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体温はなぜ入らない?―「APGAR」5文字で押さえる新生児評価の基本

第107回医師国家試験 G問題 第69問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第69問

Apgarスコアの項目に含まれないのはどれか。

  1. a.体温
  2. b.呼吸
  3. c.筋緊張
  4. d.心拍数
  5. e.皮膚色
  6. f.刺激に対する反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、出生直後の赤ちゃんの状態を点数化するApgarスコアの問題だ。5つの評価項目を正確に言えるかどうかがすべて。ポイントは「分娩室で、機械を使わずに、すぐ評価できる項目」で構成されていることなんだ。項目は思い出せるかな。
医学生医学生
産婦人科の講義で頭文字のAPGARで覚えました。Appearance、Pulse、Grimace、Activity、Respirationです。
ドクタードクター
完璧だね。日本語にすると、皮膚色、心拍数、刺激に対する反射、筋緊張、呼吸。それぞれ0〜2点で採点して、合計0〜10点になる。この5つ以外のものを選べばいいわけだ。
医学生医学生
そうすると体温が入っていません。でも、新生児って体温管理がすごく大事だと習ったので、少し不安になります。
ドクタードクター
その感覚は正しいよ。体温は新生児管理ではきわめて重要だけれど、Apgarスコアの項目には含まれない。だから正解は体温だ。このスコアは、分娩室で見る・触る・聴くだけで短時間に評価できるよう5項目にしぼって作られている。体温計を使う体温は、その枠組みに入っていないんだ。
医学生医学生
なるほど。では、各項目の採点基準も確認したいです。心拍数は何で区切るんでしたっけ。
ドクタードクター
心拍数は100/分以上で2点、100/分未満で1点、心拍なしで0点。この100という数字は新生児蘇生でも重要で、100/分未満の徐脈が続けば人工呼吸、60/分未満が続けば胸骨圧迫を加える目安になる。
医学生医学生
皮膚色は、ピンクなら2点、チアノーゼなら0点という理解でいいですか。
ドクタードクター
少し補足が必要だね。全身ピンクで2点、体幹はピンクだけど手足にチアノーゼがあるのが1点、全身チアノーゼまたは蒼白で0点だ。実は元気な新生児でも生まれた直後は手足が紫っぽいことが多いから、1分値で皮膚色が2点にならないことはよくあるんだよ。
医学生医学生
臨床実習で分娩に立ち会ったとき、元気に泣いているのに手足が紫で驚いたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが末梢性チアノーゼだね。残りの3つも整理しよう。刺激に対する反射は、足底刺激や吸引に対して泣く・咳やくしゃみをするなら2点、顔をしかめる程度なら1点、反応なしで0点。筋緊張は四肢をしっかり曲げて活発に動けば2点、少し曲げている程度で1点、だらりと弛緩していれば0点。呼吸は強く泣いていれば2点、弱く不規則なら1点、なしで0点だ。
医学生医学生
評価するのは生まれてから1分後と5分後でしたよね。点数はどう解釈すればいいですか。
ドクタードクター
日本の教科書では、8〜10点を正常、4〜7点を軽症仮死、0〜3点を重症仮死と分けることが多い。ただ、7点以上をおおむね良好とする扱いもあって、境界には揺れがある。1分値は出生直後の状態を、5分値は蘇生への反応を反映していて、神経学的予後との関連は5分値のほうが強いとされている。5分値が7点未満なら、20分まで5分ごとに評価を続けることが推奨されているよ。
医学生医学生
ということは、1分値が出るまで待ってから蘇生を始めるんでしょうか。
ドクタードクター
そこは大事な落とし穴だね。新生児蘇生法では、1分値を待たずに処置を始める。出生直後に呼吸や筋緊張などを確認し、問題があればすぐに保温・気道確保・刺激を行い、その後は呼吸と心拍数を見ながら次の処置へ進むんだ。Apgarスコアはあくまで状態を記録・評価するための道具と考えよう。
医学生医学生
保温が蘇生の最初のステップに入っているのは、体温の話とつながりますね。
ドクタードクター
その通り。新生児は体重のわりに体表面積が大きく、皮下脂肪が少ないうえ、羊水で濡れた体から蒸散で熱が奪われやすい。低体温になると低血糖や代謝性アシドーシス、呼吸障害が悪化するから、すぐに体を拭いて乾かし、ラジアントウォーマーで温めるんだ。スコアには入らないけれど、管理上は欠かせない要素だよ。
医学生医学生
もう一つ気になるのですが、早産児だと点数が低めに出たりしませんか。
ドクタードクター
鋭いね。早産児はもともと筋緊張や反射が弱いから、点数が低く出やすい。また評価者の主観も入るので、低いスコアだけで新生児仮死や脳性麻痺の原因を断定することはできない。臍帯動脈血ガス分析などと合わせて総合的に判断するのが大切だ。

まとめ

Apgarスコアは出生直後の新生児の状態を評価する指標で、皮膚色(Appearance)、心拍数(Pulse)、刺激に対する反射(Grimace)、筋緊張(Activity)、呼吸(Respiration)の5項目をそれぞれ0〜2点で採点し、出生後1分と5分に評価します。体温は新生児管理上きわめて重要ですが項目には含まれず、血圧やSpO2、血糖なども同様です。心拍数は100/分が1点と2点の境界であり、1分値は出生直後の状態、5分値は蘇生への反応を反映し予後との関連がより強いとされます。新生児蘇生は1分値を待たずに開始し、保温を含む初期処置から呼吸と心拍数を指標に進めます。5項目を「見る・触る・聴く」で評価できる理由まで理解しておくと、試験だけでなく分娩立ち会いや新生児蘇生の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はaです

テーマ

Apgarスコアは、出生直後の新生児の状態(新生児仮死の有無と程度)を簡便に評価するための指標であり、1952年に米国の麻酔科医Virginia Apgarによって考案された。

評価項目

次の5項目をそれぞれ0点・1点・2点で採点し、合計0〜10点で評価する。英語の頭文字をとって「APGAR」と覚えるのが一般的である。 ・A(Appearance):皮膚色 ・P(Pulse):心拍数 ・G(Grimace):刺激に対する反射 ・A(Activity):筋緊張 ・R(Respiration):呼吸

正解を導く考え方

Apgarスコアは、分娩室で特別な機器を使わず、見る・触る・聴くだけで短時間に評価できるよう作られている。体温は新生児管理(低体温の予防)ではきわめて重要だが、スコアの5項目には含まれない。したがって、5項目に含まれない「体温」が正解である。

選択肢考察

  1. ○a.  体温

    体温はApgarスコアの評価項目に含まれない。ただし新生児は体表面積が体重に比べて大きく、皮下脂肪が少ないうえ、羊水で濡れた皮膚から蒸散で熱を失いやすいため、出生直後は低体温に陥りやすい。低体温は低血糖、代謝性アシドーシス、呼吸障害などを悪化させるので、体をすぐに拭いて乾かし、ラジアントウォーマー下で保温することは、新生児蘇生の最初の処置として重要である。スコアの項目ではないが、管理上は欠かせない指標である。

  2. ×b.  呼吸

    呼吸(Respiration)は項目に含まれる。元気に泣き、良好な呼吸をしていれば2点、弱い・不規則・浅い呼吸であれば1点、呼吸がなければ0点とする。

  3. ×c.  筋緊張

    筋緊張(Activity、muscle tone)は項目に含まれる。四肢をしっかり屈曲し活発に動かしていれば2点、四肢がいくらか屈曲している程度であれば1点、全身がだらりと弛緩していれば0点とする。

  4. ×d.  心拍数

    心拍数(Pulse)は項目に含まれる。100/分以上で2点、100/分未満で1点、心拍がなければ0点とする。心拍数は新生児蘇生で処置の効果を判定する最も重要な指標でもあり、100/分未満の徐脈が続けば人工呼吸、60/分未満が続けば胸骨圧迫を加える。

  5. ×e.  皮膚色

    皮膚色(Appearance)は項目に含まれる。全身がピンク色であれば2点、体幹はピンク色だが手足にチアノーゼ(末梢性チアノーゼ)があれば1点、全身のチアノーゼまたは蒼白であれば0点とする。出生直後の健常新生児でも手足のチアノーゼはよくみられるため、1分値では皮膚色が2点にならないことが多い。

  6. ×f.  刺激に対する反射

    刺激に対する反射(Grimace、reflex irritability)は項目に含まれる。足底への刺激や鼻腔・口腔の吸引などに対して、泣く・咳やくしゃみをする・逃げるように動くなどの反応があれば2点、顔をしかめる程度であれば1点、反応がなければ0点とする。

Apgarスコアの採点表

・皮膚色:0点=全身チアノーゼまたは蒼白、1点=体幹ピンク・四肢チアノーゼ、2点=全身ピンク ・心拍数:0点=なし、1点=100/分未満、2点=100/分以上 ・刺激に対する反射:0点=反応なし、1点=顔をしかめる、2点=泣く・咳・くしゃみ ・筋緊張:0点=弛緩、1点=四肢をやや屈曲、2点=四肢屈曲・活発に動く ・呼吸:0点=なし、1点=弱い・不規則、2点=強く泣く・良好

評価の時期と判定

・出生後1分と5分に評価する。5分値が7点未満の場合は、20分まで5分ごとに評価を繰り返すことが推奨されている。 ・日本の教科書では一般に、8〜10点を正常、4〜7点を軽症仮死(第1度仮死)、0〜3点を重症仮死(第2度仮死)と分類することが多い。7〜10点を「おおむね良好」とする扱いもある。 ・1分値は出生直後の状態(仮死の程度)を、5分値は蘇生への反応を反映し、5分値のほうが神経学的予後との関連が強いとされる。

注意点

・新生児蘇生(NCPR:新生児蘇生法)では、Apgarスコアの1分値を待たずに処置を開始する。蘇生の必要性は、出生直後の呼吸・筋緊張などの評価と、その後の呼吸・心拍数によって判断する。 ・Apgarスコアは主観的要素を含み、早産児では筋緊張や反射が本来弱いため点数が低く出やすい。また、低いスコアだけで新生児仮死や脳性麻痺の原因を断定することはできず、臍帯動脈血ガス分析などと合わせて評価する。

POINT

・Apgarスコアの5項目は、皮膚色(Appearance)、心拍数(Pulse)、刺激に対する反射(Grimace)、筋緊張(Activity)、呼吸(Respiration)であり、頭文字でAPGARと覚える。 ・体温、血圧、SpO2、血糖などは項目に含まれない。 ・各項目0〜2点で合計10点、出生後1分と5分に評価する。 ・心拍数は100/分が1点と2点の境界である。 ・新生児蘇生はApgarスコアの1分値を待たずに開始する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。