StudyMed医師国家試験

臓器名だけでは足りない―ホルモンを「どの細胞がつくるか」まで正確に結びつける

第103回医師国家試験 E問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第23問

組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.カルシトニン ―― 甲状腺D細胞
  2. b.副甲状腺ホルモン ―― 副甲状腺主細胞
  3. c.グルカゴン ―― 膵島α〈A〉細胞
  4. d.アルドステロン ―― 副腎皮質束状層細胞
  5. e.テストステロン ―― 精巣Sertoli細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的なホルモンとそれを分泌する細胞の組合せを問う問題だ。内分泌臓器の多くは、ひとつの臓器の中に役割の違う細胞を何種類も抱えている。だから「臓器」だけでなく「細胞」や「層」の名前まで正しく対応づけられるかがポイントになる。
医学生医学生
臓器レベルなら全部合っていそうに見えるので、細胞の名前にひっかけがあるということですね。
ドクタードクター
その通り。まずは副甲状腺から行こう。副甲状腺ホルモン、つまりPTHを分泌するのはどの細胞かな。
医学生医学生
主細胞です。組織学の実習で、副甲状腺には主細胞と好酸性細胞があると習いました。
ドクタードクター
正解。PTHは主細胞から分泌される。主細胞の表面にはカルシウム感知受容体があって、血中カルシウムが下がるとPTHの分泌が増える。PTHは骨吸収を促し、腎臓でカルシウムの再吸収を増やしてリンの再吸収を減らし、さらに活性型ビタミンDの産生を高めて腸からのカルシウム吸収も増やす。こうして血中カルシウムを上げるわけだ。好酸性細胞の機能はまだよくわかっていない。
医学生医学生
グルカゴンは膵島のα細胞なので、これも正しいと思います。
ドクタードクター
そうだね。膵島ではα細胞がグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチンを分泌する。グルカゴンは空腹時や低血糖で増え、肝臓でのグリコーゲン分解と糖新生を促して血糖を上げる。α細胞由来の腫瘍がグルカゴノーマで、壊死性遊走性紅斑や耐糖能異常、体重減少が特徴だ。では、カルシトニンの組合せはどうだろう。
医学生医学生
甲状腺のD細胞……でしたっけ。何となくそんな名前だった気がします。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だ。カルシトニンを分泌するのは甲状腺のC細胞、つまり傍濾胞細胞なんだ。D細胞、すなわちδ細胞という名前は、膵島などでソマトスタチンを分泌する細胞に使われる。名前の似た細胞を入れ替えたひっかけだね。
医学生医学生
C細胞は神経堤由来で、甲状腺髄様癌の発生母地でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えている。髄様癌ではカルシトニンとCEAが腫瘍マーカーになり、多発性内分泌腫瘍症2型の構成疾患でもある。カルシトニンは破骨細胞による骨吸収を抑えて血中カルシウムを下げる方向に働くけれど、ヒトでの生理的な役割は小さいとされている。次はアルドステロンだ。
医学生医学生
副腎皮質の3層は、外側から球状層・束状層・網状層で、「塩・糖・性」と覚えています。なので、アルドステロンは束状層ではなく球状層ですね。
ドクタードクター
その覚え方は便利だね。アルドステロンの合成に必要なアルドステロン合成酵素は球状層にだけあるから、アルドステロンは球状層でつくられる。束状層は主にコルチゾール、網状層は副腎アンドロゲンだ。調節因子の違いも大事で、球状層は主にアンジオテンシンⅡと血清カリウム、束状層と網状層はACTHによって調節される。
医学生医学生
だから下垂体が原因の続発性副腎皮質機能低下症では、アルドステロンは比較的保たれるんですね。内分泌内科の実習で、原発性との違いとして教わりました。
ドクタードクター
まさにそこがつながる。最後はテストステロンだ。
医学生医学生
テストステロンはLeydig細胞ですよね。Sertoli細胞は精細管の中にあって、精子形成を支える細胞だったと思います。
ドクタードクター
正解。Leydig細胞は精細管の間の間質にあって、LHの刺激でテストステロンをつくる。Sertoli細胞はFSHとテストステロンの作用のもとで精子形成を支え、血液精巣関門をつくり、アンドロゲン結合タンパク、FSHを抑えるインヒビン、胎生期にMüller管を退縮させる抗Müller管ホルモンを分泌する。
医学生医学生
LHはLeydig、FSHはSertoliと、頭文字の組合せで覚えるといいですね。
ドクタードクター
いい覚え方だ。テストステロンはLHを、インヒビンはFSHを負のフィードバックで抑える、という流れまで押さえておくと、男性不妊やホルモン補充の理解にも役立つ。こうした細胞レベルの対応は、腫瘍の発生母地や機能低下症の病態を考えるときの土台になるから、臓器ごとに表にして整理しておくといいよ。

まとめ

内分泌臓器は一つの臓器に複数種類の細胞をもち、細胞や層ごとに異なるホルモンを分泌するため、臓器名だけでなく細胞名まで正確に対応づけることが重要です。PTHは副甲状腺主細胞、グルカゴンは膵島α細胞から分泌され、カルシトニンは甲状腺C細胞(傍濾胞細胞)、アルドステロンは副腎皮質球状層、テストステロンは精巣Leydig細胞が分泌します。D細胞はソマトスタチン分泌細胞、束状層はコルチゾール、Sertoli細胞はインヒビンや抗Müller管ホルモンの分泌と精子形成の支持を担う点が、ひっかけを見抜くカギです。副腎皮質の「塩・糖・性」や精巣の「LH→Leydig、FSH→Sertoli」といった整理は、甲状腺髄様癌やグルカゴノーマなどの腫瘍、続発性副腎皮質機能低下症の病態理解にも直結します。

解答・解説

正解はb, cです

本問は、代表的なホルモンとそれを産生・分泌する細胞の対応を問う基礎的な問題である。 内分泌臓器の多くは、一つの臓器の中に役割の異なる複数種類の細胞をもち、それぞれが別のホルモンを分泌している。例えば甲状腺では、濾胞上皮細胞が甲状腺ホルモン(T4・T3)を、濾胞の間にある傍濾胞細胞(C細胞)がカルシトニンを分泌する。膵島(Langerhans島)ではα細胞・β細胞・δ細胞がそれぞれグルカゴン・インスリン・ソマトスタチンを分泌する。副腎皮質は外側から球状層・束状層・網状層の3層に分かれ、層ごとに主に産生するステロイドが異なる。精巣では、精細管の外の間質にあるLeydig細胞がテストステロンを、精細管内のSertoli細胞が精子形成を支えつつインヒビンなどを分泌する。 このように「臓器名」だけでなく「細胞・層の名前」まで正確に対応づけられるかがポイントである。各選択肢の組合せをこの知識に照らすと、副甲状腺ホルモンと副甲状腺主細胞、グルカゴンと膵島α細胞の2つが正しい組合せとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  カルシトニン ―― 甲状腺D細胞

    誤りである。カルシトニンを分泌するのは甲状腺のC細胞(傍濾胞細胞)で、D細胞ではない。C細胞は神経堤由来で、甲状腺濾胞の間に散在している。カルシトニンは血中カルシウム濃度の上昇に反応して分泌され、破骨細胞による骨吸収を抑えて血中カルシウム濃度を下げる方向に働く。ただし、ヒトではカルシウム調節における生理的な役割は小さい。C細胞から発生する腫瘍が甲状腺髄様癌で、カルシトニンとCEAが腫瘍マーカーとなり、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の構成疾患でもある。なお、D細胞(δ細胞)という名称は膵島などでソマトスタチンを分泌する細胞に用いられる。

  2. ○b.  副甲状腺ホルモン ―― 副甲状腺主細胞

    正しい組合せである。副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)は副甲状腺の主細胞から分泌される。主細胞の表面にはカルシウム感知受容体(CaSR)があり、血中カルシウム濃度が低下するとPTHの分泌が増える。PTHは、骨吸収を促進して骨からカルシウムを動員する、腎臓の遠位尿細管でカルシウムの再吸収を増やしリンの再吸収を減らす、腎臓で活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD)の産生を促して腸管からのカルシウム吸収を高める、という作用により血中カルシウム濃度を上昇させる。副甲状腺にはもう一種類、好酸性細胞があるが、その機能はよくわかっていない。

  3. ○c.  グルカゴン ―― 膵島α〈A〉細胞

    正しい組合せである。グルカゴンは膵島(Langerhans島)のα細胞(A細胞)から分泌される。低血糖や空腹時、アミノ酸の摂取などで分泌が増え、肝臓でのグリコーゲン分解と糖新生を促進して血糖値を上げる。インスリンとは拮抗的に働き、血糖を上昇させる代表的なホルモンである。α細胞から発生する腫瘍がグルカゴノーマで、壊死性遊走性紅斑、耐糖能異常(糖尿病)、体重減少などを特徴とする。

  4. ×d.  アルドステロン ―― 副腎皮質束状層細胞

    誤りである。アルドステロンは副腎皮質の最も外側にある球状層から分泌される。アルドステロン合成に必要な酵素(アルドステロン合成酵素:CYP11B2)が球状層にだけ存在するためである。分泌は主にレニン・アンジオテンシン系(アンジオテンシンⅡ)と血清カリウム濃度の上昇によって刺激され、腎臓の集合管でナトリウムの再吸収とカリウム・水素イオンの排泄を促す。束状層から主に分泌されるのはコルチゾールなどの糖質コルチコイドで、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)によって調節される。

  5. ×e.  テストステロン ―― 精巣Sertoli細胞

    誤りである。テストステロンを分泌するのは、精細管の間の間質にあるLeydig細胞(間質細胞)である。Leydig細胞は下垂体前葉から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)の刺激を受けてテストステロンを産生する。一方、Sertoli細胞は精細管の内部にあり、FSH(卵胞刺激ホルモン)とテストステロンの作用のもとで精子形成を支持する細胞である。血液精巣関門の形成、アンドロゲン結合タンパク(ABP)の分泌、FSHを抑制するインヒビンの分泌、胎生期にMüller管を退縮させる抗Müller管ホルモン(AMH)の分泌などを担う。

主なホルモンと分泌細胞の対応

・甲状腺: 濾胞上皮細胞 → 甲状腺ホルモン(T4・T3)、傍濾胞細胞(C細胞) → カルシトニン ・副甲状腺: 主細胞 → 副甲状腺ホルモン(PTH) ・膵島: α(A)細胞 → グルカゴン、β(B)細胞 → インスリン、δ(D)細胞 → ソマトスタチン、PP細胞 → 膵ポリペプチド ・副腎皮質(外側から): 球状層 → 鉱質コルチコイド(アルドステロン)、束状層 → 糖質コルチコイド(コルチゾール)、網状層 → 副腎アンドロゲン(DHEA、DHEA-S) ・副腎髄質: クロム親和性細胞 → カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン) ・精巣: Leydig細胞 → テストステロン、Sertoli細胞 → インヒビン、抗Müller管ホルモン、アンドロゲン結合タンパク ・卵巣: 顆粒膜細胞 → エストロゲン(莢膜細胞がつくるアンドロゲンを芳香化)、インヒビン、黄体 → プロゲステロン

副腎皮質3層の覚え方

外側から球状層・束状層・網状層の順に、「塩(鉱質コルチコイド)・糖(糖質コルチコイド)・性(アンドロゲン)」と対応させると覚えやすい。球状層の主な調節因子はアンジオテンシンⅡと血清カリウム、束状層・網状層はACTHである。このため、ACTH分泌が低下する続発性副腎皮質機能低下症ではアルドステロン分泌は比較的保たれる。

精巣の2つの細胞と下垂体ホルモン

LH → Leydig細胞 → テストステロン、FSH → Sertoli細胞 → 精子形成の支持とインヒビン分泌、という対応で整理する。テストステロンはLHを、インヒビンはFSHを負のフィードバックで抑制する。

POINT

・カルシトニンは甲状腺C細胞(傍濾胞細胞)から分泌され、C細胞由来の腫瘍が甲状腺髄様癌である。 ・PTHは副甲状腺主細胞、グルカゴンは膵島α細胞、インスリンはβ細胞、ソマトスタチンはδ(D)細胞から分泌される。 ・副腎皮質は外側から球状層(アルドステロン)、束状層(コルチゾール)、網状層(副腎アンドロゲン)。 ・テストステロンはLeydig細胞(LHで刺激)、Sertoli細胞は精子形成の支持とインヒビン・AMHの分泌(FSHで刺激)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。