StudyMed医師国家試験

腹囲から始まる2段構え―メタボ診断に「総コレステロール」が入らない理由

第104回医師国家試験 E問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第37問

特定健康診査によるメタボリックシンドローム診断の基準に含まれないのはどれか。

  1. a.腹囲
  2. b.血圧
  3. c.空腹時血糖
  4. d.トリグリセリド
  5. e.総コレステロール

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、特定健診で使われるメタボリックシンドロームの診断基準を問う問題だ。単に項目を暗記するより、「メタボの本態は何か」を押さえると、どれが入ってどれが入らないかが自然に見えてくる。まず、メタボリックシンドロームとはどんな状態だと思う?
医学生医学生
太っていて、血圧や血糖、脂質がちょっとずつ高い状態……というイメージです。
ドクタードクター
おおむね正しい。ただ大事なのは「太っている」の中身で、ポイントは内臓脂肪の蓄積なんだ。内臓脂肪がたまるとインスリン抵抗性が生じ、それを土台に高血圧・高血糖・脂質異常が一人に重なっていく。一つひとつは軽くても、重なることで心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる、という考え方だね。
医学生医学生
だから診断も内臓脂肪から入るんですね。
ドクタードクター
その通り。診断は「必須項目+選択項目」の2段構えになっている。必須項目が腹囲で、男性85cm以上、女性90cm以上。これはCTで測った内臓脂肪面積100平方cm以上に相当する値として決められたんだ。
医学生医学生
女性の方が基準が大きいのは意外でした。公衆衛生の講義でも引っかかった覚えがあります。
ドクタードクター
女性は皮下脂肪が多いぶん、同じ内臓脂肪量でも腹囲が大きく出やすいからだね。そしてこの腹囲を満たさなければ、ほかの項目がいくつ当てはまってもメタボとは診断されない。ここが「必須」の意味だ。
医学生医学生
選択項目は血圧、血糖、脂質の3つでしたっけ。
ドクタードクター
そう。血圧は収縮期130以上かつ/または拡張期85以上、空腹時血糖は110mg/dL以上、脂質はトリグリセリド150以上かつ/またはHDLコレステロール40未満。このうち2項目以上でメタボと診断する。薬物治療中なら該当とみなす点も覚えておこう。
医学生医学生
血圧も血糖も、高血圧や糖尿病の診断基準より低めですね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。病気になる手前の段階から拾い上げて、生活習慣の改善につなげるのが狙いなんだ。さて、ここで本題。脂質の項目に何が入っていて、何が入っていないかな。
医学生医学生
トリグリセリドとHDLだけ……。総コレステロールやLDLは入っていないんですか?動脈硬化といえばLDLだと思っていました。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だよ。だから基準に含まれないのは総コレステロールが正解になる。腹囲、血圧、空腹時血糖、トリグリセリドはすべて基準に入っている。LDLが動脈硬化の主要な危険因子なのは間違いないけれど、メタボの基準には採られていないんだ。
医学生医学生
なぜですか?リスク評価なら入れた方がよさそうに思えます。
ドクタードクター
メタボは「内臓脂肪とインスリン抵抗性から生じる異常の集まり」を捉える概念だからだ。内臓脂肪から肝臓に遊離脂肪酸が多く流れ込むと、トリグリセリドとVLDLの合成が増えて高トリグリセリド血症になり、それに伴ってHDLが下がる。この組み合わせこそがメタボに特徴的な脂質異常なんだ。総コレステロールやLDLの上昇は、遺伝や食事など別の要因の影響も大きく、メタボの本態を直接反映する指標ではない。
医学生医学生
LDLとは別の経路で動脈硬化リスクを上げる病態としてまとめたもの、ということですね。
ドクタードクター
その理解でばっちり。LDLは特定健診の検査項目として測定はされるけれど、メタボの判定には使わない。脂質異常症の診断では別に扱う、と整理しておこう。
医学生医学生
特定健診自体の仕組みもCBTで問われました。40歳以上でしたよね。
ドクタードクター
40〜74歳の医療保険加入者が対象で、実施主体は市町村国保や健康保険組合などの医療保険者。根拠法は高齢者の医療の確保に関する法律で、2008年に始まった。結果からリスクを階層化して、動機付け支援や積極的支援といった特定保健指導につなげるんだ。腹囲基準に加えて選択項目が1つだけなら「予備群」として扱われる。
医学生医学生
実習の健診外来で、腹囲を臍の高さで測っているのを見ました。
ドクタードクター
立位で、軽く息を吐いたときに臍の高さで測るのが決まりだ。測り方がずれると判定が変わってしまうから、実務では意外と大事なポイントだよ。

まとめ

わが国のメタボリックシンドローム診断基準は、内臓脂肪蓄積を示す腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)を必須項目とし、脂質(トリグリセリド150mg/dL以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dL未満)、血圧(130/85mmHg以上)、空腹時血糖(110mg/dL以上)のうち2項目以上を満たすものと定義されます。総コレステロールやLDLコレステロールは、内臓脂肪とインスリン抵抗性に特徴的な異常を反映しないため基準に含まれません。特定健診は40〜74歳の医療保険加入者を対象に医療保険者が実施し、結果に応じて特定保健指導につなげます。「メタボの本態は内臓脂肪とインスリン抵抗性」という軸で理解すれば、項目の取捨選択の理由まで説明でき、健診結果を読む実地の力にもつながります。

解答・解説

正解はeです

わが国のメタボリックシンドローム診断基準(2005年に日本内科学会など8学会が合同で策定)と、それに基づく特定健康診査(特定健診)での判定項目を問う問題である。 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を基盤として、高血圧・高血糖・脂質異常が一人に重なった状態であり、動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の危険が高まる。診断は「必須項目+選択項目」の2段構えになっている。 (1) 必須項目:内臓脂肪蓄積の指標としてのウエスト周囲径(腹囲)。男性85cm以上、女性90cm以上(いずれも内臓脂肪面積100cm2以上に相当)。 (2) 選択項目:①脂質異常(トリグリセリド150mg/dL以上、かつ/またはHDLコレステロール40mg/dL未満)、②血圧高値(収縮期130mmHg以上、かつ/または拡張期85mmHg以上)、③高血糖(空腹時血糖110mg/dL以上)。 腹囲の基準を満たし、さらに選択項目のうち2項目以上を満たすとメタボリックシンドロームと診断される。各項目は、該当する疾患の薬物治療を受けている場合も「該当」とみなす。 注目すべきは、脂質の項目が「トリグリセリド」と「HDLコレステロール」であり、総コレステロールやLDLコレステロールは含まれていない点である。メタボリックシンドロームの本態は内臓脂肪蓄積に伴うインスリン抵抗性であり、それによって特徴的に生じる脂質異常は高トリグリセリド血症と低HDLコレステロール血症だからである。

選択肢考察

  1. ×a.  腹囲

    基準に含まれる。腹囲(ウエスト周囲径、立位・軽い呼気時に臍の高さで測定)は、内臓脂肪蓄積を反映する必須項目である。男性85cm以上、女性90cm以上が基準であり、これはCTで測定した内臓脂肪面積100cm2以上に相当する値として設定された。この基準を満たさなければ、他の項目がいくつ当てはまってもメタボリックシンドロームとは診断されない。

  2. ×b.  血圧

    基準に含まれる。選択項目の一つであり、収縮期血圧130mmHg以上、かつ/または拡張期血圧85mmHg以上で該当とする。これは高血圧の診断基準(140/90mmHg以上)よりも低く設定されており、正常高値の段階から動脈硬化の危険因子として捉える考え方に基づく。降圧薬を服用している場合も該当とみなす。

  3. ×c.  空腹時血糖

    基準に含まれる。選択項目の一つであり、空腹時血糖110mg/dL以上で該当とする。糖尿病の診断基準(126mg/dL以上)よりも低い値であり、インスリン抵抗性による軽度の耐糖能異常の段階を拾い上げる意図がある。特定健診では、空腹時血糖が測定できない場合にHbA1c(ヘモグロビンA1c)で代用することがある。糖尿病の薬物治療中の者も該当とみなす。

  4. ×d.  トリグリセリド

    基準に含まれる。脂質異常の選択項目は、トリグリセリド(中性脂肪)150mg/dL以上、かつ/またはHDLコレステロール40mg/dL未満である。内臓脂肪から肝臓に流入する遊離脂肪酸が増えると、肝臓でのトリグリセリド合成と超低比重リポ蛋白(VLDL)の分泌が増え、高トリグリセリド血症が生じる。これに伴いHDLコレステロールが低下する。この組み合わせがメタボリックシンドロームに特徴的な脂質異常である。脂質異常症の治療薬を服用している場合も該当とみなす。

  5. ○e.  総コレステロール

    基準に含まれない。総コレステロールは、LDLコレステロール(悪玉)とHDLコレステロール(善玉)などの合計であり、動脈硬化の危険性を正しく反映しないことがあるうえ、内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性に特徴的な脂質異常を示す指標ではない。そのため、メタボリックシンドロームの診断基準には総コレステロールもLDLコレステロールも採用されていない。なお、LDLコレステロールは独立した重要な動脈硬化危険因子であり、特定健診の検査項目としては測定されるが、メタボリックシンドロームの判定には用いない。

わが国のメタボリックシンドローム診断基準(2005年)

必須項目:ウエスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪面積100cm2以上に相当) 上記に加え、以下のうち2項目以上: ・脂質:トリグリセリド150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール40mg/dL未満 ・血圧:収縮期130mmHg以上 かつ/または 拡張期85mmHg以上 ・血糖:空腹時血糖110mg/dL以上 ※いずれも薬物治療中であれば該当とみなす。 ※腹囲基準+選択項目1項目の場合は「予備群」とされる(特定健診での判定)。

特定健康診査・特定保健指導

・根拠法:高齢者の医療の確保に関する法律。2008年(平成20年)4月開始。 ・実施主体:医療保険者(市町村国保、健康保険組合、協会けんぽなど)。 ・対象:40〜74歳の医療保険加入者。 ・目的:メタボリックシンドロームに着目し、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病の該当者・予備群を早期に見つけ、発症や重症化を予防する。 ・健診結果に基づいてリスクを階層化し、「動機付け支援」「積極的支援」の特定保健指導を行う。

動脈硬化危険因子としての位置づけ

・LDLコレステロールは動脈硬化の主要な危険因子であり、脂質異常症の診断基準(LDL-C 140mg/dL以上など)に用いられるが、メタボリックシンドロームの診断項目ではない。メタボリックシンドロームは、LDLコレステロールとは別の経路(内臓脂肪・インスリン抵抗性)で動脈硬化リスクを高める病態として位置づけられている。

POINT

・メタボリックシンドロームの必須項目は腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)。 ・選択項目は脂質(TG150mg/dL以上 かつ/または HDL-C 40mg/dL未満)、血圧(130/85mmHg以上)、血糖(空腹時110mg/dL以上)の3つで、2項目以上該当で診断。 ・総コレステロールとLDLコレステロールは診断基準に含まれない。 ・特定健診は40〜74歳の医療保険加入者を対象に、医療保険者が実施する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。