StudyMed医師国家試験

心音は背中で聴け―第1頭位の胎児心拍が「臍の左下」で聴こえる理由

第106回医師国家試験 E問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第5問

妊娠38週である妊婦の腹部の模式図を示す。  胎児が第1頭位の場合に,胎児心拍を聴取する部位(●)で正しいのはどれか。

第106回 E問題 第5問の問題画像
  1. a.
  2. b.
  3. c.
  4. d.
  5. e.

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胎位と胎向から胎児心拍を聴く位置を判断する問題だ。カギは「胎児心音はどこで一番よく聴こえるか」と「模式図の左右をどう読むか」の2つ。まず、第1頭位という言葉の意味を整理しよう。
医学生医学生
頭位は頭が下にある状態ですよね。第1というのは…児背が母体の左にあるほう、だったと思います。
ドクタードクター
その通り。胎位は胎児と子宮の縦軸の関係で、頭が骨盤側にある頭位が正常、殿部が下の骨盤位や横位は異常だ。胎向は児背が母体のどちらを向くかで、左なら第1胎向、右なら第2胎向。こちらはどちらも正常で、異常な胎向というものはないんだ。
医学生医学生
第1頭位は「頭が下で背中が母体の左」ということですね。では心音はどこで聴こえるんでしょう。胎児の胸の前側かと思っていました。
ドクタードクター
直感的にはそう思うよね。でも胎児の顔や手足側は、四肢や羊水を挟むので音が伝わりにくい。心臓に近く、背中という平らな面が子宮壁に接している児背側、特に肩甲部あたりで最もよく聴こえるんだ。
医学生医学生
なるほど、心音は背中側で聴くんですね。そうすると左右は児背のある母体の左側になります。
ドクタードクター
そう。次は上下だ。頭位では頭が骨盤側にあって、心臓は胸にあるから、どのあたりの高さになる?
医学生医学生
頭が下なら心臓はそれより少し上ですが、それでも臍より下ですね。逆に骨盤位なら頭が子宮底側なので臍より上になります。
ドクタードクター
完璧。だから第1頭位は母体の左下腹部、つまり臍の左下で聴取する。ここで最後の落とし穴が図の向きだ。この模式図は妊婦を正面から見ているから、向かって右が母体の左になる。
医学生医学生
危なかったです。自分から見て左に丸をつけそうになりました。OSCEで患者さんの右側に立って診察するときも、左右を取り違えないよう気をつけるように言われました。
ドクタードクター
大事な感覚だね。正面から見て臍の右下にある●、これが母体の左下腹部で正解だ。ほかの位置も意味づけしておこう。臍の向かって左下、つまり母体の右下腹部はどうかな。
医学生医学生
臍より下なので頭位、母体の右なので第2胎向。第2頭位の聴取部位ですね。
ドクタードクター
その通り。左右の取り違えを誘う選択肢だ。では、臍の上側にある2つはどうだろう。
医学生医学生
臍より上なので骨盤位ですね。母体の右上なら第2骨盤位、母体の左上なら第1骨盤位です。母体の左上は左右だけなら第1頭位と同じなので、上下を間違えると選んでしまいそうです。
ドクタードクター
よく整理できている。最後に子宮底の正中は?
医学生医学生
頭位なら胎児のお尻がある場所なので、心音は聴こえにくそうです。
ドクタードクター
その通り。骨盤位なら頭がある場所になる。胎児の心臓は児背側で左右どちらかに偏るから、子宮底正中は通常の聴取部位ではないんだ。
医学生医学生
上下は胎位、左右は胎向で決まる、という2軸で考えればいいんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、実際の診察では児背の位置をLeopold触診法で推定する。第1段で子宮底の胎児部分、第2段で子宮の左右側面を触れて平らで抵抗のある児背を探し、胎向を判定する。第3段・第4段で先進部とその骨盤への進入具合を確認するんだ。
医学生医学生
産婦人科実習で、助産師さんが触診してからすぐにドップラーを当てて心音を拾っていたのは、児背の位置がわかっていたからなんですね。
ドクタードクター
まさにそう。聴取にはトラウベ型の胎児聴診器や超音波ドップラーを使い、胎児心拍数の正常な基線は110〜160bpmだ。分娩中はCTGで連続的に評価する。妊娠後期にはほとんどの胎児が自然に頭位になり、正期産での骨盤位は数%程度とされる。心音の位置が臍より上で聴こえたら、骨盤位を疑って超音波で確認するきっかけにもなるよ。

まとめ

胎児心音は、心臓に近く音が伝わりやすい児背側の腹壁で最もよく聴こえます。上下は胎位で決まり、頭位では臍より下、骨盤位では臍より上となり、左右は胎向で決まり、児背が母体の左なら第1胎向、右なら第2胎向です。したがって第1頭位では母体の左下腹部、第2頭位では右下腹部、第1骨盤位では左上腹部、第2骨盤位では右上腹部で聴取します。模式図は正面から見た図なので、向かって右が母体の左になる点に注意が必要です。Leopold触診法で児背の位置を推定し、心音の聴取部位と結びつけて考えることは、妊婦健診や分娩管理での胎位評価の基本となります。

解答・解説

正解はeです

図の読み方

模式図は妊婦を正面から見たものである。したがって、図の向かって左側が母体の右側、向かって右側が母体の左側になる。中央の小さな円は臍(へそ)であり、胎児心拍の聴取部位が臍より上か下か、母体の右か左かを判断する目印になる。

用語の整理

・胎位: 胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係。頭が下(骨盤側)にある頭位が正常で、殿部や足が下にある骨盤位(いわゆる逆子)、胎児が横たわる横位は異常である。 ・胎向: 児背(胎児の背中)が母体のどちら側を向いているか。児背が母体の左側にあれば第 1 胎向、右側にあれば第 2 胎向である。第 1・第 2 胎向はいずれも正常であり、異常な胎向というものはない。 ・第 1 頭位とは「頭位で、かつ第 1 胎向」、すなわち頭が下で児背が母体の左側にある状態を指す。

胎児心拍の聴取部位の考え方

胎児心音は、胎児の心臓に近く、かつ音がよく伝わる児背(とくに肩甲部付近)側の腹壁で最もよく聴こえる。胎児の顔や手足側は四肢や羊水を介するため聴こえにくい。 ・上下の位置: 頭位では胎児の頭が骨盤側にあり、心臓は胸部にあるので、臍より下の高さで聴取される。骨盤位では頭が子宮底側にあるため、心臓の位置は臍より上になる。 ・左右の位置: 第 1 胎向では児背が母体の左側にあるため、母体の左側で聴取される。第 2 胎向では母体の右側となる。 以上から、第 1 頭位では「母体の左下腹部(臍の左下)」で胎児心拍を聴取する。図では、臍の向かって右下に●がある e が該当する。

選択肢考察

  1. ×a.  

    臍の向かって左下、すなわち母体の右下腹部に●がある。臍より下で聴取されるので頭位であり、母体の右側なので児背が右にある第 2 胎向である。したがってこれは第 2 頭位での聴取部位であり、第 1 頭位には当たらない。左右の取り違えを誘う選択肢であり、図が正面から見た図であることに注意する。

  2. ×b.  

    臍の向かって左上、すなわち母体の右上腹部に●がある。臍より上で聴取されるのは胎児の頭が子宮底側にある骨盤位の場合であり、母体の右側なので第 2 胎向である。したがってこれは第 2 骨盤位での聴取部位に相当する。

  3. ×c.  

    子宮底の正中付近に●がある。頭位・骨盤位のいずれでも、胎児の心臓は児背側で臍の高さの上下どちらかの左右に偏って位置するため、子宮底の正中部は通常の胎児心拍の聴取部位ではない。頭位ではここは胎児の殿部に、骨盤位では胎児の頭部に相当する部位である。

  4. ×d.  

    臍の向かって右上、すなわち母体の左上腹部に●がある。臍より上なので骨盤位、母体の左側なので児背が左にある第 1 胎向であり、これは第 1 骨盤位での聴取部位に相当する。左右は第 1 頭位と同じだが、上下が異なる。

  5. ○e.  

    臍の向かって右下、すなわち母体の左下腹部に●がある。第 1 頭位では胎児の頭が骨盤側にあるので心臓は臍より下の高さにあり、児背が母体の左側を向いているので心音は母体の左側で最もよく聴こえる。したがって母体の左下腹部が第 1 頭位の胎児心拍聴取部位として正しい。

胎位・胎向と胎児心拍聴取部位の対応(母体から見た位置)

・第 1 頭位: 臍の左下 ・第 2 頭位: 臍の右下 ・第 1 骨盤位: 臍の左上 ・第 2 骨盤位: 臍の右上 横位では臍の高さ付近で聴取されることが多い。

Leopold 触診法

腹部の触診で胎位・胎向を推定する方法で、第 1〜4 段に分かれる。 ・第 1 段: 子宮底の高さと、子宮底にある胎児部分(丸く硬く浮球感があれば頭、柔らかく不整なら殿部)を確認する。 ・第 2 段: 子宮の左右側面を触れ、平らで抵抗のある児背がどちら側かを確認し、胎向を判定する。 ・第 3 段: 恥骨結合上で先進部(下にある胎児部分)を確認する。 ・第 4 段: 先進部の骨盤内への進入の程度を確認する。 児背の位置がわかれば、胎児心拍をどこで聴くとよいかが推定できる。

胎児心拍の聴取法と正常値

トラウベ型の胎児聴診器(木製などのラッパ状の聴診器)や、超音波ドップラー法を用いる機器で聴取する。胎児心拍数の正常範囲(基線)は 110〜160 bpm である。分娩時の連続的な評価には胎児心拍数陣痛図(CTG)を用いる。

妊娠末期の胎位

妊娠中期までは骨盤位も多いが、妊娠後期になると大部分の胎児は自然に頭位となり、正期産時の骨盤位は数%程度である。

POINT

・模式図は正面から見た図であり、向かって右が母体の左であることに注意する。 ・第 1 胎向は児背が母体の左、第 2 胎向は児背が母体の右。いずれも正常である。 ・胎児心音は児背側で最もよく聴こえる。頭位では臍より下、骨盤位では臍より上。 ・第 1 頭位の胎児心拍聴取部位は母体の左下腹部(臍の左下)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。