StudyMed医師国家試験

口のどこにできた?―「奥のアフタ」が教えるヘルパンギーナ

第105回医師国家試験 I問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第105回 I問題 第22問

ヘルパンギーナのアフタが好発する部位はどれか。

  1. a.舌
  2. b.口角
  3. c.口唇
  4. d.頬粘膜
  5. e.軟口蓋

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児の口腔内に水疱やアフタをつくる病気のうち、ヘルパンギーナの病変がどこにできるかを問う問題だ。ポイントは「口の奥か、口の前方か」という分布。似た病気との見分け方にも直結するから、まとめて整理しよう。まず、ヘルパンギーナってどんな病気か説明できるかな。
医学生医学生
夏に乳幼児の間で流行する「夏かぜ」で、コクサッキーウイルスが原因だったと思います。
ドクタードクター
そうだね。主にA群コクサッキーウイルスをはじめとするエンテロウイルスが原因で、1〜4歳くらいの子に初夏から夏にかけて流行する。突然38〜40℃の高熱が出て、喉を痛がるのが典型だ。
医学生医学生
小児科実習で、喉を診たら赤いポツポツがあると言われた子がいました。あれは舌の上だったかな……舌にもできますか。
ドクタードクター
そこがまさに問われているところだ。ヘルパンギーナの病変は口腔の奥、つまり軟口蓋を中心に、口蓋垂や前口蓋弓、咽頭にかけて集まる。周りが赤く縁取られた1〜2mmほどの小水疱がいくつもでき、それが破れて浅い潰瘍、アフタになるんだ。舌や口唇といった口腔の前方には、通常みられない。
医学生医学生
じゃあ答えは軟口蓋ですね。舌や頬粘膜にできる病気としては、手足口病がありましたよね。
ドクタードクター
その通り。手足口病もエンテロウイルスによる病気だけれど、舌・頬粘膜・口唇の内側など口腔内の広い範囲に病変が出て、さらに手掌や足底、殿部に水疱を伴う。口の中だけを見て迷ったら、手足を確認するのが鑑別のコツだ。
医学生医学生
口唇はどうでしょう。口唇ヘルペスのイメージがあります。
ドクタードクター
いい連想だね。単純ヘルペスウイルス1型の初感染で起こる疱疹性歯肉口内炎では、口唇・歯肉・舌・頬粘膜など口腔の前方に多数の病変ができ、歯肉の腫れや出血、高熱、頸部リンパ節腫脹を伴う。再発すると口唇やその周りに小水疱が集まる口唇ヘルペスになる。つまり前方ならヘルペス、奥ならヘルパンギーナ、と対比して覚えるといい。
医学生医学生
口角はちょっと違う感じがします。口の入り口ですし。
ドクタードクター
そうだね。ヘルパンギーナの病変は口の入り口にあたる口角にはできない。口角に亀裂やびらんを起こす代表は口角炎で、カンジダ感染やビタミンB2欠乏、鉄欠乏などが原因になる。
医学生医学生
頬粘膜といえば、CBTの勉強で麻疹のKoplik斑を覚えました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。Koplik斑は麻疹のカタル期に、臼歯に面した頬粘膜に出る白色の小斑点だ。発疹が出る前に診断の手がかりになる重要な所見だよ。口の中は場所ごとに考える病気が違う、ということがよくわかるね。
医学生医学生
整理すると、奥ならヘルパンギーナ、前方ならヘルペス性歯肉口内炎、手足にもあれば手足口病、頬粘膜の白斑なら麻疹、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床での注意点も押さえておこう。ヘルパンギーナは特効薬がなく、解熱鎮痛薬と水分補給による対症療法が中心になる。熱は2〜4日で下がり、口の病変も1週間ほどで治るけれど、痛みで飲み込めずに流涎が増え、乳幼児では哺乳・摂食不良から脱水になることがある。
医学生医学生
保護者には、熱よりも水分がとれているかを見てもらうよう説明すればいいですか。
ドクタードクター
そうだね。尿量や機嫌もあわせて確認してもらうといい。それから、まれに無菌性髄膜炎や心筋炎を合併することがある。強い頭痛や嘔吐、ぐったりしている、顔色が悪いといった変化があれば早めに受診してもらおう。もう一つ、回復後も便から数週間ウイルスが排泄されるから、おむつ交換後の手洗いなど接触・糞口感染の対策も大切だ。
医学生医学生
症状が治まってもしばらくはうつる可能性がある、というのは保育園の感染対策でも大事ですね。
ドクタードクター
その通り。エンテロウイルスはほかにも無菌性髄膜炎、心筋炎、急性出血性結膜炎、ポリオなどを起こす。夏に流行するウイルス群として、まとめて覚えておくと理解が深まるよ。

まとめ

ヘルパンギーナは主にA群コクサッキーウイルスによる乳幼児の夏かぜで、突然の高熱とともに軟口蓋を中心に口蓋垂・口蓋弓・咽頭など口腔の奥に、発赤に囲まれた小水疱やアフタができるのが特徴です。口唇・歯肉・舌など口腔の前方に病変が広がれば単純ヘルペスによる疱疹性歯肉口内炎、口腔内の病変に手掌・足底の水疱を伴えば手足口病、頬粘膜の白色小斑点なら麻疹のKoplik斑と、病変の部位から鑑別を進められます。治療は対症療法が中心で、乳幼児では嚥下痛による脱水に注意し、まれな無菌性髄膜炎や心筋炎の合併、回復後も続く便中へのウイルス排泄にも気を配ります。口腔内の「どこに」病変があるかに注目する視点は、小児の発熱診療で日常的に役立つ基本技術です。

解答・解説

正解はeです

ヘルパンギーナの口腔病変がどこにできるかを問う一般問題である。 ヘルパンギーナは、主にA群コクサッキーウイルスをはじめとするエンテロウイルスによって起こる急性のウイルス性咽頭炎で、乳幼児を中心に夏季に流行する「夏かぜ」の代表である。突然の高熱とともに、口腔の奥、すなわち軟口蓋から口蓋垂、口蓋弓(前口蓋弓)、咽頭にかけて、周囲が赤く縁取られた小水疱が出現し、これが破れて浅い潰瘍(アフタ)となる。口の奥に病変が集まるのが特徴で、口腔の前方(口唇・歯肉・舌の前方)には通常みられない。 この「口腔の奥か、前方か」という分布の違いは、同じく口腔に水疱・アフタをつくる疾患との鑑別に役立つ。口腔前方の歯肉・口唇・舌・頬粘膜に広く病変をつくるのは単純ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎であり、口腔病変に加えて手掌・足底などに水疱が出るのは手足口病である。以上から、ヘルパンギーナのアフタの好発部位は軟口蓋である。

選択肢考察

  1. ×a.  舌

    ヘルパンギーナの好発部位ではない。舌にアフタや水疱がみられるのは、単純ヘルペスウイルス1型による疱疹性歯肉口内炎や、手足口病である。手足口病では舌・頬粘膜・口唇の内側など口腔内の広い範囲に病変が出やすく、手掌・足底・殿部などの皮疹を伴う点でヘルパンギーナと区別できる。

  2. ×b.  口角

    ヘルパンギーナの好発部位ではない。ヘルパンギーナの病変は口腔の奥に集まり、口の入り口にあたる口角にはみられない。口角に亀裂やびらんを生じる代表は口角炎で、カンジダなどの感染やビタミンB2(リボフラビン)欠乏、鉄欠乏などが原因となる。単純ヘルペスの口唇ヘルペスが口角周囲に及ぶこともある。

  3. ×c.  口唇

    ヘルパンギーナの好発部位ではない。口唇に水疱・びらんが出る代表的疾患は単純ヘルペスウイルス感染症である。初感染の疱疹性歯肉口内炎では口唇・歯肉・舌など口腔前方に多数の病変ができ、歯肉の腫脹・出血を伴う。再発例では口唇やその周囲の皮膚に小水疱が集まってできる口唇ヘルペスとなる。

  4. ×d.  頬粘膜

    ヘルパンギーナの好発部位ではない。頬粘膜に病変が出る疾患としては、単純ヘルペスによる歯肉口内炎、手足口病が挙げられる。また、麻疹のカタル期に臼歯に面した頬粘膜に出現する白色小斑点(Koplik斑)も頬粘膜の所見として重要である。

  5. ○e.  軟口蓋

    正しい。ヘルパンギーナでは、軟口蓋を中心に口蓋垂、前口蓋弓、咽頭後壁など口腔の奥に、発赤に囲まれた直径1〜2 mm程度の小水疱が複数出現し、破れてアフタとなる。病変の痛みのため嚥下痛や流涎が強くなり、乳幼児では哺乳・摂食不良から脱水をきたすことがある。この部位分布がヘルパンギーナの最大の特徴である。

ヘルパンギーナの概要

・病原体:エンテロウイルス属、特にA群コクサッキーウイルス。B群コクサッキーウイルスやエコーウイルスなどでも起こる。 ・疫学:乳幼児(主に1〜4歳)に多く、初夏から夏季(5〜8月頃)に流行する。 ・感染経路:飛沫感染、接触感染、糞口感染。回復後も便中に数週間ウイルスが排泄される。 ・潜伏期:2〜4日程度。 ・症状:突然の38〜40℃の発熱、咽頭痛、軟口蓋周辺の小水疱・アフタ。発熱は2〜4日で下がり、口腔病変も1週間程度で治癒する。 ・合併症:まれに無菌性髄膜炎、心筋炎。 ・治療:特異的な治療はなく、解熱鎮痛薬などの対症療法と水分補給が中心である。

口腔内に水疱・アフタを生じる小児の代表的疾患

・ヘルパンギーナ:軟口蓋・口蓋弓など口腔の奥。皮疹なし。 ・手足口病:舌・頬粘膜・口唇内側など口腔内の広い範囲。手掌・足底・殿部などに水疱。コクサッキーA16、エンテロウイルス71などが原因。 ・疱疹性歯肉口内炎:単純ヘルペスウイルス1型の初感染。歯肉・口唇・舌・頬粘膜など口腔前方。歯肉の腫脹・出血、高熱、頸部リンパ節腫脹を伴う。

エンテロウイルスが起こす主な疾患

ヘルパンギーナ、手足口病、無菌性髄膜炎、心筋炎・心膜炎、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーA24変異株)、ポリオ(急性灰白髄炎)など。エンテロウイルスは腸管で増殖するウイルスの総称で、夏から秋にかけて流行し、流行する型は年ごとに異なる。

POINT

・ヘルパンギーナ=A群コクサッキーウイルス、乳幼児、夏季、高熱+軟口蓋周辺の小水疱・アフタ。 ・病変は口腔の奥(軟口蓋・口蓋垂・口蓋弓)に集まる。 ・口腔前方(歯肉・口唇・舌)なら単純ヘルペス性歯肉口内炎、手足にも水疱があれば手足口病。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。