StudyMed医師国家試験

「ブツブツ」は液体のサイン―副雑音の音色と時相から病変の場所を読み解く

第103回医師国家試験 H問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第103回 H問題 第2問

聴診で吸気時のみに低いブツブツという音を聴取する。  考えられるのはどれか。

  1. a.胸膜摩擦
  2. b.上気道狭窄
  3. c.気管支狭窄
  4. d.上気道液体貯留
  5. e.下気道液体貯留

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は肺の聴診で聴こえる副雑音から、どこで何が起きているかを推定する問題だ。注目点は3つ。音が途切れるか続くか、高いか低いか、そして呼吸のどのタイミングで聴こえるか。この3軸で整理すると、ほとんどの副雑音は分類できるんだ。
医学生医学生
「ブツブツ」は途切れ途切れの音なので、断続性ラ音ですよね。
ドクタードクター
その通り。断続性ラ音は、さらに2種類に分けられる。低調で粗い「ブツブツ」「ボコボコ」が水泡音、つまりcoarse crackles。高調で細かい「パチパチ」が捻髪音、fine cracklesだ。今回は「低い」と書いてあるから、どちらになるかな。
医学生医学生
低いので水泡音です。でも正直、OSCEの聴診シミュレータで聴き比べたときは、どっちがどっちか混乱しました。
ドクタードクター
音だけで覚えようとすると混乱しやすいから、発生のしくみで覚えるといい。水泡音は、気道内にたまった分泌物や液体の膜を空気が通り抜けて、泡がはじけるようにして生じる。ストローで水に息を吹き込むと「ボコボコ」いうよね。あのイメージだ。
医学生医学生
だから液体がたまっている状態を示すんですね。じゃあ捻髪音は?
ドクタードクター
捻髪音は、線維化などで硬くなった末梢の細気道や肺胞が、吸気の終わりに次々と「パチッ」と開くことで生じる。髪の毛を耳元でねじったときの音に似ていることから、この名前がついたんだ。だから吸気終末に目立つ。一方、水泡音は吸気の早い段階から聴こえる。
医学生医学生
液体がたまる場所としては、上気道と下気道の両方の選択肢がありますけど、どう区別するんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。咽頭や喉頭、気管のような太い気道に分泌物がたまると、吸気でも呼気でも「ゴロゴロ」という低い音がして、口元でも聴こえることが多い。意識障害の患者さんや終末期の方で聴かれる死前喘鳴がその例だ。今回のように吸気時の断続的な「ブツブツ」は、細気管支から肺胞にかけての下気道に液体がたまったときの水泡音と考えるのが妥当だ。だから正解は下気道液体貯留になる。
医学生医学生
臨床実習の循環器内科で、心不全で入院した患者さんの両側下肺野で聴いたのが、たぶんこの音でした。
ドクタードクター
まさにそうだね。肺水腫は重力の影響で下肺野に液体がたまりやすいから、両側下肺野で水泡音が聴かれやすい。ほかに細菌性肺炎や気管支拡張症でも聴かれる。では、残りの選択肢も音のタイプで確認しよう。気管支狭窄ではどんな音がするかな。
医学生医学生
狭いところを空気が通るので、「ヒューヒュー」という連続性ラ音ですか。
ドクタードクター
正解。細い気管支の狭窄なら高調な笛様音、wheezes。太い気管支の狭窄や分泌物の付着なら低調ないびき様音、rhonchiになる。喘息やCOPDでは呼気時に気道が細くなるので、wheezesは呼気で目立つ。いずれにせよ連続音で、断続的な「ブツブツ」ではない。
医学生医学生
上気道狭窄も連続音ですよね。小児科の実習でクループの子の「ヒーッ」という音を聴きました。
ドクタードクター
それがstridor、吸気性喘鳴だ。喉頭や気管など胸郭の外の気道は、吸気時に内腔が陰圧になってつぶれやすいから、吸気で目立つ高調な連続音になる。聴診器なしでも聴こえることが多い。急性喉頭蓋炎や気道異物でも起こり、緊急対応が必要なサインだよ。
医学生医学生
胸膜摩擦音は「ギュッギュッ」という雪を踏むような音でしたっけ。
ドクタードクター
よく覚えているね。炎症で表面が粗くなった壁側胸膜と臓側胸膜がこすれ合う音で、吸気と呼気の両方で聴かれる。胸膜炎の初期、胸水がまだ少ない時期に聴こえ、胸水が増えて胸膜同士が離れると消えてしまう。咳をしても性状が変わらない点で、分泌物による音と区別できる。
医学生医学生
逆に水泡音は、咳で痰が動くと変わることがあるんですね。
ドクタードクター
その通り。咳払いをしてもらって音が変わるかどうかは、ベッドサイドで使える簡単な鑑別法だ。最後に臨床でのポイントをまとめよう。水泡音を聴いたら、まず発熱や膿性痰があれば肺炎、起坐呼吸や下腿浮腫、頸静脈怒張があれば心不全による肺水腫を考える。捻髪音が両側下背部で聴こえたら、間質性肺炎や石綿肺を疑ってKL-6やCTで評価する。聴診所見は、次に何の検査をするかを決める出発点なんだ。
医学生医学生
音の「連続か断続か」「高いか低いか」「いつ聴こえるか」の3つを言葉にできれば、病変の場所と性質まで推定できるということですね。
ドクタードクター
そう。そしてもう一つ、肺野の末梢で本来聴こえないはずの気管支呼吸音が聴こえたら、肺炎による浸潤影を疑う。副雑音だけでなく呼吸音そのものの変化にも耳を傾けよう。

まとめ

吸気時に聴かれる低調で粗い「ブツブツ」という断続音は水泡音(coarse crackles)であり、細気管支から肺胞にかけての下気道に貯留した液体や分泌物を空気が通過することで生じ、肺炎、心不全による肺水腫、気管支拡張症などでみられます。同じ断続性ラ音でも、高調で細かい「パチパチ」という捻髪音(fine crackles)は吸気終末に聴かれ、間質性肺炎を示唆します。連続性ラ音は気道狭窄の音で、細い気管支ではwheezes、太い気管支ではrhonchi、胸郭外の上気道狭窄では吸気性のstridorとなり、胸膜炎初期には吸気・呼気両相で胸膜摩擦音が聴かれます。音の連続性・高さ・時相の3軸で副雑音を言語化できれば、病変の部位と病態を推定し、次に行う検査を選ぶ手がかりになります。

解答・解説

正解はeです

本問は、肺の聴診で聴かれる副雑音の性状(連続性か断続性か、音の高さ、呼吸のどの時相で聴こえるか)から、その発生部位と病態を推定できるかを問う問題である。

音の性状の整理

「ブツブツ」という音は、途切れ途切れに生じる断続性の音、すなわち断続性ラ音(crackles)である。これに対して、「ヒューヒュー」「グーグー」のように一定時間続く音は連続性ラ音と呼ばれ、狭くなった気道を空気が通過する際に気道壁が振動して生じる。 断続性ラ音はさらに2種類に分けられる。 ・水泡音(coarse crackles):低調で粗い「ブツブツ」「ボコボコ」という音。気道内の分泌物や液体の膜を空気が通過して破裂する際に生じ、吸気の早期から聴かれる。 ・捻髪音(fine crackles):高調で細かい「パチパチ」「パリパリ」という音。呼気で閉塞していた末梢の細気道が吸気の後半に急に開放されることで生じ、吸気終末に目立つ。

考え方

問題文の「吸気時に聴かれる低いブツブツという音」は水泡音に相当する。水泡音は、細い気管支から肺胞にかけての下気道に分泌物や滲出液などの液体が貯留した状態で生じ、肺炎、心不全に伴う肺水腫、気管支拡張症などでみられる。したがって正解はeである。

選択肢考察

  1. ×a.  胸膜摩擦

    胸膜摩擦音は、炎症によって表面が粗くなった壁側胸膜と臓側胸膜が、呼吸運動に伴ってこすれ合うことで生じる音である。「ギュッギュッ」「ザラザラ」と表現される、雪を踏みしめるような、あるいは革がこすれるような音で、吸気・呼気の両方で聴かれる。胸膜炎の初期など胸水がまだ少ない時期に聴かれ、胸水が増えて両胸膜が離れると消失する。咳をしても性状が変わらない点で気道分泌物による音と区別できる。なお、心膜の炎症で生じる心膜摩擦音は心拍に同期して聴かれる別の音であり、呼吸を止めても聴こえる点で胸膜摩擦音と区別される。

  2. ×b.  上気道狭窄

    喉頭や気管など胸郭外の上気道が狭窄すると、吸気時に高調な連続音である吸気性喘鳴(stridor)が聴かれる。胸郭外の気道は吸気時に内腔が陰圧となって虚脱しやすいため、主に吸気時に目立つ。急性喉頭蓋炎、クループ、気道異物、喉頭浮腫、声帯麻痺などが原因となり、聴診器を当てなくても聴こえることが多い。連続性の音であり、低いブツブツという断続音ではない。

  3. ×c.  気管支狭窄

    気管支が狭窄すると、狭い部分を空気が通過する際に気道壁が振動し、連続性ラ音が生じる。細い気管支の狭窄では高調な笛様音(wheezes、「ヒューヒュー」)が、太い気管支の狭窄や分泌物の付着ではいびき様音(rhonchi、低調な「グーグー」)が聴かれる。気管支喘息やCOPDのように末梢気道が広範に狭窄する場合、呼気時に気道が細くなるため、wheezesは主に呼気時に目立つ。腫瘍や異物による限局的な気管支狭窄では、同じ部位で単一の高さの連続音が聴かれる。いずれも連続性の音であり、断続性のブツブツ音ではない。

  4. ×d.  上気道液体貯留

    咽頭・喉頭や気管などの太い気道に分泌物が貯留すると、呼吸に伴って分泌物が振動し、吸気・呼気の両方で低調な「ゴロゴロ」「グーグー」という音(いびき様音に近い音)が聴かれる。意識障害患者や終末期の患者で、咽頭に唾液や痰がたまって生じる音(死前喘鳴)がその例であり、口元でも聴こえることが多い。咳や吸引で分泌物が除去されると音が変化・消失する。吸気時のみに聴かれる低いブツブツという断続音とは合致しない。なお、鼻腔や副鼻腔の液体貯留は胸部聴診の対象ではない。

  5. ○e.  下気道液体貯留

    細気管支から肺胞にかけての下気道に分泌物や滲出液、漏出液が貯留すると、吸気時に空気が液体の膜を通過して泡がはじけるように、低調で粗い断続音である水泡音(coarse crackles)が生じる。吸気の早期から聴かれ、音の数が多いときには呼気の初期にも及ぶことがある。咳嗽によって分泌物が移動すると、音の性状や数が変化することがある。細菌性肺炎、心不全に伴う肺水腫(両側下肺野に多い)、気管支拡張症、慢性気管支炎などでみられる。問題文の「吸気時に聴かれる低いブツブツという音」はこの水泡音に相当する。

肺の聴診所見の分類

1. 呼吸音(正常でも聴かれる) ・気管呼吸音:頸部の気管上で聴かれる、大きく高調な音。 ・気管支呼吸音(気管支肺胞呼吸音):胸骨周囲や肩甲骨間で聴かれる。 ・肺胞呼吸音:肺野末梢で聴かれる、柔らかく低調な音で、主に吸気時に聴かれる。肺野末梢で気管支呼吸音が聴かれる場合は、肺炎による浸潤影(consolidation)などを疑う。 2. 副雑音(異常な状態で聴かれる) ・ラ音(肺内から生じる副雑音)  連続性ラ音:笛様音(wheezes、高調)、いびき様音(rhonchi、低調)。気道の狭窄で生じる。  断続性ラ音:水泡音(coarse crackles、低調・粗い、吸気早期〜)、捻髪音(fine crackles、高調・細かい、吸気終末)。 ・その他:胸膜摩擦音、Hamman徴候(縦隔気腫で心拍に同期して聴かれる音)など。 3. 狭窄音:stridor(上気道狭窄による吸気性の高調な連続音)。

捻髪音(fine crackles)との区別

捻髪音は、間質の線維化などで硬くなった末梢の細気道や肺胞が、吸気の終わりに次々と開放されて生じる。特発性肺線維症などの間質性肺炎、石綿肺で聴かれ、両側下背部で聴取されることが多い。水泡音と異なり、咳嗽で性状が変化しにくい。

連続性ラ音と時相

胸腔内の末梢気道は呼気時に内腔が狭くなるため、気管支喘息やCOPDの喘鳴は呼気で強い。一方、胸郭外の上気道狭窄では吸気時に内腔が狭くなるため、stridorは吸気で強い。

POINT

・断続性ラ音のうち、低調で粗い「ブツブツ」は水泡音(coarse crackles)で、吸気早期から聴かれ、下気道の液体・分泌物貯留(肺炎、肺水腫、気管支拡張症)を示す。 ・高調で細かい「パチパチ」は捻髪音(fine crackles)で、吸気終末に聴かれ、間質性肺炎を示す。 ・連続性ラ音:wheezes(細い気管支の狭窄、呼気で強い)、rhonchi(太い気管支の狭窄・分泌物)。 ・上気道狭窄は吸気性のstridor、胸膜炎初期は吸気・呼気両相の胸膜摩擦音。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。