StudyMed医師国家試験

あおむけ・母乳・禁煙―「原因不明の死」を防ぐ乳幼児突然死症候群の3原則

第102回医師国家試験 E問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第102回 E問題 第33問

乳幼児突然死症候群〈SIDS〉について正しいのはどれか。

  1. a.窒息などの外因死を含めた疾患概念である。
  2. b.我が国には診断のガイドラインがない。
  3. c.生後6か月以降に発症することが多い。
  4. d.予防のためにうつぶせ寝が勧められる。
  5. e.予防のために両親の禁煙が勧められる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳幼児突然死症候群、SIDSの基本を問う問題だ。定義、好発年齢、危険因子と予防策という4つの観点から、それぞれの選択肢の正誤を見ていこう。まず、SIDSとはどういう概念か説明できるかな。
医学生医学生
赤ちゃんが寝ている間に突然亡くなってしまうこと、ですよね。窒息も含まれるんでしょうか。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。SIDSは、それまでの健康状態や既往歴から予測できず、死亡状況調査と解剖をしても原因が見つからない、原則1歳未満の突然死と定義されている。つまり除外診断なんだ。窒息や事故、虐待などの外因で説明がつけば、その時点でSIDSではなくなる。
医学生医学生
じゃあ、外因死を含む概念というのは誤りですね。解剖が必要なのは法医学の講義で聞きました。
ドクタードクター
そう、解剖は必須だ。解剖をしないまま死因がわからないケースはSIDSとは呼ばず、「分類不能の乳幼児突然死」として扱う。この厳密な診断の手順を定めたのが、厚生労働省研究班のSIDS診断ガイドラインで、2005年に作成され、2012年に改訂されている。
医学生医学生
ということは、日本に診断のガイドラインがないというのも誤りですね。
ドクタードクター
その通り。次は好発年齢だ。いつ頃に多いと思う?
医学生医学生
寝返りができるようになる6か月以降のほうが危なそうな気がします。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるよね。でも実際は生後2〜6か月に集中していて、6か月を過ぎると頻度は下がる。睡眠中の呼吸・循環の調節や、低酸素になったときに目を覚ます覚醒反応がまだ未熟な時期に、環境要因が重なって起こるという考え方が有力なんだ。
医学生医学生
なるほど、発達の未熟さがカギなんですね。うつぶせ寝が予防になるという選択肢は、むしろ逆ですよね。
ドクタードクター
正解。うつぶせ寝はSIDSの代表的な危険因子で、勧められるのはあおむけ寝だ。欧米や日本であおむけ寝キャンペーンが行われてから、SIDSは大きく減った。横向き寝も、うつぶせに転がりやすいので安全とはいえない。
医学生医学生
残る両親の禁煙が正解ですね。妊娠中の喫煙だけでなく、生まれてからの受動喫煙も関係するんですか。
ドクタードクター
どちらもリスクを高める。喫煙によって児の覚醒反応が鈍くなることなどが機序として考えられている。だから妊婦本人の禁煙はもちろん、父親や同居家族も赤ちゃんの周りで吸わないことが大切なんだ。
医学生医学生
小児科の実習で、1か月健診の保健指導を見学したときに「あおむけ・母乳・たばこ」の話をしていました。
ドクタードクター
まさにそれが厚生労働省の推奨する予防3原則。1歳になるまでは寝かせるときはあおむけに、できるだけ母乳で育てる、たばこをやめる。危険因子のうち修正できる3つ、うつぶせ寝・人工栄養・喫煙にそれぞれ対応しているんだ。そのほか、早産・低出生体重、男児、冬季、柔らかい寝具や着せすぎも危険因子として知られている。
医学生医学生
臨床では、SIDSを疑ったときに何に注意すればいいでしょうか。
ドクタードクター
大事なのは鑑別だ。窒息や虐待、乳幼児揺さぶられ症候群、感染症、先天性心疾患、QT延長症候群などの不整脈、脂肪酸代謝異常症のような先天代謝異常が隠れていることがある。だからこそ解剖と状況調査が欠かせない。同時に、ご両親は強い自責の念を抱きやすいので、心理的なケアも医療者の大切な役割だよ。
医学生医学生
以前は「ニアミスSIDS」という言葉もあったと聞きました。
ドクタードクター
その概念はALTEを経て、現在はBRUE、つまり短時間で消失した説明のつかない事象として整理されている。用語の変遷も知っておくと、文献を読むときに困らないよ。

まとめ

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、既往歴などから予測できず、死亡状況調査と解剖でも原因が同定されない原則1歳未満の突然死で、窒息などの外因死を含まない除外診断です。わが国には厚生労働省研究班の診断ガイドラインがあり、解剖が必須とされています。好発は生後2〜6か月で、うつぶせ寝、非母乳栄養、妊娠中の喫煙や受動喫煙が主な危険因子です。予防策として「あおむけ寝」「母乳育児」「禁煙」の3原則が推奨されており、両親の禁煙は重要な予防策です。乳児健診などの保健指導で家族に具体的に伝えられるよう、定義と予防策をセットで理解しておくことが大切です。

解答・解説

正解はeです

本問は、乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome:SIDS)の定義・疫学・危険因子・予防策を問う一般問題である。 わが国の定義(厚生労働省の研究班によるSIDS診断ガイドライン)では、SIDSは「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」とされる。つまりSIDSは、窒息などの外因や感染症・先天異常・代謝異常といった既知の疾患をすべて除外したうえで初めて診断される「除外診断」であり、診断には解剖が必須である。 好発年齢は生後2~6か月で、睡眠中に発症することが多い。主な危険因子は、うつぶせ寝、非母乳栄養(人工栄養)、両親の喫煙(妊娠中の母体喫煙・受動喫煙を含む)であり、ほかに早産・低出生体重、男児、冬季などが知られる。これら3つの修正可能な危険因子に対応して、わが国では「1歳になるまでは寝かせるときはあおむけに」「できるだけ母乳で育てる」「たばこをやめる」の3点が予防策として推奨されている。この知識があれば正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  窒息などの外因死を含めた疾患概念である。

    SIDSは、死亡状況調査と解剖検査を行っても死因が同定されないものに限られる。窒息・事故・虐待などの外因死は、原因が特定できる時点でSIDSから除外される。解剖が行われずに死因が特定できない場合もSIDSとは診断せず、「診断不能(分類不能)の乳幼児突然死」として扱う。

  2. ×b.  我が国には診断のガイドラインがない。

    わが国では2005年(平成17年)に厚生労働省の研究班によってSIDS診断ガイドラインが作成され、その後2012年に改訂版(第2版)が出されている。このガイドラインで定義、解剖の必要性、死亡状況調査の手順などが示されている。したがって「ガイドラインがない」は誤りである。

  3. ×c.  生後6か月以降に発症することが多い。

    SIDSの発症は生後2~6か月に集中しており、生後6か月を過ぎると頻度は低下する。まれに1歳以上でも起こりうるため、定義上は「原則として1歳未満」とされる。

  4. ×d.  予防のためにうつぶせ寝が勧められる。

    うつぶせ寝はSIDSの重要な危険因子であり、推奨されるのはあおむけ寝である。欧米やわが国であおむけ寝を勧めるキャンペーンが行われた結果、SIDSの発生数は大きく減少した。なお、医学的理由でうつぶせ寝が必要な場合を除き、1歳になるまでは寝かせるときはあおむけにすることが勧められている。

  5. ○e.  予防のために両親の禁煙が勧められる。

    妊娠中の母体喫煙や、出生後の両親・同居者の喫煙による受動喫煙は、SIDSの危険性を明らかに高める。喫煙による児の覚醒反応(低酸素などに対して目を覚ます反応)の低下などが機序として考えられている。そのため、妊婦自身の禁煙に加え、児の周囲での喫煙をやめることがSIDSの予防策として推奨されている。

SIDSの概要

・定義:それまでの健康状態・既往歴から予測できず、死亡状況調査と解剖によっても原因が同定されない、原則1歳未満の突然死 ・好発:生後2~6か月、睡眠中、冬季、早朝 ・原因は未解明だが、睡眠中の呼吸・循環調節や覚醒反応の未熟性に、環境要因(うつぶせ寝、喫煙など)が加わって発症するという考え方が有力である

危険因子

・うつぶせ寝(横向き寝も不安定でうつぶせになりやすい) ・非母乳栄養(人工栄養) ・妊娠中の母体喫煙、受動喫煙 ・早産・低出生体重 ・男児 ・柔らかい寝具、過度の暖房・着せすぎ

予防策(厚生労働省が推奨する3点)

1. 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせる 2. できるだけ母乳で育てる 3. たばこをやめる(妊娠中および児の周囲)

診断上の注意

・SIDSは除外診断であり、解剖が必須である。 ・解剖を行わずに死因が不明なものはSIDSと診断せず、「分類不能の乳幼児突然死」とする。 ・鑑別として、窒息、虐待(乳幼児揺さぶられ症候群を含む)、感染症、先天性心疾患、不整脈(QT延長症候群など)、先天代謝異常(脂肪酸代謝異常症など)がある。

関連用語

かつて「ニアミスSIDS」と呼ばれた病態は、現在はALTE(apparent life-threatening event)、さらにBRUE(brief resolved unexplained event:短時間で消失した説明不能な事象)へと概念が整理されている。

POINT

・SIDSは解剖と死亡状況調査でも原因が特定できない、原則1歳未満の突然死(除外診断。外因死は含まない)。 ・好発は生後2~6か月。 ・危険因子:うつぶせ寝、非母乳栄養、喫煙(妊娠中・受動喫煙)。 ・予防3原則:あおむけ寝、母乳育児、禁煙。 ・わが国には厚生労働省研究班による診断ガイドライン(2005年作成、2012年改訂)がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。