白く光る血液を一瞬で捉える―CTがMRIに勝つ場面はどこか
第101回医師国家試験 B問題 第94問
国試問題にチャレンジ
頭部単純CTが頭部MRIより診断に有用なのはどれか。
- a.脳腫瘍
- b.脳梗塞
- c.多発性硬化症
- d.くも膜下出血
- e.静脈洞血栓症
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
頭部単純CTはX線吸収の差を画像化し、急性期の出血・石灰化・骨を高吸収域として明瞭に描出でき、短時間で撮影できるため救急に適しています。くも膜下出血では脳底槽やシルビウス裂の高吸収域を捉えられ、再破裂予防のため迅速な診断が求められることから、初期診断の第一選択は単純CTです。一方、超急性期脳梗塞(拡散強調像)、多発性硬化症、脳腫瘍(造影MRI)、静脈洞血栓症(MRV)など脳実質や血管内の性状評価はMRIが優れます。脳梗塞疑いでまずCTを撮るのは出血除外のためであり、CTで出血がなくてもくも膜下出血を強く疑えばMRIや腰椎穿刺を追加する点も重要です。各検査の原理と得意分野を理解することは、限られた時間で適切な画像検査を選ぶ臨床判断の基礎になります。
解答・解説
正解はdです
CTとMRIの得意分野
頭部単純CT(造影剤を用いないCT)は、X線の吸収の差を画像化する検査である。血液は凝固するとヘモグロビン濃度が上がり、X線をよく吸収するため、急性期の出血は脳実質より白く(高吸収域として)明瞭に描出される。同様に石灰化や骨も高吸収域となる。また、撮影時間が数分と短く、夜間・救急でも実施しやすい、体内金属やペースメーカーの制約が少ない、重症患者でもモニター管理下で撮影しやすいといった利点がある。 一方、頭部MRIは組織の水分や性状の違いを多彩な撮像法(T1強調像、T2強調像、FLAIR像、拡散強調像など)で描き分けられるため、軟部組織のコントラストに優れ、脳実質内の小さな病変、脱髄、早期の虚血、後頭蓋窩(脳幹・小脳)の病変などの検出能はCTを大きく上回る。CTで問題となる後頭蓋窩の骨によるアーチファクトもない。
設問へのアプローチ
「CTのほうが有用」となるのは、CTの長所である急性期出血・石灰化・骨病変の検出や、迅速性が重視される場面である。選択肢の中では、急性期の頭蓋内出血であり緊急性の高いくも膜下出血がこれに該当する。他の疾患は、いずれも脳実質や血管内の性状変化を捉える必要があり、MRIのほうが診断能に優れる。
選択肢考察
- ×a. 脳腫瘍
脳腫瘍の検出、進展範囲、周囲浮腫、内部性状の評価にはMRI(特にガドリニウム造影MRI)のほうが情報量が多く、一般に有用である。小さな転移性脳腫瘍や後頭蓋窩の腫瘍はCTでは見落とされやすい。ただし、乏突起膠腫や頭蓋咽頭腫のように石灰化の有無が診断の手がかりとなる場合や、髄膜腫・頭蓋底腫瘍で骨の肥厚・破壊を評価したい場合には、CTが補助的に役立つ。
- ×b. 脳梗塞
脳梗塞の超急性期(発症数時間以内)には、単純CTでは明らかな低吸収域が出現しないことが多い(early CT signと呼ばれる軽微な変化を認めることはある)。MRIの拡散強調像(DWI)では発症後早期から梗塞巣が高信号として描出され、MRA(MR血管撮影)を併用すれば閉塞血管も確認できる。また、脳幹や小脳の小梗塞はCTでは骨のアーチファクトで評価しにくい。したがって脳梗塞の診断能はMRIが優れる。なお救急の現場では、血栓溶解療法の適応判断の前に出血を除外する目的でまずCTを撮ることも多いが、これは梗塞そのものの診断能でCTが優れるという意味ではない。
- ×c. 多発性硬化症
多発性硬化症は中枢神経の脱髄疾患で、脳室周囲白質、皮質直下、脳幹、小脳、脊髄、視神経などに脱髄巣が多発する。これらの病変はMRIのT2強調像・FLAIR像で高信号として描出され、活動性病変はガドリニウム造影で増強される。CTではほとんど描出できないため、診断(空間的・時間的多発の証明)にはMRIが必須である。
- ○d. くも膜下出血
くも膜下出血では、急性期の血液が脳底槽(鞍上槽を中心とするペンタゴン)やシルビウス裂、大脳縦裂などのくも膜下腔に高吸収域として描出される。単純CTは短時間で撮影でき、発症早期の出血に対する感度が高く、重症で不安定な患者にも行いやすい。脳動脈瘤の再破裂を防ぐため迅速な診断が求められる疾患であり、第一選択の画像検査は頭部単純CTである。MRIのFLAIR像も出血の検出に有用で、発症から日数が経ちCTで吸収値が下がった症例では役立つが、急性期の初期診断ではCTが優先される。CTで出血が明らかでなくても臨床的に強く疑う場合は、MRIや腰椎穿刺(キサントクロミーの確認)を追加する。
- ×e. 静脈洞血栓症
脳静脈洞血栓症は、上矢状静脈洞や横静脈洞などの静脈洞が血栓で閉塞する疾患で、頭痛、痙攣、うっ血乳頭、静脈性梗塞・出血をきたす。単純CTでは静脈洞内の血栓が高吸収に見えること(cord sign、dense triangle sign)があるが、所見を認めない例も多く、感度は低い。MRIでは静脈洞内の血栓自体を信号変化として描出でき、MRV(MR静脈撮影)で静脈洞の血流欠損を確認できるため、診断にはMRIが優れる。
頭部CTとMRIの使い分けの整理
CTが優れる・優先される場面 ・急性期の頭蓋内出血(くも膜下出血、脳出血、急性硬膜外・硬膜下血腫) ・石灰化の評価(腫瘍内石灰化、生理的石灰化など) ・骨病変(頭蓋骨骨折、頭蓋底の骨破壊) ・頭部外傷や意識障害の初期評価など迅速性が求められる場面 ・MRIが禁忌の患者(条件付きMRI対応でないペースメーカー、体内金属など) MRIが優れる場面 ・超急性期脳梗塞(拡散強調像) ・脱髄疾患(多発性硬化症など) ・脳腫瘍(特に造影MRI)、小さな転移巣 ・後頭蓋窩(脳幹・小脳)の病変 ・静脈洞血栓症(MRI+MRV) ・脳炎、変性疾患など脳実質の性状評価
くも膜下出血の診断の流れ
突然発症の激しい頭痛(「人生最悪の頭痛」)→頭部単純CT→出血確認後、CTAやMRA、脳血管撮影で脳動脈瘤を検索する。CTで出血が不明でも疑いが強ければMRI(FLAIR像など)や腰椎穿刺を行う。CTの感度は発症直後ほど高く、時間経過とともに低下する。
POINT
・頭部単純CTは急性期の出血・石灰化・骨の評価と迅速性に優れる。 ・くも膜下出血の初期診断の第一選択は頭部単純CTである。 ・超急性期脳梗塞(拡散強調像)、多発性硬化症、脳腫瘍、静脈洞血栓症(MRV)、後頭蓋窩病変はMRIが優れる。
