「アトリウム」は心臓にもある―心房とaortaを取り違えない解剖英語の基本
第103回医師国家試験 C問題 第10問
国試問題にチャレンジ
組合せで誤っているのはどれか。
- a.心房 ―― aorta
- b.動脈 ―― artery
- c.静脈 ―― vein
- d.神経 ―― nerve
- e.脊柱 ―― spine
対話形式の解説
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ドクターまとめ
心房の英語はatrium(複数形atria、形容詞atrial)であり、aortaは左心室から出る大動脈(形容詞aortic)を指すため、「心房―aorta」の組合せは誤りです。動脈artery、静脈vein、神経nerve、脊柱spineはいずれも正しい対応で、心室はventricle、大脳はcerebrum、小脳はcerebellumと整理できます。英語の解剖用語はheart→cardiac、lung→pulmonary、vein→venousのように名詞と形容詞で語形が大きく変わるものが多く、病名や検査名では形容詞形が頻出するため、セットで覚えることが大切です。spineとsupine、atriumとaortaのような紛らわしい語の区別も含めて、正確な医学英語の知識はカルテ記載や文献読解の土台になります。
解答・解説
正解はaです
基本的な解剖学用語の日本語と英語の対応を問う問題である。診療録(カルテ)、画像診断報告書、英語論文や添付文書を読むうえで、臓器・構造の英語名は欠かせない。 選択肢のうち、動脈(artery)、静脈(vein)、神経(nerve)、脊柱(spine)はいずれも正しい対応である。心房の英語は atrium(複数形 atria)であり、aorta は大動脈を指す。したがって「心房 ―― aorta」の組合せが誤りである。 英語の解剖学用語は、名詞形と形容詞形で語形が大きく変わるものが多い(例: vein と venous、heart と cardiac)。臨床では形容詞形の方が頻繁に使われるため、あわせて覚えておくと実用的である。
選択肢考察
- ○a. 心房 ―― aorta
誤った組合せである。心房は atrium(複数形 atria、形容詞形 atrial)で、右心房は right atrium、左心房は left atrium という。心房細動(atrial fibrillation:AF)、心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)などの病名にも用いられる。atrium はもともと古代ローマの住居で中央にある吹き抜けの広間を指す言葉で、建築で使われる「アトリウム」と同じ語源である。一方、aorta は左心室から出る大動脈のことであり(形容詞形 aortic)、大動脈弁は aortic valve、大動脈解離は aortic dissection、大動脈弁狭窄症は aortic stenosis(AS)という。
- ×b. 動脈 ―― artery
正しい組合せである。動脈は artery(複数形 arteries)で、形容詞形は arterial である。例として、脾動脈は splenic artery、冠動脈は coronary artery、動脈血ガス分析は arterial blood gas(ABG)という。ただし大動脈だけは aorta という固有の語を用いる。
- ×c. 静脈 ―― vein
正しい組合せである。静脈は vein で、形容詞形は venous である(静脈血 venous blood、深部静脈血栓症 deep vein thrombosis:DVT)。「静脈内の」を表す intravenous(略語 IV、静脈内投与)も頻用される。venal は「金で動く・買収されやすい」という意味の全く別の語であり、静脈の形容詞と混同しないよう注意する。
- ×d. 神経 ―― nerve
正しい組合せである。神経は nerve で、視神経は optic nerve、顔面神経は facial nerve、迷走神経は vagus nerve という。形容詞的な表現としては neural(神経の)や nervous(神経系の:nervous system)が使われ、「神経学」は neurology である。神経系を表す接頭語 neuro-(neuron、neuropathy など)もあわせて覚えるとよい。
- ×e. 脊柱 ―― spine
正しい組合せである。脊柱は spine で、vertebral column(spinal column)ともいう。形容詞形は spinal で、脊髄は spinal cord、脊柱管狭窄症は spinal canal stenosis という。脊柱を構成する椎骨は vertebra(複数形 vertebrae)である。綴りの似た supine は「仰臥位の(あおむけの)」という意味で、腹臥位(うつぶせ)の prone と対になる語であり、spine とは無関係である。
心血管系の主な英語
・心臓 heart(形容詞 cardiac) ・心房 atrium/atria(atrial) ・心室 ventricle(ventricular) ・大動脈 aorta(aortic) ・動脈 artery(arterial)、細動脈 arteriole ・静脈 vein(venous)、細静脈 venule ・毛細血管 capillary ・大静脈 vena cava(上大静脈 superior vena cava、下大静脈 inferior vena cava) ・弁 valve(僧帽弁 mitral valve、三尖弁 tricuspid valve、肺動脈弁 pulmonary valve)
そのほか基本的な解剖用語
・筋肉 muscle、組織 tissue、リンパ管 lymphatic vessel(lymph vessel) ・大脳 cerebrum(cerebral)、小脳 cerebellum(cerebellar)、脳幹 brainstem ・脊髄 spinal cord、椎骨 vertebra(vertebral) ・肺 lung(pulmonary)、肝臓 liver(hepatic)、腎臓 kidney(renal)
名詞と形容詞で語源が異なるもの
英語の日常語(ゲルマン語系)とラテン語・ギリシャ語由来の形容詞が組み合わさっているため、heart→cardiac、lung→pulmonary、liver→hepatic、kidney→renal、vein→venous のように形が大きく変わることが多い。病名や検査名では形容詞形が使われることが多いので、対で覚えておくとよい。
混同しやすい語
・cerebrum(大脳)と cerebellum(小脳) ・spine(脊柱)と supine(仰臥位) ・venous(静脈の)と venal(買収されやすい) ・atrium(心房)と aorta(大動脈)
POINT
・心房は atrium(形容詞 atrial)、aorta は大動脈(形容詞 aortic)である。 ・動脈 artery(arterial)、静脈 vein(venous)、神経 nerve(neural/nervous)、脊柱 spine(spinal)。 ・心室は ventricle、大脳は cerebrum、小脳は cerebellum。 ・臨床用語では形容詞形(cardiac、pulmonary、hepatic、renal など)が頻出するので名詞とセットで覚える。
