StudyMed医師国家試験

指示書がなければ始まらない―在宅ケアの「医療系」と「福祉系」を見分ける

第107回医師国家試験 G問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第1問

在宅ケアのうち医師の指示書が必要なのはどれか。

  1. a.自宅改修
  2. b.訪問看護
  3. c.訪問介護
  4. d.通所介護
  5. e.通所リハビリテーション

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、在宅療養を支えるさまざまなサービスのうち、医師の指示書がなければ始められないものを選ぶ問題だ。ポイントは、そのサービスが医療行為を含むかどうか、そして誰の計画や指示に基づいて提供されるかを整理することだよ。
医学生医学生
医師の指示というと、リハビリも医師の処方が必要なので、通所リハビリテーションが怪しい気がします。
ドクタードクター
鋭いところに目をつけたね。実はそこがこの問題の一番の引っかけなんだ。まず大きな枠組みから押さえよう。在宅サービスは、医療行為や医学的管理を伴う医療系サービスと、日常生活の支援を目的とする福祉系サービスに分けられる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で介護保険の居宅サービス一覧を見ましたが、数が多くて混乱しました。
ドクタードクター
無理もないよ。福祉系サービスの代表が訪問介護、通所介護、住宅改修だ。これらはケアマネジャー、つまり介護支援専門員が作成するケアプランに基づいて提供される。医療行為は原則として行わないので、医師の指示書は要件にならない。
医学生医学生
訪問介護はホームヘルパーさんが入浴や排泄の介助、調理や掃除をしてくれるサービスですよね。
ドクタードクター
その通り。通所介護はデイサービスの正式名称で、日帰りで施設に通い、入浴や食事、レクリエーションなどを受ける。本人の社会的孤立を防ぎ、家族の介護負担を軽くする役割も大きい。住宅改修は手すりの設置や段差の解消などで、ケアマネジャーなどが作成する理由書を添えて市町村に事前申請する仕組みだ。
医学生医学生
では、正解の訪問看護に指示書が必要なのはなぜでしょうか。
ドクタードクター
看護師の業務は、保健師助産師看護師法で「療養上の世話」と「診療の補助」とされていて、診療の補助は医師の指示が前提なんだ。訪問看護では病状観察に加えて、点滴、経管栄養、膀胱留置カテーテルや在宅酸素の管理、褥瘡処置といった医療行為を居宅で行う。だから主治医が患者さんの同意を得て、患者さんが選んだ訪問看護ステーションへ訪問看護指示書を交付して初めて開始できるんだ。
医学生医学生
介護保険で使う場合でも同じですか。
ドクタードクター
そう、介護保険でも医療保険でも、指示書が要件になる点は変わらない。指示書の有効期間は最長6か月だ。さらに、急性増悪や退院直後、終末期などで頻回の訪問が必要なときは特別訪問看護指示書を出す。原則14日間、医療保険で連日の訪問ができるようになるよ。
医学生医学生
では、最初に迷った通所リハビリテーションはどう考えればいいでしょう。
ドクタードクター
デイケアとも呼ばれ、老健や病院、診療所に通って理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のリハビリを受ける医療系サービスだ。医師の関与は必須だけれど、事業所の医師が自ら診察して指示を出し、計画を立てる仕組みになっている。主治医が外部の事業所に「指示書」を交付する訪問看護とは仕組みが違うんだ。
医学生医学生
医師が関わるかどうかではなく、主治医が外部へ指示書を出す仕組みかどうかで区別するんですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。国試ではこの2つの区別がよく問われるから、整理しておくと強いよ。
医学生医学生
在宅医療の地域医療実習で、先生が訪問看護指示書と主治医意見書を書いているのを見ました。あの2つは別物ですよね。
ドクタードクター
よく見ていたね。主治医意見書は要介護認定の審査に使う書類で、心身の状態や医学的管理の必要性を記載するもの。訪問看護指示書はサービスを動かすための指示だから、目的がまったく違う。実際の在宅医療では、医師が指示書の内容を具体的に書かないと、看護師が現場で必要な処置を行えないこともある。指示書の質が在宅療養の質に直結すると意識しておいてほしい。
医学生医学生
医師になったら、書類一枚で多職種のチームが動くということですね。
ドクタードクター
その通り。ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー、療法士がそれぞれどんな根拠で動いているのかを知っておくと、在宅の患者さんを支えるときに迷わず連携できるよ。

まとめ

在宅ケアのサービスは、医療行為を伴う医療系サービスと、日常生活を支える福祉系サービスに分けて考えると整理しやすくなります。訪問看護は看護師が居宅で診療の補助にあたる医療処置を行うため、介護保険・医療保険のいずれでも主治医の訪問看護指示書(有効期間は最長6か月)が必須で、頻回訪問が必要な時期には原則14日間の特別訪問看護指示書が用いられます。訪問介護、通所介護、住宅改修は福祉系サービスで、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて提供され、医師の指示書は要しません。通所リハビリテーションは医療系ですが、事業所の医師の診察・指示のもとで行われ、主治医が外部へ指示書を交付する仕組みではない点が訪問看護との違いです。各職種がどの書類や計画を根拠に動くかを理解しておくことは、在宅医療で多職種と円滑に連携するための基礎になります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

在宅療養を支えるサービスは、大きく「医療系サービス」と「福祉(介護)系サービス」に分けられる。本問は、このうち主治医が作成する「指示書」がなければ開始できないサービスを選ばせる問題である。

考え方

医療行為や診療の補助は医師の指示のもとで行うのが原則である。保健師助産師看護師法では、看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」とされ、後者は医師の指示を前提とする。在宅で看護師が療養者の家を訪れ、病状観察、点滴・カテーテル管理、褥瘡処置などを行う訪問看護は、まさにこの医療行為を居宅で提供するサービスであるため、医療保険・介護保険のどちらで利用する場合でも、主治医が発行する「訪問看護指示書」が必要となる。 一方、住宅改修、訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)は、日常生活の支援を目的とする福祉系サービスであり、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するケアプランに基づいて提供される。これらは医師の指示書を要件としない。 通所リハビリテーション(デイケア)は医療系サービスに分類され、事業所の医師の診察・指示のもとでリハビリテーションが行われるが、外部の主治医が「指示書」を交付する仕組みではない。 したがって、選択肢の中で医師の指示書が必須となるのは訪問看護である。

選択肢考察

  1. ×a.  自宅改修

    手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸への取り替え、洋式便器への交換などの小規模な住宅改修は、介護保険の「居宅介護住宅改修費」の対象となる。要支援・要介護認定を受けた人が、ケアマネジャーなどに相談して理由書を添え、事前に市町村へ申請する仕組みである。支給限度基準額は原則として1人あたり20万円で、そのうち所得に応じて7〜9割が給付される。医師の指示書は必要とされない。

  2. ○b.  訪問看護

    訪問看護は、看護師などが居宅を訪問し、病状の観察、服薬管理、点滴や経管栄養・膀胱留置カテーテル・在宅酸素などの医療処置、褥瘡の処置、終末期ケアなどを行うサービスである。これらは診療の補助にあたるため、医師の指示が不可欠であり、主治医が患者の同意を得たうえで、患者が選んだ訪問看護ステーションへ「訪問看護指示書」を交付することで開始される。指示書の有効期間は最長6か月である。急性増悪や退院直後などで頻回の訪問が必要な場合には「特別訪問看護指示書」が交付され、原則14日間、医療保険で連日の訪問が可能になる。介護保険・医療保険のいずれで提供される場合も指示書が要件である。

  3. ×c.  訪問介護

    訪問介護(ホームヘルプサービス)は、訪問介護員(ホームヘルパー)や介護福祉士が居宅を訪問し、入浴・排泄・食事などの身体介護や、調理・洗濯・掃除などの生活援助を行う福祉系サービスである。ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って、本人・家族、サービス提供責任者、ケアマネジャーが連携して内容を決める。医療行為は原則として行わないため、医師の指示書は不要である。

  4. ×d.  通所介護

    通所介護はいわゆるデイサービスの正式名称である。利用者が日帰りで施設に通い、入浴・食事の提供、レクリエーション、機能訓練などを受ける福祉系サービスで、利用者の社会的孤立の解消や家族の介護負担軽減も目的とする。要介護者はケアマネジャーが作成するケアプランに、要支援者は地域包括支援センターなどが作成する介護予防ケアプランに基づいて利用する。医師の指示書は必要ない。

  5. ×e.  通所リハビリテーション

    通所リハビリテーション(デイケア)は、介護老人保健施設、病院、診療所などに通い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーションを受ける医療系サービスである。事業所の医師が診察して指示を出し、医師や療法士が必要に応じて居宅を訪問して生活環境や心身機能を評価し、通所リハビリテーション計画を作成する。つまり医師の関与は必須だが、それは事業所内の医師による指示であり、主治医が外部の事業所に交付する指示書を要件とする訪問看護とは仕組みが異なる。本問の「医師の指示書が必要なもの」には該当しない。

介護保険の居宅サービスの整理

介護保険で利用できる在宅サービスは、訪問型・通所型・短期入所型などに分けられる。 ・訪問型:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導 ・通所型:通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア) ・短期入所型:短期入所生活介護、短期入所療養介護(ショートステイ) ・その他:福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修費の支給 このうち訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は医療系サービスとされ、医師の関与が必要である。

医師が作成する主な書類

・訪問看護指示書:訪問看護ステーションに交付する。有効期間は最長6か月。 ・特別訪問看護指示書:急性増悪、終末期、退院直後などで頻回訪問が必要なときに交付。原則14日間で、この期間の訪問看護は医療保険の扱いとなる。 ・主治医意見書:要介護認定の審査に用いる書類で、心身の状況や医学的管理の必要性を記載する。

ケアマネジャーの役割

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者・家族の意向を踏まえてケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、サービス事業者との連絡調整を行う。福祉系サービスはこのケアプランに基づいて提供される。

POINT

・訪問看護の開始には主治医の「訪問看護指示書」が必須(有効期間は最長6か月)。 ・看護師の「診療の補助」は医師の指示が前提という原則から理解する。 ・訪問介護、通所介護、住宅改修は福祉系サービスで、ケアプランに基づき提供され、指示書は不要。 ・特別訪問看護指示書は原則14日間で、医療保険による頻回訪問を可能にする。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。