因性ステロイドを長期投与するとCRH・ACTHが抑制され、副腎皮質が萎縮する。急な中止は副腎不全を招くので、漸減が必要である。
日内変動の臨床的意義
コルチゾールは早朝に高く、深夜に低い。Cushing症候群では深夜の低値が失われる。またステロイド補充療法では、生理的リズムに近づけるため朝の投与量を多くする。
POINT
・副腎皮質ホルモンはコレステロール由来のステロイドホルモン ・コルチゾールは早朝高値・深夜低値の日内変動を示す ・ストレスで分泌が増える(副腎不全ではストレス時にステロイド増量が必要) ・コルチゾールは血糖を上昇させるインスリン拮抗ホルモン ・CRH→ACTH→コルチゾールの順に作用し、副腎皮質を直接刺激するのはACTH(CRHは間接的)
