「死ぬかと思った」は発作のど真ん中―パニック発作の"最中"と"その後"を見分ける
第104回医師国家試験 G問題 第15問
国試問題にチャレンジ
パニック発作中にみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.解離
- b.徐脈
- c.呼吸促迫
- d.死の恐怖
- e.予期不安
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
パニック発作は、強い恐怖が突然わき起こり数分以内に頂点に達する発作で、交感神経の過剰興奮による動悸・頻脈、発汗、震え、呼吸促迫などの身体症状と、死ぬことへの恐怖や自制を失うことへの恐怖などの精神症状が同時に現れます。徐脈は交感神経優位の病態に合わず、予期不安や広場恐怖は発作の後に生じる二次的な症状であって、発作中の症状ではありません。解離性健忘のような解離症状もパニック発作の典型像には含まれず、発作中にみられるのは現実感消失や離人感です。臨床では甲状腺機能亢進症や不整脈、低血糖などの身体疾患を除外したうえで、SSRIと認知行動療法を軸に治療します。発作の「最中」と「その後」を分けて考える視点は、パニック症の診断と、予期不安・回避の悪循環を断つ治療の理解に直結します。
解答・解説
正解はc, dです
本問は、パニック発作の「発作中」に現れる症状と、発作と発作の間(発作間欠期)に現れる症状とを区別できるかを問う問題である。 パニック発作とは、強い恐怖や不快感が突然わき起こり、数分以内(おおむね10分以内)に頂点に達する発作である。発作中には、交感神経の過剰な興奮による身体症状(動悸・頻脈、発汗、震え、息苦しさ・呼吸促迫、胸痛など)と、精神症状(現実感消失・離人感、自制を失うことや気が狂うことへの恐怖、死ぬことへの恐怖)とが同時に出現する。DSM-5(米国精神医学会の診断基準)では、13項目の症状のうち4項目以上がそろうものをパニック発作と定義している。 一方、パニック症(パニック障害)では、発作を経験した後に「また発作が起きるのではないか」という持続的な心配(予期不安)や、発作が起きたときに逃げられない・助けを得にくい場所を避ける行動(広場恐怖)がみられる。これらは発作の「後」に生じる二次的な症状であり、発作そのものの症状ではない。 したがって、発作中の症状として挙げられた選択肢のうち、身体症状としての呼吸促迫と、精神症状としての死の恐怖の2つを選べばよい。
選択肢考察
- ×a. 解離
誤り。パニック発作中の精神症状としてみられるのは、周囲が現実でないように感じる「現実感消失」や、自分が自分から離れているように感じる「離人感」である。一方、ここでいう解離とは、解離性健忘(ある期間の記憶が抜け落ちる)や解離性遁走、解離性昏迷などのように、意識・記憶・自己同一性などのまとまりが失われる状態を指し、主に解離症(かつてのヒステリーの一部)でみられる。こうした解離症状はパニック発作の典型的な症状には含まれない。なお、現実感消失・離人感も広い意味では解離性の体験に分類されることがあるが、本問では「解離」はパニック発作の症状として扱われていない。
- ×b. 徐脈
誤り。パニック発作中は交感神経が過剰に興奮するため、心拍数は増加し、動悸や頻脈を呈する。徐脈はパニック発作の症状ではない。なお、恐怖刺激によって迷走神経反射が起こり徐脈・血圧低下から失神に至る血管迷走神経性失神とは区別する必要がある。
- ○c. 呼吸促迫
正しい。息苦しさ、息切れ感、窒息しそうな感覚はパニック発作の代表的な身体症状であり、呼吸は速く浅くなる(呼吸促迫)。発作中に過呼吸となると、血液中の二酸化炭素分圧が低下して呼吸性アルカローシスとなり、手足や口の周りのしびれ感、テタニー様の筋けいれん、めまいなどを伴うこともある。これが患者の恐怖をさらに強め、症状が悪循環的に増悪しやすい。
- ○d. 死の恐怖
正しい。パニック発作中には、激しい動悸や息苦しさとともに「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖に襲われることが多く、救急外来を受診する契機ともなる。死ぬことへの恐怖は、自制を失うこと・気が狂うことへの恐怖とともに、DSM-5のパニック発作の症状項目に含まれる精神症状である。
- ×e. 予期不安
誤り。予期不安とは、パニック発作を一度経験した人が、あの苦しさがまた襲ってくるのではないかと、発作のない時期にも持続的に心配し続けることを指す。発作の「後」、発作間欠期にみられる症状であり、発作中の症状ではない。予期不安はパニック症の診断上重要な特徴であり(DSM-5では、発作後1か月以上にわたる予期不安または発作に関連した不適応的な行動変化が要件の一つ)、この不安が高まることで次の発作が起こりやすくなるという悪循環を生む。
パニック発作の症状(DSM-5)
以下の13項目のうち4項目以上が、突然出現して数分以内に頂点に達するものをパニック発作という。 1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加 2. 発汗 3. 身震いまたは震え 4. 息切れ感または息苦しさ 5. 窒息感 6. 胸痛または胸部の不快感 7. 嘔気または腹部の不快感 8. めまい感、ふらつき、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ 9. 寒気または熱感 10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感) 11. 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している感じ) 12. 抑制力を失うまたは「どうかなってしまう」ことに対する恐怖 13. 死ぬことに対する恐怖
パニック症(パニック障害)
・予期しないパニック発作が繰り返し起こり、その後1か月以上にわたって、さらなる発作やその結果に対する持続的な心配(予期不安)、あるいは発作を避けるための不適応的な行動変化がみられるもの。身体疾患や物質(カフェイン、覚醒剤など)の影響、他の精神疾患では説明できないことが条件となる。 ・しばしば広場恐怖を伴う。広場恐怖とは、発作が起きたときに逃げ出せない・助けを得られない状況(公共交通機関、混雑した場所、列に並ぶこと、一人での外出など)を恐れて避けるものである。 ・鑑別すべき身体疾患として、甲状腺機能亢進症、不整脈、狭心症、褐色細胞腫、低血糖、喘息発作などがある。 ・治療は、薬物療法としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択であり、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は発作時や導入初期に補助的に用いる。精神療法としては認知行動療法(曝露療法を含む)が有効である。
POINT
・パニック発作は突然起こり、10分以内に頂点に達する。 ・発作中の症状: 動悸・頻脈、発汗、震え、息苦しさ・呼吸促迫、胸部不快感、めまい、現実感消失・離人感、死の恐怖、気が狂う恐怖など。 ・予期不安と広場恐怖は発作後(発作間欠期)の症状であり、発作中の症状ではない。 ・徐脈ではなく頻脈。 ・治療はSSRIと認知行動療法が中心。
