StudyMed医師国家試験

「向き」は問題じゃない―胎位・胎勢・胎向を見分けて分娩の三要素を読み解く

第101回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第101回 C問題 第7問

分娩経過に影響しないのはどれか。

  1. a.骨産道
  2. b.軟産道
  3. c.胎向
  4. d.胎位
  5. e.胎勢

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、分娩がスムーズに進むかどうかを左右する因子と、単に胎児の位置を表すだけの用語とを区別できるかを問う問題だ。似た漢字が並んでいて紛らわしいけれど、まずは分娩経過を決める大きな枠組みから整理しよう。「分娩の三要素」って覚えているかな。
医学生医学生
娩出力、産道、娩出物ですよね。産婦人科の講義で最初に習った気がします。
ドクタードクター
その通り。娩出力は陣痛と腹圧、産道は骨産道と軟産道、娩出物は胎児とその付属物だ。このどれかに異常があれば、分娩が長引いたり止まったりする。では産道から見ていこう。骨産道が問題になるのはどんなときかな。
医学生医学生
骨盤が狭いときです。児頭骨盤不均衡、CPDになると帝王切開になると習いました。
ドクタードクター
そうだね。骨産道は仙骨・尾骨と寛骨に囲まれた硬い管で、胎児はここを回旋しながら通り抜ける。産科的真結合線が9.5 cm未満の狭骨盤や、骨盤に比べて児頭が大きい場合には経腟分娩が難しくなる。だから骨産道は明らかに分娩経過に影響する。
医学生医学生
軟産道のほうは、柔らかいからあまり問題にならないのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだ。軟産道は子宮下部・頸管・腟・会陰などの軟部組織で、頸管が硬くて陣痛があっても十分に開かない「軟産道強靱」は分娩遷延や停止の原因になる。高年初産婦で起こりやすいとされているし、子宮筋腫が産道をふさぐことも通過障害になる。柔らかいからといって無関係ではないんだ。
医学生医学生
なるほど。では残りの三つ、胎位・胎勢・胎向は娩出物の話ですね。正直、定義があいまいです。
ドクタードクター
ここが本題だね。胎位は胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係で、頭位、骨盤位、横位などがある。胎勢は胎児の姿勢、つまり頭が前屈しているか反り返っているか。胎向は児背が母体の左右どちらを向いているかで、左なら第1胎向、右なら第2胎向という。
医学生医学生
臨床実習で産科を回ったとき、カルテに「第1頭位」と書いてあったのは、頭位で第1胎向という意味だったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。では胎位から。骨盤位、いわゆる逆子だとどうなるかな。
医学生医学生
お尻から先に出てきて、一番大きい頭が最後に残るので、娩出が難しくなりそうです。
ドクタードクター
よく考えられたね。さらに臍帯脱出や胎児機能不全も起こりやすい。横位や斜位はそのままでは経腟分娩ができず、放置すれば子宮破裂の危険もあるので帝王切開の適応になる。胎位は分娩経過に大きく影響する。次に胎勢はどうだろう。
医学生医学生
頭が反り返ると、産道を通る頭の周囲径が大きくなるからでしょうか。
ドクタードクター
正解。正常は顎を胸につけた屈曲胎勢で、最も小さい周囲径で通過できる。反屈胎勢は軽い順に前頭位、額位、顔位と呼び、特に額位は通過する周囲径が最大で経腟分娩はほぼ不可能とされる。だから胎勢も影響する。
医学生医学生
ということは、残る胎向が影響しないものですね。児背が左でも右でも、通る頭の大きさは変わらないから。
ドクタードクター
その通り。第1胎向も第2胎向もどちらも正常で、日常的には第1胎向がやや多いという程度。胎児の位置を記録するうえでは大事な用語だけれど、胎向そのものが分娩の難易を決めるわけではない。
医学生医学生
でも、後方後頭位みたいに頭の向きが悪いと難産になると聞きました。あれは胎向の異常ではないんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。後方後頭位や低在横定位は、分娩中に起こるべき児頭の回旋がうまくいかない「回旋異常」として扱い、胎向とは別の概念だ。正常なら、児頭の前屈、後頭が母体前方を向く内回旋、伸展、肩に合わせた外回旋という4つの回旋が順に起こる。これが崩れると分娩遷延の原因になる。
医学生医学生
胎向は「スタート時の背中の向き」、回旋異常は「通過中の頭の回り方の異常」と分けて覚えます。
ドクタードクター
いい整理だね。臨床では、妊婦健診でのレオポルド触診法や超音波で胎位・胎向を確認し、骨盤位なら分娩方針を早めに相談する。分娩中は内診で児頭の回旋を追い、進行が止まったら娩出力・産道・娩出物のどこに原因があるかを三要素に沿って考えるのが基本だ。

まとめ

分娩経過は、娩出力(陣痛・腹圧)、産道(骨産道・軟産道)、娩出物(胎児と付属物)という分娩の三要素で決まります。骨産道では狭骨盤や児頭骨盤不均衡、軟産道では軟産道強靱が分娩の遷延・停止を招き、胎児側では骨盤位・横位などの胎位異常や、額位・顔位などの反屈胎勢が難産の原因となります。一方、胎向は児背が母体の左右どちらにあるかを示す用語にすぎず、第1・第2胎向のいずれも正常で分娩の難易には影響しません。後方後頭位などは回旋異常という別概念であることも区別しておきましょう。胎位・胎勢・胎向の定義を正確に押さえることは、分娩停止の原因を三要素に沿って系統的に考える臨床力の基礎になります。

解答・解説

正解はcです

本問は、分娩の進行を左右する因子と、単に胎児の位置を表現するための用語とを区別できるかを問う問題である。 分娩の経過を決める要素は古くから「分娩の三要素」として整理される。 1. 娩出力:陣痛(子宮収縮)と腹圧 2. 産道:骨産道と軟産道 3. 娩出物:胎児とその付属物(胎盤・卵膜・臍帯・羊水) これらのいずれかに異常があれば、分娩の遷延・停止や難産の原因となる。 娩出物である胎児については、子宮内での姿を「胎位」「胎勢」「胎向」の3つの用語で表す。 ・胎位:胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係(頭位、骨盤位、横位、斜位) ・胎勢:胎児の姿勢(屈曲胎勢か反屈胎勢か) ・胎向:児背(横位では児頭)が母体のどちら側を向いているか(第1胎向・第2胎向) 胎位と胎勢は、産道を通過する胎児の先進部の形や大きさを直接変えるため、分娩経過に大きく影響する。これに対し胎向は、児背が母体の左右どちらにあるかを示すにすぎず、第1胎向・第2胎向のいずれも正常であって、それ自体で分娩の難易は変わらない。したがって、分娩経過に影響しないのは胎向である。

選択肢考察

  1. ×a.  骨産道

    分娩経過に影響する。骨産道は、仙骨・尾骨と左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)からなる小骨盤に囲まれた管状の空間で、胎児はここを回旋しながら通過する。骨盤が狭い場合(狭骨盤:産科的真結合線が9.5 cm未満)や、骨盤に比べて児頭が大きい場合には、児頭骨盤不均衡(CPD: cephalopelvic disproportion)となり、経腟分娩が困難で帝王切開の適応となる。骨盤の変形も分娩障害の原因となる。

  2. ×b.  軟産道

    分娩経過に影響する。軟産道は子宮下部・子宮頸管・腟・外陰・会陰などからなり、筋・筋膜・靱帯・結合組織といった軟部組織で構成される。子宮頸管が硬く、陣痛があっても十分に開大しない状態を軟産道強靱といい、分娩の遷延や停止の原因となる。高年初産婦で起こりやすいとされる。また、子宮筋腫や卵巣腫瘍が産道をふさぐ場合も通過障害となる。

  3. ○c.  胎向

    分娩経過に影響しないため、これが正解である。胎向は児背(横位では児頭)と母体の左右の位置関係を表す用語で、児背が母体の左側にあれば第1胎向、右側にあれば第2胎向という。さらに児背が母体の前方寄りなら第1分類、後方寄りなら第2分類と細分する。日常的には第1胎向がやや多いが、第1胎向・第2胎向のいずれも正常であり、胎児の位置を記述するうえでは重要でも、胎向そのものが分娩の難易を決めるわけではない。なお、児頭の後頭部が母体の後方を向いたまま下降する後方後頭位などは「回旋異常」として扱われ、胎向とは別の概念である。

  4. ×d.  胎位

    分娩経過に影響する。胎位は胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係で、両者が一致する縦位(頭位・骨盤位)と、交差する横位・斜位に分けられる。正常は頭位である。骨盤位(いわゆる逆子)では、比較的小さい殿部や足が先進するため、最も大きい児頭が最後に娩出されて娩出困難(児頭の娩出遅延)となりやすく、臍帯脱出や胎児機能不全(NRFS: non-reassuring fetal status)も起こりやすい。横位・斜位はそのままでは経腟分娩が不可能で、放置すれば遷延横位から子宮破裂に至る危険があるため、帝王切開の適応となる。

  5. ×e.  胎勢

    分娩経過に影響する。胎勢は胎児の姿勢のことで、児頭が前屈して顎が胸につき、背中が丸まった屈曲胎勢が正常である。児頭が後方へそり返った反屈胎勢では、産道を通過する児頭の周囲径が大きくなるため、分娩の遷延・停止を来しやすい。反屈の程度が軽い順に、前頭位、額位、顔位と呼ぶ。特に額位は通過する周囲径が最大となり、経腟分娩はほぼ不可能とされる。

分娩の三要素

娩出力(陣痛・腹圧)、産道(骨産道・軟産道)、娩出物(胎児と付属物)。これに産婦の精神状態を加えて四要素とすることもある。

胎児の位置を表す用語

・胎位:縦位(頭位・骨盤位)、横位、斜位。頭位が約95%を占める。骨盤位は妊娠中期には多いが、自己回転により妊娠末期には数%程度に減る。 ・胎勢:屈曲胎勢(正常)、反屈胎勢(前頭位・額位・顔位)。 ・胎向:第1胎向(児背が母体左側)、第2胎向(児背が母体右側)。第1分類(児背が前方)、第2分類(児背が後方)と細分する。 ・正常な胎児の位置は「頭位・屈曲胎勢(後頭位)」であり、胎向は第1・第2のどちらでもよい。

児頭の回旋(正常の頭位分娩)

第1回旋:屈曲(児頭の前屈)→ 第2回旋:内回旋(後頭が母体前方を向く)→ 第3回旋:伸展(反屈)して児頭娩出 → 第4回旋:外回旋(肩の通過に合わせて児頭が母体の側方を向く)。これらが正しく起こらないものが回旋異常(後方後頭位、低在横定位など)であり、分娩遷延の原因となる。

骨産道の評価

狭骨盤の目安は産科的真結合線9.5 cm未満。CPDが疑われる場合は、X線骨盤計測(グースマン法・マルチウス法)などで評価する。

POINT

・分娩の三要素は娩出力・産道・娩出物である。 ・骨産道(狭骨盤、CPD)、軟産道(軟産道強靱)、胎位(骨盤位、横位)、胎勢(反屈位)はいずれも分娩経過に影響する。 ・胎向(第1胎向・第2胎向)はどちらも正常であり、分娩経過に影響しない。 ・胎位=胎児と子宮の縦軸の関係、胎勢=胎児の姿勢、胎向=児背の向き、と定義を区別しておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。