体重だけでは週数は語れない―新生児の「成熟度」を読む身体所見
第118回医師国家試験 F問題 第39問
国試問題にチャレンジ
生後1時間の男児。身長50cm,体重2,200g,頭囲32cmで出生した。 この児の在胎期間の推定に用いる身体所見で適切でないのはどれか。
- a.乳房
- b.皮膚
- c.うぶ毛
- d.大泉門
- e.足底のしわ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
出生後に在胎期間を推定するには、Dubowitz法やNew Ballardスコアを用いて身体的成熟度と神経筋成熟度を点数化します。身体的項目には皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器があり、いずれも週数とともに一定の順序で変化する所見です。一方、大泉門は個人差が大きく、頭蓋内圧や脱水、骨化障害など多くの要因で変化するため成熟度判定には含まれず、頭蓋内圧や発達の評価に用いられます。体重などの計測値だけでは早産児とSGA児を区別できないため、成熟度評価で週数を推定することが、低血糖や呼吸障害などのリスク評価と管理方針の決定につながります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
出生直後の新生児について、在胎期間(妊娠何週で生まれたか)を身体所見から推定する方法、すなわち新生児成熟度判定法の評価項目を知っているかを問う問題である。
本児の状況
身長50cmは正期産児の平均程度だが、体重2,200gは低出生体重児(2,500g未満)に該当し、頭囲32cmも正期産児の平均(約33〜34cm)よりやや小さい。体重だけをみると早産児の可能性も、正期産で胎内発育が不十分な不当軽量児(SGA:small for gestational age)の可能性もある。体格の計測値だけでは「週数が短いから小さい」のか「週数相応に育っていないから小さい」のかを区別できない。
在胎期間の推定法
在胎週数は本来、妊娠初期(妊娠8〜11週頃)の超音波による頭殿長(CRL)計測で最も正確に決定される。妊婦健診の情報が乏しい場合や在胎週数が不確かな場合には、出生後に新生児の身体的成熟度と神経学的成熟度を点数化して週数を推定する。代表的な方法がDubowitz法と、それを簡略化・改良したBallard法(New Ballardスコア)である。 これらの身体的成熟度の項目は、在胎週数とともに一定の順序で変化する所見から選ばれている。具体的には皮膚(薄く透明でゼラチン状→厚く落屑・亀裂を伴う)、うぶ毛(増加した後に減少する)、足底のしわ(なし→前方から踵へ広がる)、乳房(乳輪・乳腺組織の発達)、耳介(軟骨の形成・弾力)、外性器(男児では精巣の下降と陰囊のしわ、女児では大陰唇による小陰唇・陰核の被覆)などである。 大泉門は、大きさの個人差が大きく、頭蓋内圧や骨化の異常などさまざまな要因で変化するため、在胎週数との対応が一定せず、成熟度判定の項目には含まれていない。
選択肢考察
- ×a. 乳房
乳房(乳輪の形成と乳腺組織の触知できる大きさ)は在胎週数とともに発達するため、成熟度判定法の身体的項目に含まれる。早産児では乳輪がほとんど見えず乳腺組織も触れないが、成熟するにつれて乳輪が隆起し、正期産児では乳腺結節を数mm〜1cm程度触れるようになる。在胎期間の推定に適切な所見である。
- ×b. 皮膚
皮膚の性状(厚さ、透明度、色調、落屑、亀裂)は成熟度判定の基本項目である。未熟な児の皮膚は薄く赤く透けて血管が見え、ゼラチン状であるが、成熟とともに厚く不透明になり、正期産〜過期産では表皮の落屑や亀裂、羊皮紙様の変化がみられる。在胎期間の推定に適切な所見である。
- ×c. うぶ毛
うぶ毛(胎毛、lanugo)は在胎20週頃から体表に生え始め、在胎28週前後で最も多くなり、その後減少して正期産児では背部などにわずかに残る程度となる。この経時的変化を利用して成熟度判定の項目に用いられる。在胎期間の推定に適切な所見である。
- ○d. 大泉門
大泉門は前頭骨と左右の頭頂骨に囲まれた菱形の骨間隙で、正期産児でも大きさの個人差が大きい。また頭蓋内圧の変化(膨隆・陥凹)、脱水、水頭症、骨化障害(くる病、甲状腺機能低下症など)、頭蓋骨早期癒合症など多くの要因で影響を受けるため、在胎週数との相関が一定しない。このためDubowitz法やNew Ballardスコアのいずれにも評価項目として含まれておらず、在胎期間の推定に用いる所見として適切でない。大泉門は通常1歳6か月頃までに閉鎖し、その大きさや緊張は発達・頭蓋内圧の評価に用いられる。
- ×e. 足底のしわ
足底のしわ(足底溝)は在胎週数が進むにつれて足底の前方(つま先側)から出現し、次第に踵側へ広がっていく。早産児ではしわがほとんどなく、正期産児では足底全体にしわがみられる。この変化は成熟度判定の項目に含まれ、在胎期間の推定に適切な所見である。
新生児成熟度判定法
・Dubowitz法:1970年にDubowitzらが考案。外表所見11項目(浮腫、皮膚の性状、皮膚の色、皮膚の透明度、うぶ毛、足底のしわ、乳頭の形成、乳房の大きさ、耳介の形、耳介の硬さ、外性器)と神経学的所見10項目(姿勢、角窓〈手首の屈曲角度〉、足首の背屈、上肢の反跳、下肢の反跳、膝窩角、踵-耳、スカーフ徴候、頭部の遅れ、腹位水平宙づり)を点数化して在胎週数を推定する。 ・New Ballardスコア:Ballard法(1979年)を1991年に改訂したもの。身体的成熟度6項目(皮膚、うぶ毛、足底表面、乳房、眼・耳、外性器)と神経筋成熟度6項目(姿勢、角窓、上肢の反跳、膝窩角、スカーフ徴候、踵-耳)の計12項目で評価し、超早産児を含む在胎20週から44週程度まで推定できる。
在胎期間と出生体重による新生児の分類
・在胎期間:早産児(37週未満)、正期産児(37週以上42週未満)、過期産児(42週以上) ・出生体重:低出生体重児(2,500g未満)、極低出生体重児(1,500g未満)、超低出生体重児(1,000g未満)、巨大児(4,000g以上) ・在胎期間別出生時体格標準値との比較:SGA(体重・身長が10パーセンタイル未満)、AGA、LGA(90パーセンタイル超) 在胎週数が正しく推定できて初めて、早産児なのかSGA児なのかを判断でき、低血糖・低体温・呼吸障害などのリスク評価や管理方針の決定に役立つ。
在胎週数の決定法(出生前)
妊娠初期の超音波による頭殿長(CRL)計測が最も正確で、最終月経から算出した週数と大きくずれる場合にはCRLを優先して分娩予定日を修正する。妊娠中期以降は児頭大横径(BPD)などで補助的に評価するが、胎児の発育差の影響を受けるため精度は落ちる。
大泉門
前頭骨と両側頭頂骨の間にある菱形の泉門で、通常1歳6か月頃までに閉鎖する。膨隆は頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症など)、陥凹は脱水を示唆し、閉鎖遅延はくる病、先天性甲状腺機能低下症、水頭症など、早期閉鎖は頭蓋骨早期癒合症や小頭症などでみられる。小泉門は生後1〜2か月頃までに閉鎖する。
POINT
・出生後の在胎週数推定にはDubowitz法やNew Ballardスコアを用いる。 ・身体的成熟度の項目:皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房(乳頭・乳輪)、耳介、外性器。 ・神経学的項目:姿勢、角窓、上肢の反跳、膝窩角、スカーフ徴候、踵-耳など。 ・大泉門は個人差が大きく在胎週数と相関しないため、成熟度判定の項目に含まれない。 ・体格計測だけでは早産児かSGA児かを区別できず、成熟度評価が必要となる。
