T細胞に「見せる」のは誰か―樹状細胞・マクロファージ・B細胞、3つの抗原提示細胞
第103回医師国家試験 G問題 第29問
国試問題にチャレンジ
抗原提示機能があるのはどれか。3つ選べ。
- a.B細胞
- b.好中球
- c.好酸球
- d.樹状細胞
- e.マクロファージ
対話形式の解説
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ドクターまとめ
抗原提示とは、抗原をペプチドに分解してMHC分子に載せ、T細胞に示す働きです。MHCクラスIはほぼすべての有核細胞が発現しますが、一般に抗原提示細胞と呼ぶのは、MHCクラスIIとCD80/CD86などの共刺激分子を備えてCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化できる樹状細胞・マクロファージ・B細胞の3つです。樹状細胞は最も強力でナイーブT細胞を初回活性化し、マクロファージはエフェクターT細胞との相互作用で殺菌能を高め、B細胞は抗原特異的に抗原を取り込んでT細胞の助けを受け抗体産生へ進みます。好中球や好酸球は貪食・殺菌や寄生虫傷害を担う自然免疫のエフェクターで、通常は抗原提示細胞に含めません。クラスI・II経路と2シグナルの考え方は、移植免疫や自己免疫疾患、腫瘍免疫の理解の土台になります。
解答・解説
正解はa, d, eです
獲得免疫の起点となる「抗原提示」を担う細胞を問う問題である。
抗原提示とは
T細胞は、抗原そのものを直接認識できない。抗原が細胞内で断片(ペプチド)に分解され、主要組織適合遺伝子複合体(MHC、ヒトではHLA)分子に載せて細胞表面に示されたとき、はじめてT細胞受容体でそれを認識できる。この「MHC分子に抗原ペプチドを載せてT細胞に示す」働きを抗原提示という。
MHCクラスⅠとクラスⅡ
・MHCクラスⅠ:ほぼすべての有核細胞が発現する。細胞内で作られたタンパク質(ウイルス抗原や腫瘍抗原など)の断片を提示し、CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)に認識される。感染細胞や腫瘍細胞を「排除すべき細胞」として示す仕組みである。 ・MHCクラスⅡ:限られた細胞のみが発現する。細胞外から取り込んだ抗原の断片を提示し、CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)を活性化する。
プロフェッショナル抗原提示細胞
一般に「抗原提示細胞」と呼ぶのは、MHCクラスⅡ分子を恒常的に発現し、さらにCD80/CD86などの共刺激分子を備えて、ヘルパーT細胞を活性化できる細胞である。代表は樹状細胞、マクロファージ(単球由来)、B細胞の3つである。ヘルパーT細胞の活性化は、B細胞による抗体産生や細胞傷害性T細胞の誘導など、獲得免疫全体を動かす起点となる。 好中球・好酸球は、主に貪食や殺菌、寄生虫への傷害といった自然免疫のエフェクター(実行役)であり、抗原提示細胞には含めない。
選択肢考察
- ○a. B細胞
B細胞はMHCクラスⅡ分子を恒常的に発現する抗原提示細胞である。表面の抗原受容体(膜結合型免疫グロブリン)で特定の抗原を結合して効率よく取り込み、分解したペプチドをMHCクラスⅡに載せてヘルパーT細胞に提示する。同じ抗原を認識したヘルパーT細胞から、CD40リガンドとCD40の結合やサイトカインによる助けを受けると、B細胞は増殖し、形質細胞へ分化して抗体を産生する。クラススイッチや親和性成熟もこの相互作用に依存する。なおMHCクラスⅠも発現している。
- ×b. 好中球
好中球は末梢血白血球の中で最も多い顆粒球で、感染部位に最も早く集まり、細菌や真菌を貪食して、活性酸素や顆粒内の酵素で殺菌する自然免疫の主役である。貪食能はあるが、通常はMHCクラスⅡ分子を発現せず、ヘルパーT細胞を活性化する抗原提示細胞には含まれないため誤り。
- ×c. 好酸球
好酸球は、主要塩基性タンパク(MBP)などの顆粒内の傷害性タンパクを放出して寄生虫(特に蠕虫)を攻撃し、アレルギー性炎症(気管支喘息、アレルギー性鼻炎など)にも関与する顆粒球である。抗原提示細胞としては扱われないため誤り。
- ○d. 樹状細胞
樹状細胞は、木の枝のような突起をもつ細胞で、最も強力な抗原提示細胞である。皮膚(表皮のLangerhans細胞など)、粘膜、リンパ節、脾臓、胸腺など全身に分布する。末梢組織で抗原を取り込むと成熟し、MHCクラスⅡと共刺激分子の発現を高めながら所属リンパ節へ移動して、まだ抗原に出会っていないナイーブT細胞を活性化する。ナイーブT細胞を効率よく初回活性化(プライミング)できるのは主に樹状細胞であり、この点で他の抗原提示細胞より優れる。さらに、取り込んだ細胞外抗原をMHCクラスⅠにも載せてCD8陽性T細胞に示す交差提示も行える。
- ○e. マクロファージ
マクロファージは、血中の単球が組織に移行して分化した細胞で、強い貪食能をもつ。取り込んだ病原体を分解し、そのペプチドをMHCクラスⅡに載せてヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞である。抗原提示能は樹状細胞より弱く、主にすでに活性化されたエフェクターT細胞に抗原を示す役割が大きい。提示を受けたTh1細胞がインターフェロンγ(IFN-γ)を産生すると、マクロファージはさらに活性化されて殺菌能が高まる(例:結核菌に対する肉芽腫形成)。肝臓のKupffer細胞、肺胞マクロファージ、脳のミクログリア、骨の破骨細胞などは組織ごとの同系統の細胞である。
MHCの2つの経路の整理
クラスⅠ経路:細胞内(細胞質)のタンパク→プロテアソームで分解→小胞体でMHCクラスⅠに結合→CD8陽性T細胞が認識→感染細胞・腫瘍細胞の傷害。 クラスⅡ経路:細胞外から取り込んだタンパク→エンドソーム・リソソームで分解→MHCクラスⅡに結合→CD4陽性T細胞が認識→サイトカイン産生によりB細胞・マクロファージ・細胞傷害性T細胞を助ける。
T細胞活性化に必要な2つのシグナル
第1シグナル:T細胞受容体がMHC+抗原ペプチドを認識する。 第2シグナル:抗原提示細胞のCD80/CD86とT細胞のCD28の結合などの共刺激。 第1シグナルだけでは、T細胞は活性化されず、不応答(アナジー)に陥ることがある。プロフェッショナル抗原提示細胞は、両方のシグナルを与えられる点が重要である。
3つの抗原提示細胞の比較
樹状細胞:抗原提示能が最も強い。ナイーブT細胞の初回活性化を担う。交差提示が可能。 マクロファージ:貪食・殺菌が主な仕事。活性化T細胞との相互作用で殺菌能を高める。 B細胞:抗原特異的に抗原を取り込む。ヘルパーT細胞の助けを受けて抗体産生へ進む。
臨床との関連
HLAの型は移植時の適合性判定に用いられ、また特定のHLA型が強直性脊椎炎(HLA-B27)やBehçet病(HLA-B51)などの疾患感受性と関連する。
POINT
・抗原提示細胞(プロフェッショナル)は樹状細胞・マクロファージ(単球)・B細胞の3つ。 ・これらはMHCクラスⅡと共刺激分子を発現し、CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化する。 ・最も強力なのは樹状細胞で、ナイーブT細胞を初回活性化できる。 ・MHCクラスⅠはほぼすべての有核細胞にあり、CD8陽性T細胞に内因性抗原を示す。 ・好中球・好酸球は自然免疫のエフェクターで、抗原提示細胞には含めない。
