歩き出した子どもに迫る危険―1~4歳の不慮の事故死は「道路」で起きていた
第103回医師国家試験 I問題 第1問
国試問題にチャレンジ
1~4歳児の不慮の事故死で最も多いのはどれか。
- a.交通事故
- b.転落
- c.熱傷
- d.窒息
- e.中毒
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
小児の不慮の事故は発達段階と生活範囲によって種類が大きく変わり、0歳では就寝中の気道閉塞などの窒息が大部分を占めます。歩行が始まり屋外や車に出る機会が増える1~4歳では、本問出題当時の人口動態統計で交通事故が第1位であり、家庭の浴槽などでの溺死・溺水、食物や小物の誤嚥による窒息がこれに続いていました。転落・熱傷・中毒(誤飲)は受診数が多い一方で死亡数は比較的少なく、受診の多さと死亡の多さを区別することが大切です。年齢別の事故死は件数が少なく年ごとに順位が変動しうるため、細かな順位より発達段階と事故の関係を理解しておくことが、乳幼児健診などでの実践的な事故予防指導にもつながります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
幼児期(1~4歳)の不慮の事故死について、原因の内訳のうちどれが最多かを問う問題である。人口動態統計(厚生労働省が出生・死亡・婚姻などを集計する国の基幹統計)に基づく知識問題である。
考え方
不慮の事故の種類は、子どもの発達段階と生活範囲によって大きく変わる。 ・0歳(乳児):寝返りも十分でない時期で、生活の場はほぼ寝床である。このため、就寝中の気道閉塞などによる窒息が不慮の事故死の大部分を占める。 ・1~4歳(幼児):歩行ができるようになり、屋外に出る機会や車に乗る機会が増える。そのため、道路上での歩行中の事故や自動車乗車中の事故(交通事故)が上位に来る。また、浴槽や屋外の水辺での溺死・溺水、食物や小物の誤嚥による窒息もなお多い。 本問出題当時およびその後しばらくの統計では、1~4歳の不慮の事故死は交通事故が第1位であり、溺死・溺水、窒息がこれに続いていた。たとえば平成24年の統計では、1~4歳の不慮の事故死123件のうち交通事故が47件で最多、次いで溺死・溺水32件、窒息23件であった。
注記
本問は、現在の国試対策としての有用性は低いとされる設問である。年齢別の不慮の事故死は件数そのものが少なく(年間百件前後以下)、上位の順位が年ごとの統計で入れ替わりうるため、特定の年の順位を暗記する意義は乏しい。現在は「0歳は窒息が突出して多い」「幼児期以降は交通事故・溺水・窒息が主要な原因である」という大枠を押さえておけばよい。
選択肢考察
- ○a. 交通事故
1~4歳では行動範囲が屋外へ広がり、歩行者としての事故や、自動車に同乗しているときの事故に遭う機会が増える。本問の時期の人口動態統計では、この年齢層の不慮の事故死の第1位は交通事故であった(平成24年では123件中47件)。チャイルドシートの正しい使用や、道路への飛び出し防止が主要な予防策となる。
- ×b. 転落
転倒・転落は、ベランダや窓、階段からの転落などとして幼児期にも起こり、重症例もあるが、死亡数では交通事故・溺水・窒息よりも少なく、当時の統計で5位前後であった。死亡には至らない外傷としては頻度が高い事故である点と区別して覚える。
- ×c. 熱傷
人口動態統計では、熱傷による死亡は主に「煙、火及び火炎への曝露」(住宅火災など)として分類され、当時の統計で4位前後であった。熱湯や調理器具による熱傷は受診件数としては多いが、死亡の原因としては交通事故より少ない。
- ×d. 窒息
食物(ピーナッツ、ミニトマト、ぶどう、餅など)や玩具などの小物の誤嚥による窒息は幼児期にも重要な死因で、当時の統計では交通事故、溺死・溺水に次ぐ3位であった。なお、0歳では窒息が不慮の事故死の第1位であり、年齢による違いを押さえておく必要がある。
- ×e. 中毒
幼児期はタバコ、医薬品、洗剤、ボタン電池などの誤飲が多い時期であるが、実際に死亡に至る中毒は少なく、当時の統計で6位前後であった。誤飲事故は受診数が多い一方、死亡数は少ないという点で区別する。
小児の不慮の事故の年齢別特徴
・0歳:窒息(就寝中の顔面圧迫、寝具・吐物による気道閉塞など)が大部分を占める。乳幼児突然死症候群(SIDS:それまでの健康状態や既往歴からは予測できず、死亡状況調査や解剖でも原因が特定できない乳幼児の突然死)とは区別されるが、仰向け寝の推奨や柔らかい寝具を避けることは両方の予防に役立つ。 ・1~4歳:交通事故、溺死・溺水、窒息が主な原因である。溺水は家庭の浴槽で起こることが多く、わずかな水深でも起こりうるため、浴槽に水をためておかない、入浴中に子どもから目を離さないことが予防となる。 ・5~9歳以降:交通事故の割合が高くなり、屋外の河川・海などでの溺水も加わる。
小児の死因全体の中での位置づけ
不慮の事故は、1~4歳の死因の中で先天奇形・変形及び染色体異常と並んで上位を占める。予防可能な死亡であることから、年齢に応じた事故予防の指導は乳幼児健康診査などでも重視されている。
統計の注意点
年齢別の不慮の事故死は件数が少なく、年ごとに順位が入れ替わることがある。国試では、最新の統計の細かい順位よりも、発達段階に応じた事故の特徴を理解しておくことが重要である。
POINT
・0歳の不慮の事故死は窒息が最多。 ・1~4歳では行動範囲が広がり、交通事故、溺死・溺水、窒息が主要な原因となる(本問当時の統計では交通事故が最多)。 ・誤飲・熱傷・転落は受診数は多いが、死亡数は比較的少ない。 ・年齢別の細かな順位は年ごとに変動しうるため、発達段階と事故の種類の関係を理解して覚える。
