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エコーは「形」と「流れ」を測る―圧を測るのはカテーテルの仕事

第106回医師国家試験 B問題 第18問

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第106回 B問題 第18問

心エコー検査で計測できるのはどれか。

  1. a.中心静脈圧
  2. b.僧帽弁口面積
  3. c.平均大動脈圧
  4. d.左室収縮期圧
  5. e.混合静脈血酸素飽和度

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、心エコー検査で何が計測できるかを問う問題だ。エコーがどんな原理で何をとらえているかを理解していれば、暗記に頼らず解ける。ポイントは、エコーが直接測れるものと、カテーテルでないと測れないものを区別することだよ。
医学生医学生
心エコーは心臓の動きを見る検査、というイメージくらいしかありません。
ドクタードクター
原理から考えよう。エコーは超音波の反射で心臓の形と動きを画像化し、さらにドプラ法で血流の速度と方向をとらえる。だから得意なのは、長さ・面積・容積といった形態計測と、血流速度の計測の2つなんだ。
医学生医学生
逆に言うと、圧や酸素飽和度みたいな数値は直接は測れない、ということですか。
ドクタードクター
その通り。圧はカテーテルを血管内や心腔内に入れて圧トランスデューサで測るのが基本だし、酸素飽和度は採血して血液ガス分析をするか、専用カテーテルで連続測定する。そう考えると、選択肢の中で形態の指標は1つしかないよね。
医学生医学生
僧帽弁口面積ですね。面積なら画像上で測れそうです。
ドクタードクター
正解。傍胸骨短軸像で拡張期に最も開いた弁口の輪郭をなぞって面積を直接求めるプラニメトリ法がある。もう1つは、連続波ドプラで左房と左室の圧較差が半分に下がるまでの時間、つまり圧半減時間から、およそ220をその時間で割って算出する方法だ。
医学生医学生
正常はどのくらいの面積でしたっけ。
ドクタードクター
だいたい4〜6 cm²。僧帽弁狭窄症では、日本の教科書的な区分だと1.5 cm²未満で中等度以上、1.0 cm²以下で高度とされることが多い。経皮的僧帽弁交連切開術や弁置換術の適応判断に直結する大事な数字だよ。
医学生医学生
中心静脈圧はどうでしょう。循環器内科の実習で、下大静脈を見て右房圧を見積もっているのを見たことがあります。
ドクタードクター
よく見ているね。下大静脈の径と呼吸性変動から右房圧を大まかに推定することはできる。でもそれはあくまで推定で、中心静脈圧を正式に測るのは中心静脈カテーテルやSwan-Ganzカテーテルなんだ。直接計測とは言えない。
医学生医学生
平均大動脈圧や左室収縮期圧も、同じように推定はできても測定はカテーテル、ということですね。
ドクタードクター
そう。平均大動脈圧は左心カテーテルで大動脈内の圧波形を記録して求めるし、臨床では動脈ラインや血圧から拡張期血圧に脈圧の3分の1を足して近似することも多い。左室収縮期圧は、カテーテルを大動脈弁を越えて左室に進めて直接測る。エコーでは大動脈弁狭窄がなければ収縮期血圧とほぼ同じとみなす程度の推算にとどまるね。
医学生医学生
混合静脈血酸素飽和度は、名前からしてエコーとは関係なさそうです。ICUの実習でモニターに表示されていました。
ドクタードクター
そうだね。混合静脈血は全身から戻った血液が右室で混ざったもので、通常は肺動脈血を指す。Swan-Ganzカテーテルで肺動脈から採血するか、オキシメトリ機能付きカテーテルで連続測定する。全身の酸素需給バランスを反映する指標で、正常はおおむね70〜75%前後だ。
医学生医学生
でも先生、エコーで肺動脈圧を推定しているレポートも見た気がします。あれは何ですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。ドプラで得た流速から簡易ベルヌーイ式、圧較差はおよそ流速の2乗の4倍、という関係で圧較差を出せるんだ。三尖弁逆流の最大流速から右室と右房の圧較差を求め、推定右房圧を足すと右室収縮期圧が推定できる。肺動脈狭窄がなければ肺動脈収縮期圧にほぼ等しいから、肺高血圧のスクリーニングに使われる。ただし、これも推定値であることは忘れないで。
医学生医学生
エコーは非侵襲で繰り返せるのが強みで、正確な圧が必要ならカテーテル、という使い分けですね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。臨床でもまずエコーで形と流れを評価し、治療方針の決定に正確な圧や酸素飽和度が必要なときにカテーテル検査を考える。左房粘液腫、心タンポナーデ、肥大型心筋症の僧帽弁前尖の収縮期前方運動なども、エコーが診断の決め手になる代表例だよ。

まとめ

心エコー検査は超音波の反射で心臓の形態と動きを、ドプラ法で血流速度を評価する非侵襲的検査であり、直接計測できるのは径・壁厚・面積・容積などの形態と血流速度です。僧帽弁口面積はプラニメトリ法や圧半減時間法で求められ、僧帽弁狭窄症の重症度判定と治療方針の決定に欠かせません。中心静脈圧、平均大動脈圧、左室収縮期圧、混合静脈血酸素飽和度はカテーテルで直接測定する値で、エコーでは下大静脈径や簡易ベルヌーイ式を用いた推定にとどまります。三尖弁逆流速度からの右室収縮期圧推定は肺高血圧のスクリーニングに有用ですが、あくまで推定値です。検査の原理から何が測れるかを考える姿勢は、エコーとカテーテルを適切に使い分ける臨床判断の基礎になります。

解答・解説

正解はbです

心エコー検査(心臓超音波検査)は、超音波の反射を利用して心臓の形態と動きを画像化し、さらにドプラ法で血流の速度と方向をとらえる非侵襲的検査である。したがって、エコーが直接得意とするのは「長さ・面積・容積などの形態計測」と「血流速度の計測」の二つである。 一方、圧(mmHg)や血液ガスの値そのものは、エコーでは直接測れない。圧はカテーテルを血管内・心腔内に入れて圧トランスデューサで測定するのが基本であり、酸素飽和度は採血して血液ガス分析装置やオキシメータで測るか、光ファイバー付きカテーテルで連続測定する。エコーでも、ドプラ法で得た血流速度から簡易ベルヌーイ式(圧較差 ≒ 4 × 流速[m/s]の2乗)を使って圧較差を求め、そこから心腔内圧を「推定」することはできるが、これはあくまで間接的な推算値である。 本問では、各選択肢が「エコーで画像上直接計測できる形態的指標」か、「カテーテルなど侵襲的手技で測定すべき圧・血液ガス指標」かを見分ければよい。前者に当たるのは弁口の面積であり、僧帽弁口面積が正解となる。

選択肢考察

  1. ×a.  中心静脈圧

    中心静脈圧(central venous pressure:CVP)は上大静脈・下大静脈が右房に流入する付近の圧で、右房圧にほぼ等しい。正式な測定は中心静脈カテーテルやSwan-Ganzカテーテル(肺動脈カテーテル)、右心カテーテル検査で圧を直接測ることによる。エコーでは下大静脈(IVC)の径と呼吸による径の変化(呼吸性変動)から右房圧を大まかに見積もることはできるが、数値を直接計測するものではない。

  2. ○b.  僧帽弁口面積

    僧帽弁口面積(mitral valve area:MVA)は心エコーで計測できる代表的な指標である。傍胸骨短軸像で拡張期に最も開いた僧帽弁口の輪郭をトレースして面積を直接求める方法(プラニメトリ法)や、連続波ドプラで求めた拡張期の左房-左室間圧較差の減衰の速さ(圧半減時間:pressure half time、PHT)からMVA ≒ 220/PHT として算出する方法がある。正常のMVAは4〜6 cm²程度で、僧帽弁狭窄症では1.5 cm²未満で中等度以上、1.0 cm²以下で高度とされ、治療方針(経皮的僧帽弁交連切開術や弁置換術の適応など)の決定に直結する。形態計測はエコーの得意分野であり、精度も高い。

  3. ×c.  平均大動脈圧

    平均大動脈圧は、左心カテーテル検査で大動脈内にカテーテル先端を置いて圧波形を記録し、その平均値を求めて得る。臨床的には動脈ラインや血圧計で測った収縮期・拡張期血圧から「拡張期血圧+(脈圧/3)」として平均血圧を近似することも多い。いずれにせよエコーで大動脈圧そのものを計測することはできない。

  4. ×d.  左室収縮期圧

    左室収縮期圧は、左心カテーテル検査でカテーテルを大動脈弁を越えて左室内に進め、直接測定する。エコーでは、大動脈弁狭窄がなければ左室収縮期圧は収縮期血圧とほぼ等しいとみなしたり、大動脈弁狭窄の圧較差を収縮期血圧に加えたりして推定することはあるが、これは間接的な推算にすぎず、エコーで直接計測できる値ではない。

  5. ×e.  混合静脈血酸素飽和度

    混合静脈血とは、上大静脈・下大静脈・冠静脈洞から戻った血液が右室で十分に混ざり合ったもので、通常は肺動脈血を指す。その酸素飽和度(SvO₂)は、Swan-Ganzカテーテルで肺動脈から採血して測定するか、オキシメトリ機能付きカテーテルで連続測定する。全身の酸素需給バランスの指標であり(正常はおおむね70〜75%前後)、エコーで測れる性質の値ではない。

心エコーで評価できる主な項目

・形態計測(Mモード法・断層法):左室拡張末期径・収縮末期径、心室中隔・左室後壁の厚さ、左房径、大動脈径、弁口面積など。 ・心機能:左室駆出率(EF)、左室内径短縮率(%FS)、局所壁運動異常。 ・ドプラ法:弁通過血流速度、弁狭窄の圧較差(簡易ベルヌーイ式 ΔP ≒ 4V²)、逆流の程度(カラードプラ)、左室流入血流(E/A比など)による拡張能評価。 ・推定値:三尖弁逆流の最大流速から右室-右房間圧較差を求め、推定右房圧(下大静脈径と呼吸性変動から推定)を加えて右室収縮期圧(肺動脈狭窄がなければ肺動脈収縮期圧にほぼ等しい)を推定する。肺高血圧のスクリーニングに有用である。

心エコーが診断に特に役立つ病態の例

僧帽弁狭窄症(弁口面積、弁の肥厚・石灰化、左房拡大)、左房粘液腫(左房内の可動性腫瘤)、心膜液貯留・心タンポナーデ(エコーフリースペース、右房・右室の虚脱)、肥大型心筋症(非対称性中隔肥大、僧帽弁前尖の収縮期前方運動)、心房中隔欠損症(右心系拡大、短絡血流)、大動脈弁閉鎖不全症(拡張期逆流ジェット)など。経食道心エコーは左房内血栓や感染性心内膜炎の疣贅、大動脈解離の評価に優れる。

カテーテルで測定する項目

右心カテーテル(Swan-Ganzカテーテル):中心静脈圧・右房圧、右室圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量(熱希釈法)、混合静脈血酸素飽和度。 左心カテーテル:左室圧(収縮期圧・拡張末期圧)、大動脈圧、左室造影、冠動脈造影。

POINT

・心エコーが直接計測できるのは、径・壁厚・面積・容積などの形態と、ドプラ法による血流速度である。 ・僧帽弁口面積はプラニメトリ法や圧半減時間法で求められ、僧帽弁狭窄症の重症度判定に用いる(1.0 cm²以下で高度)。 ・中心静脈圧、大動脈圧、左室圧、混合静脈血酸素飽和度はカテーテルで直接測定する(エコーでは推定にとどまる)。 ・エコーで推定できる圧の代表は、三尖弁逆流速度からの右室収縮期圧(≒肺動脈収縮期圧)である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。