「いつ測るか」で答えが変わる―妊娠中期の週数推定は児頭大横径
第100回医師国家試験 G問題 第55問
国試問題にチャレンジ
妊娠中期の超音波計測値で妊娠週数推定の精度が最も高いのはどれか。
- a.胎囊径
- b.頭殿長
- c.胎児腹囲
- d.児頭大横径
- e.胎児胸郭横径
対話形式の解説
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ドクターまとめ
超音波による妊娠週数の推定は、個体差の小さい早い時期の指標で行うのが原則で、使う指標は時期によって胎囊(ごく早期)、頭殿長(8〜11週ごろ、最も高精度)、児頭大横径(12週以降、とくに妊娠中期)と移り変わります。妊娠中期(14週0日〜27週6日)では胎児の屈伸で頭殿長が測りにくくなるため、骨の輪郭が明瞭で再現性の高い児頭大横径が週数推定の中心になります。腹囲は体重と最もよく相関し、大腿骨長とともに推定胎児体重や発育評価に用いる指標であり、胸郭横径は心肺疾患の評価に使われます。予定日はいったん確定したら変更せず、その後のずれは発育異常として評価するという原則は、胎児発育不全の早期発見に直結する重要な考え方です。
解答・解説
正解はdです
問われていること
超音波検査で得られる胎児の計測値のうち、妊娠中期に妊娠週数(胎齢)を推定するのに最も適した指標を選ぶ問題である。
考え方
妊娠週数は本来、最終月経開始日から数える。しかし月経周期が不規則な場合や最終月経が不確かな場合、排卵が遅れた場合などでは実際の胎齢とずれが生じる。そこで超音波で胎児を計測し、週数を確認・修正する。 胎児の大きさの個体差は、妊娠早期ほど小さく、週数が進むほど大きくなる。したがって週数推定は「その時期に最も個体差が小さく、確実に測れる部位」を用い、できるだけ早い時期に行うのが原則である。時期ごとの指標は次のように移り変わる。 ・妊娠初期の早い時期(おおむね5〜7週): 胎囊(GS)。胎芽がまだ小さく測りにくい時期に使う。 ・妊娠8〜11週ごろ: 頭殿長(CRL)。週数推定の精度が最も高い指標であり、分娩予定日の確定に用いる。 ・妊娠12週以降、とくに妊娠中期の前半: 児頭大横径(BPD)。胎児が屈曲・伸展するようになってCRLが正確に測れなくなり、代わって頭部の骨性の輪郭が明瞭になるため、BPDが週数推定の中心となる。 妊娠中期は現在の区分で妊娠14週0日〜27週6日を指す。この時期に週数推定に用いられるのは児頭大横径である。一方、腹囲や大腿骨長などは主に胎児の発育評価や推定体重の算出に使われる。
選択肢考察
- ×a. 胎囊径
胎囊(GS: gestational sac)は、胎児とそれを包む羊水腔を含む袋状の構造である。経腟超音波では妊娠4週後半ごろから見え始め、妊娠5週の終わりまでにはほぼすべての正常妊娠で確認できる。子宮内妊娠の確認や、胎芽が見えにくいごく早い時期のおおまかな週数推定に使われる。ただし胎囊は形がいびつになりやすく、測る断面によって径が変わるため精度は高くない。妊娠中期には胎児が大きくなって胎囊そのものを計測する意味がなくなるので、誤りである。
- ×b. 頭殿長
頭殿長(CRL: crown-rump length)は、胎児の頭の先端から殿部までの長さである。妊娠初期、とくにCRLが約14〜41 mm(妊娠8週〜11週ごろ)の時期には個体差が非常に小さく、誤差はおおむね数日以内に収まる。そのため全妊娠期間を通じて最も精度の高い週数推定法とされ、分娩予定日の確定に用いられる。しかし12週を過ぎると胎児が体を丸めたり伸ばしたりするため、正しい長さを測るのが難しくなる。「妊娠中期」という条件に合わないので誤りである。最も精度の高い指標という点に引きずられて選びやすいので注意する。
- ×c. 胎児腹囲
胎児腹囲(AC: abdominal circumference)は、胃泡と肝内の臍静脈が見える横断面で腹部の周囲長を測ったものである。肝臓の大きさや皮下脂肪の量を反映するため、胎児の栄養状態や体重とよく相関する。そのため胎児発育不全(FGR)や巨大児のスクリーニング、推定胎児体重の計算に用いられる。一方、胎児の栄養状態によって値が大きく変わり、呼吸様運動や圧迫で形も変化するので、週数推定の指標としての精度は劣る。誤りである。
- ○d. 児頭大横径
児頭大横径(BPD: biparietal diameter)は、透明中隔腔と視床が見える胎児頭部の横断面で、左右の頭頂骨間の最大距離を測ったものである。頭蓋骨は輪郭がはっきりしていて測定の再現性が高い。また妊娠中期の前半までは頭部の発育の個体差が小さい。そのため妊娠12週以降、とくに妊娠中期の週数推定に最も適した指標であり、正しい。同じ断面で頭蓋内の構造も観察でき、頭部の形態評価も同時に行える。ただし妊娠後期になると個体差が広がり、児頭の形(長頭など)の影響も受けるため、週数推定の精度は低下する。妊娠後期のBPDは、週数推定よりも発育評価の指標として扱われる。
- ×e. 胎児胸郭横径
胎児胸郭横径(TTD: transverse thoracic diameter)は、胸郭の大きさの評価に用いられる。心拡大などの心疾患、肺低形成などの肺疾患、胸水などを見つけるための指標として有用である。胸郭の大きさは胎児の病態の影響を受けやすく、週数推定の標準的な指標ではないため、誤りである。
妊娠の時期区分
妊娠初期: 妊娠13週6日まで 妊娠中期: 妊娠14週0日〜27週6日 妊娠後期(末期): 妊娠28週0日以降
超音波による週数推定・発育評価の指標
・胎囊(GS): 妊娠4週後半〜5週ごろから見え始める。子宮内妊娠の確認に用いる。週数推定の精度は低い。 ・頭殿長(CRL): 妊娠8〜11週ごろ(CRL約14〜41 mm)に最も精度が高い。最終月経から算出した週数との差が大きいときは、この時期のCRLに基づいて分娩予定日を修正する。 ・児頭大横径(BPD): CRLが測りにくくなる12週以降、とくに妊娠中期に週数推定の主な指標となる。後期になると精度が下がる。 ・大腿骨長(FL): 骨の長さなので測定しやすく、発育評価や推定体重の計算に使う。 ・腹囲(AC): 体重との相関が最も強い。胎児発育不全や巨大児の評価に重要である。
推定胎児体重(EFW)
日本ではBPD、AC、FLを組み合わせた計算式で推定胎児体重を求め、在胎週数ごとの基準値と比べて発育を評価する。推定胎児体重が基準値から大きく外れる場合は、胎児発育不全やLight-for-dates児・Heavy-for-dates児を疑う。
週数推定の原則
週数推定は、できるだけ早い時期の、個体差が小さい指標で行う。予定日をいったん確定したら後から変更しない。確定後に計測値が基準から外れた場合は、週数の誤りではなく発育異常として評価する。
POINT
・週数推定の指標は時期によって変わる。胎囊(〜7週ごろ)→ 頭殿長CRL(8〜11週、最も高精度)→ 児頭大横径BPD(12週以降、妊娠中期)。 ・妊娠中期(14〜27週)の週数推定にはBPDを用いる。 ・腹囲(AC)は体重と最もよく相関し、発育評価や推定体重の算出に用いる。週数推定の指標ではない。 ・予定日は早い時期に確定し、確定後のずれは発育異常として評価する。
