StudyMed医師国家試験

論文はどこから読む?―Abstractから始まる原著論文の設計図

第105回医師国家試験 H問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第105回 H問題 第20問

医学原著論文において通常最初に置かれている項目はどれか。  ただし,タイトル,著者名および所属を除く。

  1. a.Abstract
  2. b.Conclusion
  3. c.Introduction
  4. d.Methods
  5. e.Results

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医学英語の問題で、原著論文の構成がテーマだ。タイトル・著者名・所属を除いたとき、最初に何が来るか。論文を「読む側」の立場で考えるとすぐ分かるよ。
医学生医学生
本文の始まりということなら、Introductionでしょうか。研究の背景から書き始めるのが自然な気がします。
ドクタードクター
本文の最初、という意味ならその通り。でも論文全体で見ると、Introductionより前にもう一つ置かれているものがある。PubMedで論文を検索したとき、タイトルの下に表示される文章を思い出してみて。
医学生医学生
あ、Abstractですね。研究室配属のときに文献検索をして、まずAbstractだけ読んで必要な論文を選んでいました。
ドクタードクター
そう、正解はAbstractだ。Abstractは研究の目的・方法・結果・結論を数百語程度にまとめた要旨で、読者が本文を読む前に概要をつかみ、読む価値があるかを判断できるよう本文の前に置かれる。臨床研究ではBackground、Methods、Results、Conclusionsといった小見出しを付けた構造化抄録を求める雑誌が多いね。
医学生医学生
Abstractの中にもConclusionsがありますけど、項目としてのConclusionは最後のほうですよね。
ドクタードクター
そこは混同しやすいポイントだね。項目としてのConclusionはDiscussionの後、あるいはDiscussionの末尾に置かれ、独立した見出しを設けない雑誌も多い。本文の中核はIntroduction、Methods、Results、Discussionの4部で、頭文字をとってIMRAD形式と呼ばれるんだ。
医学生医学生
IMRADなら、Introductionは本文の冒頭で、研究の背景と目的を書く部分ですね。
ドクタードクター
そう。これまでに分かっていること、まだ解明されていない問題点、そして本研究の目的や仮説を述べる。その次がMethodsだ。研究デザイン、対象者、測定方法、統計解析などを、他の研究者が追試できるくらい詳しく書く。雑誌によってはMethodsを論文の末尾に回すものもあるよ。
医学生医学生
Resultsはその後で、ここではまだ解釈を書かないんですよね。
ドクタードクター
その通り。Resultsは得られたデータを図表とともに客観的に示す場所で、それが何を意味するのか、既存研究との比較、研究の限界、臨床的意義はDiscussionで論じる。「何をしたか」「何が分かったか」「それは何を意味するか」を分けて書くのが科学論文の作法なんだ。
医学生医学生
整理すると、Abstract、Introduction、Methods、Results、Discussion、Conclusion、その後に謝辞や利益相反の開示、Referencesという順番ですね。
ドクタードクター
完璧。少し発展的な話もしておこう。論文の種類によって構成は変わる。症例報告ならAbstract、Introductionの後にCase presentation(症例提示)が入り、Discussionへ続く。総説は既存の研究を整理・要約した論文で、系統的に文献を集めて評価したものが系統的レビュー、複数研究の結果を統計的に統合したものがメタアナリシスだ。
医学生医学生
EBMの講義で、エビデンスレベルの話と一緒に習いました。
ドクタードクター
それに関連して、研究デザインごとに記載すべき項目をまとめた国際的な報告ガイドラインもある。ランダム化比較試験ならCONSORT声明、観察研究ならSTROBE声明、系統的レビュー・メタアナリシスならPRISMA声明が代表的で、多くの雑誌が投稿時にこれらへの準拠を求めているよ。
医学生医学生
読む側としても、そのチェック項目を意識すると論文を批判的に読めそうですね。
ドクタードクター
まさにそう。研修医になれば抄読会で論文を紹介する機会が増える。Abstractで全体像をつかみ、Methodsで研究の質を確かめ、Resultsのデータを自分の目で見てからDiscussionの主張を吟味する。この読み方を身につけておくと、Abstractの結論だけに振り回されなくなるよ。

まとめ

医学の原著論文は、タイトル・著者名・所属の後に、論文全体を要約したAbstractが置かれ、その後にIntroduction、Methods、Results、Discussion(必要に応じてConclusion)、References と続きます。本文の中核をなす4部構成はIMRAD形式と呼ばれ、背景と目的、方法、客観的な結果、解釈を明確に分けて記述するのが特徴です。Abstractは文献データベースでも表示され、読者が最初に目を通して論文を読むかどうか判断する部分であり、臨床研究では構造化抄録が一般的です。症例報告や総説では構成が異なり、研究デザインごとにCONSORT、STROBE、PRISMAといった報告ガイドラインも整備されています。論文の構造を理解しておくことは、抄読会やEBMの実践で論文を効率よく、かつ批判的に読むための基礎になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

医学の原著論文(original article:独自の研究データを初めて報告する論文)が、タイトル・著者名・所属の後にどのような順番で構成されているかを問う問題である。

原著論文の基本構成

多くの医学雑誌の原著論文は、次の順に並ぶ。 1)Title(タイトル)、Authors(著者名)、Affiliations(所属) 2)Abstract(要旨・抄録) 3)Keywords(キーワード)※雑誌により有無・位置が異なる 4)Introduction(緒言・序論) 5)Methods(方法) 6)Results(結果) 7)Discussion(考察) 8)Conclusion(結論)※独立した項目として置かない雑誌もある 9)Acknowledgments(謝辞)、利益相反・資金源の開示など 10)References(参考文献) このうち本文の中核となる Introduction、Methods、Results、Discussion の4部構成は、頭文字をとって IMRAD(イムラッド)形式と呼ばれ、医学・自然科学論文の標準的な形式である。

考え方

Abstract は論文全体の内容を短く要約したもので、読者が本文を読む前に論文の概要をつかみ、読む価値があるかを判断するために、本文の前(タイトル・著者情報の直後)に置かれる。したがって、除外された項目以外で最初に置かれるのは Abstract である。

選択肢考察

  1. ○a.  Abstract

    Abstract(要旨・抄録)は、研究の目的・方法・結果・結論を数百語程度にまとめたもので、タイトル・著者名・所属の直後、本文の前に置かれる。文献データベース(PubMedなど)でも表示されるため、読者が最初に目を通す部分となる。臨床研究では Background(Objective)、Methods、Results、Conclusions などの小見出しを付けた構造化抄録(structured abstract)を求める雑誌が多い。よって最初に置かれる項目として正しい。

  2. ×b.  Conclusion

    Conclusion(結論)は、研究から言えることを簡潔にまとめる部分であり、論文本文の最後(Discussionの後、またはDiscussionの末尾)に置かれる。独立した見出しを設けない雑誌も多い。Abstract の中にも結論は含まれるが、項目としての Conclusion が最初に来ることはないため誤りである。

  3. ×c.  Introduction

    Introduction(緒言・序論)は、研究の背景、これまでに分かっていることと未解明の問題点、そして本研究の目的・仮説を述べる部分であり、本文の最初に位置する。しかし、その前に Abstract が置かれるため、論文全体として最初の項目ではなく誤りである。

  4. ×d.  Methods

    Methods(方法)は、研究デザイン、対象者、介入・測定の方法、統計解析などを、他の研究者が追試できる程度に詳しく記載する部分である。通常は Introduction の後に置かれ、雑誌によっては論文の末尾(Discussion の後)に回されることもある。いずれにせよ最初の項目ではないため誤りである。

  5. ×e.  Results

    Results(結果)は、Methods に従って得られたデータを、解釈を交えずに客観的に示す部分であり、図表とともに記載される。通常は Methods の後(Methods を末尾に置く雑誌では Introduction の後)に続き、その後に Discussion が置かれる。最初の項目ではないため誤りである。

IMRAD 各部の役割

・Introduction:なぜこの研究を行ったか(背景・目的) ・Methods:どのように研究したか(対象・方法・解析) ・Results:何が分かったか(客観的なデータ) ・Discussion:結果が何を意味するか(解釈、既存研究との比較、研究の限界、臨床的意義)

論文の種類

・原著論文(original article):新しい研究結果を報告する論文。IMRAD 形式が基本。 ・症例報告(case report):まれな症例や教訓的な症例を報告する。Abstract、Introduction、Case presentation(症例提示)、Discussion などで構成される。 ・総説(review):特定のテーマに関する既存の研究を整理・要約した論文。系統的な手法で文献を集めて評価するものは系統的レビュー(systematic review)と呼ばれ、複数研究の結果を統計的に統合したものがメタアナリシス(meta-analysis)である。

報告ガイドライン

研究デザインごとに、論文に記載すべき項目をまとめた国際的な報告ガイドラインがある。ランダム化比較試験ではCONSORT声明、観察研究ではSTROBE声明、系統的レビュー・メタアナリシスではPRISMA声明などが代表的で、多くの医学雑誌が投稿時にこれらへの準拠を求めている。

POINT

・原著論文はタイトル・著者名・所属の後、Abstract → Introduction → Methods → Results → Discussion(→ Conclusion)→ References の順に構成される。 ・本文の中核は IMRAD(Introduction、Methods、Results、and Discussion)形式である。 ・Abstract は論文全体の要約であり、本文の前に置かれる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。