PTが伸びるのはどれ?―「外因系と共通系」で解く出血性疾患の検査地図
第103回医師国家試験 E問題 第24問
国試問題にチャレンジ
プロトロンビン時間が延長するのはどれか。
- a.血友病
- b.血小板無力症
- c.ビタミンK欠乏症
- d.von Willebrand病
- e.アレルギー性紫斑病
対話形式の解説
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ドクターまとめ
PTは外因系の第Ⅶ因子と共通系(第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ因子、フィブリノゲン)を、APTTは内因系(第Ⅻ・Ⅺ・Ⅸ・Ⅷ因子)と共通系を反映する検査です。ビタミンK欠乏症では第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子の活性が低下し、なかでも半減期の最も短い第Ⅶ因子が先に下がるため、早期からPTが延長し、進行するとAPTTも延長します。血友病やvon Willebrand病はAPTTのみの延長にとどまり、血小板無力症(一次止血異常)やIgA血管炎(血管壁異常)ではPT・APTTとも正常です。ビタミンK欠乏は新生児、閉塞性黄疸、長期抗菌薬投与、ワルファリン投与などで生じ、PT-INRはワルファリン管理や肝合成能の評価にも用いられます。止血の段階と検査値を対応づけて整理しておくことは、出血傾向の鑑別や抗凝固療法の管理といった日常診療の基盤になります。
解答・解説
正解はcです
【テーマ】出血性疾患を、どの止血段階の異常かで分類し、スクリーニング検査の結果と結び付けられるかを問う問題である。
止血の二段階
止血は、血小板が損傷部位に粘着・凝集して血小板血栓をつくる一次止血と、凝固因子が連鎖的に活性化されてフィブリンを形成し血栓を固める二次止血に分けられる。一次止血の異常(血小板数・血小板機能・von Willebrand因子・血管壁の異常)は主に出血時間や血小板数でとらえ、二次止血(凝固因子)の異常はプロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)でとらえる。
PTとAPTTが反映する因子
PTは組織因子を加えて測る検査で、外因系の第Ⅶ因子と、共通系の第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ(プロトロンビン)因子・フィブリノゲンを反映する。APTTは内因系の第Ⅻ・Ⅺ・Ⅸ・Ⅷ因子(および高分子キニノゲン、プレカリクレイン)と共通系を反映する。したがって「PTが延長する」には、第Ⅶ因子または共通系因子の低下が必要である。
考え方
選択肢のうち、第Ⅶ因子や共通系因子を低下させるのはビタミンK欠乏症だけである。ビタミンKは肝臓で第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子が機能をもつために必要なγ-カルボキシ化の補酵素であり、欠乏するとこれらが働かなくなる。他の選択肢は内因系のみの異常(APTTのみ延長)か、一次止血・血管の異常(PT・APTTとも正常)である。
選択肢考察
- ×a. 血友病
血友病Aは第Ⅷ因子、血友病Bは第Ⅸ因子の先天的欠乏症で、X連鎖劣性遺伝形式をとり主に男性に発症する。どちらも内因系の因子であるため、APTTは延長するがPTは正常である。血小板数や出血時間も正常で、関節内出血・筋肉内出血といった深部出血が特徴である。
- ×b. 血小板無力症
血小板無力症(Glanzmann病)は、血小板膜糖蛋白GPⅡb/Ⅲa(インテグリンαⅡbβ3、フィブリノゲン受容体)の先天的な欠損・異常により、血小板凝集ができなくなる常染色体劣性遺伝の疾患である。一次止血の異常であり、血小板数は正常だが出血時間が延長し、ADPやコラーゲンなどによる凝集が起こらない。凝固因子は正常なのでPT・APTTは延長しない。
- ○c. ビタミンK欠乏症
ビタミンKは、第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子(およびプロテインC・S)のグルタミン酸残基をγ-カルボキシ化する反応に必要である。欠乏すると機能をもたない凝固因子(PIVKA:protein induced by vitamin K absence or antagonist)が産生され、凝固活性が低下する。このうち第Ⅶ因子は半減期が約4〜6時間と最も短いため最初に低下し、まずPTが延長する。欠乏が進むと第Ⅸ・Ⅹ・Ⅱ因子も低下してAPTTも延長する。PTが延長するのは本選択肢のみである。原因として新生児(ビタミンK欠乏性出血症)、閉塞性黄疸などによる脂溶性ビタミンの吸収障害、長期の抗菌薬投与による腸内細菌叢の変化、摂食不良、ワルファリン投与などがある。
- ×d. von Willebrand病
von Willebrand病はvon Willebrand因子(VWF)の量的・質的異常による先天性出血性疾患で、主に常染色体顕性(優性)遺伝をとる。VWFは血小板を血管内皮下組織へ粘着させる働きと、第Ⅷ因子と結合して血中で安定化させる(キャリア蛋白としての)働きをもつ。そのため一次止血障害による出血時間の延長に加え、第Ⅷ因子活性の低下を反映してAPTTが延長することがある。第Ⅶ因子や共通系には影響しないのでPTは正常である。リストセチン惹起血小板凝集の低下も特徴である。
- ×e. アレルギー性紫斑病
アレルギー性紫斑病(Schönlein-Henoch紫斑病、現在はIgA血管炎と呼ばれる)は、IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着して起こる小型血管炎である。出血の原因は血管壁の障害であり、血小板数・出血時間・PT・APTTはいずれも正常である。下肢優位の触知可能な紫斑、腹痛、関節痛、腎炎(紫斑病性腎炎)を特徴とし、小児に多い。一部で第ⅩⅢ因子活性の低下がみられるが、第ⅩⅢ因子はPT・APTTには反映されない。
出血性疾患とスクリーニング検査の対応
・血小板減少(ITPなど):血小板数↓、出血時間延長、PT・APTT正常 ・血小板機能異常(血小板無力症、Bernard-Soulier症候群):血小板数正常(Bernard-Soulier症候群では減少し巨大血小板)、出血時間延長、PT・APTT正常 ・von Willebrand病:血小板数正常、出血時間延長、APTT延長(ときに正常)、PT正常 ・血友病A・B:APTTのみ延長 ・ビタミンK欠乏症、ワルファリン投与:PT延長(早期から)、進行するとAPTTも延長 ・肝硬変など重症肝障害:凝固因子の産生低下によりPT延長(APTTも延長しうる) ・播種性血管内凝固(DIC):血小板減少、PT・APTT延長、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマー上昇 ・血管性紫斑(IgA血管炎、老人性紫斑、壊血病など):上記検査はすべて正常
ビタミンK依存性因子の覚え方
凝固因子は第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子(「肉納豆」=2・9・7・10などの語呂がある)。抗凝固因子のプロテインC・SもビタミンK依存性である。PIVKA-Ⅱ(ビタミンK欠乏時に出現する異常プロトロンビン)は、ビタミンK欠乏やワルファリン投与のほか、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても用いられる。
PTの臨床応用
PTはワルファリン療法のモニタリングに用いられ、施設間差を補正したPT-INR(国際標準比)で評価する。また肝臓の蛋白合成能の指標でもあり、半減期の短い第Ⅶ因子を反映するため急性の肝障害を鋭敏にとらえる。
POINT
・PT:外因系(第Ⅶ因子)+共通系(第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ因子、フィブリノゲン)を反映。APTT:内因系(第Ⅻ・Ⅺ・Ⅸ・Ⅷ因子)+共通系を反映。 ・ビタミンK依存性凝固因子は第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子。半減期の短い第Ⅶ因子が先に低下するため、PTが早期から延長する。 ・血友病、von Willebrand病はAPTTのみ延長しPTは正常。 ・血小板無力症(一次止血異常)とIgA血管炎(血管壁異常)ではPT・APTTとも正常。
