内診の指はどこまで届く?―岬角に触れないことが「正常」の証
第108回医師国家試験 B問題 第22問
国試問題にチャレンジ
正常に経過している分娩第1期の内診で触れないのはどれか。
- a.岬角
- b.尾骨
- c.坐骨棘
- d.小泉門
- e.矢状縫合
対話形式の解説
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ドクターまとめ
分娩第1期は分娩開始から子宮口全開大までの時期で、内診では子宮口の開大度や児頭の下降度、回旋の状態を評価します。内診指が届くのは骨盤下部の構造と胎児の先進部で、母体側では下降度の基準点となる坐骨棘や尾骨、胎児側では第1回旋の屈曲によって先進する小泉門と、その向きで内回旋の進行を示す矢状縫合を触れます。一方、岬角は骨盤入口部の後縁にある高い位置の構造で、正常骨盤では対角結合線が約12.5〜13cmあるうえ児頭が入口部を占めるため、正常経過では触れません。岬角を触れる場合は狭骨盤を疑う所見となり、児頭骨盤不均衡の評価につながります。内診で触れる構造を骨盤の解剖と分娩機転に結びつけて理解することは、分娩進行の評価や異常の早期発見の基本となります。
解答・解説
正解はaです
【テーマ】分娩第1期の内診で、指先が届く母体骨盤の構造と児頭の構造を問う一般問題である。
分娩第1期とは
分娩開始(陣痛周期がおおむね10分以内、または1時間に6回以上の規則的な陣痛の発来)から子宮口全開大(約10cm)までの時期をいう。この時期、内診では子宮口の開大度、頸管の展退・硬さ、児頭の下降度(ステーション)、児頭の回旋の状態(縫合・泉門の位置)、卵膜の状態などを評価する。
考え方
内診は腟内に示指と中指を挿入して行う。指が届くのは骨盤の下半分(骨盤腔〜出口部)の構造と、下降してきた胎児の先進部である。 ・母体側:坐骨棘(児頭下降度の基準点)、仙骨下部から尾骨、恥骨結合の後面など ・胎児側:正常経過(前方後頭位)では第1回旋で児頭が屈曲し、小泉門が先進部となる。そのため小泉門とそこから延びる矢状縫合を触れ、その向きから回旋の進み具合を判定できる。 一方、岬角は仙骨上端の前方への突出で、骨盤入口部の後縁にあたる高い位置にある。正常骨盤では指が届きにくいうえ、分娩中は下降した児頭が骨盤入口部を占めているため、正常に経過している分娩第1期の内診では触れない。逆に、岬角を触れる場合は、骨盤が狭い(狭骨盤)可能性を考える。
選択肢考察
- ○a. 岬角
岬角は第5腰椎と仙骨の境界にある仙骨上端前縁の突出部で、骨盤入口部の後方の縁を形成する。正常骨盤では、岬角から恥骨結合下縁までの距離(対角結合線)が約12.5〜13cmあり、内診指は通常届かない。さらに分娩第1期で児頭が骨盤入口に進入していれば、児頭がその間を占めるので触れることはない。したがって、正常に経過している分娩第1期の内診では触れない構造である。岬角を触れる場合は、対角結合線が短い=狭骨盤を疑う所見となる。
- ×b. 尾骨
尾骨は骨盤の最下部後方にあり、内診指を後方(仙骨側)に向けると容易に触れる。骨盤出口部の後方の境界であり、分娩経過中に触知できる構造である。
- ×c. 坐骨棘
坐骨棘は骨盤側壁から内側に突出しており、内診で左右に触れることができる。児頭の下降度(ステーション)は、児頭先進部と両側坐骨棘を結ぶ線との位置関係で表す(坐骨棘の高さを0とし、上方を−、下方を+としてcm単位で表現する)ため、内診で必ず確認する重要な目印である。
- ×d. 小泉門
正常分娩では、骨盤入口部に児頭が進入する際に第1回旋(屈曲)が起こり、児の顎が胸に近づいて後頭部が先進する。このため後頭部にある小泉門(三角形、3本の縫合が集まる)が先進部となり、内診で触れることができる。小泉門の位置により胎向や回旋の進行を判断する。
- ×e. 矢状縫合
矢状縫合は左右の頭頂骨の間を前後に走る縫合で、小泉門と大泉門をつないでいる。後頭位で小泉門が先進していれば、そこから延びる矢状縫合も触れる。骨盤入口部では矢状縫合は横径に一致し、第2回旋(内回旋)が進むにつれて斜径を経て縦径(前後方向)に一致していく。その走行の向きで内回旋の進行を評価できる。
分娩の時期区分
・分娩第1期(開口期):分娩開始〜子宮口全開大 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大〜胎児娩出 ・分娩第3期(後産期):胎児娩出〜胎盤娩出
胎児の回旋(前方後頭位の正常経過)
・第1回旋(屈曲):骨盤入口部で児頭が屈曲し、小泉門が先進する。矢状縫合は骨盤入口の横径に一致する。 ・第2回旋(内回旋):骨盤腔で後頭が母体前方(恥骨側)へ回り、矢状縫合は斜径を経て縦径に一致する。第1胎向(児背が母体左側)では小泉門は母体の左側から前方へ回る。 ・第3回旋(伸展):恥骨結合下縁を支点に児頭が伸展して娩出される。 ・第4回旋(外回旋):娩出後、児頭が肩の回旋に伴って母体の側方を向く。
骨盤の主な計測値(目安)
・産科的真結合線(岬角〜恥骨結合後面の最短距離):約11cm(9.5cm未満で狭骨盤) ・対角結合線(岬角〜恥骨結合下縁):約12.5〜13cm。内診で岬角を触れれば短縮を疑う。
内診で評価する項目(Bishopスコアなど)
子宮口開大度、頸管展退度、児頭の下降度(ステーション)、頸部の硬さ、子宮口の位置。分娩の進行度や頸管の熟化の評価に用いる。
POINT
・分娩第1期=分娩開始(陣痛周期10分以内または1時間6回以上)から子宮口全開大まで。 ・内診で触れる母体構造:坐骨棘(下降度の基準)、尾骨など骨盤下部。 ・正常では第1回旋で屈曲し小泉門が先進→小泉門と矢状縫合を触れる。 ・岬角は骨盤入口部の後縁で、正常骨盤・正常経過では触れない。触れれば狭骨盤を疑う。
