StudyMed医師国家試験

泡立つおりものはカンジダじゃない―腟炎3大原因を帯下で見分ける

第108回医師国家試験 A問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第108回 A問題 第6問

外陰腟カンジダ症で誤っているのはどれか。

  1. a.瘙痒を生じる。
  2. b.帯下は泡沫状である。
  3. c.抗菌薬服用後に多い。
  4. d.原因菌は消化管に常在している。
  5. e.腟分泌物の鏡検で菌糸が確認できる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は外陰腟カンジダ症の基本的な特徴を問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、症状・誘因・原因菌・検査所見・帯下の性状をひとつずつ確認していこう。特に、腟炎の3大原因であるカンジダ、トリコモナス、細菌性腟症の違いを整理できているかがカギになるよ。
医学生医学生
産婦人科の講義で、腟炎は帯下の性状で見分けると習いました。でも正直、どれがどれだったか混ざってしまっています。
ドクタードクター
混ざりやすいところだから、ここで整理しよう。まずカンジダの帯下は白色で粘稠、酒粕状やカッテージチーズ状と表現されるポロポロした塊で、腟壁に白い苔のように付着する。においは通常強くない。
医学生医学生
じゃあ泡沫状というのは、トリコモナスの特徴でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。泡沫状で黄緑色、悪臭を伴う帯下はトリコモナス腟炎の典型だ。だから「帯下は泡沫状である」という記述がカンジダについては誤りで、これが正解になる。ちなみに細菌性腟症は灰白色で均一な薄い帯下で、魚が腐ったようなにおいが特徴だよ。
医学生医学生
白い塊がカンジダ、泡が黄緑のトリコモナス、魚臭が細菌性腟症ですね。残りの記述は全部正しいということですか。
ドクタードクター
そう。順に確認しよう。まず瘙痒。外陰部の強いかゆみはカンジダの最も代表的な症状で、外陰の発赤や腫脹、灼熱感、排尿時痛や性交痛を伴うこともある。
医学生医学生
臨床実習で産婦人科外来についたとき、「かゆくて眠れない」と受診された方がいて、診断はカンジダでした。
ドクタードクター
まさに典型的な訴えだね。次は抗菌薬との関係。どうして抗菌薬を飲んだ後に起こりやすいと思う?
医学生医学生
抗菌薬で細菌が減って、真菌のカンジダだけ生き残るからでしょうか。微生物学で習った菌交代現象ですね。
ドクタードクター
いいね。もう少し具体的に言うと、腟では乳酸桿菌、いわゆるデーデルライン桿菌が上皮のグリコーゲンから乳酸をつくり、腟内を酸性に保って他の微生物の増殖を抑えている。これが腟の自浄作用だ。抗菌薬でこの乳酸桿菌が減ると防御が弱まり、抗菌薬の効かないカンジダが相対的に増えるわけだ。
医学生医学生
原因菌が消化管に常在しているというのも正しいんですよね。外から感染するものだと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすい点だね。カンジダは口腔から腸管までの消化管、皮膚、腟に少数存在する常在菌で、外陰腟カンジダ症の多くは誘因をきっかけに常在菌が増える内因性感染なんだ。性交で伝播することもあるけれど、基本的には性感染症としては扱わず、無症状のパートナーの治療は通常必要ない。この点はパートナー同時治療が必要なトリコモナスと対照的だよ。
医学生医学生
最後の鏡検で菌糸が見えるという記述は、検査実習でKOH法をやったのを思い出しました。
ドクタードクター
そう、腟分泌物を顕微鏡で見ると、仮性菌糸や芽を出した分芽胞子が確認でき、診断の決め手になる。KOHを加えると上皮細胞が溶けて菌糸が見やすくなる。鏡検で見つからない場合や再発例では培養で菌種を確かめることもあるよ。
医学生医学生
つまり、症状・誘因・常在性・鏡検所見はすべてカンジダに当てはまって、帯下の性状だけがトリコモナスのものだった、という整理ですね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。発展として、誘因と治療も押さえておこう。抗菌薬のほか、妊娠、糖尿病、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬、HIV感染などの免疫低下、エストロゲン製剤、局所の蒸れも誘因になる。妊娠やエストロゲンでは腟上皮のグリコーゲンが増えて、カンジダの栄養源になるんだ。
医学生医学生
再発を繰り返す人では、糖尿病が隠れていないか調べたほうがよさそうですね。
ドクタードクター
その通り。治療はアゾール系抗真菌薬の腟錠と外陰への軟膏・クリームが基本で、経口フルコナゾールの単回投与も選択肢になる。ただ妊娠中は腟錠や外用が基本だ。また、C. glabrataのようにアゾール系が効きにくい菌種もあるので、難治例では培養による菌種同定が役立つ。そして帯下の性状は典型的でないこともあるから、見た目だけで決めつけず鏡検で確認する姿勢が大切だよ。

まとめ

外陰腟カンジダ症は、消化管・皮膚・腟に常在するカンジダ属が、抗菌薬服用や妊娠、糖尿病、ステロイド使用などを誘因に増殖して起こる内因性感染です。強い外陰瘙痒と、白色で酒粕状・カッテージチーズ状の帯下が典型で、腟分泌物の鏡検で仮性菌糸や分芽胞子を確認して診断します。泡沫状で黄緑色・悪臭の帯下はトリコモナス腟炎、灰白色で魚臭のある帯下は細菌性腟症の特徴であり、帯下の性状は腟炎3大原因の鑑別の基本となります。治療はアゾール系抗真菌薬の腟錠と外用薬が中心で、パートナー治療が基本的に不要な点もトリコモナスとの違いです。腟の自浄作用と菌交代現象という基礎医学の理解が、日常診療でよく出会う腟炎の診断と再発予防に直結します。

解答・解説

正解はbです

外陰腟カンジダ症は、真菌(かび)の一種であるカンジダ属(大部分はCandida albicans、ほかにC. glabrataなど)が外陰や腟で異常に増えて炎症を起こす疾患である。女性の多くが一生のうちに一度は経験するとされる、ごくありふれた感染症である。 カンジダは健常人の皮膚、口腔、消化管、腟などに少数存在している常在菌であり、外から新たに感染するというより、体の防御バランスが崩れたときに増殖して発症する「内因性感染」が中心である。腟では乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)がグリコーゲンを分解して乳酸をつくり、腟内を酸性(pH 4.5以下)に保って他の微生物の過剰増殖を抑えている(腟の自浄作用)。抗菌薬の服用でこの乳酸桿菌が減ったり、妊娠やエストロゲン製剤で腟上皮のグリコーゲンが増えたり、糖尿病や副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬の使用で宿主の防御が弱まったりすると発症しやすくなる。 本問は「誤っているもの」を選ぶ形式である。腟炎の3大原因(カンジダ、トリコモナス、細菌性腟症)について、帯下(おりもの)の性状・症状・検査所見の違いを整理しておけば判断できる。特に帯下の性状は頻出の鑑別点であり、カンジダでは白色で粘稠な酒粕状・カッテージチーズ状、トリコモナスでは黄緑色で泡沫状、細菌性腟症では灰白色で均一な魚臭のある帯下が典型である。

選択肢考察

  1. ×a.  瘙痒を生じる。

    正しい記述である。外陰部の強いかゆみ(瘙痒感)は外陰腟カンジダ症の最も代表的な症状であり、帯下の増加とともに主訴となることが多い。外陰部の発赤・腫脹を伴い、ひっかき傷や、灼熱感、排尿時痛、性交痛を訴えることもある。

  2. ○b.  帯下は泡沫状である。

    誤った記述であり、これが正解である。外陰腟カンジダ症の帯下は白色で粘稠、酒粕状・ヨーグルト状・カッテージチーズ状と表現されるポロポロした塊状のものが典型で、腟壁に白い苔状に付着する。においは通常強くない。泡沫状の帯下はトリコモナス腟炎(原虫Trichomonas vaginalisによる性感染症)の特徴で、黄緑色で悪臭を伴うことが多い。なお、実際の症例では帯下の性状が典型的でないこともあるため、診断は鏡検などで確認する。

  3. ×c.  抗菌薬服用後に多い。

    正しい記述である。抗菌薬(特に広域スペクトラムのもの)を服用すると、腟内の乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)も抑えられる。すると乳酸産生が減って腟の酸性環境による防御が弱まり、抗菌薬が効かない真菌であるカンジダが相対的に増殖しやすくなる(菌交代現象)。抗菌薬服用のほか、妊娠、糖尿病、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の使用、HIV感染などの免疫低下、通気性の悪い下着なども誘因となる。

  4. ×d.  原因菌は消化管に常在している。

    正しい記述である。カンジダは口腔から腸管に至る消化管、皮膚、腟などに常在する真菌であり、健常時には他の常在菌や宿主の免疫によって少数に抑えられている。このため外陰腟カンジダ症の多くは、誘因をきっかけに常在菌が増殖して起こる内因性感染である。性交で伝播することもあるが、基本的に性感染症としては扱わず、症状のないパートナーの治療は通常必要ない。

  5. ×e.  腟分泌物の鏡検で菌糸が確認できる。

    正しい記述である。腟分泌物を採取して顕微鏡で観察すると、カンジダの仮性菌糸(細長く連なった菌体)や、芽を出した酵母様の菌体(分芽胞子)が確認でき、診断の決め手となる。生理食塩水で観察するほか、10%水酸化カリウム(KOH)を加えると上皮細胞が溶けて菌糸が見やすくなる。鏡検で確認できない場合や再発例・難治例では、培養検査で菌種を同定する(C. glabrataなどはアゾール系抗真菌薬が効きにくいことがある)。

腟炎の3大原因の比較

・外陰腟カンジダ症  原因:カンジダ属(主にC. albicans)、常在菌の増殖  帯下:白色、酒粕状・カッテージチーズ状、においは乏しい  症状:強い外陰瘙痒、外陰の発赤  腟内pH:正常(4.5以下)のことが多い  検査:鏡検で仮性菌糸・分芽胞子、培養  治療:抗真菌薬(アゾール系)の腟錠と外陰への軟膏・クリーム。経口フルコナゾール単回投与も選択肢となる(妊娠中は腟錠・外用が基本) ・トリコモナス腟炎  原因:原虫Trichomonas vaginalis、性感染症  帯下:黄緑色、泡沫状、悪臭  所見:腟壁・子宮腟部の点状出血(いちご状)  腟内pH:上昇(4.5超)  検査:鏡検で鞭毛をもち運動する虫体  治療:メトロニダゾールなどの内服。パートナーも同時に治療する ・細菌性腟症  原因:乳酸桿菌の減少と嫌気性菌(Gardnerella vaginalisなど)の増加  帯下:灰白色、均一で薄い、魚臭(KOH添加でアミン臭が強まる)  症状:瘙痒は軽いか無症状のことも多い  腟内pH:上昇(4.5超)  検査:鏡検でクルー細胞(細菌が付着した上皮細胞)  治療:メトロニダゾールなど。妊娠中は早産のリスク因子となる

外陰腟カンジダ症の誘因

抗菌薬の服用、妊娠、糖尿病、副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬、免疫不全(HIV感染など)、エストロゲン製剤、局所の蒸れなど。再発を繰り返す場合は糖尿病などの基礎疾患の有無を確認する。

POINT

・外陰腟カンジダ症:強い瘙痒+白色の酒粕状・カッテージチーズ状帯下。鏡検で仮性菌糸・分芽胞子を確認。 ・泡沫状(黄緑色)帯下はトリコモナス腟炎の特徴。魚臭のある灰白色帯下は細菌性腟症。 ・カンジダは消化管・皮膚・腟の常在菌で、抗菌薬服用、妊娠、糖尿病、ステロイド使用、免疫低下などを誘因に増殖する(内因性感染)。 ・治療はアゾール系抗真菌薬(腟錠+外用)。基本的にパートナー治療は不要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。