StudyMed医師国家試験

歯は12本、手はパッと前へ―1歳半健診の「標準値」を数字で読み解く

第109回医師国家試験 E問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第32問

標準的な1歳6か月児の成長・発達の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.生歯が12本
  2. b.頭囲が胸囲より大
  3. c.体重が出生時の6倍
  4. d.身長が出生時の2倍
  5. e.パラシュート反射の存在

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、1歳6か月児の標準的な成長・発達を問う問題だ。身体計測値、歯の生え方、反射という3つの物差しで、それぞれ「1歳半ならどのくらいか」を思い浮かべられるかがポイントになる。数字の丸暗記ではなく、出生時を基準に「何歳で何倍か」という軸で整理していこう。
医学生医学生
小児科の講義で「1歳で体重3倍、身長1.5倍」と習ったのは覚えています。でも1歳半となると急に自信がなくなります。
ドクタードクター
その2つを覚えていれば十分戦えるよ。出生時の体重は約3 kgだから、1歳で約9 kg。1歳半ではもう少し増えて10〜11 kgくらい、出生時のだいたい3.5倍だね。では、体重が出生時の6倍というのはいつごろだと思う?
医学生医学生
6倍だと約18 kgですね……。うちの甥っ子が幼稚園の年中くらいでそれくらいだった気がします。
ドクタードクター
いい感覚だ。体重6倍は5歳前後が目安なんだ。3〜4か月で2倍、1歳で3倍、2歳半で4倍、5歳前後で6倍という流れで覚えておくといい。だから1歳半で6倍は明らかに多すぎる。
医学生医学生
身長も同じ考え方ですか。出生時が約50 cmで、2倍だと100 cmになります。
ドクタードクター
そう。身長は1歳で約1.5倍の75 cm、1歳半で約80 cmだから1.6倍程度。2倍の約100 cmになるのは4歳ころ、3倍は12歳前後だ。身長2倍も1歳半では早すぎるね。
医学生医学生
頭囲と胸囲はどうでしょう。赤ちゃんは頭が大きいイメージなので、頭囲のほうが大きいと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだよ。確かに出生時は頭囲約33 cm、胸囲約32 cmで頭囲がやや大きい。でも1歳ころに両者はほぼ等しくなって、その後は胸囲が上回る。1歳半ではすでに胸囲のほうが大きいのが標準なんだ。
医学生医学生
1歳で逆転、と覚えればいいんですね。じゃあ歯の本数はどう考えればいいですか。
ドクタードクター
乳歯は生後6〜8か月ころに下の前歯、つまり下顎の乳中切歯から生え始めて、2歳半〜3歳で20本そろう。本数のざっくりした目安は「月齢−6」本。1歳6か月は18か月だから?
医学生医学生
18−6で12本。生歯12本は標準的、ということですね。
ドクタードクター
正解。もちろん歯の萌出は個人差が大きいけれど、標準的な所見としては合っている。最後にパラシュート反射。これはどんな反射だったかな。
医学生医学生
体を支えて前に倒すと、両手を伸ばして体を支えようとする反射ですよね。原始反射なので、そのうち消えるんでしたっけ。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。Moro反射や把握反射のような原始反射は生後数か月で消えるけれど、パラシュート反射は生後6〜9か月ころに出現して、一生消えない姿勢反射、保護伸展反応なんだ。転んだときにとっさに手をつくのも、この反応のおかげだよ。
医学生医学生
なるほど、大人になっても残っているから、1歳半で存在するのは正常なんですね。正解は生歯12本とパラシュート反射の存在ですね。
ドクタードクター
その通り。臨床で大事なのは、パラシュート反射が出るべき時期に出ない、あるいは左右差がある場合だ。中枢神経障害や片麻痺を疑う手がかりになる。逆に、消えるべき原始反射が残っているのも異常のサインだから、出現と消失の時期をセットで押さえておこう。
医学生医学生
臨床実習の乳幼児健診で、先生が赤ちゃんを抱えて前に傾けていたのはそれを見ていたんですね。ほかに1歳半健診で確認することはありますか。
ドクタードクター
1歳6か月児健康診査は母子保健法で市町村に義務づけられた健診で、ひとり歩きができるか、意味のある単語をいくつか話すか、積み木を2〜3個積めるか、なぐり書きをするかなどを見る。ひとり歩きの目安は1歳〜1歳3か月ころだから、1歳半で歩けないなら精査を考えるタイミングだね。大泉門も1歳半〜2歳ころまでに閉じるのが目安だ。
医学生医学生
数字を「何倍」と「何歳」のペアで整理すると、健診の場面でもすぐ使えそうです。
ドクタードクター
そう、標準値は異常を見抜くための物差しなんだ。物差しが正確なら、ちょっとしたずれにも気づける。それが小児科の基本だよ。

まとめ

1歳6か月児では、体重は出生時の約3.5倍(10〜11 kg)、身長は約1.6倍(約80 cm)で、体重6倍は5歳前後、身長2倍は4歳ころに達する目安です。頭囲と胸囲は1歳ころに等しくなり、以後は胸囲が上回るため、1歳半で頭囲が大きいのは標準ではありません。乳歯は6〜8か月に萌出を始めて2歳半〜3歳で20本そろい、「月齢−6」本の目安から1歳半では約12本となります。パラシュート反射は6〜9か月ころに出現して生涯持続する保護伸展反応であり、出現すべき時期の欠如や左右差は中枢神経障害を疑う手がかりです。出生時を基準に「何歳で何倍か」と反射の出現・消失時期を整理しておくことが、乳幼児健診で発達の遅れや異常に気づくための土台になります。

解答・解説

正解はa, eです

1歳6か月(生後18か月)の標準的な成長・発達を、身体計測値(体重・身長・頭囲と胸囲)、歯の萌出、反射の各観点から判断する問題である。1歳6か月児健康診査(いわゆる1歳半健診)は母子保健法で市町村に実施が義務づけられた健診であり、この時期の標準値を押さえておくことは小児科の基本である。 成長の目安は、出生時(体重約3 kg、身長約50 cm、頭囲約33 cm、胸囲約32 cm)を基準に、何歳で何倍になるかで覚えると整理しやすい。 ・体重:3〜4か月で約2倍、1歳で約3倍、2歳半で約4倍、5歳前後で約6倍 ・身長:1歳で約1.5倍、4歳で約2倍、12歳前後で約3倍 ・頭囲と胸囲:出生時は頭囲が胸囲よりやや大きく、1歳ころにほぼ等しくなり、以後は胸囲が上回る ・乳歯:生後6〜8か月ころに下顎の乳中切歯から生え始め、2歳半〜3歳ころに20本がそろう。本数の目安は「月齢−6」本 これを1歳6か月に当てはめると、体重は約10〜11 kgで出生時の約3.5倍、身長は約80 cmで約1.6倍、胸囲は頭囲を上回り、乳歯はおよそ18−6=12本となる。 反射については、原始反射の多くは生後数か月で消失するのに対し、パラシュート反射は乳児期後半に出現し、一生涯持続する姿勢反射(保護伸展反応)である。したがって1歳6か月では存在するのが正常である。

選択肢考察

  1. ○a.  生歯が12本

    乳歯は生後6〜8か月ころに萌出を開始し、2歳半〜3歳ころまでに上下計20本が生えそろう。萌出本数のおおよその目安は「月齢−6」本で表され、1歳6か月(18か月)では18−6=12本となる。個人差は大きいが、標準的な所見として正しい。

  2. ×b.  頭囲が胸囲より大

    出生時は頭囲(約33 cm)が胸囲(約32 cm)よりやや大きいが、1歳ころに両者はほぼ等しくなり(約45 cm)、その後は胸囲の方が大きくなる。1歳6か月では胸囲が頭囲を上回っているのが標準であり、誤りである。

  3. ×c.  体重が出生時の6倍

    体重は1歳で出生時の約3倍(約9 kg)となり、1歳6か月では約10〜11 kgで出生時の3倍強にとどまる。出生時の約6倍(約18 kg)に達するのは5歳前後である。誤りである。

  4. ×d.  身長が出生時の2倍

    身長は1歳で出生時の約1.5倍(約75 cm)、1歳6か月で約80 cm(約1.6倍)である。出生時の約2倍(約100 cm)になるのは4歳ころである。誤りである。

  5. ○e.  パラシュート反射の存在

    パラシュート反射は、児の体幹を支えて腹臥位で水平に持ち上げ、急に頭を下へ向けて落下させるようにすると、両上肢を伸ばし手を開いて体を支えようとする反応である。生後6〜9か月ころ(おおむね8か月前後)に出現し、その後消失せずに生涯持続する。転倒時に手をついて身を守る保護反応であり、1歳6か月で存在するのは正常で、正しい。逆に、出現すべき時期に認めない場合や左右差がある場合は、中枢神経障害や片麻痺などを疑う手がかりとなる。

身体発育の目安(出生時を基準)

・体重:出生時約3 kg → 3〜4か月で2倍 → 1歳で3倍 → 2歳半で4倍 → 5歳前後で6倍 ・身長:出生時約50 cm → 1歳で1.5倍(約75 cm)→ 4歳で2倍(約100 cm)→ 12歳前後で3倍 ・頭囲:出生時約33 cm → 1歳で約45 cm ・頭囲と胸囲:1歳ころに逆転し、以後は胸囲>頭囲 ・大泉門:生後1歳半〜2歳ころまでに閉鎖する

歯の萌出

・乳歯:6〜8か月で萌出開始(下顎乳中切歯が最初)、2歳半〜3歳で20本完成、本数の目安は「月齢−6」 ・永久歯:6歳ころ第一大臼歯(6歳臼歯)と下顎中切歯から萌出し始める

主な反射の出現・消失時期

・Moro反射:出生時から存在し、4〜6か月ころまでに消失 ・手掌把握反射:出生時から存在し、3〜4か月ころに消失 ・足底把握反射:出生時から存在し、9〜10か月ころに消失(立位・歩行の準備とともに消える) ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):出生時から存在し、4〜6か月ころまでに消失 ・Landau反射:4〜6か月ころ出現し、2歳前後に消失 ・パラシュート反射:6〜9か月ころ出現し、生涯持続

1歳6か月ころの運動・言語発達の目安

・ひとり歩きができる(ひとり歩きは1歳〜1歳3か月ころが目安) ・意味のある単語をいくつか話す ・積み木を2〜3個積む、なぐり書きをする

POINT

・乳歯の本数の目安は「月齢−6」本。1歳6か月で約12本、2歳半〜3歳で20本完成。 ・頭囲と胸囲は1歳で等しくなり、以後は胸囲が大きい。 ・体重:1歳で3倍、5歳前後で6倍。身長:1歳で1.5倍、4歳で2倍。 ・パラシュート反射は生後6〜9か月で出現し、生涯消失しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。