ストップウォッチ1つで声を測る―嗄声の初手は「最長発声持続時間」
第109回医師国家試験 E問題 第24問
国試問題にチャレンジ
嗄声を主訴に来院した成人にまず行う発声機能検査はどれか。
- a.音響分析
- b.呼気流率
- c.筋電図検査
- d.喉頭内視鏡検査
- e.最長発声持続時間
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
嗄声の評価は、喉頭内視鏡などで声帯の病変や運動を観察する形態の評価と、声を出す機能を測る発声機能検査の2本立てで行います。発声機能検査のうち最初に行うのは、ストップウォッチだけで外来ですぐに測定できる最長発声持続時間(MPT)で、成人の目安は男性約30秒・女性約20秒、10秒未満は明らかな短縮です。声門閉鎖不全ではMPTが短縮し平均呼気流率は増大するため、反回神経麻痺などの評価に役立ちます。音響分析や呼気流率は専用機器を、喉頭筋電図は侵襲的な手技を要し、神経麻痺と機械的固着の鑑別などの目的で必要に応じて行います。検査を「形態か機能か」「簡便か専門的か」で整理しておくことは、外来での効率的な診療の組み立てに直結します。
解答・解説
正解はeです
本問は、嗄声(させい:声がかすれる、がらがらするなど声の音質の異常)を訴える患者に対し、「発声機能検査」としてまず行うものを問う問題である。問われているのは原因疾患を見つけるための形態的な検査ではなく、声を出す機能そのものを評価する検査である点に注意する。 嗄声の診療では、大きく2種類の評価を組み合わせる。 ・形態の評価:喉頭内視鏡などで声帯を直接観察し、ポリープ、結節、腫瘍、声帯麻痺などの原因を探す。 ・機能の評価:声の高さ・大きさ・音質・持続などを測定し、発声がどの程度障害されているかを客観的に示す。これが発声機能検査である。 発声機能検査には、最長発声持続時間、呼気流率(平均呼気流率)、音響分析、喉頭筋電図検査など多くの種類があるが、多くは専用機器や専門的手技を必要とする。その中で最長発声持続時間は、ストップウォッチがあれば外来ですぐ測定でき、声門閉鎖の状態や呼気の効率をおおまかに反映するため、最初に行う発声機能検査として適している。
選択肢考察
- ×a. 音響分析
音響分析は、録音した音声をデジタル信号として取り込み、コンピュータ上で周波数や振幅などを解析する検査である。声帯振動の周期のゆらぎ(jitter)や振幅のゆらぎ(shimmer)、雑音成分の割合(調波対雑音比、HNR)などを数値化でき、嗄声の程度を客観的に評価できる。ただし専用の機器・ソフトウェアと静かな録音環境が必要であり、嗄声患者にまず行う簡便な検査ではない。
- ×b. 呼気流率
呼気流率(平均呼気流率)は、発声中に口から出る呼気の量を時間あたりで測定する検査である。声門がしっかり閉じないと発声時に息が漏れるため、反回神経麻痺などによる声門閉鎖不全では値が大きくなる。声門閉鎖の評価に有用だが、スパイロメータや熱線流量計などの専用機器が必要であり、最初に行う検査ではない。
- ×c. 筋電図検査
喉頭筋電図検査は、甲状披裂筋や輪状甲状筋などの喉頭筋に針電極を刺して筋活動電位を記録する検査である。声帯の動きが悪い場合に、それが神経の障害(反回神経麻痺など)によるものか、輪状披裂関節の固着や披裂軟骨脱臼などの機械的な原因によるものかを鑑別したり、麻痺の回復の見込みを評価したりするのに役立つ。侵襲的で専門的な手技を要するため、嗄声患者にまず行う検査ではない。
- ×d. 喉頭内視鏡検査
喉頭内視鏡検査(喉頭ファイバースコピーなど)は、鼻腔や口腔から内視鏡を入れて声帯や喉頭全体を直接観察する検査である。多くの施設に普及しており比較的簡便で、声帯ポリープ・声帯結節・喉頭癌などの病変や、声帯の動きの異常(声帯麻痺)を見つけるために、嗄声の原因診断では極めて重要である。しかし、主な目的は喉頭の形態や運動の観察であり、発声機能を数値で評価する発声機能検査には分類されないため、本問の答えとしては適切でない。
- ○e. 最長発声持続時間
最長発声持続時間(MPT:maximum phonation time)は、深く息を吸わせたあと、楽な高さと大きさで「アー」などの母音をできるだけ長く出させ、その持続時間を測定する検査である。ストップウォッチだけで外来ですぐに行え、患者の負担も小さい。成人の目安は男性で約30秒、女性で約20秒であり、10秒未満では明らかな短縮と判断される。反回神経麻痺などで声門閉鎖不全があると発声中に呼気が漏れて短縮するため、声門閉鎖の状態や発声効率を簡便に反映する。このため、嗄声患者にまず行う発声機能検査として適している。
嗄声の主な原因
・声帯の器質的病変:声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯(ラインケ浮腫)、喉頭癌、喉頭乳頭腫など ・炎症:急性・慢性喉頭炎 ・神経性:反回神経麻痺(甲状腺癌、食道癌、肺癌、大動脈瘤、甲状腺・頸部・胸部手術後など) ・機能性:心因性発声障害、痙攣性発声障害など
発声機能検査の種類
・聴覚心理的評価:GRBAS尺度で、嗄声の全体的な程度(G)、粗糙性(R)、気息性(B)、無力性(A)、努力性(S)を聞いて評価する。 ・空気力学的検査:最長発声持続時間、平均呼気流率など。声門閉鎖不全で最長発声持続時間は短縮し、平均呼気流率は増大する。 ・音響分析:基本周波数、jitter、shimmer、調波対雑音比(HNR)などを測定する。 ・声域・声の強さの測定:出せる声の高さの範囲や音の大きさを測定する。 ・喉頭筋電図検査:喉頭筋の神経支配の状態を評価する。
形態の評価
喉頭内視鏡検査は嗄声の原因診断に必須である。さらに、声帯の振動の様子(粘膜波動)を観察するために、点滅する光を用いて振動をゆっくり動いているように見せる喉頭ストロボスコピーが用いられる。
POINT
・嗄声患者にまず行う発声機能検査は、簡便な最長発声持続時間(MPT) ・MPTの目安:成人男性約30秒、女性約20秒。10秒未満は明らかな短縮で、声門閉鎖不全を疑う ・声門閉鎖不全ではMPTが短縮し、平均呼気流率は増大する ・喉頭内視鏡検査は原因診断(形態の評価)に重要だが、発声機能検査ではない ・喉頭筋電図検査は神経麻痺か機械的固着かの鑑別に用いる
