StudyMed医師国家試験

むくんだ幼児の9割は「微小変化」―小児ネフローゼ症候群は組織型から全部つながる

第104回医師国家試験 I問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第37問

小児の特発性ネフローゼ症候群について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.5歳までに好発する。
  2. b.組織病型は巣状分節状糸球体硬化症が多い。
  3. c.第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。
  4. d.約9割が再発する。
  5. e.成人まで持ち越す。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は小児の特発性ネフローゼ症候群の特徴を問う知識問題だ。好発年齢、組織型、治療、再発、長期予後と論点は多いけれど、実は「小児では組織型の大部分が微小変化型」という1点を押さえれば、ほとんどの選択肢を芋づる式に判断できる。まず、ネフローゼ症候群とはどういう状態だったかな。
医学生医学生
大量の蛋白尿で低アルブミン血症になって、浮腫や脂質異常症を伴う状態です。腎臓内科の講義で「むくみと泡立つ尿」と習いました。
ドクタードクター
その通り。小児の診断基準では高度蛋白尿と血清アルブミン2.5 g/dL以下が必須で、浮腫や高LDLコレステロール血症は高頻度に伴うけれど必須ではない。そして全身性疾患や感染・薬剤に続発しないものを特発性と呼び、小児ではネフローゼ症候群の約9割がこの特発性なんだ。では、何歳ごろに多いと思う?
医学生医学生
小児科の実習で入院していたのは3歳くらいの男の子でした。幼児期に多いイメージがあります。
ドクタードクター
いい観察だね。発症のピークは2~6歳ごろの幼児期で、5歳までの発症が多数を占める。男児に多く、男女比はおよそ2:1だ。だから「5歳までに好発する」は正しい。逆に思春期など年長での発症は、微小変化型以外の組織型や二次性の可能性が高くなるので、腎生検を考える根拠になるよ。
医学生医学生
組織型は巣状分節性糸球体硬化症が多い、というのはどうでしょう。名前が強烈なので、小児にも多い気がしてしまって…。
ドクタードクター
そこが典型的なひっかけだ。小児特発性ネフローゼ症候群の約80%は微小変化型で、巣状分節性糸球体硬化症は1割前後と少数派。微小変化型は光学顕微鏡ではほぼ正常な糸球体に見えて、電子顕微鏡で初めて足細胞の足突起が消失・癒合しているのがわかる。
医学生医学生
病理実習で「光顕で正常なのに蛋白尿が出る」と聞いて不思議に思ったのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが微小変化型の特徴だね。そしてこの微小変化型はステロイドに非常によく反応する。だから第一選択薬は副腎皮質ステロイドで正しい。小児では初発時に腎生検をせず、まず経口プレドニゾロンで治療を始めるのが原則で、8~9割が数週以内に寛解に至る。
医学生医学生
成人だとまず腎生検をしてから治療方針を決めるんでしたよね。小児で生検を省けるのは、ほとんどが微小変化型だからですか。
ドクタードクター
その理解で合っている。成人では中高年の膜性腎症をはじめ組織型が多彩だから、原則として生検で確認する。小児では、ステロイドに反応するかどうか自体が予後を最もよく反映する指標で、4週間の連日投与でも寛解しないステロイド抵抗性の場合に初めて生検を行い、巣状分節性糸球体硬化症などを探す。抵抗例ではシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬を中心とした治療へ移るよ。
医学生医学生
では「約9割が再発する」は?再発が多いという話は聞いたことがあります。
ドクタードクター
再発しやすいのは確かに本症の大きな特徴だ。ただ報告によって幅があり、多くても7~8割程度、半数前後とする報告もある。「約9割」というのは過大だと判断しよう。再発を繰り返す頻回再発型やステロイド依存性になるのはさらにその一部だ。
医学生医学生
最後の「成人まで持ち越す」は、再発が多いなら大人になっても続きそうに思えますが…。
ドクタードクター
そう思いがちだけど、多くは成長とともに再発しなくなり、腎機能も長期的に保たれることがほとんどだ。成人期まで再発が続くキャリーオーバーは1~2割程度にとどまるから、一般論として「持ち越す」とは言えない。ただし小児期に頻回に再発した例ではリスクが高いので、長期のフォローは必要だよ。
医学生医学生
整理すると、多数派の微小変化型だから幼児に多く、ステロイドがよく効いて、再発はしても予後は良好、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床での注意点も押さえておこう。頻回再発型やステロイド依存性ではステロイドの副作用、つまり成長障害、肥満、骨粗鬆症、白内障などが問題になるので、シクロスポリン、シクロホスファミド、リツキシマブといった免疫抑制療法でステロイドを減らす工夫をする。
医学生医学生
合併症で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
大事な質問だね。アンチトロンビンが尿に漏れて凝固能が亢進するので血栓症、免疫グロブリンの喪失による感染症、とくに肺炎球菌による腹膜炎に注意が必要だ。循環血漿量の減少から急性腎障害を起こすこともある。むくんでいる子どもが腹痛や発熱を訴えたら、単なる浮腫と片付けないことが大切だよ。

まとめ

小児の特発性ネフローゼ症候群は2~6歳ごろの幼児期、特に男児に好発し、組織型の約8割は光顕でほぼ正常、電顕で足突起の消失を示す微小変化型です。微小変化型はステロイド感受性が高いため、小児では初発時に腎生検を行わず副腎皮質ステロイドで治療を開始し、8~9割が寛解に至ります。巣状分節性糸球体硬化症は少数派でステロイド抵抗性・腎予後不良となりやすく、抵抗例で腎生検が行われます。再発は多いものの「約9割」は過大で、成人まで持ち越すのは1~2割程度にとどまり、多くは成長とともに再発しなくなります。「小児では微小変化型が多数派」という骨格から年齢・治療・予後を導く考え方は、成人例との違いや頻回再発例の管理、血栓症や感染症などの合併症対応を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, cです

ネフローゼ症候群は、糸球体からの大量の蛋白尿により低アルブミン血症をきたし、浮腫や脂質異常症を伴う症候群である。全身性疾患(ループス腎炎、紫斑病性腎炎など)や感染・薬剤に続発しないものを特発性(一次性)と呼び、小児のネフローゼ症候群の約90%は特発性である。 小児の特発性ネフローゼ症候群を理解する鍵は「組織型の大部分が微小変化型(微小変化群)である」という点にある。ここから次の特徴が導かれる。 ・発症年齢:幼児期(2~6歳ごろ)に好発し、男児に多い。 ・治療反応性:微小変化型はステロイドによく反応するため、第一選択は副腎皮質ステロイドであり、約80~90%が寛解に至る(ステロイド感受性)。 ・経過:寛解後の再発は多いが、腎機能は長期的に保たれることがほとんどで、多くは成長とともに再発しなくなる。 一方で、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)はステロイド抵抗性を示すことが多く、腎予後が不良である。小児では少数派であり、ステロイドが効かない例で腎生検により見いだされることが多い。 このように「多数派=微小変化型=ステロイド感受性で予後良好」という骨格を押さえておけば、好発年齢・組織型・治療・再発率・長期予後の各選択肢の正誤を判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  5歳までに好発する。

    正しい。小児特発性ネフローゼ症候群は2~6歳ごろの幼児期に発症のピークがあり、5歳以下の発症が多数を占める。男女比はおよそ2:1で男児に多い。年長児(特に思春期)の発症例では、微小変化型以外の組織型(FSGSや膜性増殖性糸球体腎炎など)や二次性の可能性が相対的に高くなるため、腎生検を考慮する根拠となる。

  2. ×b.  組織病型は巣状分節状糸球体硬化症が多い。

    誤り。小児特発性ネフローゼ症候群の組織型は約80%が微小変化型であり、FSGSは約10%前後と少数である。微小変化型は光学顕微鏡ではほぼ正常な糸球体で、電子顕微鏡で足細胞(ポドサイト)の足突起の消失(癒合)がみられるのが特徴である。FSGSは一部の糸球体の一部分に硬化病変を認め、ステロイド抵抗性を示すことが多く、長期的には末期腎不全に進行しうる。なお、当初微小変化型と判断された例が、治療抵抗性となって再生検でFSGSと判明することもある。

  3. ○c.  第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。

    正しい。多数を占める微小変化型はステロイドに非常によく反応するため、初発時は腎生検を行わずにプレドニゾロン(経口)による治療を開始するのが原則である。約80~90%が数週以内に尿蛋白陰性化(寛解)に至る。ステロイド感受性かどうかは予後を最もよく反映する指標であり、ステロイド抵抗性の場合には腎生検で組織型を確認し、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンなど)を中心とした治療に移行する。

  4. ×d.  約9割が再発する。

    誤り。再発しやすいことは本症の大きな特徴であるが、「約9割」は過大である。報告により幅があるものの、再発をきたすのは概ね半数前後から多くても7~8割程度とされ、再発を繰り返す頻回再発型やステロイド依存性となるのはさらにその一部である。頻回再発型・ステロイド依存性の例では、ステロイドの副作用(成長障害、肥満、骨粗鬆症、白内障など)を避けるため、シクロスポリン、シクロホスファミド、リツキシマブなどの免疫抑制療法が用いられる。

  5. ×e.  成人まで持ち越す。

    誤り。多くの症例は成長とともに再発しなくなり、成人期まで再発が続く(キャリーオーバー)のは約10~20%程度にとどまる。したがって「成人まで持ち越す」と一般化するのは誤りである。ただし、頻回再発型や小児期に再発を繰り返した例では成人期まで持ち越すリスクが高く、長期のフォローアップが必要になる。

ネフローゼ症候群の診断基準(小児)

高度蛋白尿(夜間蓄尿で40 mg/時/m2以上、または早朝尿で尿蛋白/クレアチニン比2.0 g/gCr以上)と、低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)を満たすものをネフローゼ症候群とする。浮腫や脂質異常症(高LDLコレステロール血症)は診断の必須条件ではないが、高頻度に伴う。

ステロイド反応性による分類(小児)

・ステロイド感受性:ステロイド連日投与開始後4週以内に寛解するもの。 ・ステロイド抵抗性:4週以上の連日投与でも寛解しないもの。 ・頻回再発型:初回寛解後6か月以内に2回以上、または任意の12か月以内に4回以上再発するもの。 ・ステロイド依存性:ステロイド減量中または中止後14日以内に2回連続して再発するもの。

合併症

低アルブミン血症による循環血漿量減少、凝固因子の変化(アンチトロンビンの尿中喪失、フィブリノゲン増加)による血栓症、免疫グロブリンの尿中喪失による感染症(特に肺炎球菌による腹膜炎など)、急性腎障害などに注意が必要である。

成人との違い

成人の一次性ネフローゼ症候群では、微小変化型に加え膜性腎症が多く(特に中高年)、FSGSや膜性増殖性糸球体腎炎も含め組織型が多彩である。そのため成人では原則として腎生検で組織型を確認してから治療方針を決める。

POINT

・小児特発性ネフローゼ症候群は2~6歳に好発し、男児に多い。 ・組織型の約80%は微小変化型。FSGSは少数で、ステロイド抵抗性・腎予後不良。 ・第一選択は副腎皮質ステロイドで、約80~90%が寛解する(初発時は腎生検なしで治療開始)。 ・再発は多いが「約9割」ではない。頻回再発型・ステロイド依存性には免疫抑制薬を用いる。 ・成人まで持ち越すのは約10~20%で、多くは成長とともに治癒する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。