体温はなぜ入らない?―「APGAR」5文字で押さえる新生児評価の基本
第107回医師国家試験 G問題 第69問
国試問題にチャレンジ
Apgarスコアの項目に含まれないのはどれか。
- a.体温
- b.呼吸
- c.筋緊張
- d.心拍数
- e.皮膚色
- f.刺激に対する反射
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Apgarスコアは出生直後の新生児の状態を評価する指標で、皮膚色(Appearance)、心拍数(Pulse)、刺激に対する反射(Grimace)、筋緊張(Activity)、呼吸(Respiration)の5項目をそれぞれ0〜2点で採点し、出生後1分と5分に評価します。体温は新生児管理上きわめて重要ですが項目には含まれず、血圧やSpO2、血糖なども同様です。心拍数は100/分が1点と2点の境界であり、1分値は出生直後の状態、5分値は蘇生への反応を反映し予後との関連がより強いとされます。新生児蘇生は1分値を待たずに開始し、保温を含む初期処置から呼吸と心拍数を指標に進めます。5項目を「見る・触る・聴く」で評価できる理由まで理解しておくと、試験だけでなく分娩立ち会いや新生児蘇生の場面でも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
テーマ
Apgarスコアは、出生直後の新生児の状態(新生児仮死の有無と程度)を簡便に評価するための指標であり、1952年に米国の麻酔科医Virginia Apgarによって考案された。
評価項目
次の5項目をそれぞれ0点・1点・2点で採点し、合計0〜10点で評価する。英語の頭文字をとって「APGAR」と覚えるのが一般的である。 ・A(Appearance):皮膚色 ・P(Pulse):心拍数 ・G(Grimace):刺激に対する反射 ・A(Activity):筋緊張 ・R(Respiration):呼吸
正解を導く考え方
Apgarスコアは、分娩室で特別な機器を使わず、見る・触る・聴くだけで短時間に評価できるよう作られている。体温は新生児管理(低体温の予防)ではきわめて重要だが、スコアの5項目には含まれない。したがって、5項目に含まれない「体温」が正解である。
選択肢考察
- ○a. 体温
体温はApgarスコアの評価項目に含まれない。ただし新生児は体表面積が体重に比べて大きく、皮下脂肪が少ないうえ、羊水で濡れた皮膚から蒸散で熱を失いやすいため、出生直後は低体温に陥りやすい。低体温は低血糖、代謝性アシドーシス、呼吸障害などを悪化させるので、体をすぐに拭いて乾かし、ラジアントウォーマー下で保温することは、新生児蘇生の最初の処置として重要である。スコアの項目ではないが、管理上は欠かせない指標である。
- ×b. 呼吸
呼吸(Respiration)は項目に含まれる。元気に泣き、良好な呼吸をしていれば2点、弱い・不規則・浅い呼吸であれば1点、呼吸がなければ0点とする。
- ×c. 筋緊張
筋緊張(Activity、muscle tone)は項目に含まれる。四肢をしっかり屈曲し活発に動かしていれば2点、四肢がいくらか屈曲している程度であれば1点、全身がだらりと弛緩していれば0点とする。
- ×d. 心拍数
心拍数(Pulse)は項目に含まれる。100/分以上で2点、100/分未満で1点、心拍がなければ0点とする。心拍数は新生児蘇生で処置の効果を判定する最も重要な指標でもあり、100/分未満の徐脈が続けば人工呼吸、60/分未満が続けば胸骨圧迫を加える。
- ×e. 皮膚色
皮膚色(Appearance)は項目に含まれる。全身がピンク色であれば2点、体幹はピンク色だが手足にチアノーゼ(末梢性チアノーゼ)があれば1点、全身のチアノーゼまたは蒼白であれば0点とする。出生直後の健常新生児でも手足のチアノーゼはよくみられるため、1分値では皮膚色が2点にならないことが多い。
- ×f. 刺激に対する反射
刺激に対する反射(Grimace、reflex irritability)は項目に含まれる。足底への刺激や鼻腔・口腔の吸引などに対して、泣く・咳やくしゃみをする・逃げるように動くなどの反応があれば2点、顔をしかめる程度であれば1点、反応がなければ0点とする。
Apgarスコアの採点表
・皮膚色:0点=全身チアノーゼまたは蒼白、1点=体幹ピンク・四肢チアノーゼ、2点=全身ピンク ・心拍数:0点=なし、1点=100/分未満、2点=100/分以上 ・刺激に対する反射:0点=反応なし、1点=顔をしかめる、2点=泣く・咳・くしゃみ ・筋緊張:0点=弛緩、1点=四肢をやや屈曲、2点=四肢屈曲・活発に動く ・呼吸:0点=なし、1点=弱い・不規則、2点=強く泣く・良好
評価の時期と判定
・出生後1分と5分に評価する。5分値が7点未満の場合は、20分まで5分ごとに評価を繰り返すことが推奨されている。 ・日本の教科書では一般に、8〜10点を正常、4〜7点を軽症仮死(第1度仮死)、0〜3点を重症仮死(第2度仮死)と分類することが多い。7〜10点を「おおむね良好」とする扱いもある。 ・1分値は出生直後の状態(仮死の程度)を、5分値は蘇生への反応を反映し、5分値のほうが神経学的予後との関連が強いとされる。
注意点
・新生児蘇生(NCPR:新生児蘇生法)では、Apgarスコアの1分値を待たずに処置を開始する。蘇生の必要性は、出生直後の呼吸・筋緊張などの評価と、その後の呼吸・心拍数によって判断する。 ・Apgarスコアは主観的要素を含み、早産児では筋緊張や反射が本来弱いため点数が低く出やすい。また、低いスコアだけで新生児仮死や脳性麻痺の原因を断定することはできず、臍帯動脈血ガス分析などと合わせて評価する。
POINT
・Apgarスコアの5項目は、皮膚色(Appearance)、心拍数(Pulse)、刺激に対する反射(Grimace)、筋緊張(Activity)、呼吸(Respiration)であり、頭文字でAPGARと覚える。 ・体温、血圧、SpO2、血糖などは項目に含まれない。 ・各項目0〜2点で合計10点、出生後1分と5分に評価する。 ・心拍数は100/分が1点と2点の境界である。 ・新生児蘇生はApgarスコアの1分値を待たずに開始する。
