出遅れて、一気に追い抜く―グラフの「形」で見抜く日本の高齢化
第102回医師国家試験 B問題 第15問
国試問題にチャレンジ
日本,アメリカ,イギリス,イタリア及びカナダの1920年から2000年の老年人口割合(%)を示す。 日本はどれか。 1920年 1940年 1960年 1980年 2000年 ① 4.7 6.9 9.2 11.2 12.3 ② 5.3 4.8 5.7 9.1 17.3 ③ 4.8 6.7 7.5 9.4 12.6 ④ 6.0 9.0 11.7 15.1 15.9 ⑤ 6.7 7.4 9.3 13.2 18.2
- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
日本の老年人口割合は、多産多死の時代が長く少産化が遅れたため、戦前から1960年ごろまでは5%前後と欧米より低く停滞していましたが、1970年代以降は出生率の急低下と平均寿命の延長により他国に例をみない速さで上昇しました。そのため国際比較の表では、最終年の値の大小ではなく「長い停滞の後の急上昇」という推移の形で日本を見抜くことがポイントです。早くから高齢化したイギリス、2000年時点で最も高かったイタリア、移民の多いアメリカ・カナダの緩やかな上昇と比べると、日本の特徴は際立っています。7%から14%への倍加年数は日本で約24年と極めて短く、2005年ごろにはイタリアを抜いて世界最高となり、現在は約29%に達しています。高齢化の背景と速さを理解しておくことは、医療・介護需要の変化や地域医療のあり方を考える土台になります。
解答・解説
正解はbです
テーマ
老年人口割合(高齢化率:総人口に占める65歳以上人口の割合)の長期推移を、先進5か国(日本・アメリカ・イギリス・イタリア・カナダ)で比較し、日本の特徴を見抜く問題である。
日本の高齢化の特徴
日本の高齢化には次の2つの特徴がある。 1. 戦前から戦後しばらくは、欧米諸国より老年人口割合が低かった。多産多死の時代が長く続き、戦後の出生率低下(少産化)も欧米より遅れて始まったためである。1940年代前後は戦争による人口構成の変化もあり、5%前後で横ばい〜やや低下していた。 2. 1970年代以降、他国に例をみない速さで上昇した。1947〜1949年の第1次ベビーブーム後の急激な出生率低下と、平均寿命の大幅な延長が重なったことによる。 したがって「初めは低く、途中まではほとんど増えず、最後の20年で急上昇して他国を追い越す」推移を示す系列を探せばよい。
表の読み取り
②は1920〜1960年に5.3→4.8→5.7%と5%前後で停滞し、1980年に9.1%、2000年には17.3%と急上昇している。1960年時点では5か国中最低、2000年にはイタリア(⑤、18.2%)に次ぐ水準まで達しており、上記の特徴と一致する。よって②が日本である。 他の系列を見ると、④(6.0%)と⑤(6.7%)は1920年時点で日本より高い。一方、①(4.7%)と③(4.8%)は1920年時点では日本よりやや低いが、1940年にはそれぞれ6.9%、6.7%と日本(4.8%)を上回り、その後も2000年の12.3%、12.6%まで緩やかな上昇を続けている。つまり、1920年の値だけでは日本を特定できず、日本の特徴は「戦前〜1960年の停滞」と「1960年以降の急上昇」という推移の形にある。①・③・④・⑤のいずれにもこのような停滞と急上昇の組み合わせはみられず、欧米諸国が長い時間をかけて段階的に高齢化してきたことを反映している。 ※本問は2008年の出題であり、表の数値は2000年までのものである。現在の日本の高齢化率はこれよりはるかに高い(下記参照)ため、個々の数値の暗記よりも、推移のパターンと最新の値を押さえることが重要である。
選択肢考察
- ×a. ①
アメリカである。1920年の4.7%から2000年の12.3%まで、各時期にわたり緩やかに上昇している。移民の流入が多く、第二次世界大戦後にベビーブーム世代が生まれたこともあって、先進国の中では高齢化の進行が比較的遅い。日本のような戦前の停滞と後半の急上昇はみられない。
- ○b. ②
日本である。1920〜1960年は5%前後で停滞(1940年は4.8%と一時低下)し、1960年時点では5か国中最も低い。その後1980年9.1%、2000年17.3%と急上昇し、他国を急速に追い上げている。戦後の出生率の急低下と平均寿命の延長によって、欧米が長期間かけた高齢化を短期間で経験した日本の特徴と合致する。
- ×c. ③
カナダである。1920年4.8%から2000年12.6%まで、アメリカ(①)と似た緩やかな上昇を示す。移民の受け入れが多い国であり、2000年時点の高齢化率は5か国の中では低い部類に入る。1960年以前にすでに7%前後に達しており、日本の推移とは異なる。
- ×d. ④
イギリスである。産業革命以降、早くから出生率が低下したため、1920年の時点で6.0%、1940年には9.0%と5か国中最も高く、1960〜1980年にかけても高い水準で推移した。1980年15.1%から2000年15.9%と、後半は伸びが小さい。早期に高齢化が進み、その後は比較的安定しているという推移が日本とは対照的である。
- ×e. ⑤
イタリアである。1920年6.7%と当初から比較的高く、1980年13.2%、2000年18.2%と5か国中最高に達している。イタリアは出生率の低下が著しく、2000年代前半までは世界で最も高齢化率が高い国であったが、2005年ごろに日本に抜かれた。2000年時点では日本(17.3%)よりわずかに高いが、日本のような戦前の停滞はみられない。
高齢化に関する用語
・高齢化社会:高齢化率が7%を超えた社会 ・高齢社会:高齢化率が14%を超えた社会 ・超高齢社会:高齢化率が21%を超えた社会(慣用的な区分)
日本の高齢化の推移と速さ
日本の高齢化率は1970年に7%、1994年に14%、2007年に21%を超えた。7%から14%に達するまでの年数(倍加年数)は日本が約24年であるのに対し、フランスは約115年、スウェーデンは約85年、アメリカは約72年、イギリスは約46年、ドイツは約40年とされ、日本の高齢化の速さが際立っている。 2005年には日本の高齢化率(約20%)がイタリアを上回って世界最高となり、同時に年少人口(15歳未満)の割合は世界最低水準となった。以後も上昇を続け、2020年の国勢調査で28.6%、近年は29%台に達しており、世界で最も高い水準にある。
人口構造の指標
・年少人口:0〜14歳、生産年齢人口:15〜64歳、老年人口:65歳以上 ・老年人口指数=老年人口/生産年齢人口×100 ・年少人口指数=年少人口/生産年齢人口×100 ・従属人口指数=(年少人口+老年人口)/生産年齢人口×100 ・老年化指数=老年人口/年少人口×100
高齢化の背景
高齢化は、出生率の低下(少子化)と死亡率の低下・平均寿命の延長によって進む。日本では合計特殊出生率が人口置換水準(約2.1)を1970年代半ばから下回り続けており、晩婚化・未婚化の進行がその主な要因とされる。
POINT
・日本の老年人口割合は、戦前〜1960年ごろまでは欧米より低く、1970年代以降に急上昇したのが特徴である。 ・日本の高齢化率は2005年ごろに世界最高となり、現在は約29%と世界で最も高い水準にある。 ・7%(高齢化社会)→14%(高齢社会)に要した年数は日本で約24年と、欧米諸国に比べ極めて短い。 ・高齢化の要因は少子化(出生率低下)と平均寿命の延長である。 ・統計値は年ごとに更新されるため、最新の数値を確認して覚える。
