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足の裏のほくろを侮るな―ダーモスコピーで読む「溝」と「丘」

第103回医師国家試験 I問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第40問

足底に生じた黒色斑の診断に有用なのはどれか。

  1. a.針反応
  2. b.硝子圧法
  3. c.皮膚描記法
  4. d.Wood灯検査
  5. e.ダーモスコピー試験

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、足底にできた黒い斑をどう評価するか、という皮膚科の基本検査の問題だ。着眼点はひとつ。足の裏の黒色斑で一番見逃してはいけない病気は何か、そしてそれを見分けるのにどの検査が向いているか、だよ。
医学生医学生
足の裏の黒いものといえば、まず悪性黒色腫が頭に浮かびます。でも普通のほくろのことも多いですよね。
ドクタードクター
その通り。日常的に出会うのは良性の色素性母斑、つまりほくろがほとんどだ。ただ、日本人の悪性黒色腫は足底・手掌・爪といった手足の末端に生じる末端黒子型が最も多く、足底は好発部位なんだ。だから足の裏の黒色斑は安易に「ほくろでしょう」で済ませず、きちんと評価する必要がある。
医学生医学生
皮膚科の講義でABCDEを習いました。非対称、境界不整、色むら、直径6mm以上、変化している、でしたよね。肉眼でそれを確認すれば十分ではないんですか。
ドクタードクター
ABCDEは大切な入口だね。でも早期の病変だと肉眼では判断しきれないことが多い。そこで役立つのがダーモスコピーだ。ゼリーを塗ったり偏光を使ったりして皮膚表面の光の反射を抑え、10倍程度に拡大して観察する。肉眼では見えない、表皮から真皮浅層のメラニンの分布パターンがわかるんだ。
医学生医学生
臨床実習で皮膚科を回ったとき、外来で先生が小さなルーペのような機械を当てていました。痛みもなくてすぐ終わる検査ですね。
ドクタードクター
そう、非侵襲的でその場でできるのが強みだ。足底で特に重要なのが色素の並び方。足の裏には指紋のように、盛り上がった皮丘と溝の皮溝が平行に走っている。良性の母斑では色素が皮溝に沿って並ぶ皮溝平行パターン、早期の悪性黒色腫では皮丘に沿って並ぶ皮丘平行パターンをとるんだ。
医学生医学生
溝ならほくろ、丘ならメラノーマ、ですか。でも拡大像でどちらが丘でどちらが溝か、見分けられる自信がありません。
ドクタードクター
いい疑問だね。目印はエクリン汗管の開口部だ。汗の出口は皮丘に点状に並ぶから、その点がある列が皮丘だと判断できる。ほかに良性では格子様や細線維状のパターン、悪性では不規則でびまん性の色素沈着も手がかりになる。
医学生医学生
では、他の検査はどういう場面で使うものでしょうか。硝子圧法は色の変化を見る検査なので、黒色斑にも使えそうな気がしてしまいました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいポイントだ。硝子圧法はガラス板で皮疹を押して、紅斑か紫斑かを見分ける検査。拡張した血管による紅斑は押すと赤みが消えるけれど、血管外に漏れた血液である紫斑は消えない。尋常性狼瘡でapple jelly様の結節を確認するのにも使う。メラニンによる黒色斑は押しても変わらないから、良性か悪性かの判断には役立たないんだ。
医学生医学生
針反応はBehçet病の検査でしたね。CBTの勉強で、針を刺した部位に膿疱ができる皮膚の過敏性を見るものだと覚えました。
ドクタードクター
正解。色素斑とは関係ないね。皮膚描記法は皮膚をこすって反応を見る検査で、蕁麻疹では線状の膨疹、アトピー性皮膚炎では白色皮膚描記症、色素性蕁麻疹ではDarier徴候が出る。Wood灯は長波長の紫外線を当てて蛍光を見る検査で、紅色陰癬の珊瑚色、Microsporum属による頭部白癬の黄緑色、尋常性白斑の境界の明瞭化などに使うよ。
医学生医学生
どれも別の疾患のための検査で、色素性病変の良悪性を見分けるのはダーモスコピーだけ、ということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。臨床での注意点も押さえておこう。ダーモスコピーはあくまで悪性を疑う病変を拾い上げる検査で、確定診断は病理だ。悪性黒色腫を疑ったら、病変全体を少し余裕をもって切除する全切除生検が原則になる。昔は部分生検は禁忌とまで言われたけれど、今は全切除が難しい大きな病変なら必要に応じて行われる、という考え方に変わってきている。
医学生医学生
ダーモスコピーは母斑とメラノーマ以外にも使えるんですか。
ドクタードクター
使えるよ。基底細胞癌、脂漏性角化症、それに外傷による出血が黒く見える血腫の鑑別にも有用だ。足の裏や爪は踏んだりぶつけたりして黒くなることも多いから、出血との区別は実臨床でかなり役に立つ。
医学生医学生
足の裏のほくろを見たら、まずダーモスコピーで溝か丘かを確認して、怪しければ全切除生検、という流れで覚えます。
ドクタードクター
それで十分だ。日本人では足底が悪性黒色腫の好発部位だということを忘れずにね。

まとめ

足底の黒色斑では、良性の色素性母斑と悪性黒色腫の鑑別が最も重要であり、日本人の悪性黒色腫は足底などに生じる末端黒子型が最多です。鑑別にはダーモスコピーが有用で、足底では色素が皮溝に沿う皮溝平行パターンは良性、皮丘に沿う皮丘平行パターンは悪性黒色腫を示唆し、皮丘に並ぶ汗管開口部が判別の目印になります。針反応はBehçet病、硝子圧法は紅斑と紫斑の鑑別、皮膚描記法は蕁麻疹やアトピー性皮膚炎、Wood灯は紅色陰癬・頭部白癬・白斑などに用いる検査で、色素性病変の良悪性の判断には向きません。悪性を疑えば全切除生検による病理診断が原則であり、皮膚科の簡便検査をそれぞれの対象疾患と結びつけて整理しておくことが、外来での適切な初期評価につながります。

解答・解説

正解はeです

足底に黒い斑をみたときに最も大切なのは、良性の色素性母斑(いわゆるほくろ)か、悪性黒色腫(メラノーマ)かを見分けることである。日本人の悪性黒色腫では、足底・手掌・爪など手足の末端に生じる末端黒子型(acral lentiginous melanoma)が最も多く、足底は好発部位である。そのため、足底の黒色斑は安易に「ほくろ」と決めつけず、きちんと評価する必要がある。 この鑑別に役立つのが、ダーモスコピー(dermoscopy)である。ダーモスコピーは、皮膚の表面に光が反射するのを抑えて(ゼリーを塗る、または偏光を使う)、10倍程度に拡大して観察する検査である。肉眼では見えない表皮から真皮浅層のメラニン色素の分布パターンがわかる。痛みがなく、その場ですぐに行える。 足底では、皮膚の表面に「皮丘(盛り上がった部分)」と「皮溝(溝の部分)」が平行に並んでいる。良性の母斑では色素が皮溝に沿って並ぶ(皮溝平行パターン)。一方、早期の悪性黒色腫では色素が皮丘に沿って並ぶ(皮丘平行パターン)。この違いは早期診断に非常に役立つ。 他の選択肢は、いずれも色素性病変の良性・悪性を区別する検査ではなく、それぞれ別の疾患の診断に用いられる。

選択肢考察

  1. ×a.  針反応

    針反応は、滅菌した注射針を皮膚に刺し、24〜48時間後に刺した部位に紅斑や小さな膿疱ができるかをみる検査である。皮膚が刺激に対して過敏に反応する状態(皮膚被刺激性の亢進)をみるもので、Behçet病の診断の参考になる検査所見である。色素斑の診断には使わない。

  2. ×b.  硝子圧法

    硝子圧法(ガラス圧法)は、透明なガラス板やプラスチック板で皮疹を押し、色の変化をみる検査である。紅斑は血管が拡張しているだけなので、押すと血液が押し出されて赤みが消える。紫斑は血管の外に漏れた血液なので、押しても色が消えない。こうして紅斑と紫斑を区別する。また、尋常性狼瘡(皮膚結核の一型)では、圧迫すると黄褐色の結節(狼瘡結節、apple jelly様)が見えやすくなる。メラニン色素による黒色斑は押しても変化しないので、良性・悪性の区別には役立たない。

  3. ×c.  皮膚描記法

    皮膚描記法は、先の丸い器具や爪で皮膚をこすり、そのあとの反応をみる検査である。蕁麻疹ではこすった線に沿って赤く盛り上がる膨疹が出る(隆起性皮膚描記症)。アトピー性皮膚炎では、赤くならずに白い線になる(白色皮膚描記症)。肥満細胞症の一型である色素性蕁麻疹では、色素斑をこすると膨疹や発赤が出る(Darier徴候)。足底の黒色斑の診断には使わない。

  4. ×d.  Wood灯検査

    Wood灯は長波長の紫外線(約365nm)を出すランプで、暗い部屋で皮膚に当て、病変が発する蛍光や色の見え方を観察する。紅色陰癬(コリネバクテリウム感染)では珊瑚のような赤色、Microsporum属による頭部白癬では黄緑色の蛍光を発する。ポルフィリン症では尿や歯が赤い蛍光を示す。尋常性白斑では色が抜けた部分がはっきり白く浮かび上がる。癜風の診断にも使われる。色素斑の良性・悪性の区別には適さない。

  5. ○e.  ダーモスコピー試験

    ダーモスコピーは、皮膚表面の光の反射を抑えて拡大観察し、表皮から真皮浅層の色素や血管のパターンを評価する検査である。痛みがなく、体を傷つけずに行える。足底では、良性の母斑は皮溝に沿った色素(皮溝平行パターン、ほかに格子様・細線維状パターン)を示す。悪性黒色腫は皮丘に沿った色素(皮丘平行パターン)や、不規則でびまん性の色素沈着を示す。この違いにより、足底の黒色斑が悪性黒色腫かどうかを高い精度で見分けられる。基底細胞癌、脂漏性角化症、血腫(黒色に見える出血)などの鑑別にも有用である。

悪性黒色腫の病型(日本人に多い順を意識して)

・末端黒子型: 足底・手掌・爪に生じる。日本人で最も多い。 ・表在拡大型: 体幹や四肢に生じ、白人に多い。 ・結節型: 早くから盛り上がり、深く浸潤しやすい。 ・悪性黒子型: 高齢者の顔面など、日光にさらされる部位に生じる。

肉眼での悪性を疑う所見(ABCDE)

A(Asymmetry): 形が左右非対称 B(Border): 境界が不整、にじみ出し C(Color): 色むらがある D(Diameter): 直径6mm以上 E(Evolving): 大きさ・形・色が変化している

足底のダーモスコピー所見

・良性(色素性母斑): 皮溝平行パターン、格子様パターン、細線維状パターン ・悪性黒色腫: 皮丘平行パターン、不規則なびまん性色素沈着 皮丘には汗の出口(エクリン汗管の開口部)が点状に並ぶので、それを目印にどちらが皮丘かを判断する。

生検についての注意

かつては、悪性黒色腫が疑われる病変を一部だけ切り取る生検(部分生検)は、腫瘍を広げるおそれがあるとして避けるべきとされていた。現在は、病変全体を少し余裕をもって切り取る全切除生検が原則である。病変が大きく全切除が難しい場合には、部分生検で予後が悪くなるという明確な証拠はなく、必要に応じて行われる。ダーモスコピーは、生検の前に体を傷つけずに悪性を疑う病変を拾い上げるための検査として位置づけられる。

皮膚科で用いる主な簡便検査のまとめ

・針反応: Behçet病 ・硝子圧法: 紅斑と紫斑の鑑別、尋常性狼瘡 ・皮膚描記法: 蕁麻疹(隆起性)、アトピー性皮膚炎(白色)、色素性蕁麻疹(Darier徴候) ・Wood灯検査: 紅色陰癬、頭部白癬(Microsporum属)、癜風、ポルフィリン症、尋常性白斑 ・ダーモスコピー: 色素性病変(母斑と悪性黒色腫の鑑別)、基底細胞癌など ・KOH直接鏡検: 白癬、カンジダ症などの真菌症

POINT

・足底の黒色斑では、色素性母斑と悪性黒色腫の鑑別が最重要である。日本人の悪性黒色腫は末端黒子型が最多で、足底に好発する。 ・鑑別にはダーモスコピーが有用。皮溝平行パターンは良性、皮丘平行パターンは悪性黒色腫を示す。 ・針反応はBehçet病、硝子圧法は紅斑と紫斑の鑑別、皮膚描記法は蕁麻疹・アトピー性皮膚炎、Wood灯は紅色陰癬・白癬・白斑などに用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。