StudyMed医師国家試験

「障害」から「生きること」へ―ICFが描く生活機能の3つの柱

第108回医師国家試験 E問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第20問

国際生活機能分類(2001年)における生活機能はどれか。

  1. a.advantage
  2. b.disability
  3. c.handicap
  4. d.impairment
  5. e.participation

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、WHOが2001年に採択した国際生活機能分類、ICFの基本用語を問う問題だ。ポイントは「生活機能」という言葉が何を指すのか、そして前身の分類との違いを理解しているかどうか。英単語が並んでいるけれど、言葉の持つニュアンスに注目すると解きやすくなるよ。
医学生医学生
ICFは公衆衛生の講義で出てきた気がしますが、impairment、disability、handicapの3段階の図のほうが印象に残っています。
ドクタードクター
それは前身の国際障害分類、ICIDHだね。1980年のモデルで、疾患から機能障害(impairment)、能力障害(disability)、社会的不利(handicap)へと一方向に進む、いわば「障害」というマイナス面を分類する枠組みだった。
医学生医学生
ということは、ICFではマイナス面ではなく、もっと中立的な見方に変わったということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。ICFでは、人が生きるうえでの働き全体を「生活機能(functioning)」と呼んで、心身機能・身体構造、活動、参加の3つのレベルで捉える。どれもプラスでもマイナスでもない中立的な言葉なんだ。
医学生医学生
選択肢の中で、その3つに当てはまるのはparticipation、つまり参加ですね。
ドクタードクター
正解。参加とは、仕事や家庭内での役割、地域活動、趣味など、生活や人生の場面へのかかわりを指す。では、ほかの選択肢がなぜ違うのかも確認しよう。impairmentはどうかな。
医学生医学生
impairmentは機能障害なので、心身機能・身体構造に近い気がして少し迷いました。
ドクタードクター
迷うポイントだね。生活機能に含まれるのは中立的な「心身機能・身体構造」のほうで、impairmentはそこに問題が生じた否定的な側面を表す語なんだ。ICFでも用語としては残っているけれど、生活機能そのものではない。
医学生医学生
disabilityもICFからはなくなった言葉だと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だよ。ICFでもdisabilityは使われていて、機能障害・活動制限・参加制約という3つの否定的側面をまとめた「障害」の総称として位置づけ直されている。ICIDHでの「能力障害」とは意味が変わったんだ。いずれにしても否定的な概念だから、生活機能には当たらない。
医学生医学生
ではhandicapは?社会的不利という言葉自体、ちょっと強い響きがあります。
ドクタードクター
いい感覚だね。handicapはICIDHの用語で、否定的な意味合いが強く、不利の原因を本人の側に帰するような構造だったこともあって、ICFでは使われなくなった。代わりに中立的な「参加」と、その問題である「参加制約」という言葉に置き換えられたんだ。
医学生医学生
advantageは「有利」なので、handicapの反対のように見えますが、ICFの用語ではないということですね。
ドクタードクター
そう。ICFの分類体系に有利という構成要素はない。生活機能は中立的な概念だから、マイナスの意味の言葉もプラスの意味の言葉も当てはまらない、と考えても正解にたどり着けるよ。
医学生医学生
整理すると、心身機能・身体構造と機能障害、活動と活動制限、参加と参加制約がペアで、否定的な側面の総称がdisability、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。もう一つ大事なのが背景因子。ICFでは、環境因子と個人因子が生活機能に影響するとされ、健康状態を含めた各要素が互いに影響し合う相互作用モデルになっている。環境因子には段差や福祉用具のような物的環境、家族などの人的環境、社会制度などが含まれるんだ。
医学生医学生
リハビリテーション科の実習で、脳卒中後の患者さんの退院前に家屋評価をしていたのを思い出しました。手すりをつけるのは環境因子への働きかけなんですね。
ドクタードクター
まさにそう。麻痺そのもの(機能障害)が残っていても、環境を整えれば活動や参加は広げられる。障害を個人の問題だけでなく、社会や環境との関係の中で捉えるという、医学モデルと社会モデルを統合した視点がICFの大きな意義だ。リハビリや介護の計画、多職種カンファレンスでの共通言語としても使われているから、臨床でも役に立つよ。

まとめ

国際生活機能分類(ICF、2001年、WHO)は、人が生きることの全体を中立的な「生活機能」として捉え、心身機能・身体構造、活動、参加の3つのレベルで構成します。それぞれに問題が生じた状態が機能障害(impairment)、活動制限、参加制約であり、その総称が障害(disability)です。前身の国際障害分類(ICIDH、1980年)で用いられた社会的不利(handicap)はICFでは使われず、参加と参加制約に置き換えられました。さらにICFは環境因子と個人因子を背景因子として明示し、各要素が相互に影響し合うモデルを示しています。障害を個人と環境の関係から捉えるこの視点は、リハビリテーションや多職種連携で患者の生活を支えるための共通言語として重要です。

解答・解説

正解はeです

国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)は、2001年に世界保健機関(WHO)が採択した、人の健康状態と生活の状況を記述するための分類である。前身の国際障害分類(ICIDH:International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps、1980年)が、病気から生じる「障害」というマイナス面を中心に分類していたのに対し、ICFは「生きることの全体像」を中立的な言葉でとらえる点が大きな特徴である。 ICFでは、人が生きるうえでの働き全体を「生活機能(functioning)」と呼び、次の3つのレベルで構成する。 ①心身機能・身体構造(body functions and structures) ②活動(activity) ③参加(participation) これらに問題が生じた状態が、それぞれ機能障害(impairment)、活動制限(activity limitation)、参加制約(participation restriction)であり、その総称が「障害(disability)」である。 したがって、選択肢のうち生活機能の構成要素にあたるのはparticipation(参加)である。「生活機能」はプラスでもマイナスでもない中立的な概念なので、障害や不利といった否定的な意味を持つ語や、有利という肯定的な意味を持つ語は当てはまらない、と考えても正解にたどり着ける。

選択肢考察

  1. ×a.  advantage

    advantage(有利)はICFの構成要素として定義された用語ではない。ICIDHにおけるhandicap(社会的不利=disadvantage)の対義語のように見えるが、ICFの分類体系には含まれず、生活機能にも該当しない。

  2. ×b.  disability

    ICIDH(1980年)では、disabilityは「能力障害」を指し、機能障害の結果として個人の能力が制限された状態を表していた。ICFでは、disabilityは機能障害・活動制限・参加制約を包括する「障害」の総称として位置づけ直されている。いずれにせよ生活機能に問題が生じた否定的側面を表す語であり、中立的な概念である生活機能そのものではない。

  3. ×c.  handicap

    handicap(社会的不利)はICIDH(1980年)の用語で、機能障害や能力障害の結果、社会の中で本人が被る不利益を指した。否定的な意味合いが強いことや、社会的不利の原因を本人側に帰するような構造であったことなどから、ICFでは用いられなくなり、中立的な「参加(participation)」とその問題である「参加制約」に置き換えられた。

  4. ×d.  impairment

    impairment(機能障害)は、心身機能または身体構造に生じた問題(著しい変異や喪失)を指す。ICIDHでは障害の第一のレベルとされ、ICFでも心身機能・身体構造の否定的側面を表す語として残っている。しかし、生活機能に含まれるのは中立的な「心身機能・身体構造」の方であり、impairmentは生活機能ではない。

  5. ○e.  participation

    participation(参加)は、ICFにおける生活機能の3要素(心身機能・身体構造、活動、参加)の一つである。仕事、家庭内の役割、地域活動、趣味など、生活・人生場面へのかかわりを指す。参加に問題が生じた状態は「参加制約(participation restriction)」と呼ばれ、ICIDHでの社会的不利(handicap)に相当する位置づけである。

ICIDH(1980年)とICF(2001年)の比較

・ICIDH:疾患・変調 → 機能障害(impairment) → 能力障害(disability) → 社会的不利(handicap)という、主に一方向の障害モデル。マイナス面の分類であった。 ・ICF:健康状態(変調・疾病)と、生活機能の3レベルが互いに影響し合う相互作用モデル。さらに背景因子として環境因子(物的環境、人的環境、社会制度など)と個人因子(年齢、性別、生活歴、価値観など)が加わる。

ICFの生活機能と障害の対応

・心身機能・身体構造(body functions and structures) ⇔ 機能障害(impairment) ・活動(activity:歩行、食事、入浴など個人が行う課題や行為) ⇔ 活動制限(activity limitation) ・参加(participation:社会的役割や生活場面へのかかわり) ⇔ 参加制約(participation restriction) ・上記の否定的側面の総称が障害(disability)

ICFの意義

生活機能を中立的に記述し、環境因子を明示したことで、障害を個人の問題だけでなく社会・環境との関係の中でとらえる視点(医学モデルと社会モデルの統合)が示された。リハビリテーションや介護の計画立案、多職種間の共通言語として用いられる。

POINT

・ICF(2001年、WHO)の生活機能=心身機能・身体構造、活動、参加の3つ。 ・それぞれの否定的側面は機能障害、活動制限、参加制約で、総称が障害(disability)。 ・背景因子は環境因子と個人因子。 ・handicap(社会的不利)はICIDH(1980年)の用語で、ICFでは用いられない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。