StudyMed医師国家試験

AEDは「意識のない人」のための機器―適応と安全を正しく押さえる

第105回医師国家試験 C問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第105回 C問題 第10問

機器の写真を別に示す。  この機器について誤っているのはどれか。

第105回 C問題 第10問の問題画像
  1. a.心停止患者に使用する。
  2. b.通電時は患者から離れる。
  3. c.医療関係者以外も使用できる。
  4. d.意識のある患者にも使用できる。
  5. e.自動解析によってアドバイスがなされる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真の機器の取り扱いについて誤りを選ぶ問題だ。写っているのは、駅や学校でもよく見かける自動体外式除細動器、つまりAEDだね。どんな人に使うのか、誰が使えるのか、使うときに何に注意するのか、という3つの視点で考えてみよう。
医学生医学生
AEDは心停止の人に使う機器ですよね。大学のBLS講習で、マネキン相手に練習しました。
ドクタードクター
いいね。まず機能を確認しよう。AEDは胸に貼った電極パッドから心電図を自動で解析して、電気ショックが必要な不整脈かどうかを判定し、音声やランプで手順を指示してくれる。ショックの対象になるのは心室細動と無脈性心室頻拍で、どちらも心臓が血液を送り出せていない心停止の状態なんだ。
医学生医学生
だから「反応がなく、普段どおりの呼吸がない」人に使うということですね。
ドクタードクター
その通り。しゃくりあげるような死戦期呼吸は「呼吸なし」と扱う点も大事だ。では、意識がある患者に使えるという記述はどうかな。
医学生医学生
意識があるなら脳に血流があるので、心停止ではない……つまり使わないですね。でも、意識があっても心室頻拍のことはありますよね。それでもダメなんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。意識のある頻拍性不整脈で電気ショックが必要な場合は、医療機関で鎮静したうえで、心電図のR波に同期させて通電する同期電気ショック、いわゆるカルディオバージョンを行う。これはAEDの役割ではない。AEDは反応がなく正常な呼吸のない傷病者に使うことを前提に設計されているから、この記述が誤りで、今回の正解になる。
医学生医学生
循環器内科の実習で、心房細動のカルディオバージョンを見学したとき、鎮静してから同期モードで通電していました。あれとは別物なんですね。
ドクタードクター
よく結びつけられたね。次に安全面だ。通電時に患者から離れるのはなぜだと思う?
医学生医学生
触れていると、自分も感電してしまうからですか。
ドクタードクター
そう。それに加えて、解析中に体に触れたり動かしたりすると、心電図に雑音が入って正確に解析できない。だから解析時と通電時は「離れてください」という音声指示に従い、誰も触れていないことを確認してからショックボタンを押すんだ。
医学生医学生
医療関係者以外も使えるというのも正しいですよね。街中に置いてあるくらいですから。
ドクタードクター
その通り。日本では2004年に一般市民によるAEDの使用が認められた。善意で行った救命行為は、悪意や重大な過失がなければ、結果について法的責任を問われないと考えられている。そして自動解析によって指示が出るという記述も正しい。心電図が読めなくても、音声に従えば適切に使えるように作られているんだ。機種によっては通電まで自動で行うオートショックAEDもあるよ。
医学生医学生
心電図をCBTのために必死に覚えましたが、AEDは読めなくても使えるように設計されているんですね。
ドクタードクター
だからこそ誰でも使える。ただし、心停止でもショックが不要と判定される波形があることも押さえておこう。心静止や無脈性電気活動、つまりPEAではショックは行わず、胸骨圧迫を続ける。病院ではそこに薬物投与と原因検索が加わる。
医学生医学生
AEDが「ショック不要」と言ったら、もう何もしなくていいわけではなく、胸骨圧迫を続けるということですね。
ドクタードクター
その理解がとても大事だ。最後に、臨床で役立つ注意点もまとめておこう。胸が濡れていれば拭き取る、ニトログリセリンなどの貼付剤ははがして拭く、ペースメーカーや植込み型除細動器の膨らみがあればそこを避けてパッドを貼る。これらはAEDの禁忌ではないよ。未就学児には小児用パッドや小児用モードを使い、なければ成人用をパッド同士が触れないように貼る。ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開し、約2分ごとにAEDが再解析する。
医学生医学生
胸骨圧迫は深さ約5cm、テンポ100〜120回/分でしたね。AEDが届くまでの圧迫も含めて、流れ全体で覚えておきます。

まとめ

AEDは、電極パッドから得た心電図を自動解析し、電気ショックの要否を音声で指示する機器で、反応がなく普段どおりの呼吸がない心停止の傷病者に使用します。ショックの適応は心室細動と無脈性心室頻拍であり、意識がある患者は心停止ではないためAEDの適応はなく、意識のある頻拍性不整脈には医療機関で鎮静下の同期電気ショックが行われます。解析中・通電時は感電防止と正確な解析のために傷病者から離れ、ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開します。自動解析と音声ガイドにより一般市民も使用でき、心静止やPEAではショック不要と判定されても胸骨圧迫を続けることが重要です。AEDの適応と安全な使い方を正しく理解することは、医療者としてだけでなく、院外での救命の場面でも直接役立つ知識です。

解答・解説

正解はdです

写真の機器はAED(automated external defibrillator:自動体外式除細動器)である。AEDは、胸に貼った電極パッドから心電図を自動で解析し、電気ショック(除細動)が必要な不整脈かどうかを判定して、音声やランプで操作者に手順を指示する機器である。 除細動の対象となるのは心室細動(VF)と無脈性心室頻拍(pulseless VT)であり、これらは心臓が血液を送り出せていない心停止の状態である。したがってAEDは「反応(意識)がなく、普段どおりの呼吸がない」、つまり心停止と判断される傷病者に使用する機器である。 本問は「誤っているもの」を選ぶ問題である。AEDの適応(心停止)、安全上の注意(通電時に離れる)、使用者の範囲(一般市民も可)、機能(自動解析と音声ガイド)を押さえていれば、「意識のある患者にも使用できる」が誤りであると判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  心停止患者に使用する。

    記述は正しい。AEDは、呼びかけや肩をたたく刺激に反応がなく、普段どおりの呼吸(死戦期呼吸のようなしゃくりあげる呼吸は「呼吸なし」と扱う)がない傷病者、すなわち心停止と判断される傷病者に使用する。心停止のうち、心室細動・無脈性心室頻拍であれば電気ショックが指示され、心静止や無脈性電気活動(PEA)であれば電気ショックは不要と判定され、胸骨圧迫の継続が指示される。

  2. ×b.  通電時は患者から離れる。

    記述は正しい。電気ショックの際に傷病者に触れていると、操作者や周囲の人にも電流が流れて感電する危険がある。また、心電図解析中に身体を動かしたり触れたりすると、雑音が混入して解析が正確にできない。そのため解析時と通電時には「傷病者から離れてください」という音声指示に従い、誰も触れていないことを確認してからショックボタンを押す。

  3. ×c.  医療関係者以外も使用できる。

    記述は正しい。日本では2004年に一般市民によるAEDの使用が認められ、医療従事者でない者が救命のために使用しても医師法違反には当たらないとされている。善意で行った救命行為は、悪意や重大な過失がない限り、結果について法的責任を問われないと考えられている。駅・学校・商業施設などにAEDが広く設置されているのはこのためである。

  4. ○d.  意識のある患者にも使用できる。

    記述は誤りであり、これが正解である。意識があるということは脳への血流が保たれていることを意味し、心停止ではないため、AEDの適応はない。AEDは反応がなく正常な呼吸のない傷病者に使用することを前提に設計されている。意識のある頻拍性不整脈の患者に電気ショックが必要な場合は、医療機関で鎮静下に心電図のR波に同期させて通電する同期電気ショック(カルディオバージョン)を行うのであり、AEDの役割ではない。

  5. ×e.  自動解析によってアドバイスがなされる。

    記述は正しい。AEDは電極パッドから得た心電図を内蔵のプログラムで自動解析し、電気ショックが必要か否かを判定して、音声メッセージで「ショックが必要です」「ショックは不要です」などと指示する。操作者は心電図を読めなくても、指示に従えば適切に使用できる。機種によっては通電まで自動で行うオートショックAEDもある。

AEDを用いた一次救命処置(BLS)の流れ

1. 周囲の安全を確認し、傷病者の反応を確認する。 2. 反応がなければ大声で助けを呼び、119番通報とAEDの手配を依頼する。 3. 呼吸を確認する(10秒以内)。普段どおりの呼吸がなければ(または判断に迷えば)心停止とみなし、直ちに胸骨圧迫を開始する(深さ約5cm、テンポ100〜120回/分)。 4. AEDが届いたら電源を入れ、音声指示に従って電極パッドを胸に貼る(右前胸部と左側胸部)。 5. 解析中・通電時は傷病者から離れる。ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開し、約2分ごとにAEDが再解析する。

電極パッド装着時の注意

・胸が濡れていれば拭き取る。 ・貼付薬(ニトログリセリンの貼付剤など)があればはがして拭き取る。 ・植込み型ペースメーカーや除細動器の膨らみがあれば、そこを避けてパッドを貼る。これらはAED使用の禁忌ではない。 ・未就学児には小児用パッド(または小児用モード)を用いる。ない場合は成人用を使用し、パッド同士が触れ合わないようにする。

除細動の適応となる波形

・適応あり(ショック適応リズム):心室細動、無脈性心室頻拍 ・適応なし:心静止、無脈性電気活動(PEA)→胸骨圧迫と、病院では薬物投与・原因検索を行う

POINT

・AEDは反応がなく普段どおりの呼吸がない心停止の傷病者に使用する。意識のある患者には使用しない。 ・ショック適応は心室細動と無脈性心室頻拍である。 ・心電図は自動解析され、音声で指示が出るため、一般市民も使用できる。 ・解析中・通電時は傷病者から離れ、ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。