StudyMed医師国家試験

「生きた病原体」か「殺した病原体」か―生ワクチンを一発で見分けるコツ

第107回医師国家試験 E問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第30問

我が国において予防に生ワクチンが使われているのはどれか。2つ選べ。

  1. a.結核
  2. b.風疹
  3. c.日本脳炎
  4. d.細菌性髄膜炎
  5. e.肺炎球菌性肺炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本で使われているワクチンを生ワクチンと不活化ワクチンに分けられるかを問う問題だ。数あるワクチンを片っ端から覚えるより、生ワクチンの数は少ないから、そちらを確実に押さえて「それ以外はおおむね不活化」と判断するのが効率的だよ。まず、生ワクチンと不活化ワクチンの違いを説明できるかな。
医学生医学生
生ワクチンは病原体を弱めたもので、不活化ワクチンは殺したもの、という理解です。
ドクタードクター
その通り。生ワクチンは弱毒化した病原体が体内で実際に増えるから、自然感染に近い形で液性免疫と細胞性免疫の両方が誘導され、少ない回数で強く長く続く免疫がつく。不活化ワクチンは体内で増えない分、安全性は高いけれど、複数回の接種や追加接種が必要になることが多い。トキソイドや結合型ワクチン、遺伝子組換えワクチンも、広い意味では不活化ワクチンの仲間だ。
医学生医学生
体内で増えるということは、免疫が弱い人には危ないですよね。
ドクタードクター
鋭いね。だから生ワクチンは免疫不全者と妊婦には原則禁忌なんだ。では選択肢を見ていこう。まず結核はどうかな。
医学生医学生
BCGですね。小児科の実習で、管針をハンコみたいに上腕に押し当てる接種を見学しました。生ワクチンだったと思います。
ドクタードクター
正解。BCGはウシ型結核菌を長期間継代培養して弱毒化した生菌ワクチンで、9本の針がついた管針で接種する。定期接種として1歳未満に1回、標準的には生後5〜8か月で受ける。乳幼児の結核性髄膜炎や粟粒結核といった重症結核の予防効果が高いのが特徴だ。生ワクチンだから先天性免疫不全症の子には禁忌になる。
医学生医学生
風疹もMRワクチンなので生ワクチンですね。
ドクタードクター
そう。麻疹と混合したMRワクチンを、1歳時と小学校入学前の1年間の計2回接種する。妊婦に禁忌なのは、ワクチン株が胎児に感染して先天性風疹症候群を起こす可能性を否定できないからで、接種後およそ2か月は避妊が求められる。妊婦健診で抗体価が低いとわかった女性には、出産後に接種するんだ。
医学生医学生
日本脳炎は名前に地名が入っていて、なんとなく生ワクチンっぽい気がしてしまいます。
ドクタードクター
そう感じる人は多いけれど、日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンだ。現在はVero細胞という株化細胞でウイルスを増やし、ホルマリンで不活化して作る。昔のマウス脳由来ワクチンではADEMとの関連が疑われ、2005年に積極的勧奨が一時差し控えられた歴史もある。
医学生医学生
細菌性髄膜炎の予防というとHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンですよね。これも不活化ですか。
ドクタードクター
どちらも不活化だね。Hibワクチンは莢膜多糖体に破傷風トキソイドを結合させた結合型ワクチンなんだ。なぜわざわざ蛋白と結合させるかわかるかな。
医学生医学生
免疫学の講義で、多糖体はT細胞非依存性抗原だと習いました。乳児はそれに反応しにくいから、でしょうか。
ドクタードクター
完璧だ。蛋白と結合させればT細胞の助けを借りて抗体ができるようになる。肺炎球菌ワクチンも同じ考え方で、多糖体だけの23価ワクチンは2歳未満では抗体が十分にできないので高齢者や脾摘後などのハイリスク者に使い、乳幼児にはキャリア蛋白を結合させた結合型ワクチンを使う。いずれも不活化だから、肺炎球菌性肺炎も誤りだ。
医学生医学生
整理すると、生ワクチンはBCG、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス、黄熱で、それ以外はおおむね不活化、ということですね。
ドクタードクター
その覚え方で十分戦える。補足すると、帯状疱疹ワクチンには弱毒生ワクチンと組換え不活化ワクチンの両方があるし、インフルエンザも注射は不活化だが経鼻の弱毒生ワクチンもある。ポリオは、かつての経口生ワクチンでまれにワクチン関連麻痺が起きたため、2012年に不活化ワクチンへ切り替わった。生ワクチンにはワクチン株による発症を完全には防げない弱点がある、という好例だね。
医学生医学生
接種間隔のルールもありましたよね。CBTの勉強で混乱したところです。
ドクタードクター
現在は、注射の生ワクチンどうしを別の日に接種する場合に27日以上あける、という制限が中心で、それ以外の組み合わせには原則として間隔の制限はない。それから、γグロブリン製剤を投与された後は生ワクチンの効果が落ちるので、一定期間接種を延期する。臨床では、ステロイドや免疫抑制薬を使っている患者に生ワクチンを打たないよう、接種前の確認が欠かせないよ。

まとめ

我が国で予防に生ワクチンが使われる代表的な疾患は、結核(BCG)、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス感染症、黄熱であり、本問では結核と風疹が該当します。日本脳炎はVero細胞由来の不活化ワクチン、細菌性髄膜炎を防ぐHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン、高齢者向けの23価肺炎球菌ワクチンはいずれも不活化ワクチンです。生ワクチンは少ない接種回数で強い免疫を得られる一方、妊婦や免疫不全者には原則禁忌で、風疹ワクチンでは先天性風疹症候群の理論的リスクから接種後の避妊が求められます。また多糖体ワクチンは2歳未満で効きにくいため、乳幼児には蛋白と結合させた結合型ワクチンを用います。ワクチンの種類と禁忌を正しく区別することは、小児の予防接種計画や免疫抑制患者の診療で安全な判断を下すための基本となります。

解答・解説

正解はa, bです

我が国で使われているワクチンを、生ワクチンと不活化ワクチンに正しく分けられるかを問う問題である。

生ワクチンと不活化ワクチン

生ワクチンは、病原性を弱めた(弱毒化した)生きた病原体を接種し、体内で増えさせる。自然感染に近い形で液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導するので、少ない接種回数で強く長く続く免疫が得られる。その反面、接種した病原体が体内で増えるため、免疫不全者と妊婦には原則として禁忌である。 不活化ワクチンは、病原体を殺したもの、または免疫を誘導する成分だけを取り出したものである。成分ワクチン、トキソイド(毒素を無毒化したもの)、結合型ワクチン、遺伝子組換えワクチンなどが含まれる。体内で増えないので安全性は高いが、十分な免疫を得るには複数回の接種や追加接種が必要なことが多い。

我が国で使われる主な生ワクチン

BCG(結核)、麻疹・風疹(MRワクチン、単独ワクチン)、おたふくかぜ(ムンプス)、水痘、ロタウイルス(経口)、黄熱がある。これらを覚えておけば、それ以外はおおむね不活化ワクチンと判断できる。本問では結核(BCG)と風疹が生ワクチンにあたる。

選択肢考察

  1. ○a.  結核

    正しい。結核の予防にはBCG(Bacille Calmette-Guérin)ワクチンを使う。BCGはウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)を長期間継代培養して弱毒化した生菌ワクチンで、凍結乾燥製剤を溶かして使う。接種は管針法で行う。管針法は、9本の針のついた管針を上腕に押し当てて接種する方法である。定期接種で、1歳未満に1回接種する(標準的な接種期間は生後5〜8か月)。乳幼児の結核性髄膜炎や粟粒結核といった重症結核の予防効果が高い。生ワクチンなので、先天性免疫不全症の児には禁忌である。

  2. ○b.  風疹

    正しい。風疹には弱毒化した風疹ウイルスを使う生ワクチンがある。定期接種では主に麻疹と混合したMRワクチンを、1歳時と小学校入学前の1年間の計2回接種する。生ワクチンなので妊婦には禁忌である。ワクチン株が胎児に感染して先天性風疹症候群(難聴、白内障、先天性心疾患など)を起こす可能性を否定できないためである。接種後およそ2か月間は避妊が求められる。妊娠中に抗体価が低いとわかった女性には、出産後に接種する。

  3. ×c.  日本脳炎

    誤り。日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンである。現在のワクチンは、日本脳炎ウイルスをVero細胞(アフリカミドリザルの腎臓に由来する株化細胞)で増やし、ホルマリンで不活化して作る。かつてはマウス脳で増やしたウイルスから作ったワクチンを使っていた。これには急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との関連が疑われる例があり、2005年に積極的な接種勧奨が一時差し控えられた。その後、細胞培養ワクチンに切り替わった。定期接種は、1期(3歳ごろから初回2回、1年後に追加1回)と2期(9〜12歳ごろに1回)である。

  4. ×d.  細菌性髄膜炎

    誤り。乳幼児の細菌性髄膜炎の主な原因菌は、インフルエンザ菌b型(Hib:Haemophilus influenzae type b)と肺炎球菌である。予防に使うHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンは、いずれも不活化ワクチンである。Hibワクチンは、Hibの莢膜多糖体(PRP)に破傷風トキソイドを結合させた結合型ワクチンである。多糖体だけでは乳児の免疫系は抗体を十分に作れないが、蛋白と結合させるとT細胞の助けを借りて抗体ができるようになる。Hibワクチンは現在、ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオとの5種混合ワクチンとして定期接種されている。髄膜炎菌ワクチン(4価結合型)も不活化ワクチンである。

  5. ×e.  肺炎球菌性肺炎

    誤り。肺炎球菌ワクチンは、いずれも莢膜多糖体を使う不活化ワクチンである。肺炎球菌は莢膜の違いで約100種類の血清型に分かれ、ワクチンは主要な血清型を含むように作られている。 ・23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23):多糖体のみのワクチンである。2歳未満では抗体が十分にできない。高齢者の定期接種(65歳)のほか、脾摘後などのハイリスク者に使う。 ・結合型ワクチン(PCV):莢膜多糖体をキャリア蛋白(無毒化したジフテリア毒素 CRM197)に結合させたものである。乳幼児でも免疫を誘導できる。小児の侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎、菌血症など)の予防を目的に定期接種されている。含まれる血清型の数は13価から15価、20価へと拡大している。

我が国の主なワクチンの分類

・生ワクチン:BCG、麻疹・風疹(MR)、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス(経口)、黄熱、帯状疱疹(弱毒生水痘ワクチン)、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン ・不活化ワクチン(トキソイド・成分・結合型・組換えを含む):日本脳炎、DPT-IPV(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ)、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、A型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)、季節性インフルエンザ(注射)、狂犬病、髄膜炎菌、組換え帯状疱疹ワクチン ・トキソイド(不活化ワクチンの一種で、毒素を無毒化したもの):ジフテリア、破傷風

ポリオワクチンの変遷

かつては経口生ポリオワクチン(OPV)を使っていた。しかし、まれにワクチン株によるポリオ様麻痺(ワクチン関連麻痺)が起こるため、2012年に不活化ポリオワクチン(IPV)へ切り替えられた。生ワクチンには、ワクチン株の変異による発症を完全には防げないという弱点がある。

生ワクチン接種で注意すること

・禁忌:妊婦、明らかな免疫機能異常のある者、免疫抑制薬や高用量副腎皮質ステロイドで治療中の者 ・接種間隔:注射の生ワクチンどうしを別の日に接種する場合、27日以上(4週間)の間隔をあける。それ以外の組み合わせには、原則として間隔の制限はない(2020年の改正)。 ・γグロブリン製剤の投与を受けた後は、生ワクチンの効果が下がるので、一定期間接種を延期する。

細菌性髄膜炎とワクチン

Hibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンは2013年に定期接種になった。その後、この2菌種による小児の侵襲性感染症は大きく減っている。

POINT

・我が国の代表的な生ワクチンは、BCG、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス、黄熱である。 ・日本脳炎、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、HPV、DPT-IPVは不活化ワクチンである。 ・生ワクチンは妊婦と免疫不全者に原則禁忌である。風疹ワクチンを妊娠中に接種しないのは、先天性風疹症候群の理論的リスクがあるためである。 ・多糖体ワクチンは2歳未満で効きにくいので、乳幼児には蛋白と結合させた結合型ワクチン(Hib、PCV)を使う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。