StudyMed医師国家試験

新生児髄膜炎は「産道」から来る―GBSと大腸菌を年齢で見抜く

第103回医師国家試験 E問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第16問

新生児髄膜炎の起炎菌として頻度が高いのはどれか。2つ選べ。

  1. a.大腸菌
  2. b.髄膜炎菌
  3. c.ブドウ球菌
  4. d.B群レンサ球菌
  5. e.インフルエンザ菌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、細菌性髄膜炎の起炎菌を年齢から絞り込む問題だ。ポイントは「新生児はどこから菌をもらうのか」という感染経路の視点。これを押さえると、丸暗記に頼らず答えが導けるよ。まず、細菌性髄膜炎の起炎菌と聞いて何が思い浮かぶかな。
医学生医学生
肺炎球菌とインフルエンザ菌です。小児科の講義で、髄膜炎といえばこの2つと習った記憶があります。
ドクタードクター
それは乳幼児期以降の話としては正しいんだ。ただ、細菌性髄膜炎の起炎菌は年齢によって大きく入れ替わる。乳幼児以降は、鼻咽頭に定着した菌が侵入の入口になるから、Hibや肺炎球菌が主体になる。一方、新生児はまだ鼻咽頭からの感染が中心ではない。では、生まれたばかりの赤ちゃんは、菌にどこで出会うと思う?
医学生医学生
分娩のとき、つまりお母さんの産道でしょうか。
ドクタードクター
その通り。母親の腟や直腸に定着している菌が、分娩時や破水後に児へ移行する。そこに新生児の未熟な免疫、とくに補体や特異抗体が不十分で莢膜をもつ菌を処理しにくいという弱点が重なって、菌血症から髄膜炎へ進んでしまうんだ。
医学生医学生
産道にいる菌となると、B群レンサ球菌が思い浮かびます。産婦人科の実習で、妊婦健診の腟・直腸培養を見学しました。
ドクタードクター
いいね。B群レンサ球菌、いわゆるGBSは新生児髄膜炎の最も代表的な起炎菌だ。妊婦の1〜2割程度が保菌しているとされ、垂直感染で敗血症・肺炎・髄膜炎を起こす。生後7日未満の早発型は呼吸障害や敗血症が主体、生後7日以降の遅発型では髄膜炎の比率が高くなる。
医学生医学生
もう一つは大腸菌ですか。腸管の菌なら産道の近くにいそうです。
ドクタードクター
正解。大腸菌、とくにK1莢膜抗原をもつ株は、莢膜で補体や貪食から逃れ、血液脳関門も通過しやすい。GBSと並ぶ二大起炎菌で、早産児や低出生体重児ではとくに比重が大きいんだ。この2つが答えになる。次いでリステリア菌も覚えておこう。
医学生医学生
インフルエンザ菌は新生児では少ないんですね。母体からの移行抗体が守ってくれるからでしょうか。
ドクタードクター
そう考えていい。インフルエンザ菌b型が問題になるのは、移行抗体が減る生後3か月ごろから5歳ごろまで。しかも2013年にHibワクチンが定期接種化されてからは激減している。
医学生医学生
髄膜炎菌は名前からして本命に見えますが……。
ドクタードクター
名前に引っ張られやすい選択肢だね。髄膜炎菌は飛沫感染で広がり、主に思春期から若年成人、寮生活などの集団生活で問題になる。劇症型ではWaterhouse-Friderichsen症候群を起こすこともあるけれど、日本では発生自体がまれで、新生児の起炎菌としての頻度は低い。
医学生医学生
ブドウ球菌はNICUの赤ちゃんで問題になると聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。カテーテルを長く留置している早産児の遅発型敗血症では、黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多い。また脳外科手術後やシャント留置例の髄膜炎でも重要だ。ただ、一般的な新生児髄膜炎の起炎菌として頻度が高いものではない。
医学生医学生
年齢ごとに整理すると、新生児はGBS・大腸菌・リステリア、乳幼児はHib・肺炎球菌、成人は肺炎球菌が最多、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。高齢者や免疫不全者ではリステリアやグラム陰性桿菌も加わる。最後に臨床の注意点を。新生児髄膜炎は大泉門膨隆や項部硬直が出にくく、哺乳不良、活気低下、無呼吸、低体温を含む体温の不安定、けいれんといった非特異的な症状で見つかることが多い。「なんとなく元気がない」を見逃さないことが大切なんだ。
医学生医学生
治療はどう選べばいいですか。
ドクタードクター
GBS・大腸菌・リステリアをまとめてカバーするため、アンピシリンに第3世代セフェム系、たとえばセフォタキシムを組み合わせるのが基本だ。リステリアにはセフェム系が効かないから、アンピシリンを外さないことがポイント。予防としては、妊娠35〜37週にGBSスクリーニングを行い、保菌妊婦には分娩時にペニシリン系抗菌薬を静注する。これで早発型は減ったけれど、遅発型は防ぎきれない。後遺症として難聴や発達遅滞、水頭症などを残すこともあるから、早期発見と速やかな治療が肝心だよ。

まとめ

新生児髄膜炎の二大起炎菌はB群レンサ球菌(GBS)と大腸菌(とくにK1株)で、次いでリステリア菌が重要です。いずれも母体の産道・周産期環境に由来し、補体や特異抗体が未熟な新生児では菌血症から髄膜炎へ進展しやすくなります。乳幼児期はインフルエンザ菌b型と肺炎球菌、成人では肺炎球菌が中心となり、髄膜炎菌は若年成人の集団生活、ブドウ球菌はNICUのカテーテル関連感染や脳外科術後で問題となります。新生児では症状が非特異的なため、哺乳不良や活気低下にも注意し、経験的治療にはリステリアもカバーするアンピシリンと第3世代セフェム系を併用します。「感染経路と免疫の成熟度で起炎菌が変わる」という視点は、年齢別の感染症全般を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, dです

細菌性髄膜炎の起炎菌は、患者の年齢によって頻度が大きく変わる。これは、感染経路(産道・母体由来か、上気道の定着菌由来か)と、宿主の免疫の成熟度が年齢ごとに異なるためである。 新生児期(生後およそ4週まで)の細菌感染は、多くが母体の産道や周産期環境に由来する。母親の腟・直腸に定着している菌が、分娩時あるいは破水後に児へ移行し、未熟な免疫(とくに補体や特異抗体が不十分で、莢膜をもつ菌を処理しにくい)のために菌血症から髄膜炎へ進展する。このため、新生児髄膜炎の二大起炎菌は、B群レンサ球菌(GBS:group B Streptococcus、Streptococcus agalactiae)と大腸菌(とくにK1莢膜抗原をもつ株)である。これに次ぐものとしてリステリア菌(Listeria monocytogenes)が挙げられる。 一方、乳幼児期以降になると、鼻咽頭に定着した菌が侵入経路の中心となり、インフルエンザ菌b型(Hib)や肺炎球菌が主体となる。したがって本問は「新生児期に特有の起炎菌」を選ぶ問題であり、年齢別の起炎菌を整理しておけば解答できる。

選択肢考察

  1. ○a.  大腸菌

    大腸菌は母体の腸管・腟に存在し、分娩時に児へ移行しうるグラム陰性桿菌である。なかでもK1莢膜抗原をもつ株は、莢膜が補体による殺菌や食細胞による貪食を妨げ、血液脳関門を通過しやすいため、新生児髄膜炎の起炎菌として非常に重要である。GBSと並ぶ新生児髄膜炎の二大起炎菌であり、とくに早産児・低出生体重児で比重が大きい。

  2. ×b.  髄膜炎菌

    髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は飛沫感染で広がり、主に思春期・若年成人の髄膜炎や劇症型の髄膜炎菌血症(Waterhouse-Friderichsen症候群を含む)の原因となる。寮生活などの集団生活で流行することがあるが、わが国では発生がまれである。新生児髄膜炎の起炎菌としての頻度は低い。

  3. ×c.  ブドウ球菌

    ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌)は、新生児集中治療室に長期入院する早産児・低出生体重児などで、カテーテル関連の遅発型敗血症の原因菌として多い。また高齢者、免疫不全患者、脳外科手術後やシャント留置例の髄膜炎ではMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を含む黄色ブドウ球菌が問題となる。しかし、一般的な新生児髄膜炎の起炎菌として頻度が高いものではない。

  4. ○d.  B群レンサ球菌

    B群レンサ球菌(GBS)は妊婦の腟・直腸に常在しうる菌で、わが国では妊婦の約1〜2割が保菌者とされる。分娩時に児へ垂直感染し、新生児の敗血症・肺炎・髄膜炎を起こす。新生児髄膜炎の最も代表的な起炎菌であり、生後7日未満に発症する早発型(呼吸障害・敗血症が主体)と、生後7日以降に発症する遅発型(髄膜炎の比率が高い)がある。早発型の予防として、妊娠35〜37週にスクリーニング培養を行い、保菌妊婦には分娩時にペニシリン系抗菌薬(アンピシリンなど)を静注する。

  5. ×e.  インフルエンザ菌

    インフルエンザ菌、とくに莢膜b型(Hib)は、母体からの移行抗体が減少する生後3か月ごろから5歳ごろまでの乳幼児における細菌性髄膜炎の主要な起炎菌であった。Hibワクチンの定期接種化(2013年)以降は激減している。新生児期の起炎菌として頻度が高いものではない。

年齢別の細菌性髄膜炎の主な起炎菌

・新生児期:B群レンサ球菌(GBS)、大腸菌(K1株)、リステリア菌 ・乳幼児期(生後3か月〜5歳ごろ):インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌(いずれもワクチン導入後は大きく減少) ・学童〜成人:肺炎球菌が最多。髄膜炎菌は思春期・若年成人で問題となるが、わが国ではまれ ・高齢者・免疫不全者:肺炎球菌に加え、リステリア菌、グラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌(MRSAを含む) ・脳外科手術後・シャント留置例:黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、グラム陰性桿菌

新生児髄膜炎の特徴

・敗血症と並んで新生児期の重篤な感染症であり、出生時点ですでに発症している例は急速に悪化し、短時間で死亡することもある。 ・大泉門膨隆や項部硬直などの典型的な髄膜刺激症状が出にくく、哺乳不良、活気低下、無呼吸、体温の不安定(発熱だけでなく低体温)、けいれんなど非特異的な症状で気づかれることが多い。 ・経験的治療は、GBS・大腸菌・リステリア菌をカバーするため、アンピシリンに第3世代セフェム系(セフォタキシムなど)を組み合わせるのが基本である。リステリア菌はセフェム系が無効である点に注意する。 ・難聴、発達遅滞、てんかん、水頭症などの後遺症を残すことがある。

GBS感染症の予防

妊娠後期に腟・直腸の培養でGBS保菌の有無を確認し、陽性者には分娩時に抗菌薬を予防投与する。これにより早発型GBS感染症は減少したが、遅発型は予防しきれない。

POINT

・新生児髄膜炎の二大起炎菌はB群レンサ球菌(GBS)と大腸菌(K1株)で、次いでリステリア菌。 ・いずれも母体の産道・周産期環境に由来する。 ・乳幼児期はHib・肺炎球菌、成人は肺炎球菌が中心と、年齢で起炎菌が変わる。 ・新生児の経験的治療はアンピシリン+第3世代セフェム系。 ・GBSは妊娠35〜37週のスクリーニングと分娩時の抗菌薬予防投与で早発型を予防する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。