援助は「もうけ」のためにあらず―ODAの目的と技術協力の三本柱
第107回医師国家試験 G問題 第4問
国試問題にチャレンジ
我が国の政府開発援助〈ODA〉による保健医療協力について誤っているのはどれか。
- a.機材を供与する。
- b.専門家を派遣する。
- c.金銭的な利益を得る。
- d.研修員を受け入れる。
- e.自助努力を支援する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
ODA(政府開発援助)は、途上国の経済・社会の発展と福祉の向上を目的に、贈与または途上国に有利な条件で行われる公的な協力であり、援助国が金銭的な利益を得ることを目的とはしません。円借款のように返済を伴う形態もありますが、低金利・長期返済で自立を促すもので、営利取引とは性質が異なります。保健医療分野の技術協力では、研修員受け入れ・専門家派遣・機材供与が三本柱で、途上国の「自助努力」の支援が日本のODAの基本理念です。現在は技術協力・無償資金協力・有償資金協力をJICAが一元的に担い、母子健康手帳の普及や感染症対策、UHCの推進などに取り組んでいます。ODAの定義と手段を押さえることは、国際保健の基本を理解し、日本の医療と世界のつながりを捉える土台になります。
解答・解説
正解はcです
問われていること
政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)とは、政府または政府の実施機関が、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上を主な目的として行う資金協力・技術協力である。本問は「誤っているもの」を選ぶ形式で、ODAの目的と手法についての基本的理解を問うている。
考え方
ODAの定義には、経済開発や福祉の向上を主目的とすること、そして途上国にとって有利な条件(贈与、または低金利・長期返済の緩やかな条件の貸付)で提供されることが含まれる。つまり援助する側が金銭的な利益を得ることを目的とした活動は、定義上ODAにはあたらない。 わが国の保健医療分野のODAでは、国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)を中心に、研修員の受け入れ、専門家の派遣、機材の供与を組み合わせた技術協力プロジェクトや、病院・保健施設の建設などの無償資金協力が行われてきた。そして日本の援助の基本理念の一つが、途上国自身が主体となって発展に取り組む「自助努力」を支援し、自立的な発展を後押しすることである。 以上から、機材供与、専門家派遣、研修員受け入れ、自助努力支援はいずれもODAの内容として正しく、「金銭的な利益を得る」だけがODAの趣旨に反する。
選択肢考察
- ×a. 機材を供与する。
記述は正しい。機材供与は技術協力の一手段であり、派遣した専門家の指導や研修の成果を現地で活かすために、医療機器や検査機器、ワクチン保管用の冷蔵設備(コールドチェーン機材)などを提供する。単に物を渡すだけでなく、使い方や保守の技術移転と組み合わせて行われるのが特徴である。
- ×b. 専門家を派遣する。
記述は正しい。専門家派遣は技術協力の中心的な手段である。医師、看護師、保健行政の専門家などを途上国に派遣し、現地の保健省や病院の職員と一緒に働きながら、母子保健、感染症対策、保健システムの強化などに関する技術や知識を伝える。
- ○c. 金銭的な利益を得る。
記述は誤りであり、これが正解である。ODAは途上国の発展と福祉の向上を目的とする公的な協力であり、援助国が金銭的な利益を得ることを目的としない。有償資金協力(円借款)のように返済を伴う形態もあるが、これは低金利・長期返済という途上国に有利な条件で開発資金を貸し付けるもので、借り手の返済責任を通じて自立を促す意味合いがある。営利を目的とする取引とは性質が異なる。
- ×d. 研修員を受け入れる。
記述は正しい。研修員受け入れは技術協力の一手段で、途上国の医療従事者や行政官を日本に招き、医療機関や大学、行政機関などで知識や技術を学んでもらう。帰国後にその国の保健医療を担う人材として活躍することが期待されている。
- ×e. 自助努力を支援する。
記述は正しい。途上国の自助努力を支援することは、日本のODAの基本理念として一貫して掲げられてきた(旧ODA大綱、現在の開発協力大綱)。援助国が一方的に物資を与えたり指示したりするのではなく、途上国が自らの課題を主体的に解決できるよう、人材育成や制度づくりを通じて自立的な発展を後押しするという考え方である。
ODAの分類
・多国間援助:国際機関(WHO、UNICEF、世界銀行、グローバルファンドなど)への出資・拠出を通じた援助。 ・二国間援助: 贈与:無償資金協力(返済義務のない資金供与。病院の建設や機材整備など)、技術協力(研修員受け入れ、専門家派遣、機材供与、技術協力プロジェクト、開発計画調査型技術協力、ボランティア派遣など)。 政府貸付:有償資金協力(円借款)。低金利・長期返済の条件で開発資金を貸し付ける。
実施機関
かつては技術協力・無償資金協力をJICAが、円借款を国際協力銀行(JBIC:Japan Bank for International Cooperation)が担っていた。2008年の組織再編で円借款業務はJICAに統合され、現在は技術協力・無償資金協力・有償資金協力の3つをJICAが一元的に実施している。国際緊急援助隊の派遣もJICAが担う。
日本のODAの理念
1992年に閣議決定されたODA大綱(2003年改定)は、2015年に「開発協力大綱」へ改められ、2023年にも改定された。途上国の自助努力への支援、人間の安全保障の推進などが基本方針として掲げられている。保健分野では、すべての人が必要な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進に力を入れている。
保健医療分野の協力例
母子保健(母子健康手帳の普及など)、感染症対策(ポリオ根絶、結核・HIV・マラリア対策)、保健人材の育成、病院・保健所の整備などが挙げられる。
POINT
・ODAは途上国の発展と福祉向上を目的とし、援助国の金銭的利益を目的としない。 ・技術協力の三本柱:研修員受け入れ、専門家派遣、機材供与。 ・二国間援助は贈与(無償資金協力・技術協力)と政府貸付(円借款)に分かれ、現在はいずれもJICAが実施する。 ・日本のODAの基本理念は途上国の「自助努力」の支援。
