StudyMed医師国家試験

止める装置か、支える装置か―ICDとペースメーカーの使い分け

第104回医師国家試験 D問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第104回 D問題 第17問

植え込み型除細動器の適応でないのはどれか。

  1. a.Brugada症候群
  2. b.持続性心室頻拍
  3. c.完全房室ブロック
  4. d.先天性QT延長症候群
  5. e.心停止発作からの生還者

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は植え込み型除細動器、つまりICDの適応を問う問題だ。着眼点はシンプルで、「その病態で突然死を引き起こすのは速すぎる不整脈か、遅すぎる不整脈か」を見分けること。まず、ICDがどんな装置か説明できるかな。
医学生医学生
心室細動が起きたら自動で電気ショックをかける装置ですよね。
ドクタードクター
その理解で大筋は合っている。ICDは心内心電図を常に監視して、心室頻拍や心室細動といった致死性の心室性不整脈を検出すると、抗頻拍ペーシングや電気ショックで自動的に止める。つまり目的は、頻脈性の心室性不整脈による突然死を防ぐことなんだ。
医学生医学生
ということは、徐脈が問題の病気には向かないということですか。
ドクタードクター
そう、そこが本問の核心だ。完全房室ブロックは心房の興奮が心室に全く伝わらず、心室は遅い補充調律で動いている状態。めまいや失神、いわゆるAdams-Stokes発作や心不全を起こすけれど、問題は徐脈だから、必要なのは心拍数を補う恒久的ペースメーカーなんだ。これがICDの適応でないものになる。
医学生医学生
循環器内科の実習でペースメーカー植え込みを見学したとき、完全房室ブロックの患者さんでした。でもICDにもペーシング機能があると聞いた気がします。
ドクタードクター
鋭いね。確かにICDは徐脈に対するペーシング機能も備えている。ただ、それはあくまで付随機能で、完全房室ブロックそのものの治療として除細動器を選ぶ理由にはならない。適応を考えるときは「主目的が何か」で判断しよう。では、他の選択肢がなぜ適応になるかを見ていこう。まずBrugada症候群はどうかな。
医学生医学生
右側胸部誘導でcoved型のST上昇が出る病気ですね。症状がなければ経過観察のこともあると習いましたが。
ドクタードクター
よく知っているね。Brugada症候群はNaチャネル遺伝子の異常などが関与する遺伝性不整脈で、器質的心疾患のない壮年男性が夜間睡眠中に心室細動を起こして突然死する原因になる。心室細動を確実に予防する薬物療法はないので、突然死予防の中心はICDだ。心停止の既往がある人は明確な適応で、不整脈による失神の既往など高リスクと判断される人も適応になる。すべての無症状例が一律に植え込むわけではない、という君の理解も正しいよ。
医学生医学生
持続性心室頻拍は、それ自体が致死性不整脈なので分かりやすいです。
ドクタードクター
そうだね。30秒以上続くか、血行動態が破綻して停止処置を要する心室頻拍で、ショックや失神を起こしうるうえ、心室細動に移行する危険がある。特に陳旧性心筋梗塞や心筋症に伴うものはICDの代表的な適応だ。一方、器質的心疾患のない特発性心室頻拍の一部はカテーテルアブレーションで根治が期待できる、というのも覚えておこう。
医学生医学生
先天性QT延長症候群は、まずβ遮断薬だったと思います。
ドクタードクター
その通り。治療の基本はβ遮断薬と、運動や情動ストレス、QTを延ばす薬剤などの誘因を避けること。ただしtorsade de pointesを起こして心室細動に移行すると突然死に至るから、心停止からの蘇生例や、β遮断薬を使っても失神やtorsade de pointesを繰り返す例ではICDの適応になる。
医学生医学生
心停止からの生還者は、再発したら次は助からないかもしれないから、最も強い適応ですね。
ドクタードクター
そう、二次予防の代表だ。ただし注意点が2つある。心停止には心静止や無脈性電気活動によるものもあって、すべてが心室細動や心室頻拍によるわけではないこと。そして急性心筋梗塞の超急性期や電解質異常など、可逆的な原因による場合はまず原因の治療が優先されることだ。
医学生医学生
整理すると、ICDは頻脈性の致死性不整脈を止める装置、ペースメーカーは徐脈を支える装置、という使い分けですね。
ドクタードクター
完璧だ。もう少し発展させよう。ICDの適応は、すでに致死性不整脈を起こした人への二次予防と、まだ起こしていないけれど危険が高い人への一次予防に分けて整理される。一次予防の代表は、心筋梗塞後や拡張型心筋症で左室駆出率がおおむね35%以下に低下し、薬物療法を尽くしても心不全症状が残る例だ。QRS幅が広く心室同期不全があれば、両室ペーシング機能付きのCRT-Dが選ばれる。
医学生医学生
ICDを入れれば不整脈自体も起こらなくなるんでしょうか。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。ICDは起きた不整脈を止める装置で、発生そのものは予防しない。作動を減らすために抗不整脈薬やアブレーションを併用することもあるし、心房細動などを誤認してショックが出る不適切作動も問題になる。最近は血管内にリードを入れない完全皮下植え込み型や、植え込みまでのつなぎに使う着用型自動除細動器もあるよ。
医学生医学生
ペースメーカーの適応も、洞不全症候群やMobitz II型、完全房室ブロックとセットで覚えておきます。
ドクタードクター
いいね。完全房室ブロックやMobitz II型は、症状がなくても突然の心停止の危険が高いから、原則として植え込みが考慮される。装置の名前ではなく「何を防ぐ装置か」で理解しておけば、迷わず選べるはずだ。

まとめ

植え込み型除細動器(ICD)は、心室頻拍や心室細動といった頻脈性の致死性心室性不整脈を検出し、抗頻拍ペーシングや電気ショックで自動的に停止させて突然死を防ぐ装置です。心停止からの蘇生例や持続性心室頻拍は二次予防の代表的な適応であり、Brugada症候群や先天性QT延長症候群、左室駆出率が高度に低下した心不全などの高リスク例は一次予防の適応となります。一方、完全房室ブロックは心房から心室への伝導が途絶えた徐脈性不整脈であり、治療は恒久的ペースメーカーの植え込みで、ICDの適応にはなりません。なおICDは不整脈の発生そのものは防がず、可逆的な原因による心停止では原因の治療が優先される点にも注意が必要です。「速すぎる不整脈を止めるICD」と「遅すぎる心拍を支えるペースメーカー」という機能の違いを押さえることが、デバイス治療を理解する基本となります。

解答・解説

正解はcです

植え込み型除細動器(ICD:implantable cardioverter-defibrillator)は、心室頻拍(VT:ventricular tachycardia)や心室細動(VF:ventricular fibrillation)といった致死性心室性不整脈を自動で検出し、抗頻拍ペーシングや電気ショックで停止させる装置である。すなわち、ICDの目的は「突然死につながる頻脈性の心室性不整脈」への対処であり、適応となるのは致死性心室性不整脈をすでに起こした患者(二次予防)か、起こす危険が高い患者(一次予防)である。 本問では、各選択肢が「致死性の頻脈性心室性不整脈のリスクを持つ病態か」、それとも「別の機序(徐脈)が問題となる病態か」を見分ければよい。Brugada症候群、持続性VT、先天性QT延長症候群、心停止からの蘇生例は、いずれもVT/VFによる突然死が問題となる病態である。一方、完全房室ブロックは心房から心室への興奮伝導が途絶えて起こる徐脈性不整脈であり、治療に必要なのは心拍数を補う恒久的ペースメーカーである。したがって、ICDの適応でないのはcである。

選択肢考察

  1. ×a.  Brugada症候群

    Brugada症候群は、心筋のNaチャネル遺伝子(SCN5Aなど)の異常が関与し、右側胸部誘導(V1〜V2)でcoved型(弓状)のST上昇を示す遺伝性不整脈疾患である。器質的心疾患のない壮年男性に多く、夜間睡眠中などにVFを起こして突然死する原因となる。VFを予防する確実な薬物療法はなく、突然死予防の中心はICDである。心停止・VFの既往がある例は明確な適応であり、不整脈による失神の既往があるなど高リスクと判断される例でも適応となる。したがってICDの適応に含まれる。

  2. ×b.  持続性心室頻拍

    持続性VTとは、30秒以上続く、または30秒以内でも血行動態が破綻して停止処置を要するVTをいう。心拍出量が低下して失神やショックを来しうるうえ、VFへ移行して突然死に至る危険がある。特に陳旧性心筋梗塞や心筋症など器質的心疾患に伴う持続性VTは、ICDの代表的な適応である(二次予防)。なお、器質的心疾患のない特発性VTの一部はカテーテルアブレーションで根治が期待でき、その場合はICDが不要となることもある。

  3. ○c.  完全房室ブロック

    完全房室ブロック(III度房室ブロック)は、心房の興奮が心室に全く伝わらず、心房と心室がそれぞれ独立して拍動する状態(房室解離)である。心室は下位の補充調律で動くため心拍数が遅く、めまい、失神(Adams-Stokes発作)、心不全などを来す。問題は徐脈であり、治療は恒久的ペースメーカーの植え込みで心拍数を確保することである(急性期に一時的ペーシングを行うこともある)。頻脈性心室性不整脈を止めるICDは、完全房室ブロックそのものの治療にはならない。したがって、これがICDの適応でないものであり、正解である。

  4. ×d.  先天性QT延長症候群

    先天性QT延長症候群は、KチャネルやNaチャネルなどのイオンチャネル遺伝子の異常により心室の再分極が遅れ、心電図でQT時間が延長する疾患である。QRS軸がねじれるように変化する多形性VTであるtorsade de pointes(TdP)を起こしやすく、失神の原因となり、VFへ移行すると突然死を来す。治療の基本はβ遮断薬と誘因(運動、情動ストレス、QT延長を来す薬剤など)の回避であるが、心停止からの蘇生例や、β遮断薬を用いても失神・TdPを繰り返す例ではICDの適応となる。

  5. ×e.  心停止発作からの生還者

    心停止から蘇生した患者は、原因となった致死性不整脈が再発して突然死する危険が高い。特にVFや血行動態の破綻するVTによる心停止で、急性心筋梗塞の超急性期や電解質異常など可逆的・一過性の原因が除外される場合には、再発時の突然死を防ぐためICDが最も強く推奨される(二次予防の代表)。ただし、心停止には心静止や無脈性電気活動(PEA)によるものもあり、すべての心停止がVT/VFによるわけではない。原因が可逆的なものであれば、原因の治療が優先される。

ICDの仕組み

皮下(通常は左前胸部)に本体を植え込み、経静脈的に右室へリードを留置する。心内心電図を常時監視し、VTには抗頻拍ペーシング(ATP:anti-tachycardia pacing。VTより速い頻度で刺激してリエントリーを止める)や低エネルギーのカルディオバージョン、VFには高エネルギーの除細動を自動で行う。徐脈に対するペーシング機能も備えている。近年は、血管内にリードを入れない完全皮下植え込み型除細動器(S-ICD)や、植え込みまでのつなぎとして用いる着用型自動除細動器(WCD)もある。

ICDの適応の考え方

・二次予防:VFや血行動態の破綻する持続性VTによる心停止・失神を起こしたことのある患者で、可逆的な原因が除外されるもの。最も確立した適応である。 ・一次予防:まだ致死性不整脈を起こしていないが、突然死の危険が高い患者。代表例は、心筋梗塞後や拡張型心筋症などで左室駆出率(LVEF)が高度に低下(おおむね35%以下)し、至適な薬物療法を行っても心不全症状が残る例。遺伝性不整脈(Brugada症候群、QT延長症候群など)や肥大型心筋症で突然死リスクの高い例も含まれる。 ・心不全でQRS幅が広く心室同期不全を伴う例では、両室ペーシング機能を持つ除細動器(CRT-D)が選択される。

ペースメーカーの適応との対比

恒久的ペースメーカーは徐脈性不整脈に用いる。代表的な適応は、症状(失神、めまい、心不全など)を伴う洞不全症候群、II度(Mobitz II型)・高度・III度(完全)房室ブロックなどである。完全房室ブロックやMobitz II型房室ブロックでは、症状がなくても突然の心停止の危険が高いため、原則として植え込みが考慮される。

ICDの限界

ICDは致死性不整脈を停止させて突然死を防ぐ装置であり、不整脈の発生そのものは予防しない。作動頻度を減らすため、抗不整脈薬やカテーテルアブレーションが併用されることがある。また、不適切作動(心房細動などの上室性頻拍や雑音を誤認してショックが出ること)も問題となる。

POINT

・ICD=VT/VFなど頻脈性の致死性心室性不整脈による突然死の予防装置。 ・ペースメーカー=徐脈性不整脈(洞不全症候群、Mobitz II型・高度・完全房室ブロック)の治療装置。 ・ICDの適応:心停止・VFからの蘇生例、持続性VT(二次予防)、LVEF低下例やBrugada症候群・QT延長症候群などの高リスク例(一次予防)。 ・完全房室ブロックはICDではなくペースメーカーの適応。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。