StudyMed医師国家試験

食べるだけでは「提示」にならない―抗原提示細胞3兄弟を見分ける

第108回医師国家試験 G問題 第39問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第39問

抗原提示能を有する細胞はどれか。3つ選べ。

  1. a.好酸球
  2. b.好中球
  3. c.樹状細胞
  4. d.マクロファージ
  5. e.Bリンパ球〈B細胞〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫の基本中の基本、「抗原提示能をもつ細胞」を選ぶ問題だ。着眼点は2つ。T細胞が抗原をどうやって認識するのか、そして「貪食する細胞」と「抗原を提示する細胞」は同じなのか、という点だよ。
医学生医学生
貪食できる細胞なら、取り込んだものを見せられそうな気がします。好中球もマクロファージも、どっちも食べる細胞ですよね。
ドクタードクター
多くの人がそこで引っかかるんだ。まず前提から整理しよう。B細胞や抗体は抗原をそのままの形で認識できるけれど、T細胞はそうはいかない。ほかの細胞が抗原を分解してできたペプチド断片を、MHC分子、ヒトでいうHLAの上に載せて示してくれたときにだけ認識できる。これが抗原提示だ。
医学生医学生
基礎免疫学の講義で、T細胞受容体はMHCとペプチドのセットを見ている、と習いました。MHCにはクラスIとクラスIIがありましたよね。
ドクタードクター
その通り。クラスIは赤血球を除くほぼすべての有核細胞にあって、細胞内でつくられたウイルス蛋白などの断片をCD8陽性T細胞に示す。一方クラスIIは、外から取り込んだ抗原の断片をCD4陽性のヘルパーT細胞に示すもので、恒常的に発現している細胞は限られている。
医学生医学生
クラスIならほとんどの細胞が持っているのに、「抗原提示細胞」と特別に呼ぶのはなぜですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。一般に抗原提示細胞というときは、MHCクラスIIを発現し、さらにT細胞の活性化に必要な共刺激分子、CD80やCD86を備えてヘルパーT細胞を動かせる細胞を指すんだ。これをプロフェッショナル抗原提示細胞と呼び、該当するのが樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つ。これが今回の正解だよ。
医学生医学生
では樹状細胞から。皮膚のLangerhans細胞も樹状細胞の仲間でしたよね。病理実習でS-100やCD1aで染まると教わりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。樹状細胞は最強の抗原提示細胞だ。皮膚や粘膜で抗原を取り込むと成熟し、リンパ管を通って所属リンパ節へ移動して、まだ抗原に出会ったことのないナイーブT細胞を初めて活性化する。獲得免疫のスタートボタンを押す細胞なんだ。取り込んだ外来抗原をクラスIに載せてCD8陽性T細胞に示す交差提示も得意だよ。
医学生医学生
マクロファージはどう違うんでしょう。同じく貪食して提示するんですよね。
ドクタードクター
マクロファージは単球が組織に移って分化した細胞で、微生物を食べて分解し、クラスIIでCD4陽性T細胞に示す。ただ主な相手は、すでに活性化されたエフェクターT細胞、特にTh1細胞だ。Th1細胞が出すインターフェロンγで逆に活性化されて、結核菌のような細胞内寄生菌を殺す力を高める。提示しつつ、助けてもらう関係だね。
医学生医学生
B細胞は抗体をつくる細胞というイメージが強くて、提示する側だとは意外でした。
ドクタードクター
B細胞は表面の抗体、つまりB細胞受容体で特定の抗原をつかまえて取り込み、分解してクラスIIで提示する。それを同じ抗原を認識する濾胞ヘルパーT細胞が見つけると、CD40リガンドやサイトカインでB細胞を助け、形質細胞への分化やクラススイッチ、親和性成熟が進む。蛋白抗原への効率的な抗体産生には、この提示が欠かせないんだ。
医学生医学生
じゃあ好中球は、食べて殺すところまでで終わり、ということですか。
ドクタードクター
そう。好中球は遊走能と貪食能に優れた自然免疫の主役だけれど、取り込んだ菌は殺菌・分解して処理するだけで、通常はMHCクラスIIを発現しない。好酸球も寄生虫やI型アレルギーに関わる顆粒球で、主要塩基性蛋白などを放出して寄生虫を傷害するのが仕事だ。どちらも通常は抗原提示細胞に含めない。「貪食能がある=抗原提示能がある」ではない、というのがこの問題の核心だよ。
医学生医学生
整理すると、抗原提示細胞はクラスIIと共刺激分子を持つ樹状細胞、マクロファージ、B細胞で、顆粒球は含まない、ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、T細胞活性化の2シグナルも押さえておこう。第1シグナルはT細胞受容体がMHCとペプチドを認識すること、第2シグナルは抗原提示細胞のCD80/CD86がT細胞のCD28に結合する共刺激だ。第2シグナルがないとT細胞は活性化されず、アナジーという不応答状態になる。
医学生医学生
CTLA-4って、そこに関わる分子でしたよね。腫瘍内科の実習でチェックポイント阻害薬の話を聞きました。
ドクタードクター
その通り。CTLA-4はCD80/CD86に結合して共刺激を抑えるブレーキで、それを外す抗CTLA-4抗体が免疫チェックポイント阻害薬として使われている。だから自己免疫的な副作用、免疫関連有害事象に注意が必要なんだ。それから、炎症時にはインターフェロンγの刺激で血管内皮細胞や上皮細胞にもクラスIIが誘導されることがあるし、好中球や好酸球も特殊な条件で発現しうるという報告はある。でも試験や臨床の基本的な整理としては、抗原提示細胞は3つと覚えておけば大丈夫だよ。

まとめ

T細胞は抗原をそのまま認識できず、ほかの細胞が分解したペプチドをMHC分子に載せて提示したときにのみ認識します。一般に抗原提示細胞と呼ぶのは、MHCクラスIIと共刺激分子(CD80/CD86)を備えてCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化できる樹状細胞・マクロファージ・B細胞の3種類で、なかでも樹状細胞はナイーブT細胞を初回活性化できる最強の抗原提示細胞です。好中球や好酸球は貪食・殺傷能をもつ顆粒球ですが、通常はMHCクラスIIを発現せず抗原提示細胞には含めません。MHCクラスIはCD8陽性T細胞、クラスIIはCD4陽性T細胞へ提示するという対応や、T細胞活性化の2シグナルとCTLA-4によるブレーキの仕組みは、免疫チェックポイント阻害薬などの臨床を理解する土台にもなります。

解答・解説

正解はc, d, eです

抗原提示とは

T細胞は、B細胞や抗体のように抗原をそのままの形で認識することはできず、他の細胞が抗原を分解してできたペプチド断片を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC:ヒトではHLA)分子の上に載せて示されたときにだけ認識できる。この「抗原を処理してMHC分子とともに細胞表面に示す」働きを抗原提示という。

2種類の抗原提示

・MHCクラスI経路:細胞内で合成された蛋白(ウイルス蛋白や腫瘍抗原など)の断片をクラスI分子に載せてCD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)に示す。MHCクラスIは赤血球を除くほぼすべての有核細胞に発現しているため、ほとんどの細胞がこの経路を持つ。 ・MHCクラスII経路:細胞外から取り込んだ抗原を分解し、その断片をクラスII分子に載せてCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)に示す。MHCクラスIIを恒常的に発現し、さらにT細胞の活性化に必要な共刺激分子(CD80/CD86など)を備える細胞は限られている。

設問の考え方

一般に「抗原提示能を有する細胞」「抗原提示細胞(APC)」と言うときは、後者のMHCクラスII経路でヘルパーT細胞を活性化できる細胞(プロフェッショナル抗原提示細胞)を指す。これに該当するのは樹状細胞、マクロファージ(単球を含む)、B細胞の3種類である。好中球と好酸球は顆粒球であり、通常の状態ではMHCクラスIIを発現せず、抗原提示細胞には含めない。

選択肢考察

  1. ×a.  好酸球

    好酸球は寄生虫感染やI型アレルギーで増加する顆粒球で、顆粒内の主要塩基性蛋白(MBP)などを放出して寄生虫を傷害するのが主な役割である。通常はMHCクラスII分子を恒常的には発現しておらず、ヘルパーT細胞を活性化する抗原提示細胞には含まれない。

  2. ×b.  好中球

    好中球は遊走能と貪食能に優れ、細菌を取り込んで殺菌する自然免疫の主役である。しかし取り込んだ抗原は殺菌・分解して処理するにとどまり、通常はMHCクラスII分子を発現しないため、ペプチドをヘルパーT細胞に提示する働きはもたない。「貪食能がある=抗原提示能がある」ではない点に注意する。

  3. ○c.  樹状細胞

    樹状細胞は最も強力な抗原提示細胞である。皮膚(表皮のLangerhans細胞)や粘膜などの末梢組織で抗原を取り込むと成熟し、リンパ管を通って所属リンパ節へ移動し、MHCクラスII分子と高いレベルの共刺激分子を発現して、まだ抗原に出会ったことのないナイーブT細胞を活性化する。獲得免疫の開始を担う唯一の本格的な細胞であり、取り込んだ外来抗原をMHCクラスIに載せてCD8陽性T細胞に提示する交差提示も得意とする。

  4. ○d.  マクロファージ

    マクロファージは血中の単球が組織に移行して分化した細胞で、微生物を貪食して分解し、そのペプチドをMHCクラスII分子に載せてCD4陽性T細胞に提示する。主に、すでに活性化されたエフェクターT細胞(特にTh1細胞)に抗原を示し、T細胞から産生されるインターフェロンγによってさらに活性化され、細胞内寄生菌(結核菌など)を殺菌する能力を高める。肝臓のKupffer細胞、肺胞マクロファージ、中枢神経のミクログリアなども同じ系統である。

  5. ○e.  Bリンパ球〈B細胞〉

    B細胞は細胞表面の抗体(B細胞受容体)で特定の抗原を捕らえて細胞内に取り込み、分解したペプチドをMHCクラスII分子に載せて提示する。同じ抗原を認識するヘルパーT細胞(濾胞ヘルパーT細胞)がこれを認識すると、CD40リガンドやサイトカインを介してB細胞を助け、B細胞は形質細胞への分化、抗体のクラススイッチ、親和性成熟を進める。このようにB細胞の抗原提示は、蛋白抗原に対する効率的な抗体産生に不可欠である。

抗原提示細胞の比較

・樹状細胞:MHCクラスII・共刺激分子の発現が最も高い。ナイーブT細胞の初回活性化(プライミング)を担う。 ・マクロファージ:貪食能が高い。主にエフェクターT細胞に抗原を示し、自身も活性化されて殺菌能が増す。 ・B細胞:B細胞受容体で特定の抗原を効率よく濃縮して取り込む。ヘルパーT細胞の補助を受けて抗体産生へと進む。

MHCの整理

・クラスI(HLA-A、-B、-C):ほぼすべての有核細胞に発現。内因性抗原をCD8陽性T細胞に提示。 ・クラスII(HLA-DR、-DQ、-DP):抗原提示細胞に発現。外因性抗原をCD4陽性T細胞に提示。 ・炎症時にはインターフェロンγの刺激で、血管内皮細胞や上皮細胞などにもクラスIIが誘導されることがある。好中球や好酸球も特殊な条件下でクラスIIを発現しうるとの報告はあるが、抗原提示細胞としては扱わない。

T細胞活性化の2シグナル

第1シグナル:T細胞受容体がMHC+ペプチドを認識する。 第2シグナル:抗原提示細胞のCD80/CD86がT細胞のCD28と結合する(共刺激)。 第2シグナルがないとT細胞は活性化されず、不応答(アナジー)となる。免疫チェックポイント分子のCTLA-4はCD80/CD86に結合してこの共刺激を抑える。

POINT

・抗原提示細胞(MHCクラスIIをもつ細胞)は「樹状細胞・マクロファージ(単球)・B細胞」の3つ。 ・最強の抗原提示細胞は樹状細胞で、ナイーブT細胞を活性化できる。 ・好中球は貪食能をもつが抗原提示細胞ではない。 ・MHCクラスI→CD8陽性T細胞、MHCクラスII→CD4陽性T細胞。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。