StudyMed医師国家試験

検診で見つかった「トサカ状のいぼ」―尖圭コンジローマとHPVの型を読み解く

第106回医師国家試験 I問題 第43問

国試問題にチャレンジ

第106回 I問題 第43問

26歳の女性。子宮頸がん検診のために来院したところ,外陰部の皮膚病変を認めた。病変は淡赤色で鶏冠状の小結節であり,会陰から肛門周囲の皮膚まで広がっている。痒みと痛みとを訴えていない。  この疾患の原因として考えられるのはどれか。

  1. a.アデノウイルス
  2. b.単純ヘルペスウイルス
  3. c.サイトメガロウイルス
  4. d.ヒト免疫不全ウイルス
  5. e.ヒトパピローマウイルス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、外陰部の皮膚病変の見た目から疾患を推定し、その原因ウイルスを答える問題だよ。注目してほしいのは、病変の「形」と「自覚症状の有無」、そして「広がり方」の3つ。まずは、鶏冠状という表現から何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
ニワトリのトサカのような、ギザギザした乳頭状の盛り上がりですよね。いぼっぽい印象を受けました。
ドクタードクター
その通り。上皮が乳頭状に増殖してできる隆起性の病変だ。それが外陰部から会陰、肛門周囲へと多発して広がっていて、痒みも痛みもない。若い女性の外陰部にこういう病変があれば、まず尖圭コンジローマを考える。
医学生医学生
性感染症の講義で習いました。でも、外陰部の性感染症というと、まず痛い水疱の性器ヘルペスが浮かんでしまいます。
ドクタードクター
性器ヘルペスは確かに頻度が高いけれど、見た目がまったく違う。単純ヘルペスウイルスによる病変は小水疱が多発して、破れると浅い潰瘍になる。強い痛みが特徴で、初感染では発熱や鼠径リンパ節の腫れ、排尿困難を伴うこともある。今回のように無痛性で盛り上がった結節をつくることはないんだ。
医学生医学生
「痛い水疱・潰瘍ならヘルペス、痛くない盛り上がりならコンジローマ」と整理すればいいですね。
ドクタードクター
いい整理だね。では、尖圭コンジローマの原因は何だろう。
医学生医学生
ヒトパピローマウイルスです。子宮頸癌の原因と同じウイルスですよね。
ドクタードクター
正解。ただし、型が違うことが大事なポイントだ。尖圭コンジローマを起こすのは主に低リスク型の6型と11型。皮膚や粘膜の小さな傷から基底細胞に感染し、上皮を乳頭状に増殖させて良性のいぼをつくる。一方、子宮頸癌に関わるのは16型や18型などの高リスク型だよ。
医学生医学生
同じHPVでも、いぼを作る型と癌を作る型がある、ということですね。ほかの選択肢のウイルスはどうでしょうか。アデノウイルスは性行為で感染することもあると聞いた気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。アデノウイルスは性行為を介して尿道炎を起こすことがある。でも主な病気は咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎、小児の胃腸炎などで、外陰部にいぼ状の隆起をつくることはない。サイトメガロウイルスも、健康な人ではほとんど不顕性感染で、問題になるのは先天性感染や、移植後・AIDSなど免疫不全者の網膜炎や肺炎だ。
医学生医学生
HIVはどうですか。性感染症という点では共通していますが。
ドクタードクター
HIVはCD4陽性T細胞に感染して細胞性免疫を落とす全身性の感染症で、それ自体が外陰部に限局した結節をつくるわけではない。ただ、尖圭コンジローマと合併することはあり、HIV感染者ではコンジローマが多発・難治化しやすい。だから性感染症を1つ見つけたら、ほかの性感染症の検査も考えるのが臨床の鉄則なんだ。
医学生医学生
産婦人科の実習で、性感染症が見つかった患者さんに梅毒やHIVの検査も一緒に出していたのは、そういう理由だったんですね。
ドクタードクター
そう。鑑別でもう1つ気をつけたいのが、第2期梅毒の扁平コンジローマ。名前が似ているけれど、こちらは表面が平らで湿った隆起だ。乳頭状のトサカ形とは見た目が違うよ。
医学生医学生
診断はどうやってつけるのですか。生検が必要でしょうか。
ドクタードクター
多くは視診で診断できる。ただ、見た目が典型的でない場合や、Bowen様丘疹症や有棘細胞癌などとの区別が必要な場合は生検を行う。それから、腟や子宮頸部にも病変がないか調べることも大切だ。治療はイミキモドクリームの外用、液体窒素の凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、切除などがあるけれど、再発が多いのが悩みどころだね。
医学生医学生
予防という点では、HPVワクチンが効くのでしょうか。
ドクタードクター
4価と9価のワクチンには6型と11型が含まれているから、子宮頸癌だけでなく尖圭コンジローマの予防効果もある。2価ワクチンは16型と18型だけなので、コンジローマの予防は期待できない。それから妊婦さんでは、妊娠中にコンジローマが大きくなりやすく、分娩時の産道感染で赤ちゃんに再発性呼吸器乳頭腫症を起こすことがある点も覚えておこう。
医学生医学生
見た目からウイルスと型まで結びつけて、さらにワクチンや妊娠への影響までつながるんですね。
ドクタードクター
その通り。今回の患者さんは子宮頸がん検診で来院しているから、子宮頸部の細胞診とあわせて評価する、という流れも自然だね。

まとめ

外陰部から会陰・肛門周囲に多発する、無痛性の淡紅色で乳頭状・鶏冠状の小結節は尖圭コンジローマの典型像であり、原因はヒトパピローマウイルスの低リスク型である6型・11型です。同じHPVでも16型・18型などの高リスク型は子宮頸癌などの原因となり、型によって病態が異なる点が重要です。有痛性の水疱・潰瘍なら単純ヘルペスウイルスによる性器ヘルペス、平坦で湿った隆起なら第2期梅毒の扁平コンジローマと、病変の形と痛みの有無で鑑別します。4価・9価HPVワクチンは尖圭コンジローマも予防でき、性感染症を1つ見つけたらHIVや梅毒など他の性感染症も検索することが臨床上大切です。病変の見た目からウイルスの型、予防、合併症まで一連で理解することは、婦人科・皮膚科・感染症の診療に共通する基礎となります。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

・26歳女性。性的活動期にある若年者である。 ・外陰部に淡赤色の鶏冠状(ニワトリのトサカのような形)の小結節が多発し、会陰から肛門周囲の皮膚にまで広がっている。 ・痒みや痛みなどの自覚症状はなく、検診で偶然見つかっている。

診断へのプロセス

外陰部に隆起する病変をつくる疾患としては、性感染症では尖圭コンジローマ、扁平コンジローマ(第2期梅毒)、梅毒の初期硬結、伝染性軟属腫、疥癬(結節型)などが、性感染症以外では脂漏性角化症、腟前庭乳頭腫症、Bowen病や乳房外Paget病、基底細胞癌などの腫瘍が挙げられる。 このうち、若年者で、無症状の淡紅色〜褐色の乳頭状・鶏冠状の小結節が外陰部から会陰・肛門周囲へと多発・拡大するものは、尖圭コンジローマの典型像である。扁平コンジローマは表面が平坦で湿潤した扁平隆起であり、伝染性軟属腫は中心に臍窩(へそのようなくぼみ)をもつ光沢のある丘疹である点で区別される。 尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)の低リスク型、主に6型と11型の感染による良性の乳頭腫(いぼ)である。選択肢のうち、上皮を増殖させて隆起性病変をつくるのはHPVのみであり、他のウイルスはこのような病変をつくらない。

選択肢考察

  1. ×a.  アデノウイルス

    アデノウイルスは咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎、急性出血性膀胱炎、小児の胃腸炎(40型・41型)、肺炎などの原因となる。性行為を介して尿道炎を起こすことはあるが、外陰部に乳頭状の隆起性病変(いぼ)をつくることはなく、本例とは合わない。

  2. ×b.  単純ヘルペスウイルス

    単純ヘルペスウイルス(主に2型、近年は1型も増加)は性器ヘルペスの原因である。外陰部に小水疱が多発し、破れて浅い潰瘍となる。強い疼痛を伴い、初感染では発熱、鼠径リンパ節腫脹、排尿困難をきたすこともある。無痛性の鶏冠状結節という本例の所見とは異なる。

  3. ×c.  サイトメガロウイルス

    サイトメガロウイルスは免疫が正常な人では多くが不顕性感染で、初感染時に伝染性単核球症様の症状を呈することがある程度である。問題となるのは、胎内感染による先天性サイトメガロウイルス感染症と、臓器移植後やAIDSなど免疫不全者での網膜炎・肺炎・腸炎である。外陰部の隆起性病変をつくることはない。

  4. ×d.  ヒト免疫不全ウイルス

    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はCD4陽性T細胞に感染し、細胞性免疫を低下させてAIDSに至る全身性の感染症を起こす。HIV自体が外陰部に限局した乳頭状の結節をつくることはない。ただし、同じ性感染症として尖圭コンジローマと合併することがあり、HIV感染者では尖圭コンジローマが多発・難治化しやすいため、性感染症を1つ見つけたら他の性感染症の検査も考慮する。

  5. ○e.  ヒトパピローマウイルス

    尖圭コンジローマは主にHPVの低リスク型である6型・11型が、性行為などで生じた皮膚・粘膜の微小な傷から基底細胞に感染し、上皮を乳頭状に増殖させて生じる。外陰部から会陰・肛門周囲に多発する無症状の鶏冠状・乳頭状の小結節という本例の所見に合致する。なお、病変から子宮頸癌などとの関連が深い16型・18型などの高リスク型HPVが同時に検出されることもある。

尖圭コンジローマ

・HPV(主に6型・11型)による性感染症で、潜伏期は3週〜8か月程度(平均約3か月)とされる。 ・好発部位:女性では大・小陰唇、腟前庭、会陰、肛門周囲、腟・子宮頸部。男性では陰茎の冠状溝・包皮、亀頭、肛門周囲。 ・症状:淡紅色〜褐色の乳頭状・鶏冠状の小結節が多発し、融合してカリフラワー状となることもある。通常は自覚症状に乏しいが、ときに軽い痒みや違和感を伴う。 ・診断:多くは視診で診断する。非典型例や悪性腫瘍(Bowen様丘疹症、有棘細胞癌など)との鑑別を要する場合は生検を行う。子宮頸部・腟の病変の検索も重要である。 ・治療:イミキモドクリーム(免疫賦活作用をもつ外用薬)の塗布、液体窒素による凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、外科的切除などがある。治療後も再発が多い。 ・妊婦では妊娠中に増大しやすく、分娩時の産道感染により児に若年性再発性呼吸器乳頭腫症(喉頭乳頭腫)を起こすことがある。

HPVの型と疾患

・低リスク型(6型・11型など):尖圭コンジローマ、喉頭乳頭腫。 ・高リスク型(16型・18型・31型・33型・52型・58型など):子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)・子宮頸癌、外陰癌、腟癌、肛門癌、陰茎癌、中咽頭癌。 ・皮膚型(1型・2型など):尋常性疣贅、足底疣贅などのいぼ。

HPVワクチン

・2価ワクチン(16・18型)、4価ワクチン(6・11・16・18型)、9価ワクチン(4価の型に31・33・45・52・58型を追加)がある。4価と9価は尖圭コンジローマの予防効果ももつ。 ・日本では小学6年生〜高校1年生相当の女子が定期接種の対象である。

外陰部の主な性感染症の病変の特徴

・尖圭コンジローマ:無痛性の乳頭状・鶏冠状の隆起。 ・性器ヘルペス:有痛性の小水疱・浅い潰瘍。 ・梅毒:第1期は無痛性の初期硬結・硬性下疳、第2期は扁平コンジローマ(扁平で湿潤した隆起)。 ・軟性下疳(軟性下疳菌):有痛性の潰瘍と有痛性の鼠径リンパ節腫脹。

POINT

・外陰部〜会陰・肛門周囲に多発する無症状の鶏冠状・乳頭状の小結節 → 尖圭コンジローマ。 ・原因はHPVの低リスク型(6型・11型)。子宮頸癌の原因は高リスク型(16型・18型など)。 ・4価・9価HPVワクチンは尖圭コンジローマも予防する。 ・性器ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)は有痛性の水疱・潰瘍で、隆起性病変ではない。 ・扁平コンジローマ(第2期梅毒)との鑑別に注意する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。