生まれて1分、5つの指標で読む新生児―Apgarスコアを確実に数える方法
第103回医師国家試験 A問題 第58問
国試問題にチャレンジ
在胎30週0日。帝王切開で出生の新生児。出生後1分の自発呼吸は不規則で,心拍数92/分,整。鼻腔内吸引で顔をしかめるが,咳,くしゃみなどは出現しない。四肢の動きは認められるが筋緊張は低い。全身にチアノーゼを認める。 出生後1分のApgarスコアはどれか。
- a.0点
- b.1点
- c.2点
- d.3点
- e.4点
- f.5点
- g.6点
- h.7点
- i.8点
- j.9点
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
Apgarスコアは皮膚色・心拍数・反射・筋緊張・呼吸の5項目を各0〜2点で評価する新生児の状態指標で、生後1分と5分に採点します。全身チアノーゼは0点、心拍数100/分未満は1点、顔をしかめる程度の反射は1点、動きはあるが筋緊張が弱ければ1点、不規則な自発呼吸は1点となり、本例は合計4点の軽症新生児仮死です。0〜3点が重症仮死、4〜6(または7)点が軽症仮死とされ、早産児では未熟性のため点数が低めに出やすいことにも注意が必要です。またApgarスコアは蘇生開始の判断には用いず、新生児蘇生法に従って呼吸と心拍数を評価し、必要なら1分値を待たずに人工呼吸を始めます。各項目の境目を正確に覚えて機械的に採点する力と、採点と蘇生判断を区別する理解は、周産期医療の基本として欠かせません。
解答・解説
正解はeです
Apgarスコアとは
出生直後の新生児の状態を評価する指標で、次の5項目をそれぞれ0~2点で採点し、合計0~10点で表す。英語の頭文字をとってAPGARと覚えることが多い。 ・Appearance(皮膚色):全身蒼白または全身チアノーゼ=0点、体幹はピンクで四肢末端のみチアノーゼ=1点、全身ピンク=2点 ・Pulse(心拍数):なし=0点、100/分未満=1点、100/分以上=2点 ・Grimace(刺激に対する反射。鼻腔カテーテル挿入や足底刺激への反応):反応なし=0点、顔をしかめる程度=1点、泣く・咳・くしゃみをする=2点 ・Activity(筋緊張):だらりとして動かない=0点、四肢をいくらか曲げる(動きはあるが緊張は弱い)=1点、四肢を活発に動かし屈曲位を保つ=2点 ・Respiration(呼吸):なし=0点、弱い泣き声・不規則な浅い呼吸=1点、強く泣く・規則的な呼吸=2点
本例の採点
・皮膚色:全身にチアノーゼ → 0点 ・心拍数:92/分(100/分未満) → 1点 ・反射:鼻腔内吸引で顔をしかめるが、咳やくしゃみは出ない → 1点 ・筋緊張:四肢の動きはあるが筋緊張は低い → 1点 ・呼吸:自発呼吸はあるが不規則 → 1点 合計 0+1+1+1+1=4点である。
評価
一般に7点以上(施設により8点以上)を正常、4~6点(または4~7点)を軽症新生児仮死、0~3点を重症新生児仮死とする。本例の4点はいずれの区分でも軽症仮死の範囲に入る。在胎30週の早産児であり、筋緊張の低さや呼吸の不規則さには未熟性も影響している。
選択肢考察
- ×a. 0点
0点は心拍も呼吸もなく、刺激に全く反応せず、筋緊張がなく全身蒼白またはチアノーゼの状態である。本例には心拍(92/分)、不規則ながら自発呼吸、顔をしかめる反応、四肢の動きがあり、0点ではない。
- ×b. 1点
本例では心拍数・反射・筋緊張・呼吸の4項目がそれぞれ1点に該当し、合計は4点となる。1点とするのは項目の取りこぼしであり誤りである。
- ×c. 2点
たとえば呼吸や筋緊張を0点と誤って評価するとこの点数になる。本例では自発呼吸があり(不規則なので1点)、四肢の動きもある(筋緊張低下だが1点)ため、2点にはならない。
- ×d. 3点
4項目のうちいずれかを0点とした場合の点数である。「顔をしかめる」は反射1点、「四肢の動きはあるが筋緊張は低い」は筋緊張1点に該当し、0点とはしない。3点は重症新生児仮死の範囲だが、本例は4点である。
- ○e. 4点
皮膚色0点(全身チアノーゼ)、心拍数1点(92/分で100/分未満)、反射1点(顔をしかめるのみで咳・くしゃみなし)、筋緊張1点(動きはあるが緊張低下)、呼吸1点(不規則な自発呼吸)で、合計4点となる。軽症新生児仮死に分類される。
- ×f. 5点
5点とするには、いずれかの項目を2点と評価する必要がある。心拍数は100/分未満なので2点にはならず、皮膚色も全身チアノーゼなので0点である。他の項目もいずれも満点の条件(規則的な呼吸・啼泣、活発な運動、咳・くしゃみ)を満たさない。
- ×g. 6点
6点となるには満点の項目が2つ必要だが、本例に2点を与えられる項目はない。誤りである。
- ×h. 7点
7点はほぼ正常と評価される点数であり、全身チアノーゼ・徐脈・筋緊張低下を伴う本例には当てはまらない。
- ×i. 8点
8点は正常新生児の範囲である。本例の所見からはこの点数にならない。
- ×j. 9点
9点は、健康な正期産児で多い点数である(出生直後は四肢末端のチアノーゼが残り、皮膚色が1点となることが多い)。本例とは合わない。
Apgarスコアの由来と使い方
1953年に米国の麻酔科医Virginia Apgarが考案した。出生後1分と5分に評価し、5分値が7点未満の場合は、20分まで5分ごとに評価を続けることが推奨されている。 ・1分値:出生直後の状態(新生児仮死の有無・程度)を反映する。 ・5分値:蘇生への反応や神経学的予後との関連がより強い。
Apgarスコアと蘇生の関係
Apgarスコアは蘇生を開始するかどうかの判断には用いない。蘇生が必要な児では、1分値をつけるのを待たずに処置を始める。日本版新生児蘇生法(NCPR)のアルゴリズムでは、出生直後に「早産児か」「弱い呼吸・啼泣か」「筋緊張が低下しているか」を確認し、一つでも当てはまれば保温・体位保持・気道開通(必要に応じて吸引)・皮膚乾燥と刺激といった初期処置を行う。その後、呼吸と心拍数を評価し、無呼吸・あえぎ呼吸または心拍数100/分未満であれば人工呼吸(バッグ・マスク換気)を開始する。さらに有効な人工呼吸を行っても心拍数60/分未満であれば、胸骨圧迫を加える。 本例は早産児で、呼吸は不規則、心拍数92/分、筋緊張低下があり、実際には直ちに初期処置と人工呼吸が必要な状態である。
新生児仮死の分類(目安)
・7~10点(または8~10点):正常 ・4~6点(または4~7点):軽症(第1度)仮死 ・0~3点:重症(第2度)仮死 正常の下限を7点とするか8点とするかは文献により異なるが、4点が軽症仮死、3点以下が重症仮死である点は共通している。
早産児での注意
早産児では、未熟性そのもののために筋緊張や反射が弱く、呼吸も不規則になりやすい。そのため仮死がなくても点数が低めに出ることがあり、Apgarスコアの解釈には在胎週数を考慮する。
POINT
・Apgarスコアは皮膚色・心拍数・反射・筋緊張・呼吸の5項目を各0~2点で評価(合計10点)。生後1分と5分に評価する。 ・心拍数は100/分以上で2点、100/分未満で1点、なしで0点。 ・皮膚色は全身チアノーゼ・蒼白で0点、四肢末端のみのチアノーゼで1点。 ・反射は顔をしかめる程度で1点、泣く・咳・くしゃみで2点。 ・0~3点は重症仮死、4~6(7)点は軽症仮死。 ・蘇生はApgarスコアを待たずに開始する。
