StudyMed医師国家試験

その低カルシウム、本物?―アルブミンで読み解く補正Caの計算

第103回医師国家試験 G問題 第68問

国試問題にチャレンジ

第103回 G問題 第68問

血液生化学検査の結果を示す。  血糖320mg/dL,総蛋白5.5g/dL,アルブミン2.9g/dL, Na 128mEq/L,K 3.2mEq/L,Cl 101mEq/L,Ca 7.3mg/dL  補正カルシウム濃度を求めよ。 解答:①.② mg/dl

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検査値から補正カルシウム濃度を計算する問題だ。いろいろな数値が並んでいるけれど、本当に必要なのはごく一部。どの値を使い、なぜ補正が必要なのかを理解することが着眼点になる。まず、Caの値を見てどう感じたかな。
医学生医学生
かなり低いので、テタニーを起こしてもおかしくない低カルシウム血症だと思いました。
ドクタードクター
実測値だけ見るとそう見えるよね。でもここで考えてほしいのが、生化学検査のCaが何を測っているかだ。測っているのは総カルシウム濃度で、その中身は大きく3つに分かれる。
医学生医学生
生化学の講義で、イオン化Caとアルブミン結合型があると習いました。
ドクタードクター
そう。生理作用をもつイオン化Caが約50%、蛋白結合型が約40%で、その大部分はアルブミンと結合している。残り約10%がクエン酸やリン酸などとの複合体だ。だからアルブミンが減ると、結合型のCaが減って総Caは見かけ上低く出る。イオン化Caは正常かもしれないのに、ね。
医学生医学生
今回はアルブミンが低いので、見かけの低値の可能性があるということですね。
ドクタードクター
その通り。そこで使うのがPayneの式。補正Caは、実測Caに「4.0からアルブミン値を引いた差」を足して求める。アルブミンが基準の4g/dLより1g/dL低いごとに、総Caがおよそ1mg/dL低く出るという関係を簡略化したものだ。アルブミンが4g/dL未満のときに使う。
医学生医学生
総蛋白の値は使わないんですか。最初、総蛋白を入れそうになりました。
ドクタードクター
そこはよくあるミスだね。Caと結合しているのは主にアルブミンだから、使うのはアルブミンの値。血糖やNa、K、Clもこの計算には関係しない。では実際に計算してみよう。
医学生医学生
4.0から2.9を引いて1.1、それを7.3に足すので、補正Caは8.4mg/dLです。
ドクタードクター
正解。基準範囲はおおむね8.5〜10.2mg/dLだから、補正すると下限付近をわずかに下回る程度。最初に感じた著しい低カルシウム血症の多くは、低アルブミン血症による見かけの低下だったとわかるね。
医学生医学生
逆に脱水でアルブミンが高いと、総Caは見かけ上高く出るということですか。
ドクタードクター
そういうこと。低アルブミン血症をきたすネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養、重症疾患などでは、補正を忘れると判断を誤りやすい。もう一つ大事なのがpHの影響だ。アシドーシスではアルブミンからCaが外れてイオン化Caが増え、アルカローシスでは逆に減る。
医学生医学生
過換気症候群でテタニーが起こるのは、呼吸性アルカローシスでイオン化Caが減るからでしたね。救急外来の実習で手指がこわばった患者さんを見ました。
ドクタードクター
いい経験だね。つまり総Caが正常でも症状が出ることもあるし、総Caが低くても症状が出ないこともある。だから補正式には限界があって、慢性腎臓病や重症患者では精度が落ちることが知られている。正確に知りたいときは、血液ガス分析装置などでイオン化Caを直接測るのが望ましい。基準はおよそ1.15〜1.30mmol/Lだ。
医学生医学生
この問題、血糖も高いのが気になっていました。Naが低いのはそのせいでしょうか。
ドクタードクター
鋭いね。高血糖では浸透圧の作用で細胞内から水が出て、Naが希釈されて低く出る。血糖が100mg/dL上がるごとにNaはおよそ1.6mEq/L下がるとされ、補正Naで評価することがある。ただ、これは補正Caとは別の概念だから混同しないように。
医学生医学生
検査値はそのまま読むのではなく、何に影響されているかを考えて解釈する、ということですね。
ドクタードクター
その通り。CBTでも国試でも、そして病棟でも、補正Caの考え方は繰り返し出てくる。電解質の補充を決める前に、まず本当に異常なのかを確かめる習慣をつけておこう。

まとめ

血清Caの測定値は総カルシウム濃度であり、約40%がアルブミンと結合しているため、低アルブミン血症では生理活性をもつイオン化Caが正常でも総Caが見かけ上低く出ます。アルブミンが4g/dL未満のときはPayneの式「補正Ca=実測Ca+(4-アルブミン)」で補正し、本問では7.3+(4.0-2.9)=8.4mg/dLとなります。計算に使うのは総蛋白ではなくアルブミンであり、血糖や他の電解質は関係しません。アルカローシスではイオン化Caが減ってテタニーを起こしうること、補正式には限界があり正確な評価にはイオン化Caの直接測定が望ましいことも合わせて理解しておくと、検査値を背景ごと解釈する力が身につきます。

解答・解説

正解は8.4 mg/dlです

考え方

血液生化学検査の「Ca」は、血清中のカルシウムの総量(総Ca濃度)を測っている。この中には、アルブミンなどの蛋白と結合したカルシウムも含まれる。一方、体内で実際に働く(生理活性をもつ)のはイオン化カルシウムである。アルブミンが減ると結合型カルシウムが減るため、イオン化カルシウムが正常でも総Ca濃度は見かけ上低く出る。そこで、低アルブミン血症(血清アルブミン4.0g/dL未満)がある場合には、アルブミン値で補正した値で評価する。

補正式(Payneの式)

補正Ca濃度(mg/dL)=実測Ca濃度(mg/dL)+(4.0-血清アルブミン濃度(g/dL)) (同じ意味で「実測Ca-アルブミン+4」とも書く) この式は、「アルブミンが基準の4.0g/dLより1g/dL低いごとに、総Caはおよそ0.8〜1mg/dL低く出る」という関係を簡略化したものである。国試では係数1のこの式を用いる。

計算過程

実測Ca=7.3mg/dL、アルブミン=2.9g/dLを代入する。 補正Ca=7.3+(4.0-2.9)    =7.3+1.1    =8.4(mg/dL) よって解答は8.4mg/dLである。

結果の解釈

実測値7.3mg/dLだけをみると、著しい低カルシウム血症にみえる。しかし補正後は8.4mg/dLで、基準範囲(おおむね8.5〜10.2mg/dL)の下限付近〜わずかに下回る程度である。見かけの低Ca血症の多くは、低アルブミン血症によるものだとわかる。

問題文中の他の値について

血糖、総蛋白、Na、K、Clは補正Caの計算には使わない。計算に必要なのは、Caとアルブミンの2つだけである。なお、総蛋白の値ではなく、アルブミンの値を用いる点に注意する。

血清カルシウムの存在様式

・イオン化Ca(遊離Ca):約50%。生理作用をもつのはこの分画である。 ・蛋白結合型Ca:約40%。大部分はアルブミンと結合している。 ・陰イオンとの複合体:残りの約10%。クエン酸、リン酸、重炭酸などと結合している。 一般の生化学検査ではこれらをまとめた総Ca濃度を測定する。そのため、アルブミン濃度が変わると、生理的に重要なイオン化Caが変わらなくても測定値が上下する。

アルブミンとの関係

・低アルブミン血症(ネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養、重症疾患など):総Caは見かけ上低くなる。 ・高アルブミン血症(脱水など):総Caは見かけ上高くなる。

pHとの関係

アシドーシスでは、アルブミンに結合していたCaが外れてイオン化Caが増える。アルカローシスでは逆にイオン化Caが減る。例えば過換気でテタニーが起こるのは、アルカローシスでイオン化Caが減るためである。

補正式の限界

Payneの式は簡便だが、慢性腎臓病や重症患者などでは精度が落ちることが知られている。正確な評価が必要なときは、血液ガス分析装置などでイオン化Ca(基準値はおよそ1.15〜1.30mmol/L)を直接測定するのが望ましい。

参考:高血糖時のNa

本問は血糖が320mg/dLと高い。高血糖があると、浸透圧の作用で細胞内から水が細胞外へ移り、血清Naが希釈されて低く出る。この場合、血糖が100mg/dL上がるごとにNaはおよそ1.6mEq/L低下するとされ、補正Naで評価することがある。補正Caとは別の概念である。

POINT

・補正Ca(mg/dL)=実測Ca+(4-アルブミン)。アルブミンが4g/dL未満のときに用いる。 ・計算に使うのは総蛋白ではなくアルブミンである。 ・生理作用をもつのはイオン化Ca(約50%)で、約40%はアルブミンと結合している。 ・低アルブミン血症では、総Caが見かけ上低値になる。 ・アルカローシスではイオン化Caが減り、テタニーを起こしうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。