胎児の元気を測る5つのものさし―BPSにない「腸の動き」を見抜け
第104回医師国家試験 G問題 第38問
国試問題にチャレンジ
妊娠末期の胎児管理の指標として有用でないのはどれか。
- a.胎動
- b.羊水量
- c.胎児筋緊張
- d.胎児腸蠕動
- e.ノンストレステスト〈NST〉
対話形式の解説
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ドクターまとめ
妊娠末期の胎児管理では、胎児well-beingを評価して娩出の時期や方法を判断し、その代表がbiophysical profile score(BPS)です。BPSはNST、胎児呼吸様運動、胎動、胎児筋緊張、羊水量の5項目を各2点で評価する10点満点の方法で、胎児腸蠕動は胎児の低酸素状態を反映する指標として確立しておらず用いられません。NST・呼吸様運動・胎動・筋緊張はその時点の中枢神経系の活動を反映する急性指標で、発達の遅い機能から先に失われ、羊水量は胎盤機能不全に伴う腎血流低下を反映する慢性指標です。modified BPS、CST、パルスドプラ法なども含めて各指標の意味を理解しておくことは、胎児機能不全を早期に察知し適切な分娩管理を行うための基礎となります。
解答・解説
正解はdです
妊娠末期の胎児管理では、胎児が子宮内で元気に過ごしているかどうか(胎児well-being)を評価し、娩出の時期や方法を判断する。その代表的な評価法がbiophysical profile score〈BPS〉である。BPSは超音波検査とノンストレステスト〈NST〉を組み合わせて胎児の状態を点数化する方法で、次の5項目を用いる。 ①NST ②胎児呼吸様運動 ③胎動(胎児の体幹・四肢の運動) ④胎児筋緊張 ⑤羊水量 これらはいずれも胎児の中枢神経系の活動性や、慢性的な胎盤機能の状態を反映する項目である。 本問の選択肢のうち、胎動・羊水量・胎児筋緊張・NSTはBPSの構成項目であり、胎児管理の指標として日常的に用いられる。一方、胎児腸蠕動は胎児の低酸素状態や予備能を反映する指標として確立しておらず、胎児管理の指標には用いない。BPSの5項目を覚えていれば、項目に含まれないものを選ぶことで正解に到達できる。
選択肢考察
- ×a. 胎動
胎動はBPSの構成項目の一つであり、有用な指標である。超音波で30分間観察し、体幹や四肢のはっきりした運動が3回以上あれば正常(2点)とする。胎児が低酸素状態になると、酸素消費を抑えるために胎動が減少する。妊婦自身が感じる胎動の減少も、胎児機能不全を疑うきっかけとして臨床上重視される。
- ×b. 羊水量
羊水量はBPSの構成項目の一つであり、有用な指標である。妊娠後期の羊水は主に胎児尿でできている。慢性的な胎盤機能不全があると、胎児の血流は脳・心臓などの重要臓器へ優先的に再分配され、腎血流が減って尿量が低下する。その結果、羊水過少となる。つまり羊水量は慢性的な低酸素状態を反映する。BPSでは羊水ポケット(最大垂直羊水深度)が2cm以上あれば正常とする。
- ×c. 胎児筋緊張
胎児筋緊張はBPSの構成項目の一つであり、有用な指標である。30分間の観察中に、四肢や体幹の伸展に続いて屈曲位へ戻る動き(手指の開閉を含む)が1回以上あれば正常とする。筋緊張は胎生の早い時期から発達する機能で、低酸素が高度になると最後に失われる。そのため筋緊張の消失は重篤な胎児状態を示唆する。
- ○d. 胎児腸蠕動
胎児腸蠕動は、胎児の低酸素状態や予備能を評価する指標として確立しておらず、BPSの項目にも含まれない。したがって、胎児管理の指標として有用でないものはこれである。超音波で胎児の腸管の動きが観察できることはあるが、臨床的な評価には用いない。
- ×e. ノンストレステスト〈NST〉
NSTは子宮収縮などのストレスがない状態で胎児心拍数を連続記録し、胎動などに伴う一過性頻脈(心拍数の一時的な上昇)の有無をみる検査である。BPSの構成項目でもあり、胎児管理の基本的な指標である。一過性頻脈が20分間に2回以上あればreactive(反応型)と判定し、胎児の自律神経機能が保たれている、つまり胎児well-beingが良好であると判断する。
biophysical profile score〈BPS〉
Manningらが考案した胎児well-beingの評価法である。以下の5項目をそれぞれ正常2点、異常0点で評価し、合計10点満点とする。観察時間は原則30分間である。 ・NST:reactive(一過性頻脈を認める)なら2点 ・胎児呼吸様運動:30秒以上続く呼吸様運動が1回以上あれば2点 ・胎動:体幹・四肢の運動が3回以上あれば2点 ・胎児筋緊張:四肢・体幹の伸展から屈曲への復帰が1回以上あれば2点 ・羊水量:最大垂直羊水深度が2cm以上あれば2点 合計8〜10点は正常、6点は疑わしい(再検査などを検討)、4点以下は異常と判断し、妊娠週数などを考慮して娩出を検討する。
急性指標と慢性指標
NST・呼吸様運動・胎動・筋緊張は中枢神経系の活動を反映し、その時点の低酸素状態を示す急性の指標である。低酸素が進むと、発達の遅い機能から先に失われる。消失するのは、NSTの反応性・呼吸様運動が先で、胎動、筋緊張の順に後になる。これに対し羊水量は、胎盤機能不全に伴う腎血流の低下を反映する慢性の指標である。
その他の胎児評価法
・modified BPS:NSTと羊水量の2項目で簡略に評価する方法 ・コントラクションストレステスト〈CST〉:子宮収縮を負荷し、遅発一過性徐脈の有無をみる ・超音波パルスドプラ法:臍帯動脈や中大脳動脈の血流波形を評価する(胎児発育不全の管理で特に重要)
POINT
・BPSの5項目:NST、胎児呼吸様運動、胎動、胎児筋緊張、羊水量(各2点、10点満点) ・胎児腸蠕動は胎児管理の指標に用いない ・羊水量は慢性的な胎盤機能不全を、他の4項目はその時点の胎児低酸素状態を反映する ・NSTは20分間に一過性頻脈が2回以上あればreactive
