「何歳か」より「骨は何歳か」―二次性徴の順番とタイミングを読み解く
第99回医師国家試験 D問題 第65問
国試問題にチャレンジ
二次性徴について正しいのはどれか。
- a.女子では陰毛の出現が最初の徴候である。
- b.男子では腋毛の出現が最初の徴候である。
- c.発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。
- d.陰茎の肥大は思春期後期に出現する。
- e.発育急伸は初経と同時に起こる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
二次性徴の最初の徴候は、女子では乳房発育、男子では精巣増大(容積4mL以上)です。女子は乳房発育→陰毛→身長スパートのピーク→初経→腋毛、男子は精巣増大→陰毛・陰茎増大→身長スパートのピーク→腋毛・ひげ・声変わりの順に進み、陰茎増大は早期の徴候、初経は身長スパートのピークを過ぎてから訪れます。二次性徴の出現時期は個人差の大きい暦年齢よりも、性ホルモンの影響を同じく受ける骨年齢とよく相関します。このため思春期早発症では骨年齢が進んで最終身長が低くなるおそれがあり、体質性思春期遅発症では骨年齢が遅れます。正常な順序と骨年齢の意味を理解しておくことは、小児の成長評価や思春期の異常を見抜く基本となります。
解答・解説
正解はcです
二次性徴(思春期に性ホルモンの作用で現れる身体的な性差の特徴)について、出現する順序と、その時期を決める要因を問う問題である。
二次性徴が起こる仕組み
思春期になると視床下部から GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が律動的に分泌されるようになり、下垂体から LH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)が増え、卵巣からエストロゲン、精巣からテストステロンが分泌される。陰毛・腋毛にはこれに加えて副腎由来のアンドロゲンも関わる。
出現の順序
・女子:乳房の発育(乳房腫大、thelarche)が最初で、平均 10 歳前後に始まる。続いて陰毛が生え、身長の伸びが最大になる時期(身長スパート)を迎え、その後に初経(平均 12 歳ごろ)、腋毛の順となる。初経は乳房発育開始から約 2 年後、身長スパートのピークを過ぎてから訪れる。 ・男子:精巣の増大(容積 4 mL 以上)が最初で、平均 11〜12 歳ごろに始まる。続いて陰毛、陰茎の増大が起こり、身長スパートは女子より約 2 年遅く思春期の中期〜後期に来る。腋毛・ひげ・声変わりはさらに後になる。
時期を決める要因
二次性徴が始まる暦年齢(実際の年齢)は個人差が大きいが、骨年齢(手のX線写真などで評価した骨の成熟度)とはよく一致する。性ホルモンが骨の成熟を促し、骨端線の閉鎖を早めるため、両者は同じ内分泌環境を反映して連動するからである。 したがって、各性の「最初の徴候」、陰茎増大の時期、身長スパートと初経の前後関係を正確に押さえていれば、正解は c と判断できる。
選択肢考察
- ×a. 女子では陰毛の出現が最初の徴候である。
誤り。女子の二次性徴は乳房の発育(乳輪下にしこりのような乳腺組織が触れる乳房芽の出現)から始まるのが一般的である。陰毛はその後に続くことが多い。なお、乳房発育はエストロゲン、陰毛は主に副腎・卵巣由来のアンドロゲンによるもので、担うホルモンが異なる。
- ×b. 男子では腋毛の出現が最初の徴候である。
誤り。男子で最初に現れるのは精巣の増大であり、精巣容積が 4 mL 以上になった時点を思春期開始の目安とする。腋毛は陰毛や陰茎増大、身長スパートよりも後に出現する、比較的遅い徴候である。
- ○c. 発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。
正しい。二次性徴が始まる暦年齢には数年単位の個人差があるが、骨年齢との対応はよい。例えば女子の初経は骨年齢がおよそ 13 歳前後に達したころに起こることが多い。性ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン)は骨の成熟を進めるため、二次性徴の進行と骨年齢の進行は同じホルモン環境を反映して連動する。このため、思春期早発症では骨年齢が暦年齢より進み、体質性思春期遅発症では骨年齢が遅れる。
- ×d. 陰茎の肥大は思春期後期に出現する。
誤り。陰茎の増大は精巣増大に続いて思春期の比較的早い時期(初期〜中期)に始まり、精巣と並んで男子の早期の徴候である。後期に現れるのは、ひげ・腋毛の発生や声変わりなどである。
- ×e. 発育急伸は初経と同時に起こる。
誤り。発育急伸(growth spurt:身長の伸びが急速に増す時期)は、女子では乳房発育の開始とほぼ同じ頃から始まり、陰毛出現の時期と重なる思春期前半にピークを迎える。初経はピークを過ぎた後に起こり、初経以降の身長の伸びは数 cm 程度にとどまることが多い。
Tanner(タナー)分類
二次性徴の進み具合を、女子は乳房と陰毛、男子は外性器(精巣・陰茎)と陰毛について、それぞれ 1 度(思春期前)〜5 度(成人型)の 5 段階で評価する分類である。小児の成長評価や思春期の異常の診断に用いる。
骨年齢
主に左手の手根骨・指骨のX線写真で骨化の進み具合を評価し、標準と比べて何歳相当かを判定したもの。性ホルモンや甲状腺ホルモンは骨成熟を促進し、甲状腺機能低下症や成長ホルモン分泌不全症では骨年齢が遅れる。思春期早発症では骨年齢が進み、骨端線が早く閉鎖するため、最終身長が低くなるおそれがある。
思春期早発症と思春期遅発症
思春期早発症は二次性徴が標準より明らかに早く始まるもので、女子では 7 歳台での乳房発育、男子では 9 歳未満での精巣増大などが目安となる。女子では原因のはっきりしない特発性が多く、男子では脳腫瘍などの器質的疾患の頻度が相対的に高い。反対に、女子で 13 歳ごろ、男子で 14 歳ごろを過ぎても最初の徴候がみられない場合は思春期遅発症を疑う。
男女差のまとめ
女子:乳房発育 → 陰毛 → 身長スパート(ピーク)→ 初経 → 腋毛 男子:精巣増大 → 陰毛・陰茎増大 → 身長スパート(ピーク)→ 腋毛・ひげ・声変わり 男子のほうが思春期の開始が 1〜2 年遅く、身長スパートのピークも女子より約 2 年遅い。
POINT
・二次性徴の最初の徴候は、女子では乳房発育、男子では精巣増大である。 ・陰茎増大は男子の思春期の早い時期に起こる。腋毛・ひげ・声変わりは後期の徴候である。 ・女子の身長スパートは初経より先に起こり、初経は身長の伸びのピークを過ぎてから訪れる。 ・二次性徴の出現時期は、暦年齢より骨年齢とよく相関する。
