ズキズキ、閃輝暗点、音がつらい―でも「けいれん」は片頭痛の顔ではない
第101回医師国家試験 C問題 第37問
国試問題にチャレンジ
片頭痛でみられないのはどれか。
- a.拍動性頭痛
- b.視覚の異常
- c.音への過敏
- d.悪心・嘔吐
- e.けいれん
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
片頭痛は片側性・拍動性・中等度以上の痛みで日常動作により増悪し、4〜72時間続く一次性頭痛で、悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴います。前兆のある片頭痛では、皮質拡延性抑制による閃輝暗点などの視覚症状が最も多くみられます。一方、けいれんは片頭痛の症状ではなく、頭痛にけいれんを伴う場合はくも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎・脳炎、PRESなどの二次性頭痛を疑って精査が必要です。緊張型頭痛や群発頭痛との特徴の違い、トリプタンの禁忌や抗CGRP抗体などの治療もあわせて押さえておきましょう。「片頭痛らしさ」と「危険な頭痛のサイン」の両方を知ることが、頭痛診療で見逃しを防ぐ土台になります。
解答・解説
正解はeです
【テーマ】片頭痛の典型的な症状を、国際頭痛分類(ICHD: International Classification of Headache Disorders)の診断基準に沿って理解しているかが問われている。「みられないもの」を選ぶ問題である。
前兆のない片頭痛の診断基準(ICHD-3の要点)
A. B〜Dを満たす発作が5回以上ある。 B. 頭痛発作の持続時間は4〜72時間(未治療または治療が無効の場合)。 C. 次の4項目のうち2項目以上を満たす。 1) 片側性 2) 拍動性 3) 中等度〜重度の頭痛 4) 日常的な動作(歩行や階段昇降など)で頭痛が増悪する、あるいは頭痛のためにそうした動作を避ける D. 頭痛発作中に次の少なくとも1項目がある。 1) 悪心または嘔吐(あるいはその両方) 2) 光過敏および音過敏 E. ほかに最適なICHD-3の診断がない。
前兆のある片頭痛
頭痛に先行して、または頭痛と同時に、5〜60分かけて徐々に進展し完全に回復する局所神経症状(前兆)がみられる。視覚症状が最も多く、ほかに感覚症状(片側のしびれ)、言語症状などがある。
考え方
拍動性頭痛、音過敏、悪心・嘔吐は診断基準の項目そのものであり、視覚の異常は前兆として最も代表的である。一方、けいれんは片頭痛の症状に含まれない。頭痛にけいれんを伴う場合は、てんかんや脳腫瘍、くも膜下出血、髄膜炎・脳炎、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)などの器質的疾患を考えて精査する必要がある。
選択肢考察
- ×a. 拍動性頭痛
脈拍に合わせてズキンズキンと脈打つような拍動性の痛みは片頭痛の代表的な性状であり、診断基準Cの項目に含まれる。ただし発作の経過中、特に時間がたつと拍動感がはっきりせず持続的な痛みとして感じられることもある。拍動性であることは必須ではなく、Cの4項目のうち2項目以上を満たせばよい。
- ×b. 視覚の異常
前兆のある片頭痛では視覚性前兆が最も多い。代表的なのが閃輝暗点で、視野の一部にギザギザした光の模様(閃輝)が現れ、ゆっくり拡大しながら移動し、その内側が見えにくくなる(暗点)。通常5〜60分で消失し、その後に頭痛が続く。後頭葉皮質から始まる皮質拡延性抑制(cortical spreading depression: 神経細胞の興奮とそれに続く抑制が皮質上をゆっくり広がる現象)が機序と考えられている。
- ×c. 音への過敏
発作中に普段は気にならない音がうるさく感じられる音過敏は、光過敏とともに診断基準Dの随伴症状に挙げられている。このため患者は発作中、暗く静かな部屋で横になっていることを好む。
- ×d. 悪心・嘔吐
悪心・嘔吐は片頭痛発作で高頻度にみられる随伴症状で、診断基準Dの項目である。発作中は胃排出能が低下するため、内服薬の吸収が遅れやすい。このため制吐薬(メトクロプラミドなど)の併用や、トリプタンの点鼻薬・皮下注射が選択されることがある。
- ○e. けいれん
けいれんは片頭痛の症状・随伴症状には含まれず、診断基準にもない。頭痛とけいれんが同時にみられる場合は、てんかん発作後の頭痛、脳腫瘍、脳出血・くも膜下出血、髄膜炎・脳炎、PRES、脳静脈洞血栓症などの二次性頭痛を疑い、頭部画像検査や脳波検査などで原因を調べる必要がある。
片頭痛の概要
・一次性頭痛の一つで、20〜40歳代の女性に多い(女性は男性の約3〜4倍)。家族歴を持つことが多い。 ・誘因: ストレスやその解放(週末の頭痛)、睡眠不足・寝すぎ、月経、空腹、天候の変化、アルコール(特に赤ワイン)、チョコレートやチーズなどの食品、光・音・においの刺激。 ・病態: 三叉神経血管説が有力で、三叉神経終末からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドが放出され、硬膜血管の拡張と神経原性炎症が起こると考えられている。前兆は皮質拡延性抑制による。 ・経過: 予兆(あくび、気分の変化など) → 前兆 → 頭痛期 → 回復期と進むことがある。
治療
・急性期: 軽症ではアセトアミノフェンやNSAIDs、中等度以上ではトリプタン(セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬)。トリプタンは虚血性心疾患や脳血管障害のある患者には禁忌である。近年はラスミジタン(5-HT1F受容体作動薬)も用いられる。 ・予防: 発作頻度が多い場合にバルプロ酸、プロプラノロール、ロメリジン(Ca拮抗薬)、アミトリプチリンなど。抗CGRP抗体・抗CGRP受容体抗体製剤も使用される。
ほかの一次性頭痛との比較
・緊張型頭痛: 両側性、非拍動性(圧迫感・締めつけ感)、軽度〜中等度で、日常動作で悪化しない。悪心・嘔吐はない。 ・群発頭痛: 男性に多い。片側の眼窩部を中心とする激痛が15〜180分持続し、同側の流涙、結膜充血、鼻漏、眼瞼下垂などの自律神経症状を伴う。発作中は落ち着きなく動き回る。
頭痛の危険信号
突然発症の激しい頭痛、けいれん・意識障害・麻痺などの神経局所症状、発熱と項部硬直、50歳以降の新規発症、進行性に悪化する頭痛などは二次性頭痛を示唆し、画像検査を行う。
POINT
・片頭痛の特徴: 片側性・拍動性・中等度〜重度・日常動作で増悪、4〜72時間持続。 ・随伴症状: 悪心・嘔吐、光過敏・音過敏。 ・前兆は視覚症状(閃輝暗点)が最多。 ・けいれんは片頭痛の症状ではなく、頭痛にけいれんを伴えば二次性頭痛を疑う。
