StudyMed医師国家試験

「傷は何日で治る?」は誰が答える?―薬剤師と医師の役割分担を見極める

第108回医師国家試験 C問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第17問

36歳の女性。転倒し右膝部挫創を生じたため救急外来を受診した。創部洗浄などの処置が行われ,抗菌薬と鎮痛薬とが処方された。医師と看護師による説明の後,処方薬を手渡す窓口で患者が薬剤師に質問をした。  患者の質問で薬剤師が医師に確認すべきなのはどれか。

  1. a.「副作用はありますか」
  2. b.「傷は何日で治りますか」
  3. c.「薬の名前を教えてください」
  4. d.「お茶で飲んでも良いですか」
  5. e.「薬は冷蔵庫で保管するのですか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、薬の受け渡し窓口で患者さんが薬剤師に投げかけた質問を、薬剤師が自分で答えるべきものと、医師に確認すべきものに振り分ける問題だ。考え方の軸は「その質問は薬の情報なのか、病状や経過についての医学的判断なのか」の一点だよ。
医学生医学生
薬剤師さんは何でも知っている印象があるので、全部その場で答えられそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
薬の知識については確かにそうだね。まず薬剤師の役割を確認しよう。薬剤師法第25条の2で、薬剤師は調剤した薬について、適正に使ってもらうために必要な情報を患者さんに提供し、指導することが義務づけられているんだ。
医学生医学生
具体的にはどんな情報ですか。
ドクタードクター
薬の名前、効能・効果、用法・用量、何で飲むかや飲み忘れたときの対応、副作用とその初期症状、併用薬や飲食物との相互作用、保管方法などだ。これらは薬剤師が自分の専門性で責任を持って答える内容だよ。
医学生医学生
そうすると、副作用、薬の名前、お茶で飲んでいいか、冷蔵庫で保管するか、はどれも薬の情報ですね。
ドクタードクター
その通り。たとえば副作用なら、抗菌薬では下痢や発疹などのアレルギー症状、鎮痛薬が非ステロイド性抗炎症薬なら胃腸障害などを、薬剤師が自ら説明できる。どんな症状が出たら飲むのをやめて受診すべきかも、薬剤情報提供の中心的な項目だ。
医学生医学生
薬の名前も、お薬手帳に書くためにも大事ですよね。臨床実習で、他院の処方内容がお薬手帳で一目で分かって助かった場面がありました。
ドクタードクター
いい経験だね。薬の名前は他院受診時の情報共有にも欠かせない基本情報だ。飲み方についても、一般には水かぬるま湯で飲むのが基本だけど、飲食物との相互作用の有無も含めて薬剤師が説明できる。保管方法も、室温か冷所か、遮光が必要かが薬ごとに決まっていて、これも薬剤師の領域だ。
医学生医学生
残るのは「傷は何日で治りますか」ですね。これは薬の質問じゃなくて、傷そのものの経過についてです。
ドクタードクター
そう、それが正解だ。治癒までの見通し、つまり予後の判断は、創の深さや汚染の程度、感染の有無を実際に診察して、診断と治療方針を決めた医師の仕事なんだ。診察していない薬剤師が推測で答えると、医師の説明と食い違って患者さんを混乱させたり、誤った期待を持たせたりするおそれがある。
医学生医学生
なんとなく「2週間くらいですかね」と答えてしまいそうですが、それが危ないんですね。
ドクタードクター
善意でもね。だから薬剤師は医師に確認するか、医師から改めて説明してもらえるよう橋渡しするのが適切な対応になる。これは薬剤師に限らず、看護師や他の職種でも同じ考え方だよ。
医学生医学生
CBTの勉強で、薬剤師が医師に確認する場面として「疑義照会」も習いました。これとは別物ですか。
ドクタードクター
関連はあるけど別の仕組みだね。疑義照会は薬剤師法第24条に基づくもので、処方箋に用量の誤りや禁忌、重複投与などの疑わしい点があれば、処方医に問い合わせて疑いを解消してからでないと調剤してはいけない、というルールだ。今回は処方の疑問ではなく、患者さんからの病状の質問をどう扱うかという話になる。
医学生医学生
薬のことは薬剤師、病状や予後は医師、処方の疑問は疑義照会、と整理できますね。
ドクタードクター
その整理で十分だ。臨床での注意点として、他職種が患者さんから病状や予後について聞かれたら、自分の判断で答えず医師に伝えて、医師から説明されるよう調整することが大切だ。そして医師の側も、そういう情報が届いたら面倒がらずに説明を補う。患者さんが窓口で質問したということは、説明が十分に伝わっていなかったサインかもしれないからね。
医学生医学生
医師になったら、他職種からの「こんな質問がありました」という連絡を、説明を見直すきっかけにしたいと思います。

まとめ

チーム医療では職種ごとに担う役割があり、薬剤師は薬剤師法第25条の2に基づき、薬の名前、効能、用法・用量、飲み方、副作用、相互作用、保管方法など薬の適正使用に必要な情報を自ら患者に提供します。一方、傷の治癒までの期間のような病状や予後の判断は、診察して診断・治療方針を決めた医師の業務であり、薬剤師が推測で答えると医師の説明との食い違いや患者の混乱を招くおそれがあるため、医師に確認・橋渡しするのが適切です。また処方内容に疑わしい点があるときは、薬剤師法第24条に基づく疑義照会で処方医に問い合わせます。質問を「薬の情報」か「医学的判断」かで振り分ける視点は、多職種が互いの専門性を尊重しながら連携するための基本です。

解答・解説

正解はbです

場面の整理

救急外来で右膝の挫創(打撲などの鈍的外力で皮膚が裂けた傷)の処置を受けた36歳女性が、抗菌薬と鎮痛薬を受け取る窓口で薬剤師に質問している場面である。医師・看護師からの説明はすでに終わっている。

考え方

チーム医療では職種ごとに担う役割がある。薬剤師は調剤した薬剤について、適正に使用してもらうために必要な情報を患者へ提供する義務を負う(薬剤師法第25条の2)。具体的には、薬剤名、効能・効果、用法・用量、飲み方(何で飲むか、飲み忘れ時の対応など)、副作用とその初期症状、相互作用、保管方法などである。これらは薬剤師が自らの専門性で責任をもって答えるべき内容である。 一方、傷病そのものの状態評価や、治癒までの見通し(予後)の判断は、患者を診察し診断・治療方針を決めた医師の業務である。薬剤師が推測で答えると、医師の説明と食い違って患者を混乱させたり、誤った期待を抱かせたりするおそれがある。 したがって、各質問が「薬に関する情報」なのか「病状・経過に関する医学的判断」なのかで振り分ければよい。後者に当たる質問は、薬剤師が医師に確認(あるいは医師から説明してもらうよう調整)すべきものとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  「副作用はありますか」

    副作用の内容や、どんな症状が出たら服用を中止して受診すべきかは、薬剤情報提供の中心的な項目である。抗菌薬であれば下痢や発疹などのアレルギー症状、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬など)であれば胃腸障害などを、薬剤師が自ら説明できる。医師に確認する必要はない。

  2. ○b.  「傷は何日で治りますか」

    薬ではなく傷の治癒経過(予後)に関する質問である。創の深さや汚染の程度、感染の有無などを診察したうえで見通しを判断するのは医師の役割であり、診察していない薬剤師が独自に答えるべきではない。医師に確認するか、医師から改めて説明を受けられるよう橋渡しするのが適切な対応である。

  3. ×c.  「薬の名前を教えてください」

    処方された薬剤の正確な名称は、薬剤師が調剤した薬について当然伝えるべき基本情報である。お薬手帳への記載や、他院受診時の情報共有のためにも重要であり、薬剤師がその場で答えてよい。

  4. ×d.  「お茶で飲んでも良いですか」

    何で服用するかは用法(服薬方法)に関する質問であり、薬剤師の専門領域である。一般には水またはぬるま湯での服用が基本だが、飲食物との相互作用の有無なども含めて薬剤師が説明できる。

  5. ×e.  「薬は冷蔵庫で保管するのですか」

    保管方法(室温か冷所か、遮光の要否など)は薬剤ごとに定められており、薬剤師が提供すべき情報に含まれる。医師に確認する必要はない。

薬剤師の情報提供義務

薬剤師法第25条の2は、薬剤師が販売・授与の目的で調剤したとき、患者またはその看護に当たる者に対し、調剤した薬剤の適正な使用に必要な情報を提供し、必要な薬学的知見に基づく指導を行うことを義務づけている。提供する内容の例として、薬剤名、効能・効果、用法・用量、服用上の注意(飲み方、飲み忘れ時の対応)、副作用、相互作用(併用薬・飲食物)、保管方法がある。

疑義照会

薬剤師法第24条により、処方箋中に疑わしい点(用量の誤り、禁忌、重複投与など)があるときは、薬剤師は処方医に問い合わせ、疑いを解消した後でなければ調剤してはならない。これも薬剤師が医師に確認する代表的な場面である。

チーム医療における役割分担

診断、治療方針の決定、病状や予後の説明は医師の業務である。他職種が患者から病状・予後に関する質問を受けた場合は、自分の判断で答えず医師へ伝え、医師から説明が行われるよう調整する。こうした情報共有(フィードバック)はチーム医療の一員としての重要な役割である。

POINT

・薬の名称、副作用、飲み方、保管方法など「薬の適正使用に関する情報」は薬剤師が自ら説明する(薬剤師法第25条の2)。 ・病状、治癒までの期間などの予後に関する判断は医師の業務であり、薬剤師は医師に確認・橋渡しする。 ・処方内容に疑問があれば疑義照会(薬剤師法第24条)を行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。