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増える?減る?変わらない?―血小板数を「仕組み」で仕分ける

第105回医師国家試験 E問題 第69問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第69問

血小板が増加するのはどれか。

  1. a.肝硬変
  2. b.血友病
  3. c.真性多血症
  4. d.多発性骨髄腫
  5. e.Glanzmann病
  6. f.巨赤芽球性貧血
  7. g.急性骨髄性白血病
  8. h.播種性血管内凝固〈DIC〉
  9. i.溶血性尿毒症症候群〈HUS〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、さまざまな疾患の中から血小板が増えるものを選ぶ問題だ。選択肢が多いから一つずつ暗記で当たると混乱しやすい。血小板数が変わる仕組みを「増える」「減る」「数は変わらない」に分けて考えるのがコツだよ。まず、血小板が減る仕組みにはどんなものがあるかな。
医学生医学生
骨髄で作られない、使われすぎる、壊される、くらいでしょうか。
ドクタードクター
いいね。整理すると、骨髄での産生低下、血管内での消費や免疫学的な破壊の亢進、そして脾臓へのプール、つまり分布の異常の3つだ。逆に増えるほうは、造血幹細胞の異常によるクローン性の増加と、鉄欠乏や炎症などに伴う反応性の増加の2つに分けられる。では、選択肢の中で腫瘍性に増えるものはどれだろう。
医学生医学生
骨髄増殖性腫瘍に入るのは真性多血症ですね。でも名前のとおり赤血球が増える病気なので、血小板まで増えるのか自信がありません。
ドクタードクター
そこが大事なところ。真性多血症の大部分にはJAK2遺伝子の変異、主にV617Fがある。JAK2はエリスロポエチンだけでなくトロンボポエチンなどの受容体のシグナルも伝える酵素なんだ。変異で常にスイッチが入った状態になるから、造血幹細胞レベルで赤血球系に加えて巨核球系や顆粒球系も増える。
医学生医学生
だから赤血球が主役でも、血小板や白血球も増えて汎血球増加になるんですね。血栓症が怖いと血液内科の実習で聞きました。
ドクタードクター
その通り。血栓症は主要な合併症だ。これが正解になる。次は減るほうを仕組みごとに見ていこう。肝硬変はどうかな。
医学生医学生
消化器内科の実習で、肝硬変の患者さんは血小板が少なかった記憶があります。脾腫のせいですか。
ドクタードクター
そう。門脈圧亢進でうっ血性の脾腫が起き、脾臓に血小板が溜め込まれる脾機能亢進症になる。さらに肝臓で作られるトロンボポエチンが減るから、産生面でも不利になる。血小板数が肝線維化の進み具合の目安に使われるくらいだ。
医学生医学生
骨髄が占拠される系統としては、急性骨髄性白血病と多発性骨髄腫ですね。
ドクタードクター
正解。白血病では芽球が、骨髄腫では形質細胞が骨髄で増えて正常な造血を押しのける。白血病では貧血・血小板減少・正常好中球の減少がそろい、急性前骨髄球性白血病ではDICを合併して出血傾向が目立つ。骨髄腫は貧血が中心で、進行すると血小板減少も加わる。巨赤芽球性貧血はどうだろう。
医学生医学生
ビタミンB12や葉酸の欠乏で赤血球が大きくなる病気なので、赤血球だけの問題かと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。本質はDNA合成障害だから、赤血球系だけでなく白血球系・巨核球系も障害される。核の成熟が遅れて骨髄内で細胞が壊れる無効造血が起こり、汎血球減少になるんだ。好中球の過分葉やLD上昇もセットで覚えよう。
医学生医学生
DICとHUSは血栓で血小板が使われる、消費性の減少ですね。
ドクタードクター
その通り。DICは全身の細小血管で凝固が過剰に働き、血小板も凝固因子も消費される。だからフィブリノゲン低下やPT延長、線溶亢進によるFDPやDダイマーの上昇が出る。HUSは腸管出血性大腸菌の志賀毒素で血管内皮が傷つき、血小板血栓ができる病態で、破砕赤血球を伴う溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害が3主徴。DICと違って凝固検査は原則として大きく乱れない点が鑑別に役立つ。
医学生医学生
残る血友病とGlanzmann病は、出血しやすいのに血小板数は正常、というグループですね。CBTの勉強で、APTTと出血時間の表を何度も書きました。
ドクタードクター
いい勉強法だ。血友病は第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の欠乏で二次止血の異常だから、APTTだけが延長して血小板数も出血時間も正常。Glanzmann病はフィブリノゲンの受容体であるGPⅡb/Ⅲaの異常で血小板が凝集できず、出血時間は延長するけれど数と形態は正常だ。巨大血小板と血小板減少を伴うBernard-Soulier症候群との区別も押さえておこう。
医学生医学生
血小板が増えるのは、骨髄増殖性腫瘍か反応性、と覚えればいいでしょうか。
ドクタードクター
それで十分な軸になる。臨床では、健診などで血小板増加を見つけたとき、まず鉄欠乏、炎症、出血後、摘脾後、悪性腫瘍といった反応性の原因を探すことが多い。それらがなく持続する場合に、JAK2、CALR、MPLなどの遺伝子変異を調べて本態性血小板血症などの骨髄増殖性腫瘍を考える。腫瘍性の血小板増加は血栓症のリスクにつながるから、見逃さないことが大切だよ。

まとめ

血小板数の変化は、増加(骨髄増殖性腫瘍によるクローン性増加と、鉄欠乏・炎症・出血後・摘脾後などの反応性増加)、減少(産生低下・消費や破壊の亢進・脾臓への貯留)、数は正常で機能や凝固が異常、の3群に分けると整理できます。真性多血症はJAK2変異により赤血球系だけでなく巨核球系・顆粒球系も増殖するため、血小板増加をきたしうる代表的疾患です。白血病・骨髄腫・巨赤芽球性貧血は産生低下、DIC・HUSは消費亢進、肝硬変は脾機能亢進とトロンボポエチン低下で血小板が減少し、血友病やGlanzmann病では血小板数は正常です。仕組みで分類しておけば、初見の疾患でも血小板数の動きを推測でき、検査値の解釈や鑑別診断に生かせます。

解答・解説

正解はcです

血小板数の変化を疾患ごとに整理できているかを問う問題である。血小板数が変化する仕組みは、大きく次の3つに分けて考えると整理しやすい。

血小板数が減る仕組み

1. 産生の低下:骨髄での巨核球(血小板のもとになる細胞)の造血が抑えられる。腫瘍細胞による骨髄の占拠(白血病、多発性骨髄腫など)、DNA合成障害(巨赤芽球性貧血)などが該当する。 2. 消費・破壊の亢進:血管内で血栓がつくられて血小板が使い果たされる(DIC、HUS、TTPなど)、あるいは免疫学的に破壊される(ITPなど)。 3. 分布の異常:腫大した脾臓に血小板がプールされる(脾機能亢進症、肝硬変に伴う門脈圧亢進症など)。

血小板数が増える仕組み

1. 腫瘍性(クローン性)増加:造血幹細胞の異常による骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の初期、慢性骨髄性白血病)。 2. 反応性増加:鉄欠乏性貧血、慢性炎症、出血後、摘脾後、悪性腫瘍などに伴う二次的な増加。

数は正常で機能や凝固が異常なもの

血友病のような凝固因子の異常や、Glanzmann病のような血小板機能異常症では血小板数自体は変わらない。 選択肢のうち、骨髄増殖性腫瘍に属し、赤血球だけでなく血小板や白血球も増加しうるのは真性多血症のみである。他の選択肢は血小板数が減少するか、正常のいずれかである。

選択肢考察

  1. ×a.  肝硬変

    誤り。肝硬変では門脈圧亢進により脾臓が腫大し(うっ血性脾腫)、脾臓に血球が過剰に貯留・破壊される脾機能亢進症をきたす。その結果、血小板を中心に汎血球減少がみられる。加えて、肝臓でつくられる血小板産生刺激因子トロンボポエチンの産生も低下するため、血小板減少はさらに助長される。血小板数の低下は肝線維化の進行度を推定する指標としても用いられる。

  2. ×b.  血友病

    誤り。血友病はX連鎖潜性(劣性)遺伝の先天性凝固因子欠乏症で、血友病Aは第Ⅷ因子、血友病Bは第Ⅸ因子が欠乏する。障害されるのは二次止血(凝固系)であり、血小板数は正常である。検査では内因系を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長するが、外因系を反映するプロトロンビン時間(PT)と、一次止血を反映する出血時間は正常である。臨床的には関節内出血や筋肉内出血などの深部出血が特徴である。

  3. ○c.  真性多血症

    正しい。真性多血症は骨髄増殖性腫瘍の一つで、患者の大部分(約95%以上)にJAK2遺伝子変異(主にV617F)がみられる。JAK2はエリスロポエチンやトロンボポエチンなどのサイトカイン受容体からのシグナルを伝える酵素であり、変異により恒常的に活性化されるため、造血幹細胞レベルで赤血球系だけでなく巨核球系・顆粒球系も増殖する。そのため赤血球増加が主体であるが、血小板数や白血球数もしばしば増加する(汎血球増加)。血栓症が主要な合併症である。

  4. ×d.  多発性骨髄腫

    誤り。多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖で、骨髄が腫瘍細胞に置き換えられることにより正常造血が抑制される。最も多いのは正球性貧血であり、病期が進むと血小板減少や白血球減少も加わる。血小板が増加する疾患ではない。なお、M蛋白(単クローン性免疫グロブリン)が血小板機能を妨げて出血傾向をきたすことがある。

  5. ×e.  Glanzmann病

    誤り。Glanzmann病(血小板無力症)は常染色体潜性(劣性)遺伝の先天性血小板機能異常症で、フィブリノゲンの受容体である血小板膜糖蛋白GPⅡb/Ⅲa(インテグリンαⅡbβ3)が欠損または機能低下している。血小板どうしがフィブリノゲンを介して結合できず凝集が起こらないため、出血時間が延長する。一方、血小板数と形態は正常で、PT・APTTも正常である。凝集能検査ではADP・コラーゲンなどによる凝集が欠如するが、リストセチン凝集は保たれる点がBernard-Soulier症候群(GPⅠb欠損、巨大血小板と血小板減少を伴う)との鑑別点となる。

  6. ×f.  巨赤芽球性貧血

    誤り。巨赤芽球性貧血はビタミンB12や葉酸の欠乏によりDNA合成が障害される疾患である。細胞質の成熟に比べて核の成熟が遅れ、造血細胞が骨髄内で壊れてしまう無効造血が起こる。赤血球系だけでなく白血球系・巨核球系も障害されるため、大球性貧血に加えて汎血球減少をきたす。好中球の過分葉、LD(乳酸脱水素酵素)や間接ビリルビンの上昇も特徴である。

  7. ×g.  急性骨髄性白血病

    誤り。急性骨髄性白血病では分化能を失った白血病細胞(芽球)が骨髄で増殖し、正常な造血が抑え込まれる。その結果、貧血・血小板減少・正常好中球の減少が起こり、出血傾向、感染症、貧血症状がみられる。特に急性前骨髄球性白血病(APL)ではDICを合併し、血小板減少と出血傾向が顕著になる。

  8. ×h.  播種性血管内凝固〈DIC〉

    誤り。DICは敗血症、悪性腫瘍、産科疾患などの基礎疾患により全身の細小血管で凝固が過剰に活性化され、微小血栓が多発する病態である。血栓形成に血小板と凝固因子が使われるため、消費性に血小板数が減少し、フィブリノゲンも低下してPTが延長する。同時に線溶も亢進するため、FDP(フィブリン/フィブリノゲン分解産物)やDダイマーが上昇する。凝固活性化の指標としてトロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)の上昇も重要である。

  9. ×i.  溶血性尿毒症症候群〈HUS〉

    誤り。HUSは微小血管障害性溶血性貧血(破砕赤血球を伴う)、血小板減少、急性腎障害を3主徴とする血栓性微小血管症(TMA)である。典型例は腸管出血性大腸菌(O157など)が産生する志賀毒素(ベロ毒素)によって腎臓などの血管内皮細胞が傷害され、そこに血小板血栓が形成されることで発症する。血栓形成に血小板が消費されるため血小板数は減少する。DICと異なり、凝固系の検査(PT、APTT、フィブリノゲン)は原則として大きな異常を示さない。

骨髄増殖性腫瘍(MPN)の整理

造血幹細胞の遺伝子変異により成熟血球がクローン性に増加する疾患群である。 ・慢性骨髄性白血病:BCR::ABL1融合遺伝子(フィラデルフィア染色体)。白血球増加が主体で、血小板増加も伴いやすい。 ・真性多血症:JAK2変異(V617Fが大部分、一部はexon12変異)。赤血球増加が主体で、白血球・血小板も増加しうる。 ・本態性血小板血症:JAK2、CALR、MPLのいずれかの変異が多い。血小板増加が主体(診断基準では45万/μL以上の持続)。 ・原発性骨髄線維症:初期には血小板増加を示すことがあるが、進行すると骨髄線維化により血球減少となる。涙滴赤血球、脾腫が特徴。

反応性(二次性)血小板増加症の主な原因

鉄欠乏性貧血、急性・慢性出血、感染症や関節リウマチなどの炎症性疾患、悪性腫瘍、摘脾後などがある。炎症ではIL-6が肝臓でのトロンボポエチン産生を促すことが一因とされる。

血小板数が正常なのに出血しやすい疾患

血友病A・B(凝固因子欠乏)、von Willebrand病(VWF異常、血小板数は通常正常)、Glanzmann病(GPⅡb/Ⅲa異常)など。一方、Bernard-Soulier症候群は巨大血小板と血小板減少を伴う。

POINT

・血小板が増加するのは骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症の初期)と、鉄欠乏性貧血・炎症・出血後・摘脾後などの反応性増加。 ・血小板減少の機序は「産生低下(白血病、骨髄腫、巨赤芽球性貧血)」「消費・破壊亢進(DIC、HUS、TTP、ITP)」「脾臓への貯留(肝硬変)」の3つ。 ・血友病とGlanzmann病は血小板数が正常である(血友病はAPTT延長、Glanzmann病は出血時間延長)。 ・真性多血症はJAK2 V617F変異が大部分にみられ、赤血球に加えて白血球・血小板も増加しうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。