StudyMed医師国家試験

声変わりより先に始まっている―男児の思春期は「精巣」から

第107回医師国家試験 G問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第23問

男児の二次性徴で最初に認められるのはどれか。

  1. a.陰毛
  2. b.腋毛
  3. c.声変わり
  4. d.鼻の下の髭
  5. e.精巣容積の増大

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は男児の二次性徴がどの順番で現れるかを問う問題だ。目に見えやすい変化に引っ張られず、思春期を動かしているホルモンの流れから考えるのがコツだよ。
医学生医学生
男子の思春期というと、声変わりや髭のイメージが強いです。
ドクタードクター
多くの人がそう感じるよね。でもそれらは実は後半の変化なんだ。まず思春期がどう始まるか、生理学で習った内容を思い出してみよう。
医学生医学生
視床下部のGnRHが律動的に分泌されるようになって、下垂体からLHとFSHが出る、という流れでしたよね。
ドクタードクター
その通り。FSHは精細管の発育を、LHはLeydig細胞からのテストステロン分泌を促す。ここで大事なのは、精巣の体積の大部分は精細管が占めているということ。だからゴナドトロピンの作用を一番最初に反映するのが、精巣容積の増大なんだ。
医学生医学生
テストステロンが上がってから毛や声が変わるので、その前段階の精巣の変化が先に来る、ということですね。
ドクタードクター
まさにそう。日本人男児ではおおむね10〜11歳頃に始まり、精巣容積が3〜4mL以上になることが思春期開始の目安とされる。測定にはオーキドメーターという、大きさの違う楕円体の模型を並べた器具を使う。
医学生医学生
小児科の実習で外来の先生が使っているのを見ました。数珠みたいな道具で、触診しながら比べていました。
ドクタードクター
良いものを見たね。では残りの選択肢を順序の中に位置づけてみよう。精巣容積の増大のあと、陰茎の発育や陰嚢の色素沈着が続く。陰毛はどのあたりだと思う?
医学生医学生
陰毛は割と早いイメージがあって、最初かと迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。陰毛はアンドロゲンの作用によるもので、精巣が大きくなり始めて少し遅れ、12〜13歳頃に出現する。その後に身長の急伸、つまり成長スパートや精通があり、腋毛・声変わり・髭は14〜15歳頃の後半の変化になる。
医学生医学生
声変わりは喉頭が大きくなって声帯が長く厚くなるからでしたっけ。
ドクタードクター
そう、テストステロンの作用で起こる。髭は鼻の下から始まって頬やあごへ広がっていく。いずれも思春期後半の変化だから、最初の徴候にはならない。
医学生医学生
女児だと最初は乳房発育でしたよね。CBTの勉強で、初経が最初だと勘違いしていた時期がありました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。女児は乳房発育から始まり、陰毛、成長スパート、初経、腋毛と進む。初経は後半の出来事なんだ。乳房発育の開始は9〜10歳頃で、女児の成長スパートは二次性徴の比較的早い時期に来るから、男児よりおよそ2年早いとされる。
医学生医学生
進行度の評価にはTanner分類を使うんですよね。
ドクタードクター
その通り。男児は外性器と陰毛、女児は乳房と陰毛について、1度の思春期前から5度の成人型までに分ける。臨床で順序と時期が大事になるのは、思春期早発症や遅発症を判断するときだ。日本の診断の手引きでは、男児で9歳未満の精巣・陰茎・陰嚢の明らかな発育、10歳未満の陰毛、11歳未満の腋毛・髭・声変わりが早発症の主症候に挙げられている。
医学生医学生
逆に、年齢が進んでも精巣が大きくならなければ遅発症を考えるわけですね。
ドクタードクター
そう。その場合はKallmann症候群のような低ゴナドトロピン性性腺機能低下症や、Klinefelter症候群のような高ゴナドトロピン性性腺機能低下症などを鑑別する。正常の順序を知っていることが、異常に気づく出発点になるんだ。

まとめ

男児の二次性徴は、GnRHの律動的分泌の再開によりLH・FSHが増え、精細管が発育して精巣容積が増大することから始まります(10〜11歳頃、3〜4mL以上が目安で、オーキドメーターで評価)。その後、陰茎の発育、陰毛の発生、成長スパート、腋毛・声変わり・髭の順に進み、声変わりや髭は思春期後半の変化です。女児では乳房発育が最初の徴候で、初経は後半に起こる点と区別して覚えておく必要があります。正常な出現順序と時期の理解は、Tanner分類による評価や、思春期早発症・遅発症の判断の土台となります。

解答・解説

正解はeです

二次性徴とは、思春期に性ホルモンの作用によって現れる、性器以外の体の性差(および性器の成熟)のことである。思春期は視床下部からのGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の律動的な分泌が再活性化することで始まる。GnRHが下垂体からLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌を促し、これらが精巣に作用する。FSHは精細管(精子をつくる管)の発育を、LHはLeydig細胞からのテストステロン分泌を促す。 精巣の体積の大部分は精細管が占めるため、ゴナドトロピンの作用を最初に反映するのは精巣容積の増大である。その後、上昇したテストステロン(および副腎由来のアンドロゲン)の作用によって、陰茎の発育、陰毛の発生、身長の急伸(成長スパート)、腋毛、声変わり、髭、という順に変化が進む。 したがって男児の二次性徴で最初にみられるのは精巣容積の増大である。日本人男児ではおおむね10〜11歳頃に始まり、精巣容積が3〜4mL以上になることが思春期開始の目安とされる。なお女児では乳房発育(乳房腫大)が最初の徴候であり、男女で区別して覚えておく必要がある。

選択肢考察

  1. ×a.  陰毛

    陰毛(恥毛)の発生はアンドロゲンの作用によるもので、精巣が大きくなり始めてから少し遅れて、12〜13歳頃に出現する。精巣容積の増大・陰茎の発育に続く段階であり、最初の徴候ではない。

  2. ×b.  腋毛

    腋毛は陰毛より約2年遅れて、14〜15歳頃に出現する。思春期の後半にみられる変化であり、最初の徴候ではない。

  3. ×c.  声変わり

    声変わりは、テストステロンの作用で喉頭が大きくなり声帯が長く厚くなることで、声が低くなる現象である。14〜15歳頃にみられ、思春期の後半の変化であるため最初の徴候ではない。

  4. ×d.  鼻の下の髭

    髭は腋毛とほぼ同時期かやや遅れて、14〜15歳以降に生え始める。顔の毛は口の上(鼻の下)から始まり、頬・あごへ広がっていく。二次性徴の中でも遅い時期の変化である。

  5. ○e.  精巣容積の増大

    思春期が始まるとFSH・LHの作用で精細管が発育し、精巣の容積が増える。これが男児の二次性徴で最初にみられる変化であり、10〜11歳頃に始まる。精巣の大きさはオーキドメーター(大きさの異なる楕円体の模型を連ねた器具)と比べて測定し、容積が3〜4mL以上になれば思春期に入ったと判断する。

男児の二次性徴の順序(おおよその年齢)

1.精巣容積の増大(10〜11歳頃) 2.陰茎の発育、陰嚢の皮膚の色素沈着 3.陰毛の発生(12〜13歳頃) 4.身長の急伸(成長スパート)、精通 5.腋毛・声変わり・髭(14〜15歳頃)

女児との比較

女児では、乳房発育(乳房腫大)→陰毛→身長の急伸→初経(初潮)→腋毛、の順に進む。乳房発育の開始は9〜10歳頃である。女児の成長スパートは二次性徴の比較的早い時期にみられ、男児よりおよそ2年早い。

Tanner分類

二次性徴の進行度を評価する尺度で、男児は外性器(精巣・陰茎・陰嚢)と陰毛、女児は乳房と陰毛のそれぞれについて、1度(思春期前)から5度(成人型)に分類する。

思春期早発症・遅発症との関連

日本の診断の手引きでは、男児の思春期早発症の主症候として、9歳未満での精巣・陰茎・陰嚢の明らかな発育、10歳未満での陰毛発生、11歳未満での腋毛・髭の発生や声変わりが挙げられている。いずれも「正常より明らかに早い時期に二次性徴が出現する」という考え方であり、正常な出現順序と時期を知っておくことが前提となる。逆に、一定の年齢になっても精巣容積の増大がみられない場合は思春期遅発症を疑い、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(Kallmann症候群など)や高ゴナドトロピン性性腺機能低下症(Klinefelter症候群など)を鑑別する。

POINT

・男児の二次性徴で最初に現れるのは精巣容積の増大(10〜11歳頃、3〜4mL以上が目安)。 ・順序:精巣容積増大→陰茎発育→陰毛→成長スパート→腋毛・声変わり・髭。 ・女児の最初の徴候は乳房発育であり、初経は二次性徴の後半にみられる。 ・精巣容積はオーキドメーターで評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。