StudyMed医師国家試験

1歳半健診の「当たり前」を数字で確かめる―Kaup指数と発達の物差し

第108回医師国家試験 B問題 第42問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第42問

1歳6か月の男児。健康診査のため来院した。2,960 gで出生。精神・運動発達に異常を認めない。身長74 cm,体重11 kg。顔色は良好である。胸部と腹部とに異常を認めない。予防接種はBCG,三種混合一期および初回MRワクチンを終了している。  この男児で当てはまるのはどれか。

  1. a.丸が書ける。
  2. b.Kaup指数は20である。
  3. c.ひとりでパンツを脱ぐ。
  4. d.乳歯が生えそろっている。
  5. e.百日咳ワクチンは未接種である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は1歳6か月児健診の場面から、この月齢で「当てはまること」を選ぶ問題だ。描画、着替え、歯、予防接種、そして体格指数と、発達の物差しを幅広く問われている。ひとつずつ年齢の目安と照らし合わせていこう。
医学生医学生
病気を探す問題ではなく、正常の目安を知っているかを問う問題なんですね。
ドクタードクター
その通り。発達に異常はなく、胸腹部も問題なしだから、健康な1歳半の子と考えてよい。まず、計算で答えが出る選択肢から片付けよう。Kaup指数の式は覚えているかな。
医学生医学生
体重(kg)を身長(m)の2乗で割る、成人のBMIと同じ式ですよね。小児科の講義で、乳幼児はKaup、学童はRohrerと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。この子だと11を0.74の2乗、つまり約0.55で割ることになる。
医学生医学生
11÷0.5476で…約20.1です。だから「Kaup指数は20」は当てはまりますね。
ドクタードクター
正解。ここで注意したいのは、乳幼児のKaup指数の判定基準は成人のBMIと違うことだ。一般におよそ15〜18程度が標準とされ、20前後以上はやや太りぎみと判定されることが多い。この子は体重は平均的だけれど、身長が1歳半としてはやや小さめなので、指数が高めに出ているんだ。
医学生医学生
BMI20なら成人では普通なので、つい同じ感覚で見てしまいそうです。
ドクタードクター
そこは混同しやすいポイントだね。ただ、今回は発達正常とされているので病的な低身長として扱う必要はない。では次に、丸が書けるかどうか。
医学生医学生
1歳半だとクレヨンでぐるぐるなぐり書きをするくらいで、きちんとした丸はまだ無理だと思います。
ドクタードクター
そうだね。なぐり書きが1歳台、縦線の模倣が2歳、丸が3歳、十字が4歳、三角が5歳というのが目安。閉じた円を描くには、手先の協調と形の認識の両方が必要なんだ。ひとりでパンツを脱ぐのはどうだろう。
医学生医学生
臨床実習で小児科を回ったとき、2歳の子がお母さんに脱がせてもらっていた気がします。
ドクタードクター
実際の目安としては、ひとりで脱げるのが2歳頃、はけるのが3歳頃、ボタンかけが4歳頃だ。1歳半では手足を通すなど着替えに協力する程度だから当てはまらない。昼間のおむつが外れる2〜3歳頃とも重なるね。
医学生医学生
乳歯が生えそろうのは3歳近くですよね。
ドクタードクター
その通り。生後6〜8か月頃に下の前歯から生え始め、2歳半〜3歳頃に20本がそろう。1歳半はちょうど奥歯や犬歯が生え始める時期だから、まだそろってはいない。
医学生医学生
百日咳ワクチンは、三種混合のPがpertussisなので、もう接種済みですね。
ドクタードクター
正解。三種混合はジフテリア・百日咳・破傷風。現在はこれに不活化ポリオを加えた四種混合、さらにHibを加えた五種混合が定期接種で使われている。名前が変わっても、百日咳の成分が含まれていることは押さえておこう。
医学生医学生
数字の計算と、年齢ごとの発達の目安を正確に覚えておくことがカギなんですね。
ドクタードクター
そう。最後に、1歳6か月児健診で実際に見るべきポイントも整理しておこう。ひとり歩き、意味のある単語をいくつか話すこと、指さしで要求や興味を伝えることなどが大切だ。1歳6か月で歩けない場合は精査の対象になるし、有意語や指さしが出ていないことは、難聴や自閉スペクトラム症を早く見つける手がかりにもなる。
医学生医学生
健診は「異常なし」を確認するだけでなく、早期発見の場でもあるんですね。CBTでは暗記項目でしたが、意味がわかりました。
ドクタードクター
その意識が大事だね。母子保健法に基づいて市町村が行う健診だから、地域で子どもを見守る仕組みの一部として理解しておこう。

まとめ

1歳6か月児の評価では、発達の目安と体格指数を正確に把握することが求められます。Kaup指数は体重(kg)÷身長(m)²で求め、本例では約20となりますが、乳幼児では15〜18程度が標準とされ、成人のBMIと判定基準が異なる点に注意が必要です。丸が描けるのは3歳頃、ひとりでパンツを脱ぐのは2歳頃、乳歯が20本そろうのは2歳半〜3歳頃であり、三種混合には百日咳ワクチンが含まれます。1歳6か月児健診ではひとり歩き・有意語・指さしなどを確認し、難聴や自閉スペクトラム症の早期発見にもつながります。年齢ごとの「正常の物差し」を持つことが、小児の異常に気づくための出発点になります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・出生体重2,960 g:2,500 g以上4,000 g未満であり、正常出生体重児である。 ・精神・運動発達に異常なし、顔色良好、胸腹部に異常なし:診察上の異常はない。 ・身長74 cm、体重11 kg:1歳6か月の男児の平均はおよそ身長80 cm、体重10.5〜11 kgであり、体重は平均的だが身長はやや低め(小柄)である。出生時の身長は約50 cm、1歳で約1.5倍(約75 cm)となるのが目安で、それと比べても伸びは緩やかといえる。ただし、問題文では発達に異常がないとされており、本問では病的な低身長として扱う必要はない。 ・予防接種:BCG、三種混合(DPT)1期、MRワクチン1期が終了しており、この月齢で標準的に済ませておくべき接種は行われている。 以上より、本児は健康な1歳6か月児と判断でき、1歳6か月児健康診査(母子保健法に基づき市町村が実施)の対象である。

設問の考え方

選択肢は、発達の目安(描画、衣服の着脱)、体格指数の計算、歯の萌出、予防接種の内容を問うている。1歳6か月の時点で達成されている事柄かどうかを、標準的な発達の時期と照らし合わせて判断する。 Kaup指数は体重(kg)÷身長(m)の2乗で求める。本児では11÷(0.74×0.74)=11÷0.5476≒20.1となり、「Kaup指数は20である」は本児に当てはまる。

選択肢考察

  1. ×a.  丸が書ける。

    手本を見て丸(閉じた円)を描けるようになるのは3歳頃である。1歳6か月頃はクレヨンなどでなぐり書きをする段階であり、2歳頃に縦線を真似て描けるようになり、3歳で丸、4歳で十字(四角)、5歳で三角と進んでいくのが目安である。

  2. ○b.  Kaup指数は20である。

    Kaup指数は乳幼児の栄養状態(体格)の評価に用いる指標で、体重(kg)÷身長(m)の2乗(体重(g)÷身長(cm)の2乗×10でも同じ)で計算する。本児では11÷0.74の2乗=11÷0.5476≒20.1となり、約20である。計算式は成人のBMIと同じであるが、乳幼児では評価基準が異なり、およそ15〜18程度が標準、20前後以上は太りすぎの傾向と判定されることが多い。本児は体重が平均的なのに対し身長がやや低いため、指数が高めに出ている。

  3. ×c.  ひとりでパンツを脱ぐ。

    衣服の着脱が自分でできるようになるのは2歳以降であり、ひとりでパンツを脱げるのは2歳頃、はけるのは3歳頃が目安である。昼間のおむつが外れる時期(2〜3歳頃)とも関連する。1歳6か月では、着替えの際に手足を通すなど協力する程度にとどまる。

  4. ×d.  乳歯が生えそろっている。

    乳歯は生後6〜8か月頃に下顎の乳中切歯から生え始め、2歳半〜3歳頃に計20本が生えそろう。1歳6か月では第一乳臼歯や乳犬歯が生え始める時期であり、まだ生えそろっていない。

  5. ×e.  百日咳ワクチンは未接種である。

    三種混合ワクチン(DPT)はジフテリア(D)、百日咳(P:pertussis)、破傷風(T)の3種を含むワクチンである。本児は三種混合1期を終了しているので、百日咳ワクチンはすでに接種済みである。なお現在の定期接種では、DPTに不活化ポリオ(IPV)を加えた四種混合ワクチン(2012年導入)、さらにHibを加えた五種混合ワクチン(2024年導入)が用いられている。

1歳6か月児の発達の目安

・粗大運動:ひとり歩きができる(多くは1歳3か月頃までに獲得し、1歳6か月で歩けなければ精査の対象) ・微細運動:積み木を2〜3個積む、クレヨンでなぐり書きをする、スプーンを使おうとする ・言語:意味のある単語(「ママ」「ワンワン」など)をいくつか話す ・社会性:指さしで要求や興味を伝える、簡単な指示に従う 1歳6か月児健康診査では、これらの運動・言語・社会性の発達、身体発育、歯科健診、予防接種状況などを確認する。言語の遅れや指さしがないなどの所見は、難聴や自閉スペクトラム症を早期発見する手がかりとなる。

体格の目安

・身長:出生時約50 cm、1歳で約1.5倍(約75 cm)、4歳で約2倍(約100 cm) ・体重:出生時約3 kg、3か月で約2倍、1歳で約3倍(約9 kg)、4歳頃で約5倍 ・体格指数:乳幼児はKaup指数(体重kg÷身長m²)、学童はRohrer指数(体重kg÷身長cm³×10⁷)、成人はBMIで評価するのが一般的である。

描画・生活習慣の発達

・描画:1歳台なぐり書き、2歳縦線、3歳丸、4歳十字、5歳三角 ・衣服の着脱:2歳頃に脱ぐ、3歳頃にはく、4歳頃にボタンをかける ・排泄:2〜3歳で昼間のおむつが外れる

乳歯

生後6〜8か月で萌出開始、2歳半〜3歳頃に20本が生えそろう。永久歯への交換は6歳頃(第一大臼歯の萌出、下顎中切歯の交換)から始まる。

この月齢までの主な定期予防接種

BCG(1歳未満、標準的には生後5〜8か月)、DPTを含む混合ワクチンの1期初回3回と追加1回、MRワクチン1期(1歳時)、水痘ワクチン、Hib、小児用肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスなどがある。

POINT

・Kaup指数=体重(kg)÷身長(m)²。本児は11÷0.74²≒20 ・丸が描けるのは3歳、ひとりでパンツを脱ぐのは2歳頃 ・乳歯は6〜8か月で生え始め、2歳半〜3歳で20本そろう ・三種混合(DPT)には百日咳ワクチンが含まれる ・1歳6か月児健診ではひとり歩き、有意語、指さしなどを確認する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。