「なくす」は高い壁―健康日本21の中間評価で達成されたのは8020だった
第108回医師国家試験 H問題 第10問
国試問題にチャレンジ
健康日本21の目標のうち,中間評価の時点で目標値に達した項目はどれか。
- a.未成年者の飲酒をなくす。
- b.未成年者の喫煙をなくす。
- c.男性の日常生活における歩数を増加させる。
- d.中学生や高校生で朝食を欠食する人をなくす。
- e.80歳で20本以上自分の歯を有する人の割合を増加させる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
健康日本21(第一次)は2000年度に始まった国民健康づくり運動で、9分野に数値目標を設定し、2007年に中間評価が行われました。中間評価で目標値に達していた代表的な項目は、80歳で20本以上の歯を有する人(8020達成者)の割合で、目標20%以上に対し25.0%でした。一方、未成年者の飲酒・喫煙や中高生の朝食欠食は「なくす(0%)」という厳しい目標で未達成、男性の歩数は策定時より減少していました。健康日本21は健康増進法を法的根拠とし、第二次(2013年度〜)、第三次(2024年度〜)へと引き継がれています。施策の変遷と評価の読み方を理解しておくことは、公衆衛生の問題だけでなく、地域や臨床で予防医療を考える土台にもなります。
解答・解説
正解はeです
健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)は、2000年度に開始された国の健康づくり施策である。壮年期の死亡を減らし、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を延ばすことを目的として、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康、たばこ、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、がんの9分野について具体的な数値目標を定めた。2007年(平成19年)に中間評価が行われ、その後、最終評価を経て第二次・第三次へと引き継がれている。 本問は、その中間評価の時点で目標値に到達していた項目を選ばせるものである。考え方の手がかりとして、「なくす(0%にする)」という目標は、1人でも該当者がいれば達成とならない非常に厳しい目標である。未成年者の飲酒・喫煙、中高生の朝食欠食はいずれも「なくす」ことが目標であり、中間評価では該当者が残っていたため未達成であった。男性の歩数は、策定時より減少しており、目標から遠ざかっていた。一方、歯の健康分野の「80歳で20本以上自分の歯を有する人(8020達成者)の割合」は、目標値20%以上に対して中間評価で25.0%となり、目標を上回っていた。 なお、本問は旧来の健康日本21(第一次)の中間評価の数値を問うもので、現在は第三次に移行しているため、現在の国試対策としての有用性は低い。むしろ、健康日本21の変遷と、歯の健康分野が数少ない達成項目であったという流れを押さえておけば十分である。
選択肢考察
- ×a. 未成年者の飲酒をなくす。
目標は未成年者の飲酒者を0%にすることである。中間評価では、学年や性別によって差はあるものの、飲酒経験のある未成年者がなお相当の割合で存在しており、目標は達成されていなかった。未成年の飲酒は、脳の発達への悪影響、急性アルコール中毒、将来のアルコール依存症のリスクを高めることから、第二次以降も引き続き目標とされている。
- ×b. 未成年者の喫煙をなくす。
目標は未成年者の喫煙者を0%にすることである。中間評価では、喫煙率は策定時より低下傾向にあったものの、学年・性別により数%から十数%程度の喫煙者が残っており、0%には届いていなかった。「なくす」という目標は該当者が一人でもいれば未達成となるため、達成が難しい。
- ×c. 男性の日常生活における歩数を増加させる。
成人男性の1日平均歩数の目標は9,200歩以上とされた。策定時(2000年)の値は8,202歩であったが、中間評価では7,532歩とむしろ減少しており、目標から遠ざかっていた。交通手段の変化や座って過ごす時間の増加など、生活様式の変化が背景にあると考えられる。
- ×d. 中学生や高校生で朝食を欠食する人をなくす。
目標は中学・高校生の朝食欠食率を0%にすることである。策定時の欠食率は6.0%であったが、中間評価では6.2%とわずかに増えており、改善がみられなかった。したがって目標は達成されていない。
- ○e. 80歳で20本以上自分の歯を有する人の割合を増加させる。
いわゆる8020(ハチマルニイマル)運動に対応する目標で、80歳で20本以上の自分の歯を持つ人の割合を20%以上にすることが掲げられた。中間評価では25.0%に達し、目標値を上回った。20本以上の歯があれば、ほとんどの食品をかみ砕いて食べられるとされ、栄養状態や生活の質の維持につながる。歯の健康分野は、健康日本21の中で比較的成果が上がった分野であった。
健康日本21の変遷
健康日本21(第一次):2000年度に開始。当初は2010年度までの計画であったが、2012年度まで延長された。9分野について数値目標を設定した。2002年に制定された健康増進法により、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針として法的な位置づけが与えられた。2007年に中間評価、2011年に最終評価が行われ、最終評価で目標値に達した項目は全体の2割に満たなかった。 健康日本21(第二次):2013〜2023年度。「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を最上位の目標とし、生活習慣病の発症予防・重症化予防、社会生活を営むために必要な機能の維持・向上、健康を支え守るための社会環境の整備、生活習慣と社会環境の改善を基本的な方向とした。 健康日本21(第三次):2024年度から開始(計画期間は12年間)。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとし、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、ライフコースアプローチ(胎児期から高齢期までの人生の各段階を通じた健康づくり)を踏まえた健康づくりを基本的な方向としている。
8020運動
1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会が提唱した運動で、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という取り組みである。8020達成者の割合は、1990年代には1割前後であったが、その後大きく増加し、近年の歯科疾患実態調査では5割を超えている。
評価の読み方の注意
「なくす」(0%)を目標とした項目は、改善傾向があっても達成と判定されにくい。一方、策定時からの変化を見ることで、改善・不変・悪化の傾向を把握できる。
POINT
・健康日本21(第一次)の中間評価で目標を達成した代表的な項目は、歯の健康分野(80歳で20本以上の歯を有する人の割合)である。 ・未成年者の飲酒・喫煙、中高生の朝食欠食は「なくす」ことが目標で、未達成であった。 ・男性の歩数は策定時より減少した。 ・健康日本21は第一次(2000年度〜)→第二次(2013年度〜)→第三次(2024年度〜)と引き継がれており、法的根拠は健康増進法である。
