StudyMed医師国家試験

「一発で高く」か「長く保つ」か―PK/PD理論で決まる抗菌薬の投与法

第104回医師国家試験 G問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第2問

薬物動態と薬力学理論とを考慮して抗菌薬を使う場合,1日投与総量を同じにした際,分割投与よりも単回投与が治療効果をあげるのはどれか。

  1. a.キノロン系薬
  2. b.ペニシリン系薬
  3. c.カルバペネム系薬
  4. d.セファロスポリン系薬
  5. e.テトラサイクリン系薬

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は抗菌薬の投与設計、PK/PD理論の基本を問う問題だ。同じ1日量でも、まとめて1回で入れるか、何回かに分けるかで効き方が変わる薬がある。どの系統がどちらのタイプか、その理由まで説明できるかが着眼点だよ。
医学生医学生
PKは薬物動態、PDは薬力学ですよね。薬理学の講義で習いましたが、組み合わせて考えるのはまだ苦手です。
ドクタードクター
じゃあ整理しよう。PKは体内で血中濃度がどう推移するか、PDはその濃度で菌にどんな効果が出るか。両者をつなぐ指標が3つある。最高血中濃度を最小発育阻止濃度で割ったCmax/MIC、濃度曲線下面積をMICで割ったAUC/MIC、そして投与間隔のうち濃度がMICを上回っている時間の割合、%T>MICだ。
医学生医学生
1日量が同じでも、1回でまとめて入れるとピークは高くなるけど、MICを下回る時間が長くなりそうです。
ドクタードクター
その通り。逆に分割すればピークは低いけれど、MIC以上の時間を長く保てる。だからCmax/MICで効果が決まる濃度依存性の薬なら単回投与が有利、%T>MICで決まる時間依存性の薬なら分割投与が有利になる。では選択肢のうち、濃度依存性の代表はどれかな。
医学生医学生
キノロン系だと思います。アミノグリコシド系と並べて覚えました。
ドクタードクター
正解。キノロン系は濃度依存性の殺菌作用を示し、ピーク濃度を高めるほど殺菌力が強まる。さらに濃度がMICを下回ってもしばらく増殖抑制が続く後効果、PAEをもつから、投与間隔を空けても効果が落ちにくい。高いピークは耐性菌の選択を抑える点でも有利とされ、レボフロキサシンが1日1回500 mgの投与法になったのはこの考え方に基づくんだ。
医学生医学生
ペニシリン系は時間依存性ですよね。でも重症なら濃度を上げた方が効きそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが誤解しやすいところ。β-ラクタム系は、濃度をMICの数倍以上に上げても殺菌力はほとんど増えない。効果を決めるのはMIC以上の時間だ。しかも半減期が短く、グラム陰性菌に対するPAEはほとんどない。だから1日量を分けて頻回に投与するのが基本になる。
医学生医学生
カルバペネム系も同じβ-ラクタム系なので、時間依存性ということですね。臨床実習で、メロペネムを長めの時間かけて点滴しているのを見ました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。重症例では1回の点滴時間を延長したり持続投与にしたりして、%T>MICを稼ぐ工夫がされる。単回投与とは真逆の発想だ。
医学生医学生
セファロスポリン系もβ-ラクタム系ですが、セフトリアキソンは1日1回投与していたような……。
ドクタードクター
鋭い。セフトリアキソンは半減期が長いので、1回投与でも%T>MICを十分確保できるから1日1回が可能なんだ。濃度依存性になったわけではない、という点を区別しておこう。
医学生医学生
テトラサイクリン系は静菌的な薬でしたよね。時間依存性なら分割投与が有利ということでしょうか。
ドクタードクター
分類としては時間依存性だけど、長い持続効果をもつから、効果は主にAUC/MIC、つまり1日の総曝露量と相関する。このタイプは総投与量が効果を左右するので、総量が同じなら単回でも分割でも大きな差は出にくい。少なくとも「単回投与の方が効果をあげる」とはいえないね。
医学生医学生
整理すると、濃度依存性はまとめて投与、時間依存性で持続効果が短いものは分割、持続効果が長いものは総量が大事、という3分類ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、アミノグリコシド系も濃度依存性の代表で、1日1回投与にするとトラフが十分に下がる時間ができ、腎毒性や耳毒性の軽減にもつながる。ここではTDMで血中濃度を測って投与量を調整することが大切だ。
医学生医学生
AUC/MICが指標のグループには、ほかにどんな薬がありますか。
ドクタードクター
マクロライド系のアジスロマイシン、バンコマイシン、リネゾリドなどが入る。特にバンコマイシンはAUCを指標にしたTDMが行われていて、臨床で必ず出会う。抗菌薬を選んだら終わりではなく、「どう投与するか」まで考えて初めて効果が最大化されるし、耐性菌や副作用を減らすことにもつながるんだ。

まとめ

抗菌薬の効果は、Cmax/MIC、AUC/MIC、%T>MICというPK/PDパラメータで整理でき、1日総量が同じなら単回投与はピークを高め、分割投与はMIC以上の時間を延ばします。キノロン系やアミノグリコシド系は濃度依存性でPAEも長いため、1日1回投与でピークを高くすると治療効果が高まり、耐性化抑制や毒性軽減にも有利です。ペニシリン系・セファロスポリン系・カルバペネム系などのβ-ラクタム系は時間依存性で%T>MICが指標となるため分割投与や点滴時間延長が基本であり、セフトリアキソンの1日1回投与は長い半減期によるものです。テトラサイクリン系、マクロライド系、バンコマイシンなどはAUC/MICが指標で1日総量が重要となります。薬の選択だけでなく投与設計まで考えるPK/PDの視点は、適正使用と耐性菌対策の土台となる知識です。

解答・解説

正解はaです

本問は、抗菌薬の薬物動態(PK: pharmacokinetics、体内で薬物濃度がどう推移するか)と薬力学(PD: pharmacodynamics、その濃度で菌にどのような効果が出るか)を組み合わせたPK/PD理論の基本を問うている。 抗菌薬の効果と相関するPK/PDパラメータは、主に次の3つに分けられる。 ・Cmax/MIC:最高血中濃度(Cmax)を最小発育阻止濃度(MIC)で割った値。濃度依存性の殺菌作用をもつ薬剤で重視される。 ・AUC/MIC:血中濃度-時間曲線下面積(AUC、一定時間の総曝露量)をMICで割った値。濃度依存性薬や、時間依存性でも持続効果の長い薬剤で重視される。 ・Time above MIC(%T>MIC):投与間隔のうち血中濃度がMICを上回っている時間の割合。時間依存性の薬剤で重視される。 1日総投与量を同じにしたとき、1回にまとめて投与するとCmaxは高くなるがMICを下回る時間が長くなりやすい。逆に分割投与ではCmaxは低くなるがMIC以上の時間を長く保てる。したがって、Cmax/MIC(およびAUC/MIC)が効果を規定する濃度依存性薬では単回(1日1回)投与が有利であり、%T>MICが効果を規定する時間依存性薬では分割投与(または持続・延長投与)が有利となる。選択肢の中で濃度依存性の代表はキノロン系薬である。

選択肢考察

  1. ○a.  キノロン系薬

    キノロン系薬は濃度依存性の殺菌作用を示し、効果はCmax/MICおよびAUC/MICと相関する。1日量をまとめて投与してピーク濃度を高めるほど殺菌力が強まり、さらにMICを下回った後もしばらく菌の増殖抑制が続く後効果(PAE: post-antibiotic effect)をもつため、投与間隔を空けても効果が落ちにくい。高いピークは耐性菌の選択を抑える点でも有利とされ、レボフロキサシンが1日1回500 mg投与に変更されたのはこの考え方に基づく。

  2. ×b.  ペニシリン系薬

    ペニシリン系薬はβ-ラクタム系で、時間依存性の殺菌作用を示す。濃度をMICの数倍以上に上げても殺菌力はほとんど増さず、効果は%T>MICで決まる。また一般にグラム陰性菌に対するPAEはほとんどない。半減期も短いため、1日量を分割して頻回に投与し、MIC以上の濃度を保つ時間を長くする方が効果的である。

  3. ×c.  カルバペネム系薬

    カルバペネム系薬もβ-ラクタム系であり、時間依存性に分類され、効果は%T>MICと相関する。したがって同じ1日量なら分割投与(重症例では1回の点滴時間を延長する投与法)が有利で、単回投与は適さない。

  4. ×d.  セファロスポリン系薬

    セファロスポリン系薬もβ-ラクタム系で時間依存性の薬剤であり、効果は%T>MICと相関する。1日量を分けて投与しMIC以上の時間を確保するのが原則である。なお、セフトリアキソンは半減期が長いため1日1回投与が可能だが、これは長い半減期によって1回投与でも%T>MICを十分確保できるためであり、濃度依存性だからではない。

  5. ×e.  テトラサイクリン系薬

    テトラサイクリン系薬は静菌的に作用する時間依存性の薬剤であるが、長い持続効果(PAE)をもつため、効果は主にAUC/MIC(1日の総曝露量)と相関する。このタイプでは1日総投与量が効果を左右し、総量が同じなら単回投与と分割投与で効果に大きな差は生じない。したがって「単回投与の方が治療効果をあげる」とはいえない。

PK/PDによる抗菌薬の分類

1. 濃度依存性+長い持続効果(指標:Cmax/MIC、AUC/MIC)  キノロン系、アミノグリコシド系、ダプトマイシンなど。1日1回などまとめて投与し、ピーク濃度を高くする。アミノグリコシド系では1日1回投与によりトラフ(最低血中濃度)が下がる時間が確保され、腎毒性・耳毒性の軽減にもつながる。 2. 時間依存性+短い持続効果(指標:%T>MIC)  ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系などのβ-ラクタム系。1日量を分割して頻回投与する。重症感染症では点滴時間の延長や持続投与も行われる。 3. 時間依存性+長い持続効果(指標:AUC/MIC)  テトラサイクリン系、マクロライド系(アジスロマイシンなど)、グリコペプチド系(バンコマイシン)、リネゾリドなど。1日の総投与量が重要となる。

用語

・MIC(最小発育阻止濃度):菌の増殖を肉眼的に抑える最小の薬物濃度。 ・PAE(post-antibiotic effect):薬物濃度がMIC未満になった後も菌の増殖抑制が持続する現象。

POINT

・キノロン系・アミノグリコシド系は濃度依存性で、Cmax/MIC・AUC/MICが効果の指標 → 1日1回投与でピークを高くする。 ・β-ラクタム系(ペニシリン・セフェム・カルバペネム)は時間依存性で、%T>MICが指標 → 分割投与。 ・テトラサイクリン系・マクロライド系・バンコマイシンはAUC/MICが指標 → 1日総投与量が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。