StudyMed医師国家試験

ショックの後こそ手を止めるな―AED直後は迷わず胸骨圧迫

第108回医師国家試験 F問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第108回 F問題 第8問

日本蘇生協議会ガイドライン2010に基づいて,自動体外式除細動器〈AED〉によるショック実施後に直ちに行うべきことはどれか。

  1. a.胸骨圧迫を行う。
  2. b.頸動脈を触知する。
  3. c.呼びかけて意識の確認を行う。
  4. d.安全のためにAEDの電源を切る。
  5. e.呼気吹き込みによる人工呼吸を行う。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は一次救命処置、BLSの流れの中で、AEDで電気ショックを行った直後に何をするかを問う問題だ。着眼点は、ショックを当てたら心臓はすぐに元通り動き出すのか、という点。ここを正しく理解していれば迷わず答えられるよ。
医学生医学生
ショックが成功したら脈が戻っているはずなので、まず頸動脈を触れて確認したくなります。
ドクタードクター
多くの人がそう考えるんだ。でも、それが落とし穴。心室細動や無脈性心室頻拍に対してショックが成功しても、心臓は電気的なリズムが整っただけで、機械的な収縮はまだ弱く、十分な血液を送り出せない時間帯があることが多いんだ。
医学生医学生
電気的には戻っていても、ポンプとしてはまだ働けていないということですか。
ドクタードクター
その通り。その間に胸骨圧迫を止めてしまうと、脳や冠動脈への血流が途絶えて、蘇生の可能性が下がってしまう。だからガイドラインでは、ショック後は脈拍も意識も呼吸もリズムも確認せず、ただちに胸骨圧迫からCPRを再開することになっている。正解は胸骨圧迫を行う、だ。
医学生医学生
OSCEの救急の練習でも、指導の先生に「ショックしたらすぐ押して」と何度も言われました。理由がやっとつながりました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。現在のBLSで最も重視されるのは、質の高い胸骨圧迫をできるだけ中断しないこと。胸骨圧迫をしている時間の割合を高く保つことが予後の改善につながるんだ。では、頸動脈の触知がなぜだめか、改めて説明できるかな。
医学生医学生
確認している間は圧迫が止まってしまうからですね。それに、脈を正確に触れるのは意外と難しいと聞きました。
ドクタードクター
そう。医療従事者でも脈拍の触知は時間がかかり、不正確になりやすい。だからショック直後に脈を確かめることはしない。次に、呼びかけて意識を確認する、はどうだろう。
医学生医学生
最初に反応を確認するのは手順にありますが、ショックの後にもう一度やる必要はなさそうです。
ドクタードクター
その理解で合っている。CPRは、傷病者が普段どおりの呼吸を始める、あるいは嫌がって手を払うような目的のある仕草が見られるまで、または救急隊に引き継ぐまで続ける。意識確認のために手を止めると、やはり灌流が途絶えてしまうんだ。
医学生医学生
AEDの電源を切るのは、感電を防ぐためには一見よさそうに思えます。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいね。AEDはショック後も約2分ごとに自動で心電図を再解析して、再びショックが必要かを判断してくれる。だから電源は入れたまま、パッドも貼ったまま、救急隊に引き継ぐまで外さない。安全面で気をつけるべきなのは、解析中とショックの瞬間に誰も傷病者に触れていないことを確認する点なんだ。
医学生医学生
人工呼吸はどうでしょう。呼吸が止まっているなら、まず酸素を送りたい気もします。
ドクタードクター
技術と意思があれば、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の比でCPRを行う。でもCPRはあくまで胸骨圧迫から始めるのが原則で、ショック直後に最初にやるのは人工呼吸ではない。人工呼吸ができない、あるいはためらわれる場合は胸骨圧迫だけのCPRでもかまわないよ。
医学生医学生
ショックの後もショック不要と判断された後も、とにかく胸骨圧迫に戻って、2分後の再解析まで続ける、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。周辺知識も押さえておこう。AEDがショックを指示するのは心室細動と無脈性心室頻拍で、心静止や無脈性電気活動はショックの適応ではなく、CPRを継続する。胸骨圧迫は胸骨の下半分を、深さ約5cmで6cmを超えないように、1分間に100〜120回のテンポで行い、毎回胸を元の高さまで戻すこと。
医学生医学生
救急科の実習で、普段どおりではない、しゃくりあげるような呼吸を見たことがあります。あれも呼吸ありと判断してはいけないんですよね。
ドクタードクター
そう、それは死戦期呼吸といって、心停止のサインだ。呼吸の判断に迷ったら心停止とみなして、すぐに胸骨圧迫を始める。最後に、この問題は2010年版のガイドラインに基づいているけれど、ショック後ただちに胸骨圧迫を再開する原則は2015年版、2020年版でも変わっていない。病院の内外を問わず、医師として目の前で人が倒れたときに迷わず動けるよう、体で覚えておこう。

まとめ

AEDによる電気ショックが成功しても、心臓はリズムが整っただけで十分な拍出を回復していないことが多く、この間に胸骨圧迫を止めると脳や冠動脈への血流が途絶えます。そのため、ショック直後は脈拍や意識、呼吸、リズムを確認せず、ただちに胸骨圧迫からCPRを再開し、約2分後のAEDによる再解析まで継続します。AEDは電源を入れたまま、パッドも貼ったままにし、安全面では解析中とショック時に誰も傷病者に触れていないことを確認します。CPRは胸骨圧迫から開始し、人工呼吸を行う場合は30:2で、救急隊への引き継ぎや普段どおりの呼吸・目的のある仕草が現れるまで続けます。「質の高い胸骨圧迫を中断しない」という原則はガイドライン改訂後も一貫しており、あらゆる医療者が身につけるべき救命の基本です。

解答・解説

正解はaです

本問は、一次救命処置(BLS:basic life support)のアルゴリズムにおいて、自動体外式除細動器(AED:automated external defibrillator)で電気ショックを行った直後に何をすべきかを問うている。

電気ショック直後の考え方

心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pulseless VT)に対して電気ショックが成功しても、心臓はすぐには十分な拍出を回復しないことが多い。ショック直後の心臓は、電気的には整ったリズムに戻っていても機械的な収縮が弱く、有効な循環が得られない時間帯がある。この間に胸骨圧迫を中断すると、脳や心筋(冠動脈)への血流が途絶え、蘇生率が低下する。 そのため、日本蘇生協議会(JRC)ガイドラインでは、ショック後は脈拍の確認や意識・呼吸の確認、心電図リズムの評価を行わず、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)を再開することとされている。その後、約2分ごとにAEDが自動的に心電図を再解析するので、それまでCPRを続ける。

胸骨圧迫中断を最小限にする原則

現在のBLSでは「質の高い胸骨圧迫をできるだけ中断しないこと」が最も重視される。胸骨圧迫が行われている時間の割合(胸骨圧迫比率)を高く保つことが予後の改善につながるため、ショック後の確認作業などで圧迫を止めることは避ける。この原則は、2010年版以降の2015年版・2020年版ガイドラインでも変わっていない。

選択肢考察

  1. ○a.  胸骨圧迫を行う。

    ショック直後は心拍が再開していても拍出が不十分なことが多く、脳・冠動脈の灌流を保つためにすぐ胸骨圧迫を再開する必要がある。脈やリズムを確かめるために手を止めず、ためらわずに圧迫からCPRを再開し、AEDによる次の解析(約2分後)まで継続する。これがガイドラインの定めるショック後の最初の行動である。

  2. ×b.  頸動脈を触知する。

    ショック後に脈拍を確認すると、その分だけ胸骨圧迫が中断される。また、脈拍の触知は医療従事者であっても判断に時間がかかり、不正確になりやすい。したがって、ショック直後に頸動脈を触れて循環の有無を確かめることはせず、まず胸骨圧迫を再開する。

  3. ×c.  呼びかけて意識の確認を行う。

    ショック直後に意識を確認する手順はない。CPRは、傷病者が普段どおりの呼吸をし始める、あるいは目的のある仕草(嫌がって手を払うなど)が見られるまで、または救急隊など二次救命処置を行う者に引き継ぐまで継続する。意識確認のために圧迫を止めると、脳・心筋の灌流が途絶える。

  4. ×d.  安全のためにAEDの電源を切る。

    AEDはショック後も約2分ごとに心電図を自動解析し、再び電気ショックが必要かどうかを判断する。そのため、電極パッドは貼ったまま、電源も入れたままにしておき、救急隊に引き継ぐまで外さない。安全上の配慮が必要なのは、心電図解析中とショック実施時に誰も傷病者に触れていないことを確認する点であり、電源を切ることではない。

  5. ×e.  呼気吹き込みによる人工呼吸を行う。

    人工呼吸の技術と意思がある救助者は、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の比でCPRを行う。しかし、CPRはまず胸骨圧迫から開始するのが原則であり、ショック直後に最初に行うのは人工呼吸ではなく胸骨圧迫である。人工呼吸ができない、またはためらわれる場合は胸骨圧迫のみのCPRでもよい。

市民によるBLSの流れ(JRCガイドラインに基づく概要)

1. 周囲の安全を確認し、傷病者の反応(肩を叩いて呼びかける)を確認する。 2. 反応がなければ大声で助けを呼び、119番通報とAEDの手配を依頼する。 3. 呼吸を観察する(10秒以内)。呼吸がない、または普段どおりの呼吸ではない(死戦期呼吸:しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸)場合、あるいは判断に迷う場合は、心停止とみなして直ちに胸骨圧迫を開始する。 4. 胸骨圧迫は、胸骨の下半分を、深さ約5cm(6cmを超えない)、1分間に100〜120回のテンポで行い、圧迫のたびに胸を元の高さまで戻す。中断は最小限にする。 5. 人工呼吸の技術と意思があれば、30:2で胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせる。 6. AEDが到着したら電源を入れ、パッドを貼る。AEDが心電図を解析し、ショックが必要と判断されれば、誰も傷病者に触れていないことを確認してショックボタンを押す。 7. ショック後、あるいはショック不要と判断された場合も、ただちに胸骨圧迫からCPRを再開する。 8. 約2分ごとにAEDが再解析を行う。救急隊に引き継ぐか、傷病者に普段どおりの呼吸や目的のある仕草が現れるまでCPRとAEDの手順を繰り返す。

ショック適応となる心電図波形

AEDが電気ショックを指示するのは、心室細動と無脈性心室頻拍である。心静止や無脈性電気活動(PEA)はショックの適応ではなく、CPRを継続する。

ガイドラインの改訂

JRC蘇生ガイドラインは約5年ごとに改訂されている(2010年版、2015年版、2020年版)。胸骨圧迫の中断を最小限にし、ショック後ただちに圧迫を再開するという原則は一貫して維持されている。

POINT

・AEDによる電気ショック後は、脈拍・意識・呼吸・リズムを確認せず、直ちに胸骨圧迫からCPRを再開する。 ・AEDは約2分ごとに自動で心電図を再解析するため、電源は入れたまま、パッドも貼ったままにする。 ・CPRは胸骨圧迫から開始し、人工呼吸を行う場合は30:2。 ・CPRの継続は、救急隊への引き継ぎ、または普段どおりの呼吸・目的のある仕草が出現するまで。 ・BLSの最重要原則は「質の高い胸骨圧迫を中断しない」ことである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。