手首は侵され、骨盤の付け根は守られる―関節リウマチの「好み」を見抜く
第106回医師国家試験 I問題 第6問
国試問題にチャレンジ
関節リウマチで障害されにくいのはどれか。
- a.手関節
- b.肘関節
- c.仙腸関節
- d.膝関節
- e.足関節
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
関節リウマチは滑膜の慢性炎症を主座とする左右対称性の多関節炎で、手指のPIP・MCP関節、手関節、足趾のMTP関節などの小関節から始まり、肘・膝・足関節などの大関節にも及びます。一方、手指のDIP関節、胸腰椎、仙腸関節は侵されにくく、脊椎ではむしろ頸椎の環軸関節が侵されて環軸椎亜脱臼を起こす点に注意が必要です。仙腸関節炎は、HLA-B27と関連し付着部炎を主体とする強直性脊椎炎などの脊椎関節炎の特徴であり、リウマトイド因子陰性、若年男性、炎症性腰背部痛といった特徴とあわせて関節リウマチと区別します。DIP関節の病変は変形性関節症や乾癬性関節炎を示唆します。罹患関節の分布から疾患を推定する視点は、関節炎を診るうえでの基本となります。
解答・解説
正解はcです
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の罹患関節の分布を問う一般問題である。
RAの関節病変の基本
RAは自己免疫を背景に関節の滑膜に慢性炎症(滑膜炎)が起こる疾患である。増殖した滑膜組織はパンヌスと呼ばれる肉芽組織を形成して軟骨や骨に浸潤し、骨びらんや関節破壊を引き起こす。したがって病変の主座は、滑膜をもつ可動関節(滑膜関節)であり、典型的には次のような分布をとる。 ・多関節性(通常5関節以上)で、左右対称性 ・手指の近位指節間(PIP)関節・中手指節(MCP)関節、手関節、足趾の中足趾節(MTP)関節などの小関節から始まることが多い ・進行すると肘・肩・膝・足関節などの大関節にも及ぶ ・脊椎では頸椎、とくに環軸関節が侵されやすく、環軸椎亜脱臼をきたす 一方、手指の遠位指節間(DIP)関節、胸腰椎、仙腸関節はRAで侵されにくい。仙腸関節炎は、強直性脊椎炎をはじめとする脊椎関節炎の特徴的所見であり、RAとの鑑別点として重要である。 選択肢のうち、手・肘・膝・足関節はいずれもRAの好発部位であり、障害されにくいのは仙腸関節である。
選択肢考察
- ×a. 手関節
誤り(障害されやすい)。手関節はRAの最も代表的な罹患関節の一つで、発症早期から腫脹・疼痛・朝のこわばりを生じやすい。進行すると尺骨頭の背側脱臼や手根骨の癒合・強直をきたし、手指の尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形などの手指変形とともに手の機能障害の原因となる。2010年ACR/EULAR分類基準でも、手関節は小関節として評価される。
- ×b. 肘関節
誤り(障害されやすい)。肘関節もRAで高頻度に侵される大関節であり、滑膜炎による腫脹や伸展制限(屈曲拘縮)をきたす。また、肘頭周囲や前腕伸側などの圧迫を受けやすい部位にはリウマトイド結節が生じやすい。
- ○c. 仙腸関節
正しい(障害されにくい)。仙腸関節はRAでは臨床的に問題となるほど侵されることはまれである。仙腸関節炎は、HLA-B27との関連が強い脊椎関節炎(強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎)の特徴で、腱や靱帯の骨付着部の炎症(付着部炎)を病態の中心とする。これらの疾患ではリウマトイド因子が通常陰性であり、炎症性腰背部痛、仙腸関節のX線・MRI異常、脊椎の強直(竹様脊椎)などを示す点でRAと区別される。
- ×d. 膝関節
誤り(障害されやすい)。膝関節はRAで侵されやすい荷重関節であり、滑膜炎による関節水腫、関節裂隙の狭小化、骨びらんを生じる。変形性膝関節症が内側優位の関節裂隙狭小化と骨棘形成を示しやすいのに対し、RAでは内外側がびまん性に狭小化し、骨萎縮を伴うことが多い。関節破壊が進行すれば人工膝関節置換術の対象となる。
- ×e. 足関節
誤り(障害されやすい)。足関節もRAの好発部位である。足部では中足趾節(MTP)関節が早期から侵されることが多く、外反母趾、槌趾、中足骨頭の足底側への突出(胼胝形成)など足趾の変形を生じ、歩行障害の原因となる。
RAで侵されやすい関節・侵されにくい関節
・侵されやすい:手指のPIP関節・MCP関節、手関節、足趾のMTP関節、肘・肩・膝・足関節、頸椎(環軸関節)、顎関節など ・侵されにくい:手指のDIP関節、胸椎・腰椎、仙腸関節 DIP関節は変形性関節症(Heberden結節)や乾癬性関節炎で侵されやすく、PIP関節の変形性関節症はBouchard結節と呼ばれる。
環軸椎亜脱臼
RAでは環椎横靱帯の弛緩や環軸関節の破壊により、環椎が前方へずれる環軸椎亜脱臼が起こりうる。頸髄圧迫による四肢のしびれや麻痺をきたすことがあり、気管挿管時などの頸部過伸展に注意が必要である。
2010年ACR/EULAR分類基準
1か所以上の関節に明確な滑膜炎があり、他疾患で説明できない場合に、関節病変(罹患関節の数と大小)、血清学的検査(リウマトイド因子・抗CCP抗体)、急性期反応物質(CRP・赤沈)、症状の持続期間(6週以上か)をスコア化し、合計6点以上(10点満点)でRAと分類する。小関節はMCP・PIP・第2〜5MTP・母指IP関節・手関節、大関節は肩・肘・股・膝・足関節とされ、DIP関節・第1手根中手関節・第1MTP関節は評価対象から除外される(変形性関節症で侵されやすいため)。
脊椎関節炎との対比
・RA:対称性の末梢多関節炎(小関節優位)、滑膜炎が主体、RF・抗CCP抗体陽性が多い、女性に多い ・強直性脊椎炎:仙腸関節炎と脊椎炎が主体、付着部炎、HLA-B27陽性が多い、若年男性に多い、RF陰性
POINT
・RAは滑膜炎による対称性の多関節炎で、手指(PIP・MCP)、手関節、足趾(MTP)などの小関節から始まり、肘・膝・足関節などの大関節にも及ぶ。 ・RAで侵されにくいのは、DIP関節、胸腰椎、仙腸関節。 ・脊椎では頸椎(環軸関節)が侵され、環軸椎亜脱臼に注意する。 ・仙腸関節炎をみたら、強直性脊椎炎などの脊椎関節炎(HLA-B27関連)を考える。
