すねの痛い赤いしこりは「体からのサイン」―結節性紅斑とHansen病のらい反応
第105回医師国家試験 I問題 第14問
国試問題にチャレンジ
結節性紅斑を伴うのはどれか。
- a.Hansen病
- b.Addison病
- c.Buerger病
- d.Churg-Strauss症候群
- e.Kasabach-Merritt症候群
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
結節性紅斑は下腿伸側に多発する有痛性の紅色皮下結節で、病理は隔壁性脂肪織炎、潰瘍化せず跡を残さず治るのが特徴です。皮膚の病気というより基礎疾患に対する免疫反応として現れ、溶連菌感染、結核、Hansen病、サルコイドーシス、Behçet病、炎症性腸疾患、薬剤、妊娠などが原因となります。Hansen病ではらい腫型・境界らい腫型に2型らい反応として「らい性結節性紅斑」が起こり、発熱や神経炎を伴うためステロイドなどで早期に治療します。一方、Addison病は色素沈着、Buerger病は遊走性静脈炎と指趾壊疽、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は紫斑と多発性単神経炎、Kasabach-Merritt症候群は血小板減少と消費性凝固障害が特徴です。結節性紅斑を見たら背景疾患を探しにいくという発想は、皮膚所見から全身疾患を見抜く臨床推論の基本になります。
解答・解説
正解はaです
結節性紅斑とは
結節性紅斑は、主に下腿伸側(すねの前面)に、押すと痛む(圧痛のある)鮮紅色〜暗紅色の、わずかに盛り上がった皮下の硬結(しこり)が多発する皮疹である。病理学的には皮下脂肪組織の小葉と小葉の間にある結合組織(隔壁)に炎症が起こる「隔壁性脂肪織炎」で、原則として潰瘍化せず、数週間で色素沈着を残して治る。
結節性紅斑は「反応」として現れる
結節性紅斑は特定の病原体が皮膚に直接いるのではなく、体内の抗原に対する免疫反応(過敏反応)として出現する皮疹である。そのため、さまざまな基礎疾患に伴ったり、それに先行したりする。代表的な原因は次のとおりである。 ・感染症: 溶連菌感染(上気道炎)、結核、Hansen病、エルシニア感染症、真菌症など ・炎症性疾患: サルコイドーシス、Behçet病、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・Crohn病) ・薬剤: 経口避妊薬、サルファ剤など ・その他: 妊娠、悪性腫瘍(白血病・リンパ腫など) 原因が特定できない特発性の例も多い。
考え方
選択肢の中で、上記の原因疾患に含まれるのはHansen病である。Hansen病では、らい腫型に近い病型の患者に「らい性結節性紅斑」と呼ばれる急性の免疫反応が起こることがよく知られている。ほかの選択肢はいずれも、結節性紅斑を特徴的な皮膚所見とする疾患ではない。
選択肢考察
- ○a. Hansen病
らい菌(Mycobacterium leprae)による慢性感染症で、主に皮膚と末梢神経が侵される。宿主の細胞性免疫の強さにより、菌の少ない類結核型(T型/TT)から菌の多いらい腫型(L型/LL)まで連続した病型をとり、その中間が境界群(B群)である。経過中に急性の炎症反応(らい反応)が起こることがあり、そのうち2型らい反応はらい腫型・境界らい腫型の患者で、大量の菌抗原に対する免疫複合体反応として生じる。これが「らい性結節性紅斑(ENL: erythema nodosum leprosum)」で、圧痛のある紅色結節が多発し、発熱・関節痛・神経炎・虹彩毛様体炎などの全身症状を伴うことがある。したがって結節性紅斑を伴う疾患として正しい。治療には副腎皮質ステロイドが用いられ、わが国ではサリドマイドも承認されている。
- ×b. Addison病
副腎皮質の広範な破壊(自己免疫性副腎炎、結核など)による慢性原発性副腎皮質機能低下症である。コルチゾール低下に伴うネガティブフィードバックの消失でACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とその前駆体由来のメラニン細胞刺激作用が高まり、皮膚(手掌のしわ、関節部、瘢痕など)や口腔粘膜・歯肉に色素沈着をきたすのが特徴的な皮膚所見である。結節性紅斑は伴わない。
- ×c. Buerger病
閉塞性血栓血管炎(TAO: thromboangiitis obliterans)ともいい、四肢末梢の中小動静脈に分節状の炎症性閉塞をきたす疾患である。喫煙との関連が強く、若年〜中年の男性喫煙者に多い。症状は冷感・しびれ、間欠性跛行、安静時痛、指趾の潰瘍・壊疽である。皮下の静脈に沿って有痛性の発赤・硬結が場所を変えて出没する遊走性静脈炎を伴うことがあり、結節性紅斑と見間違えられることはあるが、これは表在静脈の血栓性静脈炎であり、結節性紅斑そのものではない。
- ×d. Churg-Strauss症候群
現在の名称は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA: eosinophilic granulomatosis with polyangiitis)である。気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行し、末梢血好酸球増多に続いて小型血管の壊死性血管炎を生じる。抗好中球細胞質抗体のうちMPO-ANCA(P-ANCA)が約3〜4割で陽性となる。多発性単神経炎が特徴的で、皮膚症状としては触知できる紫斑、皮下結節、網状皮斑などがみられるが、結節性紅斑は本症の特徴的所見ではない。
- ×e. Kasabach-Merritt症候群
乳児期の急速に増大する血管性腫瘍の内部で血小板が捕捉・消費され、著しい血小板減少と消費性凝固障害(播種性血管内凝固〈DIC〉に類似した状態)をきたす病態である。かつては巨大血管腫によるとされたが、現在では原因腫瘍の多くがカポジ肉腫様血管内皮腫や房状血管腫であり、一般的な乳児血管腫(いちご状血管腫)では起こらないとされる。腫瘍は紫紅色に腫大・硬結化し、紫斑を伴うが、結節性紅斑は伴わない。
結節性紅斑の臨床像
・好発: 若年〜中年の女性、下腿伸側に多い ・皮疹: 圧痛・熱感を伴う紅斑性の皮下結節で、左右対称性のことが多い。潰瘍化しない ・全身症状: 発熱、倦怠感、関節痛を伴うことがある ・経過: 紅色から紫〜黄緑色へ打撲痕のように色調が変化し、瘢痕を残さず治る ・病理: 隔壁性脂肪織炎(septal panniculitis)で、血管炎は原則として伴わない
鑑別すべき皮下結節性病変
・硬結性紅斑(Bazin硬結性紅斑): 結核に関連し、下腿屈側(ふくらはぎ)に好発、潰瘍化しやすい。病理は血管炎を伴う小葉性脂肪織炎 ・結節性多発動脈炎(皮膚型): 皮下結節と網状皮斑、潰瘍 ・表在性血栓性静脈炎(Buerger病、Behçet病): 静脈に沿った索状の硬結
Hansen病のらい反応
・1型らい反応(境界反応): 境界群で細胞性免疫が急に強まることによる(遅延型過敏反応)。既存皮疹の発赤・腫脹、急性神経炎 ・2型らい反応(らい性結節性紅斑、ENL): らい腫型・境界らい腫型で起こる免疫複合体反応。多発する有痛性紅色結節と全身症状 どちらも神経障害を急速に悪化させうるため早期治療が重要である。Hansen病自体の治療はリファンピシン・ジアフェニルスルホン(ダプソン)・クロファジミンによる多剤併用療法(MDT)である。
POINT
・結節性紅斑は下腿伸側の有痛性紅色皮下結節で、病理は隔壁性脂肪織炎。潰瘍化しない。 ・基礎疾患: 溶連菌感染、結核、Hansen病(らい性結節性紅斑)、サルコイドーシス、Behçet病、炎症性腸疾患、薬剤、妊娠など。 ・Hansen病の2型らい反応=らい性結節性紅斑(ENL)で、らい腫型・境界らい腫型に起こる。 ・Addison病は色素沈着、Buerger病は遊走性静脈炎・指趾壊疽、EGPAは紫斑・多発性単神経炎、Kasabach-Merritt症候群は血小板減少と消費性凝固障害。
